【 ― チャプター4 ― 】








ぐっすり眠られてよかったです!
また、泊まりに来てくださいね?」


「こちらこそ、ゴハンまで食べさせてくれて
ありがとう また来るよ」


「うん!またきてねー」





起き抜けに腹の虫を聞かれ、メシをおごられ

"初回サービス"で宿代まで安くしてもらい


ニコニコしてるウサギ親子に見送られて


俺は改めて町の散策と、情報集めへ勤しむ





…どうやら この地底世界の地理は
ホームから極寒の山地、沼地、灼熱の土地と続き


その先に新たな都である"ニューホーム"があるらしい





で、寒い土地を気に入った奴らが残って
住み着いたのがスノーフルの始まりになったとか





[やはり 我らが王はネーミングセンスが無いのかも…?]





「…王サマって、どんな人なの?」


穏やかでとっても優しいよ〜たまーにこの町に
やって来るコトもあるから、運がよければ会えるかもね」





庶民的だな この世界の王サマ







王サマがこの調子だからか、町にも町長はいない


…が問題解決の手段はあるらしい





「何か問題があれば、スケルトンの奴が
魚の女の人に伝えるんだ…なあぁぁぁんて政治的!


とまあ、クマのおっさんが嬉しげに叫んでやがったし


恐らくはデカ骨と関係がある奴として
その魚女が出てくるんだろうな、多分





ついでに あのホネ兄弟のコトを聞いてみると


町の住人には、割と受けがいいようだ





「あの二人、多分兄弟だと思うんだけど
ある日突然この町に来て…エラソーにし始めてさ」


「そうなんだ」


「ま、おかげで町がもっと盛り上がって
ヒマ潰しに困らなくなったけどね」





からからと笑う道具屋のウサ主人もそうだが


代わり映えのない、地下の生活に不満を持ちつつ
自由を夢見て過ごしているモンスターども


…少なくとも 町の連中にとって


ホネ兄弟のコントと自由への希望こそが
生きる糧になっているらしい







【*アナタは 町の端にある一軒の家へ辿り着いた】





隣にある小さい小屋も含め、鍵がかかっていて
ノックしても声をかけても返事は無し


側にある二つの郵便受けの内


片方はダイレクトメールがわんさか詰まってたが
もう片方は空だったので


"パピルス"と書かれた文字が見て取れた





「ここがあの二人の家なんだ…」





チビ骨くらいいるかと思っていたが、当てが外れたか





…まあ この先でデカ骨が待ってるだろうから
立ち寄る必要はねぇワケだが


ちょいと隠しアイテムでもないかと裏手に回って


【*アナタは 施錠された裏口を見つけた】





鍵は…開いてない、よね」





さて、コイツはフレーバーなのか仕込みのあるギミックか


後者ならフラグ立てれば中へ入れそうだが


…カギを持ってそうなのはどっちだろうな?





まぁこの扉は クリア直前で余裕があれば
戻ってきて中が見れるかチャレンジするとしよう









【*アナタは 町の端から伸びる道を進んでいく
…辺りが白い霧に包まれた】





霧の向こうにぼんやりと 背の高い人影が見える





「ニンゲン、このフクザツな気持ちについて
語ってもいいか…?」





ああ、やっぱりデカ骨か





「それは…たとえるならそう、自分と同じように
パスタを愛する者に出会ったよろこび…」


言うほど好きってワケでもないんだが





「自分と同じように パズルが得意な者へのあこがれ…
クールで頭もいいヤツといっしょにいたいという願い

これこそ…キサマが今、抱いている気持ちだなっ!


「ゴメンそうでもない」


「そうか…キサマの気持ちはもっとフクザツなのだなっ
オレさまにはさっぱり分からんがっ!





ストレートにそう返されると反応に困るぜ





【*背を向けたままパピルスは 自身の偉大さを誇り
孤独であるアナタを憐れんでいる】





だが案ずるな!
オレさまがキサマをひとりぼっちにはしない!」






むしろ友達欲しいのはお前だろ、というか
その性格で友達がロクにいねぇ方がおかしいだろ





この、イダイなるパピルスさまがキサマの
いや ダメだ…なに言ってるんだオレさまはっ!」





これは説得すれば 戦わずに済むか?





「僕は君と戦う気はないよ?むしろ
「オレさまはキサマとトモダチになれないのだっ!」


ダメだとしても最後まで言わせろよ





【*パピルスが アナタと向き合った】





「キサマはニンゲン!
オレさまが捕まえなければならんっ!」



「どうして?」





訊ねれば、ちっとだけデカ骨の影がたじろぐ





長年のユメをかなえるためだっ!
強くて!人気者で!有名人!それがこのパピルスさま!」






かかっていた霧が少しばかり晴れて





「じきに…ロイヤル・ガードの新メンバーになる男だっ!」





片手をこっちにかざした、コミックのヒーローが
よくやるポーズで決めるデカ骨が見えた







【*パピルスに 行く手を塞がれた!】





「じゃあ行くぞ!ニャハハハハ!」





笑い声と共に繰り出された骨弾幕は…

ぶっちゃけ拍子抜けするぐらいユルい


捕まえるための囮かと考えてもいたが


デカ骨は笑って弾幕飛ばす以外は そこから全く
動こうとせず骨をカタつかせてるばかり





「ねぇ…やる気ある?」


あるぞっ!キサマもしかしてオレさまを
本気にさせようと気を使っているのか…?」


「どっちかというと戦いをやめて一緒に遊びたいかな
お互いのコト ほとんど知らないし」


えっ!オレさまを口説いてるのっ?」





あながち間違いではねぇので訂正はしない





ついにキサマの本当の気持ちを明かしたなっ!

だっだがオレさまの基準はすっごく高いぞっ!」


「パピルスの基準って?」


「ええと…スパゲティ作れたりっ!」





あーそいつは無理だな レトルト温めるぐらいだ





「他のモノなら作れるよ」


「なんだとっ!?キサマはオレさまみたいに
とってもスゴいヤツなのかっ」






そりゃあ稀代の天才ハッカーですから

時短用のマルウェアぐらいなら楽勝ですわー





「オレさまの基準を軽々こえるなんて…というコトはっ
キサマとデートしないといけない!?


「え」


「で、ででででもキサマ捕まえなきゃいけないしっ
とにかく!デートは後だっ!!


【*パピルスは 目に見えて動揺している





友達目当てで攻めるつもりだったが予想外の展開だ


…てーか、コイツはデートの意味分かってんだろうか





ひとまず棒キャンディーを咥えながら
これからのルートについて思案を巡らせる







人間相手ならメシかヒマが潰せそうなトコ
連れてくってのが定番だが


生憎 ここは地底で、誘う相手はスケルトン


まだ弾幕の速度ユルい今の内にモーションと
リサーチかけて町のメシ屋でオゴる方面で試すか





「なんで当たらないのっ!」


「だって、当たったら痛いもん」


そうだな!でもキサマは戦うつもりもないんだな?」


「うん」


そうか!ならオレさま今から切り札を使うねっ!」





目つきがちっとばかし勇ましくなったデカ骨が


青い色をした骨の弾幕を 避ける隙間がねぇぐらい
みっちりと出しまくってきた





こんだけ出せるなら最初から出せよ


まあ、出されちまってたら詰むけどな





「動かなければ大丈夫だよね?これで君のターンは」





【*アナタは 身体が急に重くなるのを感じた】


っ!?何だコレ、いきなり全身が重く…







【*通り過ぎた骨の一つが 実体を取り戻して
背後からアナタへと迫ってくる


アナタは 間一髪でその骨を飛び越えた





むむっ!よくよけたなニンゲン!」


「危なかった…これが、君の切り札?」


「そうともっ!そうだともっ!!青ざめたな?
これがオレさまの"アオこうげき"だっ!





えっへん!とでも言いたげに胸を張るデカ骨


ここまでアホ丸出しだと清々しいわマジで





でもって間髪入れず 真っ白な骨弾幕が飛んでくる


急いで口の中のキャンディーを噛み砕いて
棒を吐き出し、その場から横っ飛びに地面を蹴って回避





あっ!ゴミをポイ捨てしちゃいけないんだぞっ!」


うるせぇ戦ってる最中にんなモン気にしてられるか





しかしこれは本腰入れねぇとヤバいな





「君の強さはよーく分かったから、次は君が
何を好きかとか楽しい話がしたいな?」


ニャハッ!デートのことなんて考えてないぞっ!」





【*パピルスは アナタとのデートと
目の前でのバトルに気を取られている】





こりゃ会話は無理そうだ


てゆか、なんか色々取り出して側頭部に塗り始めたぞ





「ねぇ それ何?」


「キサマがまっすぐ向き合ってくるなら、オレさまの方が
もっとまっすぐだと証明するのだ!ニャーハッハッハ!!





【*どうやら トマトソースやパウダーなどを
塗りたくっているようだ…】





めかしこんでるつもりか?


弾幕攻撃をやめた方がニンゲン受けするんだがね





段々と速度も数も増して来てやがるし

重力不可かかったまま耐久レースとかカンベンしてくれ





「オレさまにスペシャルこうげきをさせる気だなっ?」


「そんなつもりはないよ」





まだ隠し玉があんのか…せめて体力切れとか
狙わねぇと回避だけじゃキッツイんだが





【*アナタが 様子を伺うためにパピルスへと
視線を集中すると…そこには横に走る"裂け目"がある】





"裂け目"がデカ骨の首のあたりに見えた直後







"あ、ああ こんなことになるなんて…


だが そ…それでも!オレさまはキサマを信じるぞ!

キサマはいいヤツになれるのだっ!"





首が取れたデカ骨が フリスクへ向けて塵になるまで
笑っている"フラッシュバック"もオマケでついてきやがった






「マ、ジかよっ!





すんででジャンプが間に合って


上下に伸び縮みする骨弾幕の列が股下を通り過ぎる


攻撃じゃあねぇのにアレは反則だろクソが!







…いや、待て


逆に考えれば"フラッシュバック"の発動条件を満たした

さっきのは そういうことじゃあねぇのか?





だとしたら…あの"裂け目"は 確実に俺が干渉できる?





「やるな!だがっ!
その位置ならばオレさまのこうげきをよけられまい!

さあ、大人しく捕まるのだ!!






勝ち誇ったツラでデカ骨が出したデカめの骨数本が

絶妙な間隔を持って 着地した俺へと迫りくる





【*アナタは 迫る弾幕から
一秒たりとも目を逸らさずに意識を凝らす】





…よし見えた


タイミングも申し分ねぇ





直撃寸前の骨の一つに、開いた裂け目へ手を伸ばす





【*アナタは それに触れて
あるはずのないキーを叩くように指を動かす





原理なんざ知ったこっちゃない


けれど、俺にとっちゃコードをいじるのは
目をつぶってでも出来るぐらいに当たり前のコトだった





「こうして…こうか!?


指には確かに エンターを叩いた手ごたえが伝わった





【*指先と入力されたコードに 弾幕が変化する…


アナタの左腕に 混ざるようにして一本の骨がくっついた





やっべ、ちょっと出現位置ミスった…痛だだだ!





【*1の ダメージを受けた!

1の ダメージを受けた!
1の ダメージを…】






あわてて、さっきの要領で裂け目っつーかスキマ?の
間へ指を這わせてコードいじくって骨を消す


が HPは限界まで削られちまってその場に倒れる







「キサマ、ウデにくっついてたホネをどーやって消した!?」





【*パピルスが 目を大きく見開いて近づいてくる】





マズい、とっ捕まってガードとやらに引き渡されちまう前に
どうにかしてこの場を切り抜けねぇと





「こっ…これはねー、手品!


「手品!?」


「そう手品!僕ちょっとだけ手品が使えるの!」





…とっさのこととはいえ何だよ手品って


こんなウソ、今時ガキだって騙され


「そうなのか!すごいなニンゲン!!」


騙された!ガキよりバカで助かった!!


いや助かったけど…それでいいのかお前?





「手品がある限り僕は負けないの、だから
捕まえるのは一旦あきらめた方がいいよ?」


「しかしキサマ オレさまのこうげきで
もう動くコトができないようだなっ!」





悔しいがその見立ては大正解だぜ


ミスって余計なダメージ食らったしな…って、おぉ?





「キサマはこれからプリズンゾーンに閉じこめてやる!

兄ちゃんが言うトコロの…「うちのガレージ」だ!
ニャハハハハハ!!





【*パピルスは アナタを両腕で抱きあげて走り
一件の家へと入った】







ガレージがどーのとか言っていたが


俺が寝転がされたのは、一軒家の中央にある
そこそこ大画面のTVが拝めそうな古っちいソファだ





「ここ、どこ?」


オレさまと兄ちゃんの家!ガレージに閉じこめる前に
ケガ手当てしないとイタいだろ?」





ゲームとはいえ、捕まえるつもりだった人間を
自宅で手当てするってどんだけお人好しなんだよ





普通なら俺が殺されて身ぐるみはがされても


油断してるトコ俺が返り討ちして殺しても文句言えねぇ


人間がコイツらにとって敵なら尚更だ





まあ、こっちはタダで回復出来て得したし

説教ってガラじゃあねぇからされるままにしておく





TVやら室内のスキマの確認ついでで遠隔操作が
出来るか試すが…手ごたえもなくコードに変化は無し


今のトコ 直に触るしか干渉不可っぽいな





「アンダインが来るまで、大人しくしてるんだぞー
そしたらキサマは都に」


「それなんだけどさ 閉じこめられる前に
僕の手品をもう一個見せてあげたいんだ」


えっ!?キサマの手品が見れるのっ!!」





やたら嬉しげなツラしちゃってまあ





目を凝らせばデカ骨の胸の辺りにもスキマがぱっくり


OH、やったら情報量多い


製作した奴コイツどんだけ気に入ってんだ





「それじゃあ10秒目を閉じててね」





さてさて手鳴らしついでにちょっくらこのお人好しの
デカ骨くんのデータ いじらせてもらおうかね


なぁに勝手に一定時間ダンスする程度にしとくさ


期待に思わずにやけつつ うねらせた指を







【*アナタが パピルスのコードへ触れる直前
サンズがドアを開けて帰って来た】





「ようパピルス、初ニンゲンハントおめでとさん」


あ!兄ちゃん!おかえりなさいっ!

そうなのだっ!オレさまもこれでロイヤル・ガードに
なるコトが出来るんだっ!」


「ところで、なにやってんだ?」


「ケガしてるから手当てしてるのっ!
イダイなるパピルスさまはホリョにも情けをかけるのだ!





ありがてぇなー まあこうして休憩してる時点で
恐らくHPは回復してるんじゃあねぇかと思うんだが





「この間ホータイ切らしたって言ってなかったか?」


おっ!そうだったそうだった!
オレさまちょっと外出るから、またアトでな!ニンゲン!」





【*パピルスは 家の外へと飛び出して行った】





ちっ、せっかくのチャンスが…まあいい
試すのは適当に油断してるヤツでも







急にチビ骨がニヤケ面をぐっと近づけて来た





「なぁお前、オイラの弟になにしようとしてた?」





思いのほかドスを含んだ問いかけに


言葉を詰まらせそうになりながらも
俺は、わざとらしく首を傾げてみせる





「何のこと?」


「とぼけてもムダだぜ?
あのとき お前がなにをしたのか忘れたとは言わせねぇ」


コイツ…前のデータをハッキリ覚えてるのか





図星かクソ人間、どうしてってツラしてるぜ?」


「ハッタリだよね?こわいジョーク言わないでよサン」


「オイラ観察眼には自信があんだ、骨だから
目はねぇハズなんだがな…ともあれ」





【*サンズは アナタの肩へ手を乗せる】


「また弟を殺そうってなら容赦はナシだ」











目を開ければ、いつの間にか見慣れない
廊下に立たされていた


やっぱり瞬間移動…ってか俺ごと連れてったってのか?







どことなく見覚えのある、柱が並ぶだだっ広い廊下


けれど 窓の外は塗りつぶされたみてぇに暗く
俺の前にも後ろにも…出入り口らしきものは見えない





「懐かしいだろう?あの時はしくじっちまったが
今度こそお前さんみたいな子供には」





重くのしかかるような空気を肌で感じた直後


少し離れて対峙するチビ骨の片目が、青い炎に包まれる





「地獄の業火にやかれてもらうぜ」












[     LV1   ■■■■


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