ウワサの養鶏場"ワン・ファーム"は、街から
かなり離れた 豊かな自然の中にありました





そこを経営していたのは…







餃子帝王?懐かしい響きではあるが
生憎ワシはそんな大層な者ではないぞ」


「そうですよね、スイマセンね〜何か」





三人して愛想笑いでごまかしてから、目の前の
相手にこう問いかけました





「あの、僕らここの卵とかすっごく美味しいって
聞いてやってきたんですけど…見学していって
構いませんかね?」





養鶏場の主はにこやかに首を縦に振りました


「そう気兼ねせずとも、ゆっくり見ていくがよい





あっさりと許可を得られたので


多少拍子抜けしながらも、四人は
養鶏場へ足を踏み入れ進んでいきます







「エリザベスっぽいニワトリがわんさといるアル」


「そう、これが市場に出している"ワン卵"
生み出してくれる鶏達だ」


「…何やら血のニオイもするのだが」


「精肉として卸しているものや加工品も
販売しているのだ、不快にさせたならすまぬな」





案内される合間も下ばかり視線を集中させてるので





どうした?さっきからやたらと鶏舎の床や
周りの地面ばかり見ているが」


「いやっ!そのこういうトコ始めてで…」





不思議そうに見やる主の眼差しを気まずく思い

話題を変えようと、逆に新八が質問します





「ご主人はいつから養鶏場を始めたんですか?」


「昔はワシも完璧なフォーマルアドバイザー
だったのだが ヒザに矢を受けてしまってな」


「それどこの傭兵?」


「まあ、それで引退した後に友人の勧めで
養鶏場を開いて コツコツやってきたワケだ」


「なるほど…地道な努力の賜物と言うことか」





無表情ながらもにほめられ、彼はどこか
誇らしげに胸を張って言います





「大手にはまだまだ敵わんが、に関しては
肉も卵も大手には引けをとらんつもりだ!」


「ぜひとも食べてみたいアル!」


ヨダレを垂らす神楽へ笑いかけて





「よかろう、ならば特別に振舞ってやろう」





尊大な口調で振り返る主に、四人は
マントと王冠の幻影を見た気がしました







いくつかの鶏舎が並んでいる横の建物にて
出来立てのスモークチキンを振舞われ





それに嬉々としてかぶりついていると


甲高い鳴き声が、隣から聞こえてきました





「しまった!ニワトリの焼きが甘かったか!」


「焼きって…あの、シメるんじゃなくてですか?」


何を言っておる?ニワトリは切るか焼いて
肉を生み出すものと決まっておろう!」





頓狂な発言に、四人が顔を見合わせて


主と一緒にニワトリの騒ぐ鶏舎へと移動します







案内されていた際に見ていたエリザベス似の
ニワトリには代わり映えがありませんでしたが





羽が全部ぬけていたり、まだらに生えている
状態からスゴい速さで羽が生え


同時に血走った目で辺りを飛び回っています





「ダメです!精肉じゃ手に負えません!」


"霧江"のプレートをつけた従業員らしき女の子が
ニワトリを片っ端から短刀で切りつけると


切られたニワトリがあっという間に


肉の塊となって落ちていました





「え…え゛え゛え゛え゛何今の?!


「何だ、ニワトリの処理を見たことが無かったか」


「いやいやいやあんなニワトリのシメ方
ねーから!てゆうかアレ本当にニワトリか!?」






超常現象としか思えない光景に気を取られつつも





「銀さん、あの床のトコ…!





数羽のニワトリが固まって威嚇する、その足元に


人が通れるくらいの四角い石畳を見つけました





「オーナー!」





悲鳴を上げる従業員へ避難するように伝え


銀時たちを追い出して扉を閉めた主は





「しばし待っておれ、いいかくれぐれも
ニワトリを刺激したり鶏舎に入るでないぞ!」



そう言うやいなや、どこかへ行ってしまいました





「あのオヤジがいねぇ今がチャンスだ
ニワトリを退けて 下の扉を調べるぞ!


「決断早っ!」









中のニワトリは一旦落ち着いているようですが


入ってきた四人に対して、並々ならぬ
敵意を向けています





「やはり今は手を出すべきでは無いのでは?」


「いーからお前も手伝えおら退け!


思い切りニワトリを蹴り上げ、散らした途端





翼をひろげて 一斉に鶏舎内のニワトリが
全員襲いかかって来ました






「ぎゃあぁぁぁぁ!ニワトリの逆襲アルぅぅ!」


「いつからゼ ル伝になったのコレェェ!?」





鶏舎の外へ出てもニワトリは追ってきます





どれだけ反撃しても、叩き落としても


ニワトリは減らずに増える一方で、熾烈な襲撃
彼らは目に見えて圧されてゆきます





あ!あそこに開いてる小屋があるアル!」





"十四"と大きく書かれたその鶏舎からは

ニワトリの鳴き声は聞こえてきません





ぽっかりと開いた入り口は真っ暗で


目を凝らしても、何も見えないようです





「で、でも中に入るなって言われてたじゃん」


「ニワトリどものエサになるよかマシね!」





焦る三人と共にニワトリから逃げながら


淡々とがこう口にしました





「そもそも帝王殿の忠告を聞いておれば
このような事態は避けられたのでは?」


「正論だねーでもそれ今言うなよ!





【鶏舎の中へ逃げこむ】


【どうにか耐えながら待つ】


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