「ある所に大変キレイ好きな男と不潔な男がいた・・・」





前回の続きを引き継ぎ、長谷川は一つの話を始めた





「キレイ好きな男はいつも便座に座って用を足した。
小便の飛沫が床に飛ばないようにだ 一方
不潔な男はどれだけ飛沫が飛ぼうが立って用を足した。


ごく些細な違いだ。だがこんな小さな違いが何十年も
積み重なればどうなると思う?」





三人は、ただ黙って聞き役に徹する。





「キレイ好きな男の厠は相変わらずキレイだったが
その足は老いていく度に細く痩せていった


逆に不潔な男の足は老いてもなお太くたくましかった。」





映画の予告宣伝等で引っ張りダコのせいか
文章であっても説明に説得力がある・・・気がする。





誰が予想した?
たったそれだけの違いがまさか最終的に・・・・・
関が原の戦いの勝敗を決めることになるなんて」







タバコの煙を吐き出し、長谷川が力一杯宣言する







「そう!その男たちこそ徳川家康と石田三成だっ」


「嘘をつけぇぇぇぇぇぇ!!」





すかさず新八のツッコミが入った。





「何でお前が家康と三成の小便の仕方知ってんだよ!!
何で蹴りで戦争の勝敗決めてんだよ!!」


「関が原って延長戦にもつれこんで
最終的にPK戦になったらしいよ。」

何でだぁぁ!!
つーかPKでもなんでもねーよこんなの!!」







咳き込んで、長谷川は結論を口にする







「要するに家康は不潔の振りをして ひそかに
足を鍛えるために立って小便をしていたんだな。


日々あざむきコツコツと地道に修行を
積み重ねていていたんだよ。恐るべき男だろ?


「普通だろ!!修行でも何でもねーよこんなの!!
地味すぎるだろ!!」


「余談だがね、家康にこの修行方法を進言したのは
天海という僧と言われてるんだが」


「どんな進言してんだよ!!」





もっともな言い分を差し挟まれても
長谷川の弁舌は終わらない





「家康に寵愛され江戸幕府の影の支配者と
呼ばれた天海の正体、噂じゃ本能寺の変を起こし
秀吉に討ち取られたあの・・・


明智光秀のインストラクターだったらしい。」





手を合わせた僧のイメージの、顔の所だけ
ごついインストラクターのそれになる。





またお前かぃぃぃ!聞いたことねーよそんな噂!!
どんだけ引っ張れば気が済むんだよ!!
呪いでも掛けられてんのかインストラクターに!!」







次から次へとツッコミを繰り出し、流石に
新八が疲れてきた頃に





「まぁまぁ、そう声を荒ら立てるな。」





玄関から 絵を片手に携えた桂が現れた。











面倒な話で煙に巻かれ、子供は大人に
インストラクトされる












「所詮一般人(パンピー)の戯言だ。
侍の行く道は侍にしか照らせん。」


桂さん!?街を・・・
マダオが焼き尽くした街を雨で浄化している!」





廃墟に雨が降る絵を掲げたまま 桂は言う。





「リーダー、、それに新八君、俺が君達に
侍のなんたるかを教えよう。


かつて俺と銀時は同じ学舎で文武を修めた。


我等が恩師の教えそのまま君らに伝授すれば
必ずや我らのような真の侍になれるはず。」







本格的なモノを漂わせるその言葉に
思わず息を呑む新八。







「銀さん達がかつてやった修行を僕らが・・・」


「本当にいいのか?桂殿?」


「うむ。」


オイ、ヅラよせ。
あの修行は危険過ぎる・・・こいつらにはまだ」


「やれるさ、彼等なら。
彼等はただ強くなりたいのとはワケが違う。
・・・銀時、お前の隣で戦いたいのさ。





あの銀時が止めるくらいの修行・・・


これなら強くなれると確信し 三人が
桂へ教えを請うべく立ち上がった。







「うむ、いい眼だ。」







強く頷き 桂が早速三人へ


何処かで見覚えのある亀の甲羅を 取り出し渡した。







「ハイ、じゃますこの亀の甲羅を背負ってください。
重いだろうが外してはいかんぞ。」





キョトンと甲羅を見つめる新八や神楽と裏腹に
は真剣な眼差しで甲羅を装着していた。







「よし、じゃあ君達にはその重りを
背負ったままあるものを探してもらう。」





続いて甲羅を背負う三人へ、同じように甲羅を
背負った桂が出したのは『桂』と書かれた石。







「この『桂』と書いた石ころ、これを
今から外に投げる・・・桂と書いてある以外は
何の変哲もないこの石ころを拾ってくるんだ。


石は一つしかない。
拾ってこれなかった方は今日の晩飯は抜きだ。


ちなみにその辺の石ころに桂と書いて
持ってきても無駄だぞ。字を見ればすぐ分かるからな
アッハッハッハッハ。」







やる気満々のを無視し


新八と神楽は、白い眼で桂を見ていた。





「よし!じゃあいく
「「うおらぁぁぁぁぁ!!」」ぞふぅぅぅぅ!!」





二人のカカト落としが桂の頭上にきまった。







「・・・何だよこれ!何なんだよこの修行!!
完全にどっかで見たことあるぞ!!」


「何!?何処かでパクられていたか!?」


「オメーがパクったんだろうが!!」


「おかしいな・・・・確かに師匠がこうして・・・」


「何だオメーは!オメーみてーのが武天老子の
弟子とだとでも言い張るつもりか!」





桂だけでなく、も真顔で呟く。





「武天老子・・・・・
さぞかし強いご老人なのだろうな・・・」


「いい加減気付けよ だからピーマン言われるアル」









彼らのその様子を見かねたのか







「おぃヅラ。」





立ち上がり、背後からつかつかと近寄った銀時が
桂を思い切り引っ叩いた。





「全然違う、馬鹿なのお前。」


「あれ?こんなんじゃなかったっけ?」


「違げーよ、お前みたいな馬鹿に
ドラゴンボーズ全巻貸したのが間違いだった。」





安心したように新八が息をつく





「そうでしょ!びっくりさせないで下さいよ・・・
銀さん、こんなパチもんの修行で
強くなったのかと思っちゃいましたよ。」


「オイオイ勘弁してくれよぉ・・・
全然違うよこんなんじゃねーっつーの。」







一旦別室に引っ込んだ銀時達が





「まず甲羅じゃなくてこのインストラクターを
一人ずつ背負ってだな」





屈強そうなインストラクターを四人ほど連れて戻ってきた。







オイイイィィィィィ!!
いい加減にしろよてめーらぁぁぁぁ!!



もうそれはいいって言ってんだろーが!!
つーかどっから出てきたんだよこいつら!!」







根本的なツッコミまる無視で、銀時は彼らの内
一人の額にマジックで「銀」と書き入れる







「今からこの「銀」と書いたインストラクターを外に投げる。」


「何で投げるのもインストラクターなんだよ!!」


「拾って来れなかった方のインストラクターは晩飯抜きだ。」


何でだぁぁぁ!!
インストラクター何も悪いことしてねーだろぉぉ!!」


「ちなみにその辺のインストラクターを
拾ってきて「銀」と書いても無駄だからな。」


「その辺にインストラクター落ちてねーよ!!」


「字を見れば分かる。」


「インストラクターの顔で分かれぇぇぇぇ!!!」









彼らの不毛なやり取りに耐え切れなくなったのか





「いい加減にしないかお前ら!!」





叫びが響き、部屋の隅にいままで気付かれず
あったダンボールからが出てきた。







うわ!?びっくりした・・・・
ていうかさんなんつー所にいたんですか!?」





銀魂世界でも意外とダンボールステルス
有効な事を新八の言葉が証明していた


・・・それはともかくとして





「話は聞かせてもらった。全くさっきから聞いてりゃ
お絵かきだ小便だ武天老子だインストラクターだ・・・


三人のやる気を損ねるような事、するなよな・・・」







言いつつどこからか出した絵は 再建設され
奇跡的に甦った街の風景だった。







さんが・・・・浄化した街を再生した!?」


「ていうかいたならさっさと出てくればよかったネ」


「いや・・・出るタイミングを何度か逃してな・・・
それより!今時侍の修行なぞ長続きしない!
俺が兵士として色々教えてやろう!」







力強いその姿は まさに三人が求めていたノリである。







「おお!頼りにしてるぞ殿!」


「やっぱり今の時代は侍なんて古いアル!!」


「こうなったら兵士の人の意見を聞いて
強くなってやります!!」







満足げな顔で笑うの説明が始まる





「よし・・・じゃあまず、強くなるにはどうするべきか
・・・・ゴールを作る?生活に溶け込ませてコツコツする?
亀の甲羅を背負う?


違う、そんなもので強くはなれはしない。
なれても肉体的に強くなるだけだ。


真の強さを得るためには・・・・
まず、自分に忠を尽くす事だ!





「「「自分に忠を尽くす・・・!」」」







聞きなれないフレーズをオウム返しする彼らへ
は殊更強く頷いた。







そうだ!
かつて俺の師匠・・・ビッグ・ママは言っていた


『国に忠を尽くすか、それとも個人に忠を尽くすか。


国か恩師か、任務か思想か、組織への誓いか、人への情か。


どれを選んでも強くなる所か生き残れもしない。
一番大事なのは自分を信じ 自分を愛せる事


自らへ忠を尽くせる者が強くなれる。』


・・・俺は、そう教えられた。」





話を聞く三人の目つきは真剣そのもの





「つまり自分に忠を誓い、それに応えるように
する事で精神的に強くなる事が出来る。


力だけ付けても精神面が弱かったら何の意味もない。
まずは自分を愛する事をしよう 肉体面はそれからだ。」







熱意に説得力にカリスマ性・・・三拍子揃った
彼の演説に反対する者など誰一人いない。







「「「はい!!」」」


「いい返事だ・・・・だがそうは言っても始めの内は
中々難しいかもしれんな・・・・・・
少しだけ、俺のやった修行を見せてあげようか。」







無言で首を縦に振られ が取り出したのは





ライフルに取り付けるカスタムタイプの
グレネードランチャーだ。







「・・・さん、何をやるんです?」


「え〜、ここに「蛇」と書かれたグレネードがある。
これを今から発射する。」







まさかの発言に三人の表情が音を立てて凍りついた







「アンタもかぃぃぃぃ!!
何でアンタまでそれ形式なんだよ!!」



「ちなみにその辺のグレネードを拾って
「蛇」と書いても字で分かるから無駄だぞ。」


「インストラクターより確率低いっつの!!
そもそも蛇って書けねーし!!」






ツッコミ入れつつスゴい顔で寄ってくる新八達を
やや押され気味になりながら宥める





「落ち着けみんな、これは本当にあった修行なんだよ。


簡単に言うと『基地内に爆弾が仕掛けられた。
今すぐこれを見つけて解除、又は基地外に捨てろ。』
と言うシロモンだ・・・


実際は飛ばすモンじゃないんだが、今回は特別だ。」







どうにか納得したらしく 三人は元の位置に戻った







「ったく紛らわしいネ


「ああ・・・・やっと納得の行く修行が・・・・」


「うぬ、殿もてっきり武天老子と言う老人に
教わっているのかと思ったぞ?」


いやビッグ・ママだ。何回か教えたハズだが・・・
まあいい、じゃあいくぞ。」







いつの間にかライフルにグレネードを取り付け


が窓からそれを発射し・・・





約十秒後、花火のように音を立てて
拾うはずのグレネードが空中で爆発した。








新八と神楽との白けた視線が 滝のような
汗を流すへと突き刺さる。







「・・・・・・・・・よし!
解除に「「向かうかぁぁぁぁぁ!!」」むごぉ!!」


今爆発しましたよね!!
花火みたいに間隔置いて音しましたよね!!!」


「・・・・おかしいな・・・・爆発機構は
外してあるはずだったんだが・・・・」


「ていうかいつ爆発するか分かんないものを
取りに行かせようとしたのかアンタは!!」



「分かった!!
今度は安全を考慮してスタン・グレネードを・・・」


「どっちにしても同じでしょうがぁぁぁ!!!」







ついに堪忍袋の緒が切れて、三人は一斉に
背負ったままだった亀の甲羅を床に叩きつけた。





「もうやってらんねぇぇぇぇ!!」


「お前らに頼んだ私達が馬鹿だったネ!!」


「銀時!!殿まで見損なったぞ!!
お主らがそこまでだらしがないとは!!


「もう誰にも頼りません、強くなる方法は
自分達で見つけます!ありがとうございました!!」


見とけよ!!
ビックリする位強くなってやるからな!!」


「今にお主らが足元にも及ばぬような強者に
なってみせるから覚悟しておけ!!」





吼えるように言葉をぶつけ 三人は
万事屋から立ち去っていく・・・











彼らの背中を見送った後、が小さくささやいた。







「・・・さん、出てきなよ。」







隣の部屋から、待機していたらしい
こっそりと居間に現れる。





「・・・今まで様子を見させてもらったんですけど
・・・・良かったんですか?これで」


「ああ、それで・・・いいんだ。」


「己の行く道は 誰にも頼らず己で決める。」


「修行第一関門突破だな。」







そう、銀時達の今までの行動は
全て三人を思ってのおふざけだったのだ







「弱音なんか吐いたら承知しないんだから。」


「けどつらくなったらいつでも話をしてね
僕達はどんな時でも力になる・・・」


「後は悪い方向に行かないよう導いてやるだけだ。」


「俺達はいつも見守っているぞ。」


「ソウ、私タチハ」







室内にいた銀時達の声は 静かにハモった。





『あなた達の・・・
人生のインストラクターなのだから・・・・』






何故かインストラクターをも加えて。







「・・・・・ていうか何でインストラクターまで?」














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後書き(管理人出張)


狐狗狸:後日談も無事に終わりました・・・本当
あのインストラクター達はどこから現れたんです?


桂:そこは企業秘密だ


長谷川:しっかし、どの時点から君がいたのか
俺全然分かんなかったなー


狐狗狸:MGSじゃ実際ダンボールステルス有効だからね


妙:強くなれるといいわね あの子達


銀時:ま、どうでもいいけどな・・・俺ぁ面倒な
修行に巻き込まれねぇで済んだし


狐狗狸:本当に向上心とかカケラも無い
主人公だねアンタって人は・・・・


インストラクター:イツモアナタヲ見テイマス


狐狗狸:まだいたの?!