書き置きを残し、梗子の家を後にして
四人は街から少し先にある中央市役所へと
看板などを頼りにたどり着きました
「予想はしてましたけど…普通に市役所ですね」
「天人とかどこぞの勇者っぽいのとか
普通にウロウロしてるけどな」
「それで、役所で何聞くアルか?」
「決まってんだろ?事件の情報だよ」
人差し指を立てて、自信ありげに銀時は言います
「こういうRPGみたいなのはなぁ、大抵
巷のヘンテコな事件を解決してきゃ
ストーリーが進むって相場が決まってんだ」
「そういうものなのか…して銀時」
「あんだよ」
「その情報はどのようにして聞くのだ?」
の問いに答えるまで、少し間がありました
「そりゃ総合窓口とかお客様相談センターとか
…どっかその辺りで聞けるだろ?」
「んな適当に行って教えてもらえるんですか?」
もちろん、誰も銀時たちの話をまともに
取り合ってはくれませんでした
「こちらも忙しいので、職業案内ならば
窓口は別の部署になりますよ」
"伊東"のネームプレートをつけたメガネの青年が
書類片手に、冷ややかな眼差しで隣を指さし
ダメ元で職業案内窓口で情報収集に勤しめば
「あなた方市民の安全を護るべく、日夜私達
エリートは働いているのですから 軽薄な
イタズラはご遠慮願います」
にべもなくオールバックにモノクルの職員に
断られ、やんわりと追い返されてしまい
散々たらい回しにされて収穫はゼロだったので
彼ら四人は不機嫌そうにロビーのソファに座って
行きかう人の波と、どことなくピリピリしている
職員たちを眺めていました
「まあ、当たり前の反応ですよね…コレ」
「だとしても世間話ぐれぇするだろ普通?
何でこの世界でもアイツら仕事はクソ真面目に
やってんだ、マジいけ好かねぇー」
「仕事熱心なのはいい事だと思うが」
「オレだったらヤツらと仕事すんのは
ゴメン被りたいね、やたら神経質っぽいし」
「ふむ…あのメガネの御仁、片メガネ殿と
どこか近しい雰囲気を持っているような」
「そういやは、アイツと会った事なかたアルな」
などと雑談をしていると
「ちょいと!ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てな!」
少し先の廊下からよく通るダミ声が聞こえました
のぞいてみれば、清掃員らしきおばちゃんが
ブツブツ言いながらゴミを回収していて
「全く最近の若いモンは…おや、アンタら
さっき窓口で騒いでた連中じゃないの」
目が合ってしまったその顔は
ラブチョリスの三人目のヒロイン
白水ピ○子に、とてもよく似ていました
「あの、その僕達ちょっと事情があって」
「ここにはそういった連中がゴマンと来るのさ
ひやかしなら程々にしないと とっ捕まるよ」
「別に冷やかしじゃないんですけど…」
「時にお訊ねするが、何やら役人達は気が
立っているようだが…何かあったのだろうか?」
真顔で唐突な質問に三人は、心の中で
"空気を読め!"と叫んでいました
けれども、予想に反しておばちゃんは
「何かどころじゃないわよ」
などと言って、手をパタパタ振りながら
少し声を潜めてこう続けます
「近頃、隣国のハタ19号政権が無茶しててね
そのせいで革命軍気取りのおかしな連中が
巷を騒がせてて お役人さん迷惑してるのさ」
なんとも言えないような話が飛び出して
顔をしかめる万事屋トリオへ
「ほら…こんなビラまで配って回って
本当に迷惑な話だよ、全く」
収集されていたゴミから、掃除のおばちゃんは
しわくちゃになった一枚のビラをつまんで見せます
ビラには真っ赤な紙に白い字で
"この国を憂う同士よ、団結の時が来た!
我ら輪切りトマト革命軍はいつでも諸君らの
助力を歓迎している!"
と書かれ、中央にはシンボルマークであろう
手足の生えた輪切りのトマトが描かれています
ビラの一番下には どうやら連絡先らしき
電話番号も書かれているようです
「うっさんくせぇなーオイ、こんな連中が
本当に革命なんか起こせんのか?」
手に取って、しげしげビラを見つめる銀時に
同意を得たのが嬉しかったのか
「そうよねぇ!中々話が分かるじゃないか」
一層話を弾ませて、おばちゃんは小耳に
挟んだウワサをここぞとばかりにまくし立てます
「最近有名になってきた養鶏場のどっかにも
地下通路が隠されてるってウワサも…」
そこで、壁かけ時計に気がつくと
「おっと、話しこんじゃったみたいだね
さっきの話はナイショだからね?分かった?」
キツく口止めをして、おばちゃんはいそいそと
仕事へ戻っていったのでありました
「ピ○子の情報網はやっぱり侮れないネ!
きな臭くなって来やがったヨ!」
「しかし少し詳し過ぎる気もするぞ…よもや
これは罠ではないだろうか?」
「二人とも、論点そこじゃないから」
けれど新八のツッコミも、変な具合に乗り気に
なってる神楽とには届きませんでした
【革命軍の連絡先へTEL】
【ウワサの養鶏所を調査】
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