【マサナオ?】


「そう、正直って書いて"マサナオ"って読むんだ
いい名前だろ?」


【それ…本当なの?】


「本当さ、正直者として生きて欲しいって
親の願いがこもってる おかげで知り合いは
みんな"お前ほどの正直者はいない"って」


【それは嘘でしょ】


「その通り!みんなが口を揃えて褒め称える
"お前みたいな正直者がいるか?"って」





彼は息をするように嘘をつく人でした


ただの嘘つきじゃなく、"大嘘つき"でした


問い詰めればあっさり白状するけど、その言葉も
どこからが本当でどこまでが嘘なのか


とにかく彼が嘘を抜かさず話す事はありません







【正直って、名前と全然逆に嘘つきだよね】


「そうかもな 二歳の時に隣のお姉さんの
パンツ覗いたのをごまかしたのが最初の嘘だし」


【それも嘘だったりして】


「ご名答、君って勘がいいんだな
本当はめくってパンツに目覚めたのさ」





けれど…××は、正直との他愛の無い
嘘だらけの会話が大好きでした





大嘘つきだけど 彼は××に気づいて
話しかけてくれた、たった一人の相手だからです






        ――――――――――――――――――――











第六訓 横道に逸れるのも意外と大事











通りを曲がれば、そこは異世界だった…
奴らにしちゃ中々にシャレた歓迎じゃないか」


中ニモードに入ってる場合かぁぁ!
つかこれどういう事なんですか清明さ…」


首を向けてみれば、新八の肩に乗っていたハズの
小さな陰陽師がこつぜんと消えていました





「義兄たまの霊あt、じゃねぇ姿が…消えた!?」


アウトォォ!ってギリギリな小ボケかましてる
場合じゃないですよ、さっきまで江戸の街を
歩いてたハズでしたよね僕ら!?」





あわてふためく彼につられるようにして
今来た路地を振り返ってみても


ハンパにRPGじみた光景が広がるばかりで


大通りからもターミナルに似た建物が視界へと入り


空を見上げれば、ドラゴンと宇宙船が
すれ違うようにして横切ってゆきました





「江戸のようで江戸でない…何とも
不可思議な場所だ」


「どっちかというとたまクエとかモンハンとかの
世界足して、おいしいトコどりしたって感じアル」


「おかしくなった江戸から引出しの中ときて
今度はファンタジー乱入ですか?サブタイトルに
"朝帰りの泥酔王"とかつけたいんですかこのヤロー」


「それただの酔いどれオヤジじゃないですか…」





とにかく核を探すために、"人のいないかぶき町"に
戻るのが第一だと考えた新八は


視線を銀時からへと移して訊ねます





さん、引出しの時みたいに戻る場所を
教えてくれる声…でしたっけ?そういった
ヒントみたいなモノは聞こえてきませんか?」


「しばし待たれよ」





目を閉じ、呼吸を整えて少女が耳をすませると…









「いい加減にしてくださいませんか!?」





たまりかねたと言わんばかりの女の人の声が
存外近くから響き渡りました





顔を見合わせ、四人が少し離れた別の通りへと来れば


その声は、しつこいナンパに絡まれて困っている
女性が上げたものだとすぐに分かりました





けれども彼女を囲んでナンパをしているのは





そがいなコト言わんと一杯付き合うくらい
かまへんやろ?のぉネェちゃんよ〜」



よしてください!子供が帰りを待ってるんです!」


「Eじゃん一緒に楽しいことSHI・YO・U・ZE」


「オレらについてけばフランスパンも食べ放題!」


左手にサイ○ガンをつけた大柄黒人男性


ラジカセで音楽流し続けるニューヨーク風の外人二人


"寺門通親衛隊"の青い法被姿でフランスパンをかじる
グラサンをかけた大柄な金髪男性だったのです





「タカティンと金丸アル!」


「それとあの時鉄殿と共にいた外国の者達だな」


「「よりによってこのテンプレートで
こいつらチョイスかよぉぉ!?」」






体格のいい彼らに囲まれているので

ナンパされてる女の人は、よく見えません


でも男達の方はしっかり四人が見えていたらしく





あん?何こっちガン垂れてんねん兄ちゃん」


にらみ返しながら、大股で近づいてきます





「よー金丸君、久々だねぇ〜今 何やってんの?」


「見れば分かるやろ、ナンパやナンパ
それより誰やアンタ?馴れ馴れしいな」


「んだよ連れねぇな、一緒に夜の街で
股間のマグナムぶっ放しまくったナカだろ?」


「そーそーオレらの暴れん棒は凶暴無敵やってん…
ってんなワケあるかーい!冗談キツいわホンマ!


そんなやり取りをしていると、金丸の後ろで
短い悲鳴があがったので


全員の視線がそちらへと注がれました





HEY!ランナウェイ、ダメ!」


「やめて!私に乱暴するつもりですか!
エロ同人みたいに!!



「何言ってんの梗子さんんんん!?」





ツッコミながらの呼びかけに、もがいていた
梗子は思わず固まってしまいました





「旧知の仲かい?」


「いいえ知りませんわ、どちら様ですか?」





首を振って否定され、ますます混乱したように
神楽が銀時へと言います


「銀ちゃん、何かコイツら変アル」


「貧乳ネーちゃんの態度を見る限り、どーも
本気でオレらと初対面くせぇな どういうこった」







と、全員が現状を悩んで出来た沈黙を縫って


今度は甲高い奇妙な鳴き声と地響きが
とても大きく聞こえてきました





「大変だぁぁ!暴れメ○ルギアが来るぞぉぉぉ!」


「暴れメ○ルギアって何ぃぃぃ!?」





もっともな疑問に答える間もなく、悲鳴を上げて
逃げまとう人の群れに四人は押し流されてしまいます





ナンパしていた外人達や梗子も例外ではなく





ファッキン!ヤベェ逃げるぞ!!」


「触らぬ神に祟り無し、三十六計逃げるに如かず!」


むしろ一目散に逃げることを優先しています







石畳を揺らす地響きが大きくなり、民家のカゲから


怪獣映画さながらのノリでぬっと機械が現れました





「あの機械、頭部に見慣れぬ大砲があるな」


「知らねぇの?ネオアームストロングサイクロン
ジェットアームストロング砲じゃねーか」



「完成度たけぇーアルな、でも位置が悪いネ」


「だな、アレじゃチョンマ
「あんな汚いマゲがあってたまるかぁぁぁ!」





彼らのそんな会話とツッコミのやり取りの合間に


人とぶつかった衝撃で転んで足首をくじき





きゃあっ!あ、足が…!」


梗子はその場に取り残されてしまいました





怯えて逃げ出そうとする彼女ですが、痛みに
顔をしかめるばかりで立ち上がれず


へたりこんだその頭上へ機械の手が伸びて…







一直線に飛んできた木刀が、胴体に命中し
○タルギアがひるみました





そこへ銀時が機体に飛びついて木刀をつかみ


駆け戻った三人が攻撃を加えて動きを止めて
出来た隙に乗じて、追撃を加えます


そこからの怒涛の勢いにはひとたまりもなく


暴走していたメタル○アは、たちまちの内に
ひっくり返ってしまいました











…その後、駆けつけた警察官が騒ぎを収めて





スミマセンでした!まさか急にポキちゃんが
暴れ出すなんて…皆様にご迷惑おかけしました」





博士っぽいメガネの男が頭を下げて回ると


見届けていた警官の人が二丁の拳銃
クルクル回しながら、怒ったように機械を指差します





「まったく、ペットのしつけくらいしておいて下さいよ」


以後気をつけます さ、おいでポキちゃん」


メ○ルギアは軋んだ声で鳴くと、起き上がって

飼い主の後をゆっくりとついて行きました







「これ、どこにツッコめばいいんでしょう?」


「んー…とりあえずネーミングセンスじゃね?」





あ然としたままの四人へ 片足を引きずり気味に
歩み寄ってきた梗子が頭を下げます





ありがとうございます、あなた方のおかげで
助かりましたわ…ところでそろそろ暗くなりますし
家まで送っていただけると助かるのですけれど」


「こっちを初対面ヅラしてた割りには
しっかりと厚かましいアルな」


「よろしければ夕飯もごちそうしますし、ぜひ
家まで送っていただけると助かるのですけれど」


「いやだからそこまでする義理ねぇんだけど」


「そんなひどい、お願いですから
家まで送っていただけると助かるのですけれど」


「はい選ぶまで無限ループ!?」









結局 頼みを聞いてやることになって


足首の痛みをやわらげるエアサロンパスを買いに
薬局に入った梗子を待つ間


銀時達は改めてこの状況について考え始めます





「さっきの外人どもといい、ここの連中は
本の中で会ったヤツらと別モンみてぇだな」


「本来なら梗子殿は江戸におらぬしな、それに
見覚えのない者達も混じっておった」


「そういやは金丸やタカティンとは
面識無かったアルな」





ふと、新八が顔を上げて呟きます





「…ここって、僕らから読み取った記憶を元に
本の中で出来た世界なんですよね?」


「そのようだが、どうかしたのか?」


「ですからね、もしかして今のこの状態って
僕らが合流した事によって記憶が混ざり合ったんじゃ」







が、その推測を聞いているのは一人で





「にしてもババア遅いアルなー様子見てくるヨ」


「こら神楽、ナチュラルにメシ屋入ろうとすんな
オレが見てくるからガキは大人しく待ってろ」


「ガン無視!?てかアンタは
ストリップ劇場の看板目指すなぁぁぁ!!」






あとの二人は勝手にふらふら歩き回っていました







そんな彼らを見つけ、ネズミぐるみが歩み寄ります





あ!ちょうどよかった、そこの旦那方!
いい儲け話に興味ありませんか?」


それはネズミの着ぐるみに身を包んだ山崎でした





「今日はその格好で仕事か犬吠埼殿」


山崎です!って名乗る前なのになんだって
オレの事知ってる口振りなんです?まあいいけど」





いつもの対応の後、一方的に四人へと
始められた山崎の説明によると





橋田屋チェーンの六周年祝いとして、財力にモノを
言わせた宴の準備が進められていたそうですが


けれど伝統料理の一つ・特製おでんの具材となる
ガンモドキに必要なガキツバーキの肉が足りなくて


すぐさま現地へハンターが送られたのですが


あまりの凶悪さに、次々と犠牲者が出てしまい

肉を手に入れられないまま期限が迫っているのです





「なんで現在ハンター急募中なんですよ、嘉兵衛の
旦那も成功報酬弾むって言ってますし どうです?」


知るか、他当たれ他 貧乳ネーちゃんの
送迎クエスト終わってから出直してきやが」


にべも無く断った言葉が終わる半ばで





足元にいきなり穴が開いて、四人は落とされました





「申しわけ無いけど時間ないんで、詳しくは
先行してるハンターが教えてくれますから」


「拒否権はぁぁ!?てか何この脈絡のない落とし穴!」


「この世界では日常ですよ」


「一理あるな「「「ねぇぇぇよ!!」」」





KYすぎる彼女への小気味よいツッコミが
穴の底で響きました





【狩り場へ強制連行】