『・・・と、このように最近出没した未確認生物の
被害は後を絶ちません。バ・・・ハタ皇子
これはどう対処をすればよろしいのでしょうか?』


『今バカって言いそうになったろ!?』





画面上のハタ皇子は紫色の顔に少し青筋立ててから


咳払いをして、澄ましたように答える。





『しかしのー今回ばかりは余は関与しとらんし
どうすればいいのかもさっぱり分からんのじゃ。


ホントにこの地球に住む生き物の仕業ならば
やはり退治か捕獲くらいしか方法はなかろうて。』


『なるほど・・・あまり役に立たないご意見
ありがとうございます。』


『おい、お前後で楽屋来いや。







やや騒がしさを増し始めたTV画面を
食い入るように見つめながら





未確認生物かぁ〜・・・またキャトル
ミューティレーションかと思ったけど違ったね。」


「バカ皇子も今回ばかりは関係なさそうアルな。」


「未確認生物か・・・ぜひ兄上にも
見せて差し上げたいものだ。」


「それはやめた方がいいんじゃ・・・」


言うは神楽と新八の他に、黒髪と銀髪の女子二名





それぞれワケあって、一日だけ家に
一人きりで留守を任されたとサニーは


神楽の誘いにより万事屋に泊まりに来ていた





そんな彼らが今しがた見ていたのは
『未確認生物を追え!』という特番。


最近になって近隣の農家の家畜や農作物を
食い荒らされる被害が報告されており


目撃証言の中に"空を飛ぶ化け物"を見たと
いうものが何件かあってか

今回、報道番組が組まれて放送されたのだ。





「ったく・・・どうせどっかの天人が
捨てた奴とかそんなんじゃねぇの?」


呆れたように片手で鼻をほじりながら銀時は言う





「確かにペスの時といい、えいりあんといい
・・・天人が関係してるんでしょうか?」


「UMAならゼロ少佐に聞いてみようか?」


「ゼロ・・・あの時の御仁か。」





こくりと頷き、サニーは小型の無線機を
取り出すとゼロの周波数へコールする。





「何アルかそれ?」


「小型の無線機、映像も送れるんだよ。」


「ほう・・・なかなか珍妙な機械だな・・・」


歩く死亡フラグのお前が言えた義理か?」





渋い顔で言う銀時の台詞はあっさりスルーされ


ほどなくゼロが無線に出る。











クチバシが凶悪なアイツだって生きるのに必死
…でもオレらはもっと必死












『何かね?』


「ゼロ少佐、最近日本に未確認生物が
現れてるんだけど・・・何か知らない?」


『未確認生物?』


「はい、そのせいで家畜や農作物が
荒らされる被害が出てるんですよ。」





悩むように口元へ手を置いたゼロが

間を置かず すっと顔を上げて言った。





なるほど・・・
分かった、解決できるよう手配しておこう。』


「ホントですか!?」


「オッサンもたまには役に立つアルな。」


『誰がオッサンだ!お爺さんと言え!』


「お爺さんはいいんだ・・・でもいいの?」


『心配するなサニー、当てはある。
そちらではもう寝る時間だろ?子供は早く寝なさい。』


ニコ、と微笑み ゼロは無線を切った。







直後に両手をパンパンと叩きながら
さっきのスルーへの恨みも込めて銀時が言う。





「はーいじゃオッサンの言う通り子供どもは
早く寝なさーい。オラ早く!」



「チッ、しゃーねーアルなー
夜更かしは美容の大敵アルからな。」





自らの寝床へ移動する神楽へ、布団を用意しつつ
新八が家主へと語りかける。





「布団足りるかな、サニーちゃんは神楽ちゃんトコで
寝るとして・・・さんどうします?」


「あん?地べたでいいだろ」


駄目ですよ!一応お客さんなんだから!」


「私はそれでも構わぬが、むしろ落ち着くぐらいだ」


「いやせめてソファでしょ!」





言い合いつつもどうにか寝る場所を取り決め





全員がすげなく床へとついて







・・・・・・深い闇に包まれた刻限







"クェェェェェェェェ!"







奇妙な甲高い声を耳にして、サニーが飛び起きた





「な、何今の!?神楽!起きて神楽!


押入れで眠る神楽を揺するサニーだが
彼女はつぶった目をゴシゴシ擦るばかり。





「んだよサニー・・・まだ夜中アルヨ・・・」


今変な声が聞こえたの!
きっとテレビで見た怪物だよ!」


「いくら何でも かぶき町には来ないアルヨ
・・・おやすみ。」





ひとつ大きな欠伸をし、神楽は再び
布団を被ってごろりと寝返りを打った。





うんともすんとも起きないその様子に諦め


さりとて不安が拭えず、居間で寝ている
起こそうとサニーが廊下を駆ける。







「ってアレ?いない・・・あ!





襖を開けてみれば、ソファで寝てたはずの彼女は
すっかり下のフローリングに転がっていた。


恐らく明日 誰かしらに踏まれるに違いない





面食らいつつも構わずサニーは
足元にいる相手を揺すぶりにかかる。


起きて!変な声が聞こえたの!」





ん・・・と小さく唸り 起きるかと期待したものの





「兄上、最高・・・・兄上、麗しい・・・・・」


目を閉じたそのまま彼女はいとも楽しげに
そう呟くだけだった。





「・・・・・夢の中でもお兄さんのことしか
考えてないんだ・・・・」





思わず溜息をつき、サニーは何だか自分でも
バカバカしくなり諦めて寝ることにした。









その翌日・・・トイレに起きた銀時があげた悲鳴
目覚まし代わりとなり





一気にごたごたする空気を和ませるべく
新八がつけたTVに





『昨夜、かぶき町で奇妙な鳴き声を聞いたとの
通報が相次ぎました。これは最近話題となっている
未確認生物ではないかと言われています。』


更に空気をざわつかせるニュースが飛び込んできた。





「ホラ!私の言った通り!」


「ま、まさか かぶき町に
昨日の番組で言ってた怪物が・・・!」





得意げなサニーと目を見張る面々を他所に

キャスターは淡々と言葉を続ける。





『これを聞き、幕府は未確認生物の討伐を表明しました・・・

未確認生物を討伐、または捕獲した人には
賞金が授与されます。』





その時、銀時と神楽の目の色が変わったのを

彼は見逃さなかった。











任務を終えて家に帰ってきた後、何でか街は
"未確認生物"とやらの話で持ちきりで





「狩って狩って狩りまくるんじゃぁぁぁ!!」


「狩って狩って大儲けじゃぁぁぁぁ!!」






万事屋トリオと、それとMSF副司令官のカズと
連れ立って俺は 怪物が向かったとされる山奥に来ていた。





「結局そっちにしか目が行ってないのかよ・・・」


「そういう殿は何故来たのだ?」


「ゼロ少佐からの命令で、その未確認生物を捕まえてこいってさ。
ったくあのジジィ・・・UMA好きにもほどがあるだろ・・・」


「いいではないかジャック、俺もUMAには興味はある。
この目で収めておきたい。」


「・・・本音は?」





問えばカズは握り拳をかざし自信満々に宣言する


「MSFの軍資金をこの手に!!」


「「結局金目当てかよ!?」」





久方ぶりのWツッコミがキレイに入った。





「ったく結局オメーも金金金かよ・・・世の中はな
お金じゃ買えないものもあるんだよ。」


「一番金に執着してるアンタが言えた義理か!!」


「・・・む、殿「全くそうだな、金があっても
人望がなければ企業はやっていけない。
そんな会社はすぐに倒産だ!





胸を張って言うカズへ、しかし新八君が
ジトっとした視線を寄越す。





「いや、カズさん・・・あなた変な替え歌作ってて気持ち悪いって
この前MSFの隊員の人から聞いてるんですけど?」


え、んなことしてたのかよカズ・・・





だが当人は至って平然としたまま


「何だそんなことか、何ならここで聞かせてやるぞ?」


「いや聞きたいわけじゃなくて」


「銀時、あr「タイトルはズバリ!『思春期によくある光景』!」


「「だからフリーダム杉田を出すなぁぁぁ!!」」





周囲の声など一切無視で、フリまでつけて
頼みもしないのに大声で歌い出した。





「あそこが〜、なんだか〜、でーかーくなーるー!」


だから歌うなっつーの!!
女の子2人もいるのになんつう歌唄ってんだよ!!」


「何だこれはお気に召さないか・・・だったら
他にもあるぞ?『新婚だってドンダケダー』とか
『snake eater・替え歌バージョン』とか」


「「いい加減に「私の話を聞かぬかお主ら!!」





俺と新八君とのWツッコミ二回目は
荒げられた声によって止められた。





うぉ!?どうしたイキナリ・・・」


「お困りかなお嬢さん?あの日ならここに
MSF印のナプk「ウゼェよ黙るねパチモン銀ちゃん」


神楽が顔を歪め、言葉半ばでカズをどつく





「ゲバラッ!?」


「んだよ、オメェが声荒げんなんて
珍しいなぁ・・・どしたの?」





訊ねる銀さんに、アイツはすっと指を差して





「さっきから目の前にいるアレは、何なのだ?」


「「「「「・・・・え?」」」」」





五人で一斉にその方向へ顔を向ければ・・・







全身ピンクでしゃくれたクチバシの生き物が


とさか状の耳と翼を震わせ、縦に裂けた
瞳孔でこちらを睨んでいて



目が合った俺達はその場で固まる。





そんな密度を増した空気の中・・・





「クェェェェェェェ!!」


生き物はけたたましい咆哮を上げた







『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!』





あまりの展開に、意気込んでいた俺達は泡を食って逃げ出す。


って何なんだよアレェェェェェ!!?





うわばばばばさんっ、まさか
アレが例の未確認生物なんですか!?」


「俺に聞かれても困るんだが!?」


「つーか完璧どっかで見たことあんぞオイ!!」


「いくらMGSPWがアレだからと言ってこれは・・・!」


「ボンカレー食ってたお前が言えた義理かよ!!」


言ってる場合じゃないネ!チャンスアル!
あのピンク猪木倒して賞金ゲットアル!」





勢いよく反転した神楽が怪物へ攻撃しようと
地を蹴って飛びかかるが


奴は足を踏み込むと、その場で回転し

尻尾をぶつけて神楽を別方向へと吹っ飛ばす。





「神楽ちゃん!?」


「マズイ!ジャック!


わかってる!俺達で奴の注意を引くぞ!」





続くクチバシの突きを辛うじて避ける神楽へ加勢すべく
拳銃を取り出し、間髪入れずに撃ち込む俺とカズだが・・・


怪物は 効いてる素振りを全く見せない。





「っくそ!化け物かアイツは!」


見た通りだろが!つーかお前が言うなソレを!」


「律儀にツッコまなくても大丈夫ですから
討伐に専念してくださいさんんん!!」








爪先を強く踏み荒らしながら こちらへと標的を変えた怪物が





「クェェェェ!!」





雄叫びを上げると、開いたクチバシから
火球を噴き出して俺達へ反撃してくる





「うわ!?」


「何っ・・・生物が火を噴くなど・・・!」


ギリギリで回避したものの・・・アレは厄介だ。





急所を狙おうとするこちらに気付いてか


翼を震わせ、怪物が素早く突進し―





「はぁぁぁぁ!」





棒高跳びの要領で槍を使い、飛び上がった

迎え撃つ形で怪物の片耳を破壊する。


と同時に怪物が怯み 動きを止める





「クェェェェ!?」


「おおっ、ナイスアシストね!」







だが・・・怪物は倒れないどころか益々殺気を体中から漲らせ





「クェェェェェェェェ!!!」





翼を震わせ両足で跳ねて怒り出すと


クチバシからまたも連続で火を吐きかけて


「さっきからるっせーよ
キョ○ちゃんもどきがぁぁぁぁぁ!!」






そこで堪忍袋の緒がとうとう切れたらしく


飛びかかった銀さんが、叫びと共に
振り上げた木刀で怪物の脳天をぶっ叩く。





「ク、クェェェェェェェ・・・・」





流石にひとたまりも無かったらしく

怪物は目に渦巻きを作って、気絶する。







ようやく生物の側へと近寄ると カズは
感心したような眼差しを銀さんへ見せた。





「木刀でこんなデカブツを黙らせるとは・・・」


「銀さんの木刀はどんな兵器よりも
強力なんだよカズ。」


「なるほど・・・RAYの口を破壊したという
ウワサも今なら納得できるな。」


「ほらほらと俺もどき、無駄話してねーで
さっさとこいつ運ぶの手伝えや。」


「だからカズだっつってんだろーが!」


キャッホー!
これで酢昆布10年分は軽いネ!」


「10年って、どんだけ貯蓄する気なの!?」





なんぞと話をしつつ、怪物を引きずるべく
取り巻いていた俺達の行動を







「・・・待ってくれみんな





静かに、けれど確かな強さを持って
問いかけた声が推し留める。





「どうかしたのか?」


殿・・・この生物、幕府に
引き渡された後はどうなるのだ?」


「どうなるってそりゃ・・・なぁ?


「息の根止められて、解体されんのが
相場って決まってんだろぃ。」


「これだけの巨大生物だし・・・NASAに
運ばれて解剖されるかもしれないな。」





口々に言うこちらに しかし目の前の緑眼が
"納得行かない"と語っている。





「・・・そこまでする必要はあるのか?」


続くその発言に俺達はハッとした。





「この者とて生きる為必死だったのやも知れぬ

人へ害なしたワケでもないのに殺されるのは
少々、非情ではないだろうか・・・?」







本当・・・コイツが言うとこの手の台詞
キレイ事に聞こえないのが不思議だ。







「・・・・・そうだな。」


「よし、それなら俺達MSFが責任を持って
被害が出ない離れ小島にでも運ぼう。」


「え、ちょっそしたら賞金は」


言いかけた銀さんの野暮な言葉に
ツッコミ入れかけたところで





前触れ無く、ムクッと怪物が身を起こす。





うわ!?もう気が付きましたよ!?」


「やる気アルか・・・って、アレ?」





身構えるも 奴は全く暴れる様子を見せず

ジッとアイツを見つめている。





「傷つけてすまなんだ、お主も生きる為に必死だったのであろう?
だがな・・・人の迷惑になるような事はせんでもらいたい

・・・お主の住むべき場所へと帰れ。





語りかける言葉を理解したのか、一つ首を縦に振り


「クェェェェ!」





一つ高く鳴いた怪物が 翼を動かすと
そのまま何処かへと飛び去って行った・・・







「すっ・・・すごいですよさん!


「怪物と話が通じるって、お前一体
どこのナ○シカアルか!」



「いや、目を見れば何となく分かった・・・
あの生き物は皆が思うほど悪い者でないとな。」





そう言うもんか・・・と感心していると

ギギっと銀さんと神楽が俺へ顔を向ける。





「そりゃともかくとして・・・オイ
お前今回全然ダメダメだったな?」


「全く、役立たずにも程があるアル」


なっ!その言い方はあんまりだろ!?
大体俺は無理矢理引っ張り出されただけだし!」


「オィオィ・・・言い訳は見苦しいぞジャック
役立たずだったのは事実だろ?」


「「お前が言うなぁぁぁぁぁぁ!!」」





山奥に三度目のWツッコミが木霊した・・・







その後 あの怪物の話は聞かなくなり
街にはいつもの平穏が戻った。


にしてもこの星にあんな生物がいるとは・・・

地球はまだまだ、俺達の分からないことだらけだ。





「・・・真面目に聞いているのかねジャック!」





そして予想通り・・・というか何と言うか
俺はゼロ少佐に小一時間ほど説教され







「つーか何してくれてんだピーマン娘ぇ!
せっかくの俺らの賞金をぉぉぉ!」



「罰として酢昆布12年分おごるね!」


「ちょ、何で2年割り増し!?


「オイオイお嬢ちゃんにそこまで言うのは
可哀相だろ・・・ここは一つ俺の歌を聴いて落ち着」


「「テメェは黙っとけやぁぁぁ!!」」





銀さん達は銀さん達で、小一時間ほど
賞金を逃した事に対し揉めに揉めたとか。








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:就活お忙しい中、退助様から共演ネタを
いただいちゃいました・・・どっどうしよう
とりあえず書いた共演でお返しになったかな?


銀時:知るかぁぁぁぁ!歩く死亡フラグのクセに
一辺も三途行かないって何事だぁぁぁぁ!!


新八:そこかよ!てゆかそれは当人が望んで
やってるワケじゃないんだしいいじゃないですか!


神楽:甘いネ!歩く死亡フラグ認定されてんなら
キッチリカッチリ三途に行くのがお約束アル!


新八:そんな約束してねぇから!
あんたら夢主を何だと思ってんのぉぉぉ!



カズ:それは管理人に言うべき台詞だろう?
まー落ち着いてマテ茶でも


新八:それはもういいわぁぁぁぁ!!


サニー:この話、ジャックあんまり活躍してないね


狐狗狸:まー一回くらいこんなんがあっても
いいんじゃないかと?作者様の計らいって事で