【 ― チャプター3 ― 】








【*犬小屋と 雪を見つめるレッサードッグ
そして牛のような獣人モンスターがいる道だ】





犬の割合高いな地下世界


けれど俺がどれだけ近づいても犬ナイトは
テメェの前にある 雪の塊にお熱のようで無反応


ビフテキくん曰く
「芸術家気取りだけど 脳ミソが豆粒並」らしい





ちなみに次に進んだエリアに


デカ骨が作ったやたら器用でマッチョな自己像

隣にチビ骨のモノらしき名前入りの雪の土台があった





「芸術的って言うなら、ここの構造もか」







…ホネ兄弟の作品があるのは
氷と組み合わさった仕掛けパズルで落下した先





坂で繋がってるからパズルへ戻れるのは分かるが


南側はともかく北側へ滑っても作品エリアに
着地できるって所は まさにゲームならではだな





「マンドクセ まじオワコン」


「今度こそボクを見ろー!」





クラゲもどきを連れてきた小人もどきを
華麗にスルーして、仕掛けを解き通路を開設


そのまま滑る床の勢いに任せて直進すると


崖になった通路上にぽつぽつあるのは

雪で出来た犬小屋サイズの丸いオブジェと
本物の犬小屋一つ





「雪玉かなにかか?…お、コインめっけ」





ありがたくコインを拾い


細長くなった一本道と 向こう側にある橋へ







【*アナタが 進行方向の雪モフへ近づくと
そこから一頭の犬の頭が飛び出してきた】





「なんだなんだ、犬の王国でもあんのかここは」





茶化すように言った俺の言葉に犬はワン、と吠えて





雪面から 比重のおかしい胴体を飛び出させた





【*グレータードッグだ】





あの犬ナイトよりやたらと図体がデカい


…が、犬は犬だろ





「そーれ、とってこーい」


【*アナタは グレータードッグの少し後ろへ
持っていた棒きれを投げた】





よっし これで棒切れに目が言ってる隙に向こうへ





「…って動き早くねぇ!?」


待て待て待て待てヤバい!つーか近い!


「Fuck!」





【*アナタはじゃれて のしかかろうとする
グレータードッグから身をかわす】





うーわヤベェ、棒切れくわえて見つめてやがる


分かりやすく尻尾振ってるし…こりゃ





「一旦、戦略的撤退ってか」





目ぇ輝かせて全力疾走してくるデカ犬と

ついでで飛んでくる、顔つきの槍もどき弾幕を避けて


さっきの滑る通路の分かれ道へ急いで左折





【*アナタが 角を曲がって岩壁に隠れると
グレータードッグはアナタを見失ったようだ…】





こりゃちっとばかし時間置かねぇとマズいな…







「よう」


ビックリさせんなクソが、つかさっきまで
いなかったのにどっから現れやがったチビ骨





「道に迷ったのか?」


「えっとね…おっきなヨロイ着た犬がいて」


「ああ、アイツは単にお前さんと
遊んでもらいたいだけだぜ?」





ハハハそりゃいい、出来たら変わってくれねぇか?





「あんな大きな身体でじゃれられたら潰れちゃうよ」





そう答えてやるとチビ骨はわざとらしく
ウィンクして 両手を広げたジェスチャー





「まあコーフンしてる犬の相手はホネが折れるよな?」


【*どこからともなく ツクテーンとSEが鳴った】





「…そうだね」


「おいおい、そっちは何もないぜ?」





うるせぇよ くだらねぇジョークを聞くより
テキトーにうろつく方を選びてぇんだよ俺は









ニヤニヤしてるチビ骨をその場に置き去りにして





細長い通路を渡ってると、雲もねぇのに雪がちらつい…





「って、雪じゃあねぇなコレ」





【*アナタが 粉雪に似た弾幕を避けながら
辺りを見回すと、すぐ近くにギフトロットがいた】





お、目が合った


あの角についた派手なツリーを壁に叩き付けながら
こっち睨んでる愉快なコメットの仕業か





「ねぇどうして攻撃してくるの?」


うるさいクソガキめ!お前もワシの角に
おかしな飾りをつけるんだろ!だまされんぞ!!」





なーるほど、コメット君はクリスマスデコレーションが
お気に召さないと…





「それ、取ってあげるよ」





プレゼントボックスの弾幕を飛ばしてきやがるが


青いのだけ見極めて止まりつつ、攻撃だと
思われねぇように慎重に飾りを外す





ついでにまた見えた"裂け目"も触れないよう気を付ける





「…少しは頭が軽くなったワイ」





【*ギフトロットは 満足して立ち去って行った


…アナタは少し先の洞窟へ入った】





キノコやら何やらが光源になってんのか

辺りはやたらと薄青く光ってて、歩くのに困らねぇ





洞窟の中はさほど広くは無く


どん詰まりには、遺跡で見たようなマーク
刻まれた扉が一つ





「…これにもか」







意識しだすごとに見える頻度が増えた"裂け目"


そこから覗いてんのは、間違いなく


プログラミング言語の羅列―ソースコード





まだよく見辛いが内容はそう難しくはねぇ





「けど、こんなモン見えてどうなるってんだ」





【*アナタが 触れる直前で"裂け目"は消えた】


OH…いじれるかどうか試したかったってのに





扉にはノブもヘコみもない、押そうが
スライドさせようがビクともしねぇ







諦めて帰ろうとした俺の耳に


少しずつ 何かの羽ばたく音が聞こえてきた





【*アナタの 目の前にグライドが舞い降りた!】


「オレさまマジ イカす!」





尾っぽが鳥だが全体のフォルムはクジラっぽいよーな
トンチキな見た目してんなぁオイ





ヤバカッケラシイだろオレ?…えっ、どこ行くんだ
見ろよこの筋肉…もしもーし」





悪いがお前さんに付き合ってるヒマは…っと


「サイコーなオレさまは ここにいるぞぉぉ!」





先回りする形でデケェ十字飛ばすんじゃあねぇ
出口が通れな…うん?





【*アナタが スレスレで避けた十字の弾幕に
"裂け目"があったのが見えた】





モンスターの攻撃でも見えるのか


ここまでチラチラ引っ張ってくるぐれぇなら
データとして干渉できる可能性はあるか?





「…ひとまず試すなら、別の機会だな」


どうした?ブーブー言って…ブタか?」


いや悪いがクールな宙返りキメてるお前さんに
言ったんじゃあねぇから、独り言だから





【*アナタは 洞窟から出て、来た道を戻った】







別れた場所と同じとこにチビ骨はいた





待ってたの?それとも、僕のコトをつけてる?」


「そりゃ逆だろ?それにしてもこんなトコまで
ワザワザ来るなんてアンタ 身体動かすの好きなんだな」





いやいや、俺は普段からインドア派で通してるんだがね?





ニヤケ面を眺めても特に何もないようだし

仮に"裂け目"を試すなら面積の広そうなデカ犬をどうにか


忘れボーンだぜ?棒だけに」





【*サンズが アナタへ棒切れを差し出した】





「ありがとう、取り返してくれたんだね」


「てゆうか この先に落ちてたんだ」





遊び飽きて帰ったのなデカ犬、教えてくれてありがとうよ





【*アナタは 棒切れをサンズから受け取った】











改めてデカ犬がいた地点まで戻り、そっから
クソ長い橋を渡っていくと対岸にはお馴染みホネ兄弟


…アイツ 瞬間移動とか出来るんじゃあねぇか?





「いいか、ニンゲン!
これがこれまでで一番キケンなサイゴのゲームだぞ!」



今までで一番威勢のいい声でデカ骨が言う





「見ろ!「恐怖の死刑シッコウ一本バシ」!」





【*パピルスの言葉を合図に 橋の両側から
どこからか吊り下げられて浮かぶ色々なモノが出て来た】





トゲ鉄球・炎の筒・槍・大砲…に犬ってお前lol





「オレさまが一言合図すればたちまち動きだすのだ!」


「なんだかこわそうだね」


そうともっ!これを生きて突破することは
ほとんどフカノウだっ!カクゴはいいか!」






…うん、そーいう前フリはフラグっつーんだぞ?

知ってたか?いやまぁ知らないだろうなコイツは





「い、いくぞ!…ホントにやっちゃうからな!







【*アナタがいくら待っても 何も起きなかった】





「…で?なんだよこの間は 動かないぜ?」


「シッケイな!い、今から起動するトコロなのだ!」





後ろ向いて小声で話してるけど 丸聞こえなんだよな





もーちょい待ってみるが吊られた犬以外動きは無し





「…まだ?動いてないように見えるんだが」


「故障してるとか?」


「いやちがうぞっ、オレさまが思うにこのゲームは!
なんというか…あっという間に決着がつきすぎる!





【*パピルスは キリリとした面持ちで力説する】





「オレさまはホコリ高きスケルトンだからな!
パズルだって全部公平なんだっ!そうだろニンゲン!



「そうだね とても楽しくて分かりやすかったよ」


「だよなっ!と言うわけでこのやり方は安直すぎる!
下がってよーし!





【*パピルスの声を合図に 吊り下げられたモノが
全てどこかへと引っ込んで消えた】





お疲れさーん…これも地下の技術とか魔法で
何とかなってんのかね?ゲームの世界観から考えるに


と、背を向けて一息ついたデカ骨が振り返る





「なにを見てるんだ?これもまた
イダイなるパピルスさまの大勝利なのだっ!」






そして定番の笑い声を上げつつ(いや最後の方は
疑問形だったか?)去って行った


元気なモンだ、ヒヒッ





「次は何をしてくれるんだろう」


「さあな?オイラにはさっぱりだが
青いコウゲキには気を付けろとしか言えないな」


「やっぱりパピルスと戦うことになるのかな?」


「あー…どうやらそうなりそうだな
でも「たたかわない」方が楽だぜ?きっと」





願わくばそうなって欲しいもんだがな


まあ、ああいうヤツだし少なくとも
トリエルママよりはやりやすいだろ色々と





「なあ、もう一つだけアドバイスしていいか?」


「なにかな?サンズ」


「もしお前さんが このままの調子で進むなら…」







気楽に構えてた、次の瞬間


一瞬だけだが チビ骨のツラ構えが…変わった





「きっと酷い目に遭うだろう」





実際のデカさはフリスクより一回りデカいぐらいだが
余計に大きさが増して見えた





俺はこの手のやり取りを 知っている





「…忠告ありがとう」


「気にすんなよ、スノーフルはイイ町だぜ?
ゆっくり楽しんでってくれ」





なんてことねぇようにニヤニヤしているチビ骨と
軽く手を振って別れるが


久々の感覚に 内心はちっとばかし冷汗





下手な回答は命取りってか?

さすがはモンスター、おっかねぇこって









【*アナタは スノーフルの町へ足を踏み入れ
色々な場所を見て回った】





民家に立ち並んで入口に道具屋と、併設した宿屋





「もし疲れたら、宿で一休みしてくといいよ
この店のすぐ隣でさ アタシの姉さんがやってんだ」





トリエルママとはまた違う肝の据わり方してそうな
ウサギの女主人が店を切り盛り





「アメは売り物に置いてある?」


キャンディーかい?まあ、本来ならウチで
扱っちゃいないんだけどさ」





腕を組みつつ チラリと俺を見下ろすウサ主人は





「アンタは子供みたいだからねぇ、特別だよ?」


案外と話が分かる女だった





ちなみに品物は買えても 売却は受付けてないらしい





「使用済みの包帯だのなんだの引き取ってたら
ウチは商売あがったりだよ、そんなに金に困ってんなら
クラウドファウンディングでも試したらどうだい?」


ごもっとも







並んだ民家は戸締りがしっかりしていて


広場のデカいツリーと、根元に置かれたプレゼント類を
中心に街全体がクリスマスデコレーションされている





「ツノに飾りを付けられたモンスターをなぐさめるために
プレゼントを贈ってたのが、習慣化したんだ」


「ああ、あのコメット君のコトだね?」


お!お前もあったコトあるのか!」





クリスマスの概念っぽいモンと習慣があるのも

根元に集まってた連中と
ボーダー着たガキんちょに確認済み





北に延びた通路は川に繋がってて





「ふん!」





切りだした氷の塊をブン投げるオオカミ男横目に
端の方まで歩いていくが 特に何もなし





飯屋兼酒場のグリルビーズは、中をチラッと
覗いたら犬どもがたむろしてたからパス


いや別に犬嫌いじゃあねぇんだが…何となくだ





【*アナタは 「としょんか」と記された
図書館へと足を踏み入れた】





情報収集の定番スポットとして外れはなく


ゲーム内での世界に関しての重要な設定が
余すことなく書かれていた







モンスターの身体は魔力で、タマシイは
愛情だの希望だの そう言ったモンで形作られている



ニンゲンと違ってんのはその二点だけだが


弾幕が撃てない代わりに、ニンゲンは
モンスターよりも遥かに強いって事になっている





[魔力で構成されてるモンスター達の身体は
タマシイと連動し 非常に結びつきが強い]


「"このため 敵意がなく戦いを望まぬ
モンスターは防御力が低下する"…なるほど」





あの"フラッシュバック"からして、このガキ

一度 油断しきったトリエルママに殴りかかったのか





とにかく向こうに戦う意思がねぇ状態での実力行使は
ガキだろうが事故が起こる…ってのは再認識出来たな





あと目を引いたのが


何故か本の間に挟まってた、学生のレポート
内容は…「モンスターの葬儀に関して」





[モンスターは寿命でポックリくたばると
身体が塵になる


葬式では、生前その故人が好きだったもの
大事にしてた何かの上へその塵を撒く]





自動で灰になるってのは処理が楽でいいな





それにしても、海に遺灰を撒けっていう
ロマンチストはごく稀にいやがるが


ゲームの世界とはいえ習慣にするたぁ面白いモンだ







「あ、そろそろ暗くなってきたわね」


「アナタも早くお帰りなさい?」





館内でくつろいでたモンスターどもに言われて
時計を見りゃ、たしかに夕方と言える時間


大して腹も減ってないし 少し寝ておくか





【*アナタは 図書館を出て宿屋へ泊まった】









隣の部屋のいびきが妙なハーモニー奏でてやがったが


気にせずゴロゴロしてたら、いつの間にか
夢の中へと潜り込んでたようで







…フリスクと 元の姿でご対面





「スノーフルまで辿り着いたんだね」


「まーな、愉快なホネ兄弟のおかげで道中は
退屈の二文字と無縁だったぜ」





おどけと本音を混ぜ合わせてそう言ってやると
フリスクは 何とも言えねぇツラで笑う





「あの二人はね、とても仲がいい兄弟なんだ」


だろうな





 この先に進みたいなら
サンズに気を付けてね?


「あのチビ骨にか?そりゃまたどうして」





油断ならねぇ性格ってのは確かだろうが


少なくとも、デカ骨を傷つける気がねぇ
俺としちゃ警戒しなくてもいい相手だと考えてんだが





「殺してしまったけど…一番、強かったから」







【*フリスクのその言葉へ聞き返そうとする前に


アナタは 目を覚ました】





済まなさそうなフリスクのツラと


真逆の物騒なセリフが、イヤにリフレインする





「…警告だけは、受け取っとくかね」





俺に出来る事は この先への情報を集めて


先に待ち受けてるだろうデカ骨を無力化して
クリアの為に進む、それだけだ












[     LV1   ■■■■


    ホテル・スノーテルの客室  ]