、銀さん達起きてるかしら?」


「さすがに起きてるだろ?仕事しなきゃマズイだろうし」





俺とは銀さん達に差し入れを持っていくところだ。


数ヶ月分の家賃を肩代わりしたが・・・・・

どうせその後ロクな使い方していなくて
食うものに困ってるだろうからな。





玄関にはカギがかかってない・・・無用心だな
まぁ、それはどうでもいいか。





「銀さーん、差し入れ持って来たぜ。」


「あらいらっしゃい。」





俺達を出迎えたのは・・・・・え?誰?この人?


「お、おはようございます。」


「あら、そちらのお嬢さんは礼儀正しいわね。
あんた!黙ってないで挨拶したらどうなの!!」


「え!?あ・・おはようございます・・・」


「そうそう、どんなときでも挨拶は
しっかりしなきゃ駄目よ!わかった?」





いやあの・・・何なんだ?この人?





「あの、私たち差し入れ持ってきたんです。
よかったらどうぞ。」


「あら、気が利くわね。ありがとうねぇ
ささ、あんた達も食べていきな。」


「いや、俺達もう食ってきたんだけど」


何言ってんの!そんなガリッガリの顔して!!
男の子はね ちょっと太ってる方がちょうどいいの!!」


いや・・・太ってたら軍人失格なんだけど・・・・・





戸惑う最中、今から銀さんが顔を出す。





「おー、悪ぃな。とにかくこっち座って食えや。」







呼ばれて居間まで進むと、銀さん達は珍しく
ちゃんとした朝ごはんを食べているようだった。


・・・・どうなってるんだ一体?まあいいか





俺とは空いている席に座り、一緒に
朝食を食べることにする。





「で、ご飯はどうする?大盛?中盛?」


「いえ、私は少しでいいんです。」


「俺も、あんまり食いすぎるとアレだし・・・・」





パンチパーマの見知らぬその人は、茶碗片手に
目をくわっと見開いて怒鳴りつけてきた。


贅沢言うんじゃないよ!世の中にはねぇ食べたくても
食べられない子だっているんだよ!


それにお嬢ちゃんも食べなきゃ胸大きくならないよ!
あんたもしっかり食わなきゃ子供だってロクに
作れなくなるじゃないのさ!!」


「「余計なお世話だ(よ!!)」」


同時に叫ぶが、ほとんどの声が勝っていて
俺の声はかき消された


・・・ちなみにBカッ





「ちょっと!!何個人情報垂れ流してるの!!」


あ、すいませーん





断りきれず結局、山のように詰まれた白飯が
俺達の目の前に並べられ





「じゃあごみ捨ててくるから、残さず食べな!」


見知らぬその人は、ゴミ袋を担いで戸を閉めた。







しばし沈黙が場を支配し、新八君がようやく口を開く





「ねえ、銀さん。あの人、誰?」


「あれだろ?母ちゃんだろ?」


え?銀さんのですか?」





銀さんはメシを食いながら首を横に振る。





「いや、俺家族いねーから。
お前のだろ?すいませんねえ、なんか。」


「いや、僕のは物心つく前に死にました。
神楽ちゃんのでしょ?」


「私のマミーもっと別嬪アル。それに今は星になったネ。
辺りかもしれないヨ。」





今度は俺達がナイナイ、と手を横に振り動かす。





「私の親は大戦中に死んだから、有り得ないわ
第一人種が違うように見えるんだけど」


「てーか俺のも、実のはリキッドに殺されて
ママもこの手で殺してしまったの 知ってるだろ?


「あーそっか・・・したらアイツら兄妹のか?」





それはない、と思いたいが・・・どうなんだろ?





「もの食べながらしゃべるんじゃないの!!!」


そこに先ほどのおばさんが戻ってきた。





「ああ、すみません・・・・・」


「あんた達、ご飯はちゃんと噛んで食べるんだよ。
20回噛んでから飲み込みな!」


そういうとまた何処かへ消える。





俺達は無言で顔を見合わせて、


『1、2、3、4、5、・・・・・・』











母ちゃんはヨソの子にだってうるさい











朝ごはんを食べ終わり、俺達は早速おばさんを問い詰めた。





「母ちゃんだよ、八郎の母ちゃん。」


「八郎って誰だよ・・・つーか何で八郎の母ちゃんが
ウチで母ちゃんやってんの・・・」





銀さんの言葉を無視し、この人は
味噌汁を啜りながら話を続ける





「ウチの村じゃね、母ちゃんはみんなの母ちゃん、
子供はみんなの子供。」


グレートマザー気取りか、
つーか何でウチの飯食べてんの?おい。」





今度は白飯を食いながら続ける。

つーかもの食いながらしゃべるなっつったの誰?





「田舎から都会に出てきたんだけどね。
分からないことだらけよ。地下鉄とかもう迷路よ。」


「おい、何杯食ったおい。
その髪型どこでセットしてんだ?おい。」


関係ないツッコミすら無視して話は強引に進む





「でね、迷って困っている時にここの看板見つけてね。
これからお世話になるんだし、朝ごはんをと思ってね・・・」


「おいーそのプリン俺のだけど?何?そのホクロは何?
起爆スイッチ?それ押したらいなくなってくれるの?おい。」


「まぁ落ち着けよ銀さん」


ちょっとイラ立ってる銀さんを抑えていると、
おばさんは懐から写真を出してきた。





「5年前に八郎が江戸に上京してから音信不通でね。
これ息子の写真なんだけどね・・・

この子探すの手伝って欲しいのよ。」





なるほど、つまりは息子が心配で田舎から来たってことか。





ふと、ママも・・・俺がこうなったら
同じことしたのかなと、追憶の念に駆られる







「いやー仕事なら引き受けますがね。
おばちゃん、金持ってるの?」





銀さんの言う事ももっともだ。


しばらくおばさんが黙っていたが・・・
何処にしまってたのか、大量のかぼちゃを取り出した。





「これ、八郎にと思って持ってきたんだけど・・・
仕方ないわねえ。」


「あら、おいしそうなかぼちゃね。」


「いやいや、おばちゃん誠意じゃなくて金・・・・」







おばさんは顔をしかめ、向こうの部屋のふすまを開ける





「そうかい、つくづく腐ってるね・・・メガロポリスヘッド」





え、何言ってんだ?この人?





「分かったよ、だがあんたらに一つ言っておく。
あんたらに真実なんて掴めやしない!!!


そういうとおばさんは 仰向けに布団に寝転がった。





「「深読みしてんじゃねー!!
気持ちわりいんだよクソババア!!!」」



俺と銀さんは同時につっこんだ









依頼の代金はとりあえず、息子にたんまり
もらうことに落ち着いたようで


俺達はその写真のコピーを持って街に繰り出した。





つーか何で俺達まで・・・・・・単に差し入れをしに
万事屋に来ただけだったのに・・・


とはいえ話を聞いた以上、今更止めるわけにも行かず
そこいらの知り合いに話を聞いて回る事にした。











まずは・・・・火消しのめ組に立ち寄る





お!あんた あの時の兄ちゃんか。」





この子は辰巳、昔ここの組長に助けられここで育った。

そのせいか女なのに男口調でしゃべってくる





放火魔を偶然投げ飛ばして気絶させ、
彼女のお父さんを助けたのはいい思い出だ。







「あれからずっとここに?」


「ああ、俺にはここしかないからな。」


「そうか、元気そうで何よりだ。
あ、そうだ。この写真だが・・・・」





俺はここまでの経緯を簡単に説明した





「ふーん、音信不通の息子を母ちゃんがねえ・・・」


「知らないか?」


「わりいな、見たことねえな。」


「そうか分かった。他をあたってみるよ。」


「そいつ見かけたら万事屋に連絡いれておくぜ!」







それから巡回中の真撰組の面子や近くの店なんかに
聞き込みをしてみるが、今の所収穫はない。







別の所を当たる途中、見知った顔に出会った


橋田屋事件のお房さんと、勘七郎君だ。





「あら、あなたはさん。」


「あれから会わないうちに健やかになられたようですね
勘七郎君も、元気そうでなによりだよ。」


「ええ、あの時はありがとうございました。」







彼女は息子である勘七郎が橋田賀兵衛に狙われ、
万事屋に置いてきた人だ。





その時は賀兵衛という男に憎悪を抱いていたが・・・


今はすっかり改心し、援助を出してくれているらしいと
聞いて もうそんなに憎いとは思わなくなった。





普通のおじいちゃんになれたんだな







「勘七郎君、久しぶり。」





目線を合わせて微笑むが、勘七郎君は
何か怯えるように震えていた。





「あ、あれ?まだ覚えていたのか?」


「ええ、流石にあの目は怖かったですから。」





眉を潜めて笑う彼女に、俺は苦笑いしか出来ない。





「ははは・・・そうだ、この写真なんだが・・・」


「あ、この人。賀兵衛様がお詫びにと
連れてってくれた店にいた人だわ。」


「そうか、その店の名前って分かるか?」





お房さんは首をかしげて、頬に指を当て考え込む







「すいません。ちょっと覚えてませんね。
たしか・・・たか・・・なんとかと言いましたけど・・・」


「そうか、それだけ聞ければ十分だ。ありがとう。」


「はい、ではまた。」


「アポ。」





勘七郎君がりんごを持ちながら、俺に笑いかけてきた。





「あら?やっと大丈夫になったのね。」


「・・・ありがとう。また会おうね。」







俺は笑み返して手を振り、二人と別れると
一旦銀さん達と合流することにした。











万事屋トリオは少し先のクリニックらしき
建物の前に集まっていた・・・はまだ聞き込み中か


・・・って何やってるんだ?あの三人は





「どうした?何か分かったのか?」


「いやぁな、あの母ちゃんの息子
親にもらった顔2,3度変えてるらしいんだ。」


顔を変えた?整形か。でも何で・・・・うん?」





銀さんが持っていた写真に目を落とすと
落書きされた八郎の写真が・・・・・ってぇぇぇぇ!





「おいぃぃぃ何やってんだよ!唯一の手がかりを!!」


「いやーこー言う整形してても、別段おかしか
ねぇんじゃねーかなーって神楽がよ」


人のせいにしてんじゃねぇよ!
つーかいるかこんな人間んんん!!」





俺達が言い合いをしてる間にジャズ的な着メロ
すぐ側で聞こえて、思わずそっちを見ると―







オッス、オラ八郎・・・・はい、今迎えに行きます。」







・・・・あれ・・・・銀さん達が写真に落書きした八郎・・・


ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?





いたー!!ホントにいたよー!!」


「どどどどどどどうするんですかああぁぁぁぁ!!!」


「おおおおお落ち着け!
とりあえずババアだ!!ババア呼んで来い!!」


お母ぁぁぁぁさぁぁぁぁん!!・・・・・あれ?」







新八君の視線に釣られてみれば、ギャルに絡まれてる
おばさんの姿が・・・・・・って何やってんだあの人





救急車ぁぁぁ!誰か、誰か救急車呼んでぇぇぇ!!
この子達顔が茶色になって吐き気を訴えていますぅぅぅ!!」





本当何やってんのぉぉぉ!それコギャルのファッションだから!!
俺もあんまり好きじゃないけど!!







「オィオィ母ちゃん。何やってんだよ。」


「そうだよ、行くぞ。」





俺と銀さんは仕方なく近づいて言うも、おばさんは
彼女らを指差したまま続ける。





「銀さん、それにさんも。駄目よ救急車呼ばなきゃ
この人たち、父ちゃんが死んだ時とそっくり。」


「平気だよ、あれ肥溜めから生まれて来たんだから。」


「「失礼なこと言うなぁぁぁぁ!!」」





何故かコギャルとツッコミが被り、彼女らの側に
ちゃらけた男二人が近づいてきた。





「おいおい、どうしたんだYO!」


「勘吉さーん。なんかこのださい親子が絡んできてー。」


うっざ、てーかどっちがだよ・・・





「おいおい、おのぼりさん?
俺の町で調子ぶっこくと殺すよ?マジで。」


殺す?テメェ、軽率にそんな言葉使うんじゃ・・・・」


「そうカッカすんなってイチロー君。」


イチロー!?誰のことだよ!


おばさんは更に男のうち片方を指差しながら





「銀さん・・・あの人、足短い。」


「ファッションだこれは!!!」


「すいまっせーん。田舎モンなんで勘弁してくださーい。
じゃ俺ら忙しいんでこれで〜」





悪びれず銀さんは言うと、薄く笑いながら後を向き
おばさんに小声(のつもりらしい)でささやく





「おいおい、いい加減にしろよ。
あれはな、足の短さを誤魔化すファッションで・・・」


「「聞こえてるよ、つーかオメェも失礼だろ!!」」





卑しくも再び向こうとツッコミが被った







てめえら!!誰だろうがババアだろうが容赦しねえぞ!!」





男二人は気を悪くしたらしく、おばさんに殴りかかってくるが


瞬時に俺が相方の胸倉を掴み
銀さんは何故かさっきの短足野郎の股間部分を掴んだ。





「おいてめえら、忙しいつったの聞こえなかったか?坊主共」


「あんま邪魔すると
てめえの***に***した上***してやるぞゴルァ」


「袴とか足袋とか
ルーズに決めるのも結構ですけどねえ・・・・・・」


「たとえ汚い言葉使ってたって構わんがな・・・・・・」





俺達は鬼神のような目で同時に言葉を合わせ





「「ババアに手ぇ上げるたぁどういう了見だい?
足袋はルーズでもさあ・・・・・・」」






俺は背負い投げをするように

銀さんはそのまま突き落とすようにして





「人のぉぉぉぉ・・・・」


「道理はぁぁぁ・・・・」


「「きっちりしやがれえぇぇぇぇぇぇ!!」」


同時に地面に叩き付けた





「「ぎゃあああああ!!」」


息つく間も与えず俺はCQCの首絞め、
銀さんは何でか再び股座を持って





オラオラどうした**ムシ!
さっきの勢いはどうしたコラ!!このコメカミ野郎が!!」


ズボン上げろ!上の兄貴を見習え!!
ベルトは乳首のチョイ下だコラ!!!」





流れに任せ、店側に奴らを投げ込んだ。







「ったく胸糞の悪い****野郎が、もう一辺くらい
叩きのめしておこうかな」


「止めとけよどこぞのチンピラヒーローじゃあるめぇし」


「そうとも その辺にしときたまえ。」







立ち込めた土煙が収まると共に、そこには・・・
派手な格好をした男とさっきのアフロ男が立っていた







「な・・・八郎・・・?」


「決め付けんの早くね?銀さん」


「つーか さっきのあのきたねえ台詞ナニ?
お前ってそんなキャラだっけ?」


「あーアレか・・・新兵訓練用の罵り用語さ。」





懐かしくも忌まわしい記憶の一つではある・・・そんな事より


八郎らしき男がチャラ男に近づいた・・・と思ったら





テメェ!下っ端とはいえ、狂死郎さんの顔に
泥塗るようなマネしやがって!!」


そいつを蹴りの連打を浴びせてまた吹っ飛ばした





「てめえはクビだ。
二度とこのかぶき町に足踏み入れるんじゃねえ・・・」







すげーな、このアフロ 見た目だけじゃねぇのか・・・


俺達が感心して見ている所に、いつの間にか
集まっていた野次馬の 女の子の声が耳に届く。





「きゃあぁぁぁ!!狂死郎さんだわ!!」


「へえ、あれがかぶき町NO.1ホストの本城狂死郎?」







へえ、あれがNO.1ホストか・・・・・・・え?

ホスト?銀さんが言うには選ばれたイケメンが
集まるといっていたが・・・・・え?


ホスト?あのアフロがホスト?・・・・・・
このおばさんの・・・・・息子が・・・・・・・・





恐らく同じことを考えていたのか同時に・・・・・





「「ホストォォォォォ!!?」」







新八君と神楽ちゃんが俺達の肩を叩き、疑わしいけど
そうだよ的な顔で頷いていた。


なんか・・・・嫌な予感が・・・・・・








――――――――――――――――――――――――
後書き(退助様サイド)


退助「さて、始めました母ちゃんの話を・・・」


銀時「つーか何で短編なのに前編?」


退助「いやね、結構長い話なもんで
ここで切らないと長くなるんですわ〜」


新八「ていうかさん、
あんなスゴイ言葉よく躊躇なしにいえますね。」


神楽「やっぱりも銀魂キャラネ。」


退助「あんたらと一緒にしないの。


えー彼が使っていた新兵訓練用罵り用語ですが
これは実際使われているもので新兵を罵ることにより
精神的にたたき上げ、鍛えます。」


さっちゃん「あ〜ん、銀さんvそれで私を罵って!!」


退助「うわ!!ドMを呼んじゃったよ!!」


銀時「帰れ****がああああ!!!」


さっちゃん「何よそれ・・・・興奮するじゃないのぉぉ!」


退助「銀さんんん!不用意な罵り用語はかえって逆効果!!」


銀時「え?これもそうなの?」




まあ、罵ればそれなりになると言うことですね


 さん ご拝読ありがとうございました