僕は今、保健室で暇を持て余している。


放課後だというのにベッドを使用している生徒がいる為、
保健室の戸締りをする事が出来ないからだ。





その生徒というのは保健室の常連である


今日は昼休みの終わり頃に運ばれてきて、

それからずっと死んだように眠り続けている。







そろそろ起きてもらえないものか
大袈裟に溜息を吐いた時、


コンコンとノック音がして扉が開いた。





「失礼します」


「……、さん?」











〜「白衣は賢人の特権」〜











入って来たのは保健委員のさん。


気配りのできる優しい子で、校内で唯一
一緒にいて煩わしさを感じない相手だ。





さん、まだ目が覚めません?」


「見ての通りだ。
もしかして、彼女の荷物を持って来てくれたのか?」


「はい、お兄さんに頼まれまして」


「兄上?!」





ガタガタ、ドタンと大きな音がしたと思えば、

仕切りのカーテンが勢いよく開く。


どうやら"兄"というキーワードで目を覚ましたらしい。





殿、兄上に何を頼まれたのだ?!」


「え、あの……」


「そんなに詰め寄られたら
答えられるものも答えられないだろう」







さんに詰め寄るさんをたしなめると、

さんは「失礼した」と頭を下げる。


そして下げた頭を上げた途端、額から一筋の血が。





先程ベッドから転落した際に
どこかにぶつけて切ってしまったのだろう。


まったく世話の焼ける……





治療するからそこに座れ、と指示をするが
さんの耳には入ってないようだ。


先に兄の事を話しておかないと
治療させてもらえそうにない。







さん、彼女は君の荷物を
保健室に持って行くようにお兄さんに頼まれたそうだ」


「そうであったか」


「あ、あと、夕飯の買い物をするから先に帰るって……
僕は大丈夫だからゆっくり帰っておいで、って言ってましたよ」


「何、兄上が一人で買い物に?!





ようやくおとなしくなったかと思えば、今度は
保健室から飛び出していきそうになるさん。


そんな彼女をさんが慌てて押さえる。





さん、ちゃんと治療しないとダメです!」


「しかし、兄上を一人にする訳には……」


「今から行ったらすれ違いになっちゃうかもしれませんし、
そんな血だらけの顔で行ったらお兄さんびっくりしちゃいますよ?」







さんの説得で、さんは渋々ながらも
治療に応じる気になってくれたようだ。





「保険医殿、治療はどのくらいかかるのだ?」


「もう血も止まっているようだし、消毒して
薬を塗るだけで良さそうだな」


「良かったですね、さん」





焦るさんとは対照的に

嬉しそうに微笑むさん。





それに釣られて顔を綻ばせると、


さんの視線が
僕に向けられていると気付く。





何だ、僕の顔に何か付いているのか?」


「いや、何も。ただ……」


「ただ?」


「無愛想な保険医殿もそのような穏やかな顔が
できるのだな、と思って見ていた」





彼女は相変わらずの無表情で淡々とそう言った。







釣られて顔を綻ばせたのはほんの一瞬、

それを見られていたとは……





動揺を悟られぬよう眼鏡を上げ、一言。


「君にだけは無愛想云々言われたくない」


「そうか、それは失礼した」





すんなり返された謝罪の言葉に、やはり
この子を相手にすると調子が狂うと改めて感じる。







ほら、終わったぞ。
何もしなければ明日には傷が塞がるはずだ」


「かたじけない。では、私はこれで失礼する!





治療が終わった事を告げると、さんは
僕とさんに一礼し保健室を飛び出して行った。





「なんだか忙しない人ですね」





開け放しとなった扉を見て呆然とする桜さん。





彼女がああなるのは
兄が絡んでいる時だけのような気もするが、

説明するのも面倒なので「そうだな」と返しておいた。








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感想


狐狗狸:携帯の方でお世話になってた銀魂サイトの
九夜太様から、メールで共演いただきました!!

まさかの捏造設定で書いていただけるなんて…!


別クラスにも関わらずキチンと頼まれごとを
聞いてくださったさんの優しさといい


そんな彼女に癒される伊東先生の気の緩みといい


無自覚に相手の調子を狂わせるブラコン
まっしぐらなといい…


もう本当、保健室にお邪魔したくなりましたよ!
(落ち着け変態管理人)


アレ過ぎるウチの子の特性もしっかり抑えて
いただけてるし 何ていうか…ご馳走様です(をぃ)


九夜太様 本当に素敵な共演夢ありがとうございました〜!