新聞を広げれば、目立つ見出しに大きく
最近の事件が抜擢されていた





フンドシ仮面・再び騒ぎを起こす…か」


呟き は眉根をしかめた





「全く いい加減まだあの変態
捕まえらんないのか真撰組の人達は…」





当人としても女性を中心に被害を起こす
犯罪者を野放しに出来ないとは思っている


が、やらかすのが下着泥棒程度ならば

正直 真撰組にお任せしちゃってて
いいかな、なんて考えて放置してるのも事実







「まあ俺の家にはしっかり防衛策が施されて
いるから、特に問題は「キャアァァァ!!」


甲高い女の悲鳴が響き渡り、
サニーが自室から飛び出すと





廊下の辺りで力無く膝からくず折れて

へたり込む彼女の姿が目に入った











「見えない方がいいかも、真実は」











「どうしたのローズ!」


「なんだ、何があったんだ!?





二人の姿を認め 震えた手で指されたのは
軒先に吊るされていた洗濯物の束


…よく見れば、不自然に空いた箇所がある





「私のお気にのパンティーが…やられた…」







その一言が、彼の闘志(殺意とも言うが)

火をつけ油を注ぎ ダイナマイトまで設置した





「あんんの変態野郎ぉぉおぁあぁ…!」


ゆらりと立ち上がったの目が紅いのは


今回ばかりはおそらく、持ち前の
特殊能力のせいだけではないだろう





「見せてやるよ…本当の地獄ってヤツをぉお
おおおおおおおおぉおおおッ!!!」






愛する者のパンティーを取り戻すためなら


彼は、既に地獄すらも踏み越える気満々のようだ









奴を捕らえたいっつー気持ちは十分わかった
オレもまぁ、あの野郎にゃ腹の立つ思い出もある

…が何でこの面子なわけ?」


「それはオレのセリフだっつーの」





呼び出され、不満げに顔をしかめる銀時へ

こちらも同じぐらい不満げな土方が受け答え





変態怪盗の捕り物は、実際対峙した
当事者がいた方が成功率が高くなるだろ?」


そこに冷静に説明を加えるだが


いつにない真顔とまとったドス黒いオーラ

室内の全員に必要以上の緊張感を抱かせる







あの後は即座に自らの屋敷で

盗聴の恐れがない部屋へ知った顔を呼び出した


それなりの広さがある室内には万事屋トリオと

土方と山崎 それと数人の隊士が集っている







「一通り話は聞いたとは思うが…これ以上
奴を野放しにはしておけない、ぜひとも
全員で協力して八つ裂こう


「いやさん、逮捕だけで十分ですから」


静かにツッコむ新八だが 彼の怒りは
その程度で静まらない





「甘いな あの変態はとっ捕まえてきっちり下着を
取り返し、二度とウチで下着ドロしたくないと思わせ

涙と血反吐で顔面をぐちゃみそにしてそれを拭うのを
忘れて額に地面を擦り付け何度も土下座したくなる程

完膚なきまでに完璧に徹ッ底的にッ!
八つ裂かないと



「そのセリフお前が言うとシャレにならんわ」


「つかアレてめぇんトコのドS王子のセリフじゃね?」





色んな意味でギリギリ過ぎる発言


…とそこへ一人の少女が入室してくる





「待たせてすまなんだな
怪盗の討伐…ぜひ私も混ぜてもらおうか


「おお来たか、遅…」





振り返りった彼も、流石にその時ばかりは
背負っていた黒いオーラが引っ込んだ





"仕事"同等の瞳で殺意を
ありありと宿した人間を前にして








「…んトコも、やられたアルか?」





おずおずと訊ねる神楽へ 彼女はこくりと
表情を変えぬままで頷いて


「ああ…奴はとんでもないものを盗んだ」


「とんでもないものって…ま、まさか
あの、勝負下着とか…?」





新八の言葉に、再び重々しく頷き


胸の辺りで震える拳が作られ





「兄上の下着だ!」


『そっちぃぃぃぃぃぃぃ!?』







端的な説明で済ませるなら 先日二人が
洗濯物を軒先に干していたのだが


僅か一瞬の隙を突かれ、気がつけば





「全て持っていかれた…不覚…!







血を吐くようなセリフと共に、まるで
世界の終わりが来たかの如く突っ伏す





「気持ちは分かるがそこまで落ち込むなよ…」


「あの、ちゃんの下着は大丈夫だった?」





山崎の問いへ 顔を上げた彼女はさらりと





「…ああ、私のフンドシは二枚とも無事だった」


「え゛」







瞬間 辺りの空気がフリーズした







『え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!
ふ、ふふふふふフンドシぃぃぃぃぃぃぃ!?』



「うぬ、ごく普通のフンドシ二枚だ」





しばし硬直したままの彼らを、硬直させた
相手は無表情のまま見つめていた





「に、兄ちゃんからパンツがこの世にあるって
教えてもらわなかったアルか!?」


ようやく沈黙を破った神楽の声音は


のあまりの常識なし振り
信じられないと言わんばかりの声音だった





「いやいや昔ならいざ知らず、今はきちんと
白いパンツも着用している」


「そーいう問題じゃねーだろうが!」





どうやらフンドシとローテーションらしい


「「自重しろ地の文んんんんん!!」」





Wツッコミが入った所で土方が気付いた







まさかのショッキングなカミングアウトに


真撰組面子のほぼ全員が、鼻を押さえるか

前屈みになっている現状に



「何想像してんだオメーらあぁぁぁぁぁ!!」





怒鳴るその姿を横目に まだ衝撃が
抜けきれない銀時が思わず訊ねる





「ちなみに今、どっちつけてんの?」


「銀さんんんん!それセクハラ!」


「冥界に帰るネ変態天パあぁぁぁぁ!」





すかさず彼は従業員二人にボコられて





「フンドシだな こっちのがしっくり来る」


「いや正直なのはいいことだが、それは
答えなくていいって!」



無表情のまま真顔で答えを返す相手に
更にのツッコミが入った







…話はやや脱線してしまったものの







「面子は揃った、それではこれから
フンドシ仮面捕獲作戦会議を始めるぞ」





仕切り直して真面目に指揮を取りだした
へ 銀時が早速挙手をする





「そーいやテメェんトコの兵隊だかは
この作戦に参加しねぇのか?」


「おお、言われてみればカズ殿達は
この場所にはおらぬようだが…」


しかし彼は慌てることなく面々へ告げる





「もちろんMSFの面々は別の形で
協力してもらってるさ、何たってここへ
奴をおびき寄せるつもりだしな」





ざわり、と室内の空気が音を立てる





「ここを戦場にするってのか…被害は
少なく済みそうだが上手く行くのか?」


「土方さん、カズ達の腕前はアンタだって
よーく分かってるハズだろ?」


「あの旦那 オレらは何をすれば…?」







おずおずと手を上げる山崎に対しても
彼の自信は全くといって崩れない





「隊士の何人かで屋敷周辺の警護を頼みたい


銀さん達と俺と土方さんと山崎君
それには 屋敷の敷地内で
それぞれポジションを割り振ろう」







理路整然と語る作戦の概要には
不備が無いように見受けられ





「これならきっと成功するアルよ!」


「おう、野郎に今度こそは
目にモノ見せてやるぜ!」


「ふん…テメェの尻馬に乗っかるのは
シャクだが、付き合ってやるか」





皆が一様にやる気を盛り立て始め







「必ずやあの男へ然るべき報いを!」


「ああ…俺達の大事なモノへ手を出したら
どうなるか骨の髄まで叩き込んでやろう!」





更には被害者同士も聞きようによっては
危ない盛り上がり振りを見せていた







熱気に満ち満ちていく空気の中





「…あんな作戦で本当に上手くいくのかな」


「さぁね、てーか何なんだろう
この人達のおかしなテンションは」


新八と山崎の二人だけは、いやに
冷静に状況を見つめていた





……ともあれ本日この瞬間を持って


"フンドシ仮面捕獲作戦"の火ぶたは
切って落とされたのだった











全員に作戦の伝達が終わり、それぞれが
準備やら配置につき始めた庭で





「今度こそ捕まえるネェェェ!」


張り切って特訓をする神楽やら





「あの変態フンドシを今度こそ
真っ赤に染めてやらぁぁぁぁ!!」



いつになく真面目に木刀を素振りする
銀時の姿が見受けられた





ついでに、時折MSFの隊員らしき
人間が現れたり消えたりもしている







どこかで確実に目にした覚えのある
異様な光景に 完全に疑心暗鬼に陥る新八





「本当デジャヴってるんですけど…
こんな作戦で大丈夫なんですかさん?」


「任せろ新八君 俺はどんな戦場であれ
生き残ってきた男だぞ?」


「いやだからってワザワザ自分家を
戦場にしなくても…」


「新八よぉ、四の五の言ってテメー
ビビッてんだろ 恐いなら早く帰れば?


そうヨ!乙女の敵を野放しにする
軟弱メガネはとっとと帰るヨロシ!!」


「キャラ違っ!つーかあんたら何なの
そのムダに熱いテンションはぁぁぁ!!」






もっともなツッコミでいつものように
騒がしくなる万事屋トリオは放置し





隊士達との打ち合わせも終えて戻った
土方が、煙草をふかしつ呟く


「槍ムスメの奴、遅ぇな…」


「ああ、囮の手配に手間取っているのか
…おっ来た来た!」







今作戦の実行においても、どうしても
囮になるシロモノが必要であり


彼はに それの調達を依頼していた





「断腸の思いで頼み込み、借りてきたぞ
…奪われたら首が飛ぶと思え


物騒な視線と発言を伴いながらも
彼に手渡されたのは…


上品にレースをあしらった黒基調のビキニショーツ





「てーか何でビキニショーツなの?」


「盗まれたモノ同様の品を持って来いと
言うから、兄上から借り受けたのだ」


こんな際どいモンはいてんの!?あの人」





想像はしたくないし出来ないが、案外
似合いそうな所が始末に悪い







…と脳内で結論付けた大人三人の内





「そーいや、お前んトコの彼女も
やられたっつってたけどどんなパン


ふと事の発端を思い出し余計なことを
訊ねた銀時の鼻先へ 銃口が向けられた





「聞くなそしてその興味だけ忘れろ」


「す…スンマセンでした…!








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