「何?九兵衛さんとこのお父さんが?」


「はい、どうしてもあなた方に
お会いしたいとの事で・・・ご同行願えますか?





家に来るなり東城さんはそう言った。


用件は今しがた話した通り、柳生家現当主である
『柳生輿矩』さんが俺を呼びつけているようだ。





たしか輿矩さんはあらゆるセレブと
精通しているとか・・・・





まさかとは思うが・・・・







眉をしかめつつ とにかくも付き添い
二人で柳生家の屋敷に向かった。







「いや〜、よく来てくれた君にさん。」





しばし客室で待たされ やっと輿矩さんが来る。


相変わらずちっさいな・・・・・・・・・





「ええ、こちらこそ。」


「単刀直入に聞くが・・・俺達に何の用だ?





訪ねた問いは 妙な笑顔で返される





「君達も人が悪いなぁ・・・この新聞で知ったのだが
そこいらのセレブとは比べ物にならんそうじゃないか」





え?何言ってるんだこの人?新聞?







事情が分からぬこちらを置き去りに輿矩さんは
自慢げにその新聞を出してきて





「「な!?」」





それを見た瞬間 俺達は驚愕した。







アメリカの新聞・・・しかもご丁寧に
『ビッグ・ボス』授与の会見風景の写真付きだ







「九兵衛から色々聞いてはいたのだが
まさかここまで著名な軍人だったなんてね〜。」





オイオイなんて事だよ・・・・
何でアメリカの新聞がここに流れ着いたんだ・・・


呆然とするこちらを残し、輿矩さんは続ける





「つまりはトップレベルのセレブ!そこで
唐突ではあるが縁もあるゆえ、今後君達との
友好的な関係を築きたいと思い相談を・・・」





言葉半ばに九兵衛さんが部屋へと駆け込んできた





「父上、またそんな勝手な事を。」


「何を言うか!我が柳生家の名を
護るためには仕方のない事だ!!」






偉そうなこと言ってるけど、身震いしながら
ペルシャ猫撫でてるし・・・


・・・アレルギーなら無理するなよな。
それで最悪死ぬことだってあるんだから





「とにかく、君達とは仲良くしていこうと
思うからこれからよろしく。」





握手を交わす為、この人は手を伸ばしてきた。











何事も日頃の心がけ…で済んだら苦労しない











「ちょっと待て、勝手に話を進めるな
誰もそんな事承諾してないぞ?」


柳生家を護る為協力してください
それに、名門柳生家に従えばそれなりに」


「ふざけるな、俺はセレブにもなりたくないし
アンタらの傘下にも入らん。」


「いやいやそこを何とか」


「・・・父上、これ以上さん達に
迷惑をかけないでもらいたい。」


「だからパパと呼べと言っただろ!!
もしくはダディでも構わん!!」






それ言ったからって、別にセレブでも
何でもないんだがなぁ・・・・・・・・







あ、いいこと思いついた。







「いいぜ輿矩さん、その話呑もう。」


「ちょっと!」


おお!了承してくれるか!」





身を乗り出す輿矩さんを手で制し、笑ってこう言う





「その代わりと言ってはなんだが・・・・一度
アンタのとこの柳生四天王と手合わせを願いたい。」


「何!?うちの柳生四天王と!?」


「ああ、悪い話ではないだろ?
俺が負けたらアンタに従う。勝てばこの話はナシで
九兵衛さんとはいつも通り付き合わせてもらう。」





途端に輿矩さんは頭を抱えて悩み始める。







正直言って、どちらに転んでも俺は構わない







もし断ったなら自動的にこの話はご破算になるし


勝負出来るのなら・・・一度名門の剣術
この目で見て身につけたい。







この先、高杉や万斉 伊東や似蔵のような
剣豪に出会えば銃器はおろかCQCでも対処出来ない


桂さんにも「ただ棒を振りまわしているようではダメだ。
もっと剣を学べ。」と注意されたし





今のうちにしっかりした剣術を身につけておけば


今後の、剣豪との戦いが有利になる。





それなのに・・・・







輿矩さんはどんだけプライドがデカイのか
中々首を縦に振ってくれない。







「柳生家は・・・いやでも・・・ああでも・・・・」





ったくじれったい。





「自信無さそうだな・・・何か?柳生四天王は
俺みたいな即席剣術でも勝てるような相手なのか?」


「な、何だと!?」


「まぁそれもそうか 負ければセレブの関係はなし
いや、それ所か恥をかく。だから決められない
そうじゃないのか?」





煽り立てると相手は顔を真っ赤にして立ち上がる。





「柳生家が君のようなド素人に負けるはずないわ!」


「父上!!」


パパと呼べと何度言わせる!!
とにかく、剣術使いでもない者に勝負なぞ」


「輿矩 たまにはいいんじゃないのか?」





言葉を遮るように『柳生敏木斉』が入って来た。





しかし、ホント一族揃って小さいな。


九兵衛さんもいつかああなるのか・・・・・





「裏柳生が押し入った時も苦戦したじゃろ
修行の一環と思えば四天王も納得すると思うがの。」


「しかし・・・!」


「やっぱりダメか?でもこれって勝負を挑んだ相手に
背を向けて逃げる事になるわけだよな・・・・」


「「「その言葉、聞き捨てならんな!」」」







耳聡く聞きつけた四天王の南戸・西野・北大路が
荒々しい足音と共に部屋へと入り込む。







「俺達が弱いだ・・・・?」


「それを聞いて引き下がるほど俺は幼稚ではない!」


「その減らず口を二度と叩けなくしてやろう・・・!」


どうやら四天王達はやる気だぜ?どうするんだ?」





答えたのは いつの間にか現れた東城さん





「仕方ありませんね、そこまで言われて
引き下がるわけには行きません。
・・・いいでしょう、その勝負受けて立ちましょう。


「そうこなくっちゃ。」


「ちょっといいの!?相手は剣術の達人よ!
CQCならともかく剣で勝てるわけが」


「だからこそだ、剣豪と戦いその突破口を見出す。」


「おやおや、そう簡単にはいきませんよ
では庭の方で試合のルール説明をするので来てください。」







流れから見て輿矩さんも承諾せざるを得なくなり
四天王達との勝負が始まった。









まず始めに、屋敷の庭に出て試合のルールを聞く事に





「この皿を体の各々の場所に縛りつけ、その皿が
割られた者は失格となります。」


「つまり行動の可不可は関係なく
ただ皿を割ればいいわけか。」







使用する武器についての取り決めやある程度の詳細を
分かりやすく説明してもらったが





どうやら、銀さん達に聞いた話と同じルールのようだ







「説明は以上です・・・では我々は敷地内に散ります。
あくまで基本は1対1です、誰かが加勢するような事は
ありませんのでご安心を。」


「そりゃどうも。」







互いに礼をした直後、四天王は敷地内へ散らばった。







「ホントに勝てるの?」


「大丈夫さ、皿は何処に付けてもいいんだよな?
だったら・・・・・」





ある箇所へ皿をつけた所で、話を聞いて
駆けつけたのか銀さん達の姿が見えた。





さん!
柳生四天王と戦うって本当なんですか!?」


「ああ、一度達人の剣術を拝んでおきたくてな。」


、いくらオメェが強くても
剣術の素人があいつらに勝つなんて・・・」


「やってみなきゃ分からんさ
それに、俺が負けるとは思ってないだろ?」





言うと、銀さんはフッ・・・と笑う。





「それもそうか、オメェが柳生100%に
負けるトコなんて想像つかねーわ。
まぁ心配しないで見てやろうぜ新八、神楽。」


「そうですね。」


負けんなヨ!」


「ああ、分かってる。」


・・・あまり無茶しないでね。」


「もちろんさ。ちゃんと無事帰ってくるよ」


「いちゃこいてねーでさっさとイケヨ
いい加減へどが出るんだよコノヤロー。


「神楽ちゃんなんてこと言うの!!」







何はともあれ銀さん達をその場に残し
広めの敷地を当て所なく歩き始める







すると、そこに現れたのは南戸だった。





「まずはこの南戸粋が相手するぜ。所で兄ちゃん
お互いツラへの攻撃はナシにしないか?」


「何でだ?」


「お互い泣く女がいるだろ?」





ニヤリと笑いかけるこいつへ、俺も笑い返す





「折角の好意を踏みにじるようで悪いが・・・


は手が吹き飛んでようが足がもげてようが
ダルマになろうが、それを受け止めるだけの
覚悟は出来てる。


顔がボコボコになった位で泣く女じゃない。」







やや驚いたように目を丸くし、木刀を抜く南戸







「ほぉ・・・結構強情なんだな。」


「ああ、羨ましいだろ?」





こちらもいつもの刀を抜いて構える。







剣術は素人ってのは本当らしいな・・・
俺から見ても、構えからなっちゃいないな。
それなら西野まで行けただけでもいい方だぜ。」


「そいつぁどうも・・・そういえばルールじゃ
銃火器以外なら何でもやっていいんだったよな?」


「ああ、それがどうした?」





その一言が終わらない内に、間髪入れずに
南戸に向かって突っ込む


木刀を刀でふら付かせた隙に持ち手を掴んで


捻り上げて木刀から手を離させ、地面に屈服させる。





な!?なんつう強さだ・・・・・・」


「よく覚えておけ
これがアメリカの武術、『CQC』だ。」





首の後ろに隠してあった皿を、柄底で叩いて割った。







「まず一人・・・・」


「俺だからさっきのでも勝てたんだぞ・・・・
北大路と東城さんには通用しないぜ?」


「そうか・・・・再三ご忠告どうも。」





倒れた南戸をそのままに一歩踏み出そうとしたその時





突然 上から岩が降ってきた







咄嗟に身をかわし、南戸も間一髪避けれたらしく
岩はただ地面にめり込んだだけだった。







「あぶな!?いきなり岩なんて投げるなよ西野!!」





岩の軌道の先に 強面の西野が佇んでいる





「悪いな、小汚い男性器が落ちていたものかと。」


「いい加減そのネタから離れろ!!」





あー・・・確かにコイツならそう言われても
仕方がないのか、うん







しかしなんつう馬鹿力だ西野・・・


これだけ巨大な岩を放るなんて芸当、神楽クラスの
力がないと出来ないぞ普通。







とやら!今度はこの西野掴が相手しよう!」





自信たっぷりに言いながら、奴は
プリンを頬張っている。





「俺は南戸のようにはいかんぞ。
全く素人が俺達に勝とうなど幼稚な・・・」


「プリン頬張る奴のセリフじゃないだろ!!」


「うるさい!観念しろこのド素人がぁぁぁぁ!!」





距離を詰め、西野が連続で突きを繰り出してくる







先程の力に加え 相当の素早さの乗った突きだ







必死に刀で防いでいるも一向に
反撃へ転じる事が出来ない・・・・・





これが柳生の剣術、隙を作らず敵を倒す業


少々甘く見ていたようだ・・・・・・







「ハハハハハハハ!
どうした!手も足も出ないとはこの事か!!」






容赦のない木刀の乱舞は確かに手強い







だが良く見たら・・・・・・・





「足ががら空きだ!!」





瞬時にしゃがみ、西野に足払いをかけ転ばせた。





ぬお!?何!?」





体格が災いし 奴は起き上がるのに
手間取っているようだ







「終わりだな!」





反撃する間を与えず額にあった皿を割る。







「なんと・・・・この俺がこうもあっさり・・・」


「だがこれも、実際は剣で倒さなかった・・・
果たしてどうなる事か・・・・・」


「フン、しかしその程度では北大路には敵うまい。
主の得意とする体術では北大路には通用せん。」


「やってみなくちゃ分からん・・・
とは言いたい所だが・・・・」





ここからは用心しておこうか。







CQCと即席剣法で勝てるかどうか・・・・
今の一戦でやや雲行きが怪しいからな









屈んだままの西野をそのままにして屋敷内に入り





次々に襖を開けた先に見えたのは







「む、来たか」





呑気に食事をしている北大路の姿だ。







「あ、すいません。お食事中に・・・・・・
ってんな時に何してんだアンタは!!


「腹が減っては戦が出来ぬ。お前も喰うか?」


「敵の料理なんて食えるか!!」


「大丈夫だ、毒など入ってはおらん。」


「それ聞いたら余計不安だっつーの!!」





とは言うものの、しきりに進めてくるので





まあ天下の柳生が勝負中に、相手を
毒で倒すなんて真似はしないだろう・・・と思い


少し戸惑いながらも俺は北大路と
会食する羽目に・・・・・・







確か近藤さんの話によりゃ、こいつは土方さんを
追い詰めたほどの腕前の持ち主


油断は禁物だな・・・・・・・・・








――――――――――――――――――――――――
後書き(退助様サイド)


退助「さあ始めてみました裏柳生編。」


銀時「てか有り得ないだろ、何で無理やり
柳生100%とやり合わせてんだコノヤロー。」


退助「いやこれある意味修行編だよ?
江戸には長くいるけど剣術はからっきしじゃない?
だからここで修行させてみよっかな〜なんて。」


神楽「私とやらせろヨ!リベンジしちゃるね!
てーかばっかりズルいアル!!」


新八「神楽ちゃん!!これさんの
修行なんだから邪魔しちゃダメだって!!」



九兵衛「それにしても剣を使わず南戸と西野を
倒すとは・・・・やはりさんはすごいな。」


退助「そりゃまぁCQC使わせれば
刀なんて意味がなくなるんだから・・・・」


東城「では、私達と戦う必要はないのでは?」


退助「それは今後の展開を考えての事なのでご了承を。」