闘神符を取り出した。

 無言のまま、は闘神符を握り締め続けて
いるだけで――……


無言が続いたと同時、

目の前にある岩には闘神符を投げつけた。


 瞬間、青い光が、闘神符から放たれ、
包み込まれたかのように――”封”と言う文字が浮かぶ。

そしてそのまま静かに岩は包み込まれた。



 ここは天流の鬼門。

 封印が解けかけていたために、封印を施したのであろう。

 どのぐらいの時間が掛かるかは分からない

――…だが、やれるだけはやってみよう。

そうしてこうなったのだ。



『…如何したの、?病気かなんか?』

「なわけあるか……ちょっと考え事してただけ。
今日の夕飯如何しようかなーなんて…」

『え、つ、作るの……』

 の料理は最高にまずいことを知っている

の式神、白龍のハクエイが
青ざめた表情を見せながらその場に立つ姿が目撃されている。


 白龍族は伝説とも謳われている式神

 それを扱えるものは、霊力の高い者しか扱えず――……


の血筋は天流宗家。
天流闘神士でもあり、最高の霊力の持つ闘神巫女でもある。


 彼女の本当の名――シュリ

 千年前、地流の襲撃を受け、千年後の未来へと
弟と共に飛ばされた一人でもある。



 そんな彼女なのだが、今は受験シーズン――……

ある意味で軽く、機嫌が悪い所だった。


『あの…、お願いだから料理はやめて…
(下手すると、死人が出るから…)

「お前今、下手すると死人が出るからとでも思ったか?」

『え!?ま、まさか……(何で分かったんだ!?)』

 こう言うときだけ、はすげーと
実感してしまうハクエイの姿があったと言う。








  【 修行より勉強が大事! 】







「あ、お帰りなさい。どうだった?」

「居たの……別に、どうもしないけど…」

 ――同じ天流闘神士でもあり、の友人。

家に帰ってみてリクが迎えてくれるだろうと
考えていただったが、

迎えてきたのはのほうだった。


 如何して彼女がここにいるのか
見当がつかないは首をかしげている、すると

帰ってきたと唐突にの両手を握り締めて答えた。


「修行しよう!(キラキラ)」

「突然だなオイ!如何したんだ
如何してそんなに目を輝かせてる!!?」



「だって、今日はヤクモさんが修行してくれるって
話になってるでしょう?だから、一緒に修行しようよ!
ね、良いでしょう!!」

「……あまり気が乗らない…」


 最近、どうしてか修行の相手をしてくれるのは
天流最強と謳われている闘神士、吉川ヤクモ。

友人として、以前伏魔殿で会っているが、
正直 今会う気力にはなれない。


 それに今日、結構勉強しておかないと、
三日後には小テストがある。


 にとって、とても修行を始めるという気には
なれないのだが――…


隣では、がものすごい目をしつつ、
顔をキラキラと輝かせていることが分かる。

 思わず断りきれなくなる状態


――…さて、ここから如何するべきかと考えつつ
は額を押さえる


 そんな事を全く知らずにの両手を握り締めている



「行こう!ね、ね!ねええ!!」

「――……さて、洗濯物取り込まなくちゃ…」

!!ね、聞いてるの!!」


『――……何気に無視してないか、の事…
おい、そう思うだろハクエイ?』

『そりゃねー……三日後には数学の小テストが
あるみたいだから…じゅけんせーって奴も大変みたいだね。』

『ああ、成程な…』



 つまり、相手にしている場合ではないと言う事――
今は、修行なんかできる状態ではないと言う事なのであろう。


 それを唯一理解できたの式神――
納得したかのように答えていた


 しかしはそんな事知らずと何度も何度も
に向かって叫んでいたときだった、



ハクエイとの目線に飛び込んできたのは、
闘神符の文字。

 嫌な予感を覚えた二人は思わず一歩下がる。


 そして、闘神符の襖から出てきたのは一人の青年――…

が何度も叫んでいた男、
吉川ヤクモの姿があったのだ。


『ヤクモクン!?な、何で!?如何したの!?』

「やぁハクエイ、元気そうだな…は?」

さんなら今と一緒に向こうに居るよ…
如何したんだヤクモさん?』

「実はこれ…」

 突然現れたヤクモが、手に持っているのは大きな荷物――…

一体これは何なのだろうかと、とハクエイが
ジッと見つめていると、

ヤクモは相変わらずの笑みを浮かばせ、答える。


「リセが ”様のところに行くならば、
差し入れも持って行ってほしい…”
って顔赤くして渡したから持ってきたんだ。

リセは今、太白神社の方で色々あったから
忙しいみたいだしな。」



 水無月リセ

――だが、これは、本当の名前かどうかも分からない。


リセはに仕えていた天流宗家の一族の者でもあり、
の事は絶対服従を誓っている男でもある。

 今はヤクモと共に、神流探しに行っているらしいが

どうやら太白神社での仕事が出来たらしく、
今そっちに居るらしい。

 本来ならば、自分での所に行きたいところなのだが、
いけない状態なのだ。

 そこで、ヤクモに頼まれたのはこの差し入れ。



「ちょうど今日、修行する予定だっただろ?
だったら持っていってほしいってな……

俺は運び屋でも何でもないんだが…」


『それはわざわざご丁寧にどうも…
けど、 今日修行しないと思うよ?』

「…如何して?」

さんは三日後小テスト控えているらしいぞ。
さっき、ハクエイから聞いたんだ。』

「ふーん……」


 は勉強の事になると、かなり性格が変わると言う事は

ハクエイ、
そしてリクやマサオミ、ソーマなどなど良く知っている。


 その時の彼女の形相を思い出すだけで、
寒気を覚える式神二人。

 正に 知らない方が良いのかもしれない――……

唯一それを見ていないヤクモが
羨ましく見えた式神二人であった。


 そんな言葉を聞いたヤクモは黙りながら、
首をかしげ、答える。

「…って以外に勉強熱心なんだな…」

『もう受験生だからね。』

『良い高校に入るために勉強しているみたいだぞ。
確か…この前のてすとってやつ、
良い点数取ったんだったよな、ハクエイ?』

『うん。その時から機嫌が良くなってくれたから、良かったよ。』


 それまでの日々は思い出すほど恐かった――…

途中、伏魔殿で飛ばされたこともあることを
思い出したハクエイは寒気を感じ取りながら、震えていた。


 青ざめているハクエイに対し、ヤクモがまだ黙った時――…



が行った場所から
何かが倒れるような音が聞こえてきたのだ。

 驚いた式神二人とヤクモは急いでその場に行くと……



「修行しようよ
いつ貴女が神流に狙われるか
分からないんだよ!!」


今はそれどころじゃないって言ってるだろ!!
聞き分けのない奴だなおまえは!!
私はこれから勉強しなきゃいけないんだ!!


それとも……何か文句でもあるか…?


 ボ キ ッ 



 次の瞬間、持っていたシャープペンシルを
簡単に折ったの姿を、思わず目撃してしまったヤクモ。


そう、既には性格が変わっている状態だ。



 だが、は負けない

 ヤクモが絡んで居るんだ

 と居れば、ヤクモとと三人で修行が出来るからだ


「諦めないもん…
絶対にヤクモ様と修行するんだもん!!

「何気に項目変わってるよね!
私の名前が出なくなったぞ!!」



 ぎゃーぎゃーと言っているの姿を
見ているヤクモと、そしてハクエイの三人は
その場で言葉を閉ざしているのであった。

 と言うより、話についていけない状態

――…このまま、如何すれば良いのだろうか?

思わず汗が零れ落ちた その時だった。


 がふいに三人の方に視線を向けて…表情が変わる。

 ハクエイとは良いが、何故、ヤクモが
ウチに来ているのだろうか?

「……ヤクモ?」

「え!!?や、ヤクモ様!!?」

「……話に出られなかったからね。
久しぶり、。そしてちゃん。」

「ああ……ごめん。今日修行の件なんだけど…」

「大丈夫。三日後小テストなんだろう?
だったら終わってからやろうな。」


 その言葉に、思わず
ヤクモに抱きつきそうになってしまった

――…あの丼野郎とは違い、ヤクモは話が分かる男だ。



 はそのまま礼をすると、急いで
勉強するために、洗濯物を入れ始める。

それを見たはため息を吐きながら答えた。


「…はぁ……あ、お、お久しぶりですヤクモさん!」

「やあ、ちゃん。何か取り込み中にすまないな
それと、修行の件なんだけど、テストが
終わってからで良いかな?」

「はい!もうそれはヤクモさんが言うならば!!」

『『さっきの勢いは如何したんだよ!!?』』

 手のひら返した変わりようのに対し、
とハクエイは突っ込みを入れていた






 が勉強している中

 何気にまだ居たヤクモに対し、
ハクエイとはヤクモに近づいて、答える。

『ヤクモクン、本当にテストが終わってからで良いの?
何だかやりたそうな顔してるよ?』


「そうなんだけど…テストも大事だろ?
それに……

小テストが終わったら徹底的に
と修行すればいいんだし。



『……ハクエイ、俺、ヤクモさんの背後に
黒いオーラが見えた…』

『…ボクも見えたよ…』


 ヤクモの黒い影を見つめながら、青ざめている式神二人であった。




 そんな事とは露知らず、は一生懸命勉強し、
はそんな彼女に身の回りを一生懸命したと言う。






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感想

狐狗狸:七野了様 再び共演夢書いていただき
誠にありがとうございます〜!!

さんとが口ゲンカしてるうぅ〜!!
何気にヤクモが腹黒い!シャープペンへし折るさん最高!


ちらほらと覗くシリアスな部分も含めて 大満足な一話でした〜


陰陽をジャンルから外されているのに、書いていただけて
本当に嬉しいです…!

とても楽しく読ませていただきました〜ありがとうございます!!


でも、ちょっとだけ 気になってしまったので
またもや文章や行間に 手を加えてます、スイマセン…


ヤッパリ許せない!とかご意見ございましたら
ご遠慮なくおっしゃって下さい……(平伏)


素敵小説ありがとうございました!