情報を頼りに、四人がたどり着いたのは
「…何やらスゴい人集りだ、これが祭りか?」
「まあ、お祭りっちゃお祭りアルな」
とある催しを行なっている建物の前でした
若干形は違うものの、とても特徴的な逆三角の
建物の周りに色々な人が集まっています
「銀さん、これってやっぱり」
「まんまコミケじゃねーか…この人集りじゃ
目当てのモンを見っけるのも骨が折れそうだぜ」
所々ファンタジーなこの世界に、負けず劣らず
風変わりな格好やモニュメントが目につきます
巨大な会場のあちこちにあるブースで
本を売っている人々が圧倒的に多く、客として
訪れている人用の露天も賑わっています
中でも"愚純尊先生サイン会"には
会場の外へはみ出るほどの長蛇の列が並んで
「うっひょ〜!
このサイン色紙は家宝にするでござる!」
と書かれた
色紙を愛おしそうに抱きしめるファンを見て
「記憶の混在が原因とはいえ、よもや
瞳孔マヨ殿があのような姿になろうとは…」
「え、ええ、まあそうですね…」
本気で驚いてるらしいへ、新八は真実を
口にしかけますが 結局黙っていました
「オタクどもの熱気が半端ないアルな…」
「熱中症になるまえに水分とっとけ?
管理人も帰りの電車で倒れ」
「内輪ネタはいいですから」
途中 一名が三途に行きかけたものの、どうにか
水分補給が間に合い 飲み物を口に含んでいると
コスプレコーナーの一角に 妙な男たちが
たむろしているのに気が付きました
「せっかくイイ感じの古紙があったから、それを
元にこだわって製本したってのに!」
「売れずに残っちまうなんて…あんだけ
苦労したのに、許可せず取り潰しやがってぇぇ!」
「憎い!売れる本書いてるヤツが憎い!」
「憎い!買ってかなかったヤツが憎い!」
そんな怨念を口々に呟きながら彼らは
聞きかじりした怪しげな呪術の儀式のために
描かれた陣の真ん中に
在庫として残った"古書風"の装丁をした同人本と
印刷ミスで中身が白紙の"落丁本"を
積み重ねてゆきます
「うっわー何アレ…」
「なんかのパフォーマンス?」
やや遠巻きに見ている人々に構わず、ゴリラの
行動を基準に彼らは声高らかに叫びます
「本に我らの怨念をォォ!」
『いいですとも!』
「読んだ者へ不幸をもたらせぇぇぇ!」
『不幸よ届け君にぃぃぃぃ!!』
「今だ!怨念の力を集結せよ!!」
そこでゴリラを含めた全員が目を見開いて
「「「「お前らのせいかぁぁぁ!」」」」
助走をつけて、銀時たちが彼らを殴ったため
儀式は阻止されたのでありました
…その後、駆けつけた警備員にもお説教を喰らい
開放されても四人に睨まれていたので
「オレら同人サークルとして活動してたんですけど
部数はけなくて、いっつも売れ残ってたんです…」
ぐすぐすと、鼻をすすりながら正座した鯱が言います
「御子柴本とかがんばってたのに、買う奴が
いなくって宣伝してたらお上に目ぇつけられて」
「そんでサークル潰されちまって…」
「それで、呪いの本を作ろうとしたと?」
『本当にスイマセンでしたァァァァ!!』
全員土下座したのを見届け、銀時は彼らへ聞きました
「ところでよぉ、怪しいヤツを見なかったか?」
「へ?怪しいヤツって…?」
「銀ちゃん!」
神楽の声に反応して視線を走らせると
会場へ戻る出入り口の辺りで、逃げるように
出て行く人影が見えました
「っくそ!どけど…おおっ!?」
人を掻き分けようとしていた銀時の肩を踏み
槍との併用で、より高く飛び上がったが
出入り口へ着いたのですが
「すまぬ取り逃がした…が、何か
落としていったようだ」
拾ったメモには"正直と会う、今夜決行、確認"と
謎めいた走り書きがありました
「正直って…ひょっとして、あの正直か?」
「知ってんのか鯖」
「鯱だって!出所するまで仲良くしててよぉ
マンガの道後押ししてくれたイイやつだったな」
更に付け加えられた情報によると
入った期間が短いから、きっと今も牢の中に
いるはずだそうです
【逃げた奴をひたすら追跡】
【正直を訊ねに行く】
[8]