狂死郎を捜すことになった俺達は手分けして
街を駆け回り・・・俺とある工事現場にたどり着く。


あそこから、狂死郎の声が聞こえたのだ。







・・・ここで待っててもいいんだぞ?」


「いいえ、私もいく。」


「全く・・・・どうなっても知らないぞ。」







鉄骨で組まれた建物の側までよると、狂死郎の姿が
ハッキリとそこにあった。





何かケースのようなものを取り出して
向こう側にいる勝男に渡そうとしているようだ。


まさか、あれは・・・・・・!





やめろ狂死郎!!そんな奴らに金を渡したら・・・」


「また何か言いがかりつけてくるわよ!!」







思わず叫んだ俺達の声に反応し、全員の視線が
こちらへと向けられる。







さん・・・・それにさんも・・・!


何やて!?あいつらやっぱり・・・」


「兄貴・・・逃げた方が・・・・」


「まあ待て待て、ちょっと様子見ようや。」





奴等のやり取りを無視し、俺は狂死郎に呼びかける。





そこまでして母親を護りたい気持ちは分かる!
けどヤクザ相手に金で解決させようとしたら
一生、ついて来てしまうぞ!!」


「いいんですさん。お気持ちは分かりますが、
ホストは女性を喜ばせることが仕事です・・・」


「狂死郎さん・・・・」


「だから、この世で最も大切な女性を
悲しませるようなことはしたくありません!」



何やと!!お前オカンがどうなってもいいの」







そうほざいた下っ端を、何を思ったのか勝男が蹴り落とす







「狂死郎はん・・・大した男気や さすがNO.1ホストやな
わしもぶっちゃけ、あんまりしつこいことは嫌いやねん。」





奴はため息混じりにこう続ける。





「おじぎも財源開拓にやっきになっててな・・・
天人来てからヤクザも変わってしもうた」





変わったのは、侍だけじゃなかったか・・・・







「だが、それだけあればおじぎを説得できるかもしれへんわ。
今日はあんたの七三ヘアーと男気に免じて
許してやるわ。オカンはその後や!







今更そんなことを言って、信用できるとでも思っているのか!







「狂死郎!言うことを聞いたら駄目だ!!」


「いいんです・・・・これで母親が救えるなら
・・・はした金です。」







俺の制止も空しく、狂死郎はケースを
勝男の方へ投げ―





横手から飛んできた木刀が


ケースを貫き、それごと壁に突き刺さった。












ヤクザだって通すべき筋は持つ











「な・・・何や!?


「あの木刀・・・・まさか。」







唐突に周囲を強烈なライトが照らす。


まばゆい光を背負い、銀さんがそこに立っていた。







「そんな奴らに金なんか渡す必要はねえよ、
それより母ちゃんにうまいモンの一つ食わせてやれ。」


「銀さん!」





慌てふためく奴等の真っ只中に、重機の丸太が
飛んでくる・・・うっわ危なっ誰が操縦してんだ!?


ついでに重機がちょっと鉄骨に突っ込んで


その影響で向こうの足場が崩れる。







「あ、あかん!!一先ず逃げ」







右往左往するヤクザどもに詰め寄り、銀さんは
木刀の一振りで次々と薙ぎ倒していく。


俺もこちらに向かい来る下っ端を
片っ端からCQCでぶちのめしていった。





こんな奴らに遠慮はいらない・・・


全力でいかせてもらう!









「なんや、無茶な連中やな。おいお前ら!!
このオバハンがどうなっても」







勝男の合図で下っ端が 目隠しをされた
お母さんを引き掴む





何かさせる前に絞め落とすつもりで駆け寄った最中


さっきの丸太が飛んできたため、思わず
お辞儀の姿勢で避けた。


だから操縦者ぁ!下手したら今の頭もげるって!





俺の心の文句を他所に、反動で戻ってきたのを避けたが
そこにはお母さんを抑えていた下っ端が だらしなく伸びているだけ。







「このオバハンが・・・・え?」


「このオバハンはもらったぜFOOOO!!」







丸太を見やると、そこに括られた姿勢で
お母さんを掴んだ神楽がいた。


じゃあ、これ操縦してるの新八君か・・・・





って未成年の無免許運転は
一番ヤバいパターンじゃねぇかぁぁぁぁぁ!










「きゃあああ!!」







の悲鳴で我に返って振り向くと、


にじり寄るヤクザどもを追い払おうと
パイプをデタラメに振り回していた。







「いやあああ!こっち来ないで!!」







まったく、世話のかかる・・・


そちらへ走り寄り、回し蹴りで全員をなぎ払った。





「ったく、だから外で待ってろっつったんだよ。」


「ご、ごめん・・・・・」





まぁも一生懸命なワケだから、あまり
責めるのはよしておこう。









「何頬赤らめとんねーん!!!」







勝男の奇妙な叫び声に再び視線を走らせると


丸太のお母さんの足に、いつの間にか勝男が
しがみついていた・・・何があったんだ一体!?







剥がすべきかと思い麻酔銃を取り出すも


丸太の軌道の斜線上に、銀さんが佇んでいるのを
確認し それを懐にしまった。







「溝鼠だがハツカネズミだが知らねぇがよ・・・
必死に泥掻き分けて生きてる溝鼠を邪魔すんじゃねえ!!







啖呵を切って 銀さんは、勝男の腹に木刀を食らわした。





奴は勢いよく吹き飛び、向こうのパイプが
詰まれている所に叩きつけられた。











「兄貴!!!」


「てめえら!!」








まだ残っている連中がこちらを睨みつけるが







「やめんかぃおんどれらぁ!!」





勝男がその場で一括し、起き上がると
いきり立つ下っ端達の肩を組む。







「ほっとけほっとけ、こんな奴ら相手にしてたら
なんぼ金と命あっても足りひんわ。


これでこの件から手を引いてもおじぎに言い訳出来るわ。」


「しかし兄貴・・・」





次の句を目だけで止め、奴は真剣な面持ちを
こちらに向けて続ける。





溝鼠にも溝鼠のルールがあるっこっちゃ。


わしは借りた恩は必ず返す。7借りたら3返す。
やられた借りもな。3借りたら7返す。覚えておきや。」







勝男・・・・・







奴はに気付くと、済まなそうに目だけで謝った。





はん、あの時は色々と迷惑かけたな。
これを期に詫び入れさせてや。」



「いえ・・・あの、いいんです。」


次やったらどうなるかわかってんだろうな?」


「わ、わかっとるわかっとる。あんたの場合は
ヤクザもん全員で掛かっても足りへんわ。」







しばらく何かを考えていた銀さんが、手をポンと
打ちつけ 俺達を指差して言った。





「ああ、あの時か、バレンタイン時に
やっすいAVまがいのプレイしようとした・・・」


「「でたらめ言ってんじゃねえええ!!」」


あんた!彼女だからってふしだらなこと
しようとするんじゃないよ!!男だろ!!」


「だから誤解してんじゃねーよ!!!」









・・・・・・何はともあれ、奴等は大人しく退散し
まあこの件も 一件落着した。それはいい


が、俺とはしばらく高天原で働くハメになった。





色々と物を壊してしまったし・・・・思い返せば
やりたい放題やってたから、仕方ないんだが・・・


つーか銀さん達逃げやがって・・・覚えてろ!









さん!渋い顔してないでこっち来てよ!
狂死郎さんと飲もうよぉ〜!」



「か・・・かしこ参りました。」





1日で終わるはずのバイトだったが、


なぜか俺達の人気がうなぎのぼりになってしまい
3日延長となっている・・・勘弁してくれ







狂死郎と客が座るテーブルに俺ともつき
異様なテンションを横目に乾杯する。





その時、八郎が何かを運んで テーブルに置いた。


重箱に入ったこれは・・・・かぼちゃ?





何これ?こんなの頼んでないわよ?」


「ていうかあんたなんで笑ってんのよ?」


「スペシャルサービスでございます!!」







狂死郎さんが一瞬、確信したような表情
浮かび上がらせたのを俺達は見逃さなかった。





やはりこれは・・・あのお母さんが置いていったものか・・・・







何よこれ!誰がこんなだっさいもん食べるのよ!」


「狂死郎さん達がこんなイモイもん
食べるわけないでしょ!バッカじゃないの!?




その物言いに俺とは同時にムッと来て―





即座にかぼちゃを箸で取って、食べ始めた。







え!?ちょっとさん!何してるの!!」


「見れば分かるだろ?うまいぜこれ?」


「そうだね、こんなおいしいの初めて!」


「あ、ありえない・・・・・」


「狂死郎さんもどうだい?うまいですぜ?」


「え・・・・・」





戸惑う狂死郎と、重箱の間に客が割って入る





「狂死郎さんが食べるわけないでしょ!
ささ、早く下げて!下げなさいったら!!」








何だこのアマ共ざけてんのか・・・・
怒りが沸いてくるが、横手からもっと強い気配が


ちらっと八郎を見ると ものっそい怖い顔してました。





あ・・・まずい・・・・・怒らしたらまずい・・・・





慌てて自粛すると、八郎は客に謝りながら
かぼちゃの入った重箱を静かに下げた。











その後滞りなく接客は続き 無事に閉店すると
狂死郎は俺達にそれぞれ給与袋を手渡してくれた。







さん、さん お疲れ様でした。
これ少ないですが3日分の給料です。」


「いやいや、こちらこそ迷惑かけたな・・・
うちのチャランポラン共が・・・・」


「ハハハ・・・・あの 所でさんは?」


「まぁ、ちょっと待っててくれよ」







俺達が会話している間に、は八郎と共に
一旦奥へと引っ込んでいた。


訝しがる狂死郎をよそに レンジ音が響いて―







「狂死郎さん。暖めてきましたよ。」





が後ろに八郎を従え、皿に盛りなおした
ほかほかのかぼちゃを運んできた。





「あ、ありがとうございます。
ワザワザそれを温めて下さってたんですか・・・!」


「ええ 八郎さん、やっぱり取っておいて
下さってたみたいだから。」


「そうか、ありがとう・・・・・・みなさんも、
よろしければご一緒にどうですか?





無論、俺達は首を縦に振る。







席に着いた途端 八郎が懐に手を入れて、





「狂死郎さん、重箱を包んでた風呂敷の中に
これも入ってました。」





取り出したのは紫色の風呂敷と 一通の手紙







「狂死郎さん。これ・・・・」


お母さんの手紙だな。読んでみな。」


「ええ・・・・」









手紙には、こうしたためられていた・・・・・・







『八郎へ・・・まず一つ、あんたまだ箸の使い方が
直ってませんでしたね 直しなさいって言ったでしょ
母さんすごく気になりました。


後、ものを食べる時にクチャクチャしない。
母さんすごくイライラしました。


最後に、細かいことはよく分からないけども


母さん あんたが元気でやってくれてるだけで
それでいいです。


どんなになってもあんたは 母さんの自慢の息子です。







お母さん・・・・・やっぱり分かっていたか・・・・・・







「良かったですね・・・・狂死郎さん・・・・」


「おいおい、何でまで泣いてんだよ・・・」


「だって・・・だって・・・・」





八郎の横で同じように泣きじゃくるの頭を
あやすように優しく撫でてやる。







狂死郎は・・・かぼちゃを頬張りながら泣いていた。







「ハハハ・・・・これじゃ
かぶき町NO.1ホストが台無しだな!」


さん、狂死郎さんを侮辱したら
オラ許さねぇど・・・!!」






殺気のこもった眼で、八郎が俺の首を絞めてきた





わ、わわわ分かった!言い過ぎたゴメンなさい
だから離してくれ!!許して八郎さぁんんん!!」


「フフフフフフ・・・・」







小さく、狂死郎がこう呟いたのが耳に届いた。





「・・・・・母ちゃん・・・・・・」













後から銀さんに話を聞けば、お母さんは
無事に故郷に帰ったらしい。


銀さんもまた、お母さんが彼が息子だと気づいていた事
分かっていたみたいだった。







俺はその翌日・・・・・・アメリカに帰り
ビッグ・ママの墓へ参りに行った。





久しぶりに ママに会いたくなったからな・・・・・








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後書き(退助様サイド)


退助「やっと、やっと終わりました。」


銀時「ていうか勝男かっこよすぎないか?」


勝男「別にええやろ!!!」


退助「そうそう、いら立ってたとはいえ
輪○しようとしてたクセにねぇ・・・」


勝男「余計なこと言わんでええねん!
しばくどこるぁぁぁぁ!!」



狂死郎「それにしてもさんは一体何者ですか?
あの世に行っても親に顔向けできないって・・・・」


退助「ああ、それはね・・・・(説明省略)」


狂死郎「そうだったんですか・・・そんなことが・・・」


勝男「はんもエライ修羅の道歩いてきたんやな。」


退助「そうそう、だから彼、ヤクザもんとか
好きじゃないんだよね。平気で死を口にするから。」


勝男「わいらはそんなんばっかやないで
はんは・・・ヤクザもんを誤解しとる。」


退助「なるほど・・・実際俺も誤解してたみたいで、
銀魂のおかげでそれが分かりました。」


新八「それにしてもさんも
あのかぼちゃを食べてたんですね。」


神楽「ちゃんと100回噛んで食べたアルか?」


退助「そんな噛んだらアゴ筋肉痛になるわ!!」


つーわけで母ちゃん編終了です