今年もやってきた 日本の正月





俺達はいつもアメリカで年を過ごしていたが
今年は日本で過ごそうと思い


初詣をするため、近くの寺へ行くことにした。







夜ほどではないが 身が引き締まる程の空気の中
目的の場所で銀さん達と合流する。





お妙さん!明けましておめでとうございます。」


「あらちゃん、明けましておめでとう。」





がお妙さんに新年の挨拶を交わした。





「銀さん達も初詣か?」


「ああ、毎年の伝統行事だしな。」


「でもさんが初詣に来るなんて
初めてじゃないですか?」


「そりゃ毎年アメリカに帰っていたからな。
たまにはいいかなって思ってさ。」







賑わっている屋台を代わる代わる眺め





「銀ちゃーん、アレ買ってほしいアル!」


「んな余分な金がウチにあると思ってんのか?
にでもたかれよ」


「正月早々セコイなアンタは!」





と、普段とさして変わらぬ会話をしつつ
俺達は寺の鐘の前までやって来る。







「うーし、じゃ次お前の番な」


「え 俺の番って・・・何をどうしろと?」


え?さんひょっとして、何をするのか
知らないんですか?」


「知識では寺の設備は入ってるんだが・・・
アメリカにはこういう建物も習慣もないからな。」







銀さんが頭を掻きながら





「ったく面倒なヤツだなーほらアレだよ、
この鐘を打ち鳴らすんだよ。簡単だろ?」





後ろ手で鐘を指し示す。







「・・・なるほどそういうことか なら簡単だ」







俺は少し距離を空け、SVDを取り出した。





「ちょっとさんんんんん!
イキナリ何やってんのォ!?」



「だって、あの鐘を撃ち鳴らすんだろ?」


字が違ぇぇぇぇ!それ別の意味!!
ここにある丸太フルスイングして鳴らすんだよ!!」





指差す方を見れば、確かに鐘の近くに
縄で吊り下げられた丸太が揺れている。







「なんだ、最初から言ってくれればいいのに・・・・」





日本の正月は意外に面倒なんだな、と内心で
呟きつつ銃をしまい


気を取り直し 鐘を丸太で突いてお辞儀をした。











年始なら一辺は神頼みしとけって











鐘を鳴らした後、俺とはおみくじを引く







「ねぇお妙さん この"大吉"って何?」


「それはとってもいい運勢を表すのよ!
新年早々大吉だなんて、運がいいわねちゃん」





笑顔のお妙さんに釣られ も顔を綻ばせて喜ぶ。







「ふーん さてと俺は・・・・・・げ、何だコレ」





広げた紙のデザインは、黒い縁取りとドクロが基調の
あからさまに不吉禍々しさ抜群のシロモノだった。





「あー、さんは大凶ですか
ついてませんね 新年早々」


「いや逆についてるんじゃね?
黒コートで鎌を持ったオッサン的な何かが」


「嫌なこと言うんじゃねーよ!」





顔を歪めて、ポケットに不吉な紙切れをねじ込む。







あー!ダメアルよ、悪いおみくじは
木に結ばないとマダオみたく負け犬人生になるネ!」


「デタラメ言わないの神楽ちゃん!
・・・そうださん、景気付けに絵馬書きません?」


「絵馬?」


「今年の目標的なものを書く、こうアレ的なもんだよ。」


「何だよアレ的って・・・・
ちなみに銀さんの今年の目標は?」





銀さんは顎に手を置きながら ニッと笑って言う。





「そうだな・・・・・やっぱ男はでっかく
パチンコ大勝っきゃねーだろ!」


「それ目標じゃなくて願望ぅぅぅ!!
ていうかパチンコやめてって言いましたよね!!」



「そーアル!銀ちゃんの玉遊びのせいで
今月も家計は火の車ね このゴクツブシ!」





しょうもない目標だ・・・・・てか懲りろよ!







何だかんだ言いながら、とりあえず絵馬が
飾られている場所に向かった。









「わぁ・・・スゴイわね、


「・・・・・・ああ」





そこにあった、たくさんの絵馬にちょっと圧倒される。







これ全部 今年の目標を書いた人の物か


人の願いってのは、集まるとやっぱりすごいもんだ。







銀さんが絵馬の一つを手にとって こちらに見せる。





「お!定番の見つけたぜ〜『受験合格』。」


「定番なのか?」


「そうよ、毎年受験生が受験に合格するために
絵馬を書くのよ。」







・・・受験の合否の大半は、試験の成績に
寄るものだと思うのだが


やはり不安な者の多くは 神頼みしてでも
合格を願うモンなのか







姉御!こんなん見つけたアル!」


「あら、神楽ちゃん。何を見つけたの?」





神楽は指をさした絵馬に、お妙さんも視線を移す。


何が書かれてるんだ?と俺達も
釣られてそちらを見る。







「どれどれ・・・・・・汚ったねー字だな・・・
『今度こそお妙さんと夫婦になる』?」


「こ、近藤さんまだ諦めてなか・・・・・・・・!!」







只ならぬ殺気を感じ、思わず横に避けたと同時に





「なぁに公共の場で醜態さらしてやがんだ
滅亡しろゴリラァァァァァァァァァ!!!!」






お妙さんは近藤さんの絵馬を叩き割った。







「わ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!姉上ぇぇぇぇ!!
流石にそれは罰当たりですよ!!」



「いいのよ新ちゃん。こんな悪しき願掛け
消去なら 神様はきっと許してくださるわ。」





そんな神様なんていねーよ!!





喉元まで出かかったそのセリフは、辛うじて
寸前で推し留まった。









「他に面白れー目標とかねーかなー
とりあえずもうちょっと見てみようぜ。」


「おいおい、それプライベートの侵害じゃ」





俺の話も聞かずに銀さんは絵馬を漁る。







お?これヅラのじゃね?」


「・・・桂さんのか?どれどれ」





あの人のことだ。きっと攘夷を成功させるとか
俺を志士にするとかなんかだろう







 プライベートの侵害は?」





横からツッコミを入れつつも、もやっぱり
気になって絵馬を覗き込むつもりらしい。


しかし、そこに書いてあったのは







『今年こそ、滝川クリスタルを見つけてみせる!』


「「活動してねぇぇぇ!新年早々願いがしょべぇよ
あのダメテロリスト!!」」






俺と新八君は同時にツッコミをいれた。









ふと目の前の絵馬を見ると そこには見慣れた字が





「うん?これ沖田君のだ。」


「え?沖田さんの?」







書いてあったのは・・・・当然というか
いつも通りと言うか、『土方抹殺』





「どこまで腹黒いんだ あの子は・・・・・」







唖然としつつ隣の絵馬を見ると・・・『沖田殺す』





「おいぃぃぃぃぃ!言い争いはチャットでしろぉぉ!!
今年の目標掲げる場所だからここ!!!」










他にも『痔を治す』『お良ちゃんと結婚』
『ペットの健康』等々・・・・・・・





絵馬は、目標より願望の方が明らかに多い。











やっぱり江戸の人間はおかしな連中ばかりだ


まともな奴がほとんどいないのはFOXと同じか・・・・・・







少し落胆しつつため息をつくと 下の方に
目標が裏返しになった絵馬が





・・・・・・縄が巻かれてるその絵馬が、
書いた主を如実に物語っていた。





「あ、これさっちゃんの絵馬じゃね?」


「ホントだ、どれどれ・・・・・・
『今年こそ銀さんに縛られて合体』


・・・あんのドM豚ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!





物凄い形相で銀さんが 木刀で絵馬を叩き割る。





アンタもかぁぁぁ!!
さすがに二枚も壊したら誰かに怒られるって!!」


「いいんだよ。仏様は懐が広ぇから
疚しいもんだったら壊しても許してくれるって。」


「まあ・・・・ちょっと問題ありですからね
・・・・この絵馬。」





それについては、俺も同感だ。







「あ、これ見てみるアル!
えーっと・・・・・『今年こそ兄上と結婚』?」


「だから勝手に見るな・・・・・・って
何てこと書いてんだあのブラコン女!!!





壊そうと手に取った瞬間、銀さんとお妙さんが
同時に俺の手を掴んで押し留める。







「おいおい止めとけよ
無闇に人の夢を壊すもんじゃねぇよ。」


「銀さんの言う通りです 一生懸命願ってる人の
絵馬を壊したらバチが当たりますよ」


「人の絵馬叩き割ったあんたらが言うなぁぁぁ!!」







結局その絵馬を壊すことは有耶無耶になり


・・・まあ、何はともあれ俺達も絵馬を書くことにした。









「あら、ちゃんはもう絵馬 書いたの?」


「ええと健康に過ごせますように』って
お妙さんは?道場の復興ですか?」


「まぁね、でもそれだけじゃないわ『家内安全、
それとハーゲンダッツをたくさん食べられますように』






・・・それは幾らなんでも頼みすぎじゃないのか?







「新八、何書いたアルか?」


「ちょ!見ないでよ・・・ってああ銀さん!
それ書きかけなんですから返してくださいよっ!」


「何々?・・・『お通ちゃんの全国ツアーの成功』
っておい新八ぃ お前年明けてもオタク全開かよ。」


「いっいいでしょ 別に!」


マジきめぇアル。しばらく私に話しかけないで。」





目ん玉ひん剥いて口論しかかる新八を押さえ





「おいおい・・・・そういう神楽は何書いたんだ?」


「ふふん、私の目標は偉大アル 見て驚くなよ〜これネ!!





もったいぶって言うと 神楽は絵馬を自慢げに見せた。







えーと・・・・『すき焼きを腹いっぱい食う』





「ってすぐにでも叶うだろこんなん!!!」


「だってウチの家計はいっつも火の車だし 銀ちゃんが
すき焼きの肉を豚にした上、食わせてくれないネ。」







俺とはキッと銀さんを睨みつける。







「あんた何いたいけな少女を虐待してんだよ!!」


最低よ!そんな人と思わなかったわ!!!」


うるせぇぇぇぇ!ウチの家計を圧迫してんのは
神楽と定春のメシ代だっつの!
それに世の中 弱肉強食なんだよ!!!!」


「「だからって育ち盛りに肉を一切れも食わせないのは
どういうことだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」






叫びと共に俺達は銀さんを同時に蹴り飛ばす。





「うごおおおおおおぁぁぁぁ!!」







銀さんは頭から地面に激突し、そのまま数メートル滑った







・・・・この世の不純を消しても
神罰や天罰は当たらないわよね?」


「ああ、きっと神や仏も許してくれる
・・・・じゃあやりますか?」







頷いて 俺とはM116A1とグロッグ17を
取り出し、リロードして構えを





「ちょっと二人ともぉぉぉぉぉ!
いくら何でも年始から銃撃戦はヤバいから!!」



「わかったわかった。冗談だって。」







必死な新八君に免じて、俺達は笑って拳銃を収める。







テメェらぁ!冗談で済まねえだろ拳銃出しといて!!」


「元はといえばあんたのせいだろうが!!」







が神楽の方を向いて 言う。







「神楽ちゃん。お年玉として今度すき焼きをご馳走するわ。
よかったら新八君とお妙さんもどう?」


「いいんですか!?さん!」


「あら、じゃあお言葉に甘えさえてもらうわ。」


キャアホォ!肉食べ放題ね!!」









和気あいあいと喜んでいる三人の輪から外れた所で





「あの〜・・・・・俺は?」





身を起こした銀さんが 怯えるように自らを指差す。







「「あん?」」





俺とは 即座にどす黒いオーラを放った。







調子こいてスイマセンでしたぁぁ!!
お願いします!!俺も肉食べさせて〜!!!」







土下座してまでお願いするって・・・
大人としてのプライドは無いのか この人は。







俺達は顔を見合わせ、少し間を置いて・・・・・・


笑って 許すことにした。





「いいよ銀さん。冗談だって。」


「いくらでも用意出来ますから みんなで食べましょう。」


「マジでかぁぁぁ!!!キャッホー!!」


「子供かよ・・・・・」


「それじゃあ今夜やりましょうか!
 私、お肉買ってくるから先に行くわね。」


「そしたら私はさんの家で準備しておくわ
ちゃん ついでにハーゲンダッツもお願いね。」


「分かりました!」







後半パシリにされている事に気付くことなく
は店へと駆けて行く。







!私も行くアル!!肉ごっさ買うヨロシ!」


「姉上、僕も手伝いますから!」





続いて駆けて行くお妙さんの後を、神楽と
新八君が慌てて追いかけてゆく。









「ったく、高々すき焼きでそこまではしゃぐなよ
ガキじゃあるめーし なぁ


「どのツラ下げて言ってんだアンタは・・・・」







こうして俺達も、神社を後にした。











俺の絵馬はどうしたって?


もちろん書いたさ。中身は・・・・・・







『世界を少しでも平和にすること』・・・だ











そして数ヶ月後、ソ連とアメリカが再同盟することが
決まったとの報せが届いた。





これは絵馬のおかげだと 俺は信じたい








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:退助様の後書きが無かったので、必然的に
私が後書きを勤めさせていただきます


銀時:間借りとはいえ原作にそこまで出張るって
どこの大作家気取りですかコノヤロー


新八:新年一発目の作品でも容赦ないなアンタ!


神楽:てゆーか、玉転がすのもほどほどにしろよ
おかげでケツに火がついた状態で新年迎えたアル


妙:神楽ちゃん 女の子がとか竿とか
○○とか××とか言ったらいけま


新八:そこまで言ってないですから姉上ぇぇぇ!
年始からサイト閉鎖になるから止めて!



狐狗狸:江戸の人々とウチの子がアレなのは
知ってましたが、さんまでこんなとは・・・


銀時:あーのやつも、この世界にドップリ
漬かってっから チ○コ含めて


狐狗狸:正月早々にして本当に最低だなアンタ