「お前ら…何してるんだ?」





それがの部屋に行った俺の第一声。





「あ、全ちゃん」


「ん?全蔵殿か お邪魔している」


一方は笑顔、もう一方は無表情でこちらを向く。


まあ顔を見る分にはいつもと何ら変わりは
ないのだが、問題は首から下。





揃って白いシャツに紺のブレザー
そして、チェックのスカートに黒のハイ足袋


但しスカートと履いてる足袋の長さは揃わず


ミニスカ+膝下までのと

膝上三センチ+ニーハイってなってるけど


…ようは、どっちも女子高生の制服





まあ片方は年齢的にドンピシャだし

は童顔だからそれなりに似合っているんだが


……軽く溜息を追加し、俺は改めて二人に問う。





「……お前ら、マジで何してんの?」


「何って……」


「見ての通りだが」





いやいやいや見てわからないから聞いてんのに

"わかって当然"みたいな顔してんのコイツら?!











〜「袖縫い合うも多分は縁」〜











そんな俺の葛藤などは無視して、二人は
手元の作業に熱中する





主に忙しく手を動かしてるのはだが

一体 何作ってんだか…







仕方ない、無謀だが自力で状況を理解する外ないか





…と思った所で不意に が口を開く。





さんに"縫い物を教えてくれ"って頼まれたの
で、今教えてたトコ」


縫い物ぉ?お前、どういう風の吹き回し……」


「無論、兄上の為!」


予想と一語一句違わない返答に、だろうな、と
半ば諦め混じりに少し深く嘆息。







詳しくから話を聞きだした所





どうやら猿飛に「花嫁修行ぐらいしておきなさい」
とか、何とか言われたらしく


裁縫が得意なの所に来たようだ。





それはまあ構わねぇんだけどさ…


縫い物とコイツらの服装って全然関係ない……よな?







その辺を問いただしてみれば





「教わるならそれなりの格好をしろ、と
殿に言われたのだ」


サラリ、と言ってのけるコイツの横で
わざとらしく笑い出す





あーコレ明らかに


『テキトーな理由を付けて
コスプレさせちゃいました☆』
と言わんばかりだ。





「いいのかそれで…つか お前
それ冬服だろ?よくそんなんで暑くねぇな」


「心頭滅却すれば火もまた涼しと教わった」


「お前が涼しくても見てるこっちは暑苦しいんだよ」


「まあいいじゃん全ちゃん、部屋の中涼しいし」





手を止めぬまま楽しげに遮ってから


部屋の主は側の無表情へ顔を向けて言う





「でもやっぱり残念だなぁ…さんなら
メイドもナースも巫女さんもいけそうなのに」


「すまぬな殿…気持ちは嬉しいが、あまり
肌を晒すのは好まぬ、それに私など兄上に遠く及」


「家の中なんだし夏なんだから思い切って
露出しちゃいなよ!肌白いしお人形さん
みたいなのにもったいないじゃん!!」



余計な一言無視して力説しだしたよこの娘?!







そんなに呆れる一方で、


服装が違うせいか 妙に愛らしく見える
コイツを意識している事に気付く。





…これに知れたら確実に尻キックだな


心中でそうぼやきながら喉元で苦笑し、
思考と話を切り替える。





「で、腕前の方はどうなんだ?」


「うーん、それなんだけどね……」





眉を寄せて言葉に詰まった

ちらり、アイツに視線を向ける。





釣られて見ればそこには絆創膏だらけの両手
なぜか針を持つ方の手まで―と


その周囲に無残に転がるボロ布







…それが哀しいまでに切実に

コイツの腕前を 物語っていた。





オイィィ!お前そのケガといいこのボロ布といい
……どうやったらこんなになるの?!」


「失敬な ボロ布ではない、雑巾だ」


「いやもうボロ布でしかないよね!?
可哀想なズタボロの布切れの残骸だよね!!?」



あははさんにはこういうの
ちょーっと向いてないみたいだねー」





これはもう向いてないというより、コイツに
裁縫道具を持たせてはいけないレベルだろ


近い将来確実に大惨事が起こる


そりゃもう 火を見るよりも明らかだ。







ひたりと緑眼に照準を合わせて静かに宣告する





「いいか、お前もう金輪際縫い物に
手ェ出すな興味持つな関わるな頼むからマジで」



「しかし、それでは兄う……」


「それなら縫い物が出来ない分
を頑張れば良いじゃねェか」


「「なるほど」」





俺が言った所でおとなしく聞く相手ではないが

代替案を挙げたら、簡単に納得してくれた。


こういう時に限っては コイツが
単純で良かったと心から思う。





しかし、……
なんでお前まで納得してるんだ?







「そうと分かれば、こうしてはおられぬ」





とか言いながらアイツは突然
手にしていた針やら何やらを横に退けて


ニーハイに手をかけると足を上げて脱ぎ始め―





「え……うおっ?!


「わっ、ちょっ、見ちゃダメェェ!!





捲れ上がるスカートから現れる、存外白い
太ももに息を呑むとほぼ同時、


の蹴りが俺の尻へと叩き込まれ


日に日に凶悪さを増すその尻キックの威力に

叫ぶ事も出来ず 俺はその場に崩れ落ちた。





「……ちょっ待て、何で俺が蹴られてんの?
悪いのは俺じゃなくてアイツじゃ…」


「すまぬが足袋はどこに置けばよいだろうか」


「あー、洗い場に放り込んどいていいから」


「人の話を聞けェェ!!」


悶えたままの俺の抗議は見事なまでにスルーされ


別の場所を借りてさくっと着替え終えた
ダ作務衣娘は淡々とした無表情のまま





「次の修行に入らねばならぬ故、失礼致す」


「頑張ってねーさん」





とっとと帰宅していきやがった。







「ったくあのバカ娘は…もうちょっと
周囲に気をつけろっての」


「まあそういう所もさんらしくて
いいと思うけど…って反省してるの全ちゃん


じ、と睨まれ俺は我知らずたじろぐ





こういう時のに逆らうのは経験上
よくないと知っているので





「わーったよ、俺が悪かったって
しっかり反省しておりますこの通り」


半ばヤケ気味に言いつつ大人しく頭を下げる。







するとは俺の顔を覗きこみ





「…じゃあ、態度で示して見せて?」


ニコリと笑うと ずっと縫っていた何かを
押し付けるようにして差し出した





「ってコレお前…」


一体何を作ってんのかと思いきや…





呆れ混じりに広げた服装と相手とを見やる





「それ来たら全ちゃんとお揃いになるじゃない」


そう…手ずから縫われていたのは黒い詰襟


勿論俺の寸法にぴったり合っているし

細かく丁寧な仕事は 手に取っただけでも分かる





「アイツに縫い物教える片手間で縫ったの?
…本当お前器用すぎだろ」


「まーね、個人的には執事とか院長とか
神主さんも試してみたかったんだけど

また今度でいいよね?





オイオイオイ の次は俺か?


俺がお前の着せ替え人形になんのか?







物凄く問い詰めたい気分で一杯だったが





"早く着てみて"と迫るの嬉しそうな顔に負け


痛いコスプレに袖を通したのだった。








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感想


狐狗狸:再び九夜太様からのメール共演夢を
今度は一部加筆修正の上 掲載させていただきました

……色々本当にスイマセンんんんんん(土下座)


メールでお送りした共演伊東夢(あちら設定)に
いただいた感想に付け足した管理人の妄言が発祥です


なので時間軸的にはその話の前ってことになります

…と言っても内輪過ぎですよねスイマセン


裁縫得意かつ蹴りまで逞しい恋人のさん
(忍者と違い一般人)と


不器用所か大惨事レベルのウチの子のやり取りが
微笑ましいやらかわいいやらで悶えました


そして被害を受ける服部さんに幸あれ(笑)


九夜太様 再び素敵な共演夢ありがとうございました〜!