爆弾解体を終えた俺達は広い空間に戻ってきた。





センサーの反応がここからする・・・・・・


スティルマン、仇はとってやる







程なくしてローラースケートの滑車音が鳴り出す。





「ほう、もう解体出来たのか。ジャックの方は
色々とびくついていたようだがな・・・」





こいつ・・・・!おちょくりやがって・・・・!





「ファットマン!自分の師匠じゃ飽き足らず
江戸の人間まで巻き込む気か!!」


「貴様・・・・己の師を手にかけたと言うのか
一体何故・・・・・・・!」


ハハハハハハ!!あの時ヴォルギン大佐が
何を企もうと俺の知った事ではなかった!
俺の望みはただ一つ、爆弾界で伝説となる事だ!!」


「誰も貴様なんぞ取り上げない!!」


「いや・・・俺は確実に歴史に残る。
スティルマンを超えた男としてな。」





頬の肉皮を僅かに歪ませ上げるような
嫌味な薄笑いが、怒りを煽り立てる。





「お前はスティルマンを超えてなどいない!!」


「何?」


「彼の精神を受け継いでいない!!」


「ハハハハハハ!!」





こいつ・・・・!!





「何がおかしい!!」


「奴の精神だと?そんなものは死んだよ
・・・数年前のあの事故でな!」





数年前・・・・スティルマンが起こしてしまった
爆弾誤爆事故のことか





「スティルマンを超えた俺こそ
爆弾界のトップにふさわしい!!」


「ふざけるな、お前はただの爆弾魔だ!
最低の爆弾魔として永遠に語り継がれる!!
俺の知ってる爆弾魔はお前にない高潔な精神を持っていた!!」



違う!!俺はアーティストだ!!
これだから粗暴な軍人は嫌いだ!!」






ファットマンはそれだけ言うと、唐突に
ローラースケートを滑らせて走り出す。







「今からこのエリアに爆弾を仕掛ける!
その爆発は数十秒後に設定してある・・・
爆発させたくなければ、貴様で解体するんだな!!





させてたまるか!仕掛ける前に仕留めてやる!!











妙なニアミスは次回作へのフラグ











すぐに走りながらファットマンを狙い撃つが
ローラースケートですばしっこく、的がずれてしまう。





そうこうしている間にファットマンがC4を仕掛け続ける。







ホラホラどうした!
解体するのに精一杯か?ノロマめ!!」





くそ・・・あの豚野郎!!







でもファットマンの言う通り、仕掛けられた爆弾を
解体するのに手一杯だ・・・・


俺一人では手が回らない、どうすれば・・・うん?







「おい、この国に忍者って人種いるの知ってっか?」







ふと視線を移すと ファットマンのその隣


奴と同じ速さで駆ける全蔵の姿があった。





なんて足の速さだ・・・・あれが・・・忍者か!?







な、何だと!俺の足に追いついている!?」


「ローラースケートで忍者出し抜こうなんざ
100年早ぇよ!!」






全蔵はファットマンに足払いをかけ転ばせ
倒れた巨体を持ち上げた。







「ふんぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・!!」





うわスゲっ・・・・ファットマンのあのスーツ
中には大量のC4があるからかなりの重量のハズ。





あれを持ち上げるなんて・・・・


って、平気そうには見えないけど・・・







ー!パァァァス!!」





叫んで全蔵が奴を上斜めに向けて投げ飛ばし





その直線上に、高く跳んだが待ち構えていた。





「貴様に江戸を火の海にさせるわけにはいかぬ!!
・・・この場で屍をさらせ!!





空中で 手にした槍が神速の閃きを見せ
ファットマンの腹を斬りつける。







「のわぁぁぁぁ!?」





ファットマンはそのまま地面に叩きつけられ転がった。







な!?しまった!
ボムブラストスーツが裂けてしまった!!」


「ほお・・・・道理であの時いくら撃っても
血が出なかったわけだ。」







立ち上がる前に奴の腹を踏みつけ、露出した
裂け目をUSPで狙うと





「ファットマン・・・
あの世でスティルマンに懺悔してこい!!





俺は その裂け目にためらわず全弾撃ち込んだ。





「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」









断末魔を響かせ悶え転げるファットマンを
側に来た全蔵とも睨みつける。







「ファットマン、パーティは終わりだ!」


「・・・・・終わってないぞ・・・・」





呟いて 奴は何かの機械のスイッチを出して押す。


俺はすぐにその機械を取り上げ、ファットマンに銃を向けた。





「何をした!!」


「フフフ・・・・ファットマン様の最後のプレゼントだ
・・・・・超特大の爆弾だ・・・・」





何だと!?





「くそ!!」





機械を地面に叩きつけて打ち壊そうとするのを
ファットマンの言葉が遮る。







「無駄だ・・・・・
起動したが最後、もう解除は出来ん・・・・・」


「教えろ!!何処に仕掛けた!!」


「それは自分で考えるんだな・・・・・
爆発すればこの建物はおろか、半径1キロ
炎に包まれる・・・・・」


「何処までも貴様・・・!全蔵殿、殿!
私は周辺を探す、しばし待たれよ!!」








言うや否やは外へと駆け出していく。





ってオィィ!一人で行くなぁぁぁぁぁぁ!
つーかせめて冷却スプレー持ってけって!!」





しかしもう遅く、あっという間に遠くまで
突っ走ってしまった。







ったく人の話聞けよあの能面バカ娘!!









奴の方へ向き直ると今度は全蔵が屈んで呟く。







「・・・おいデブ、今半径1キロって言ったな?」


「そうだ・・・・・
ファットマン様が捧げる美しい炎が・・・」





瞬間 ファットマンの胸倉が思い切り掴まれる。





「言え!何処に仕掛けた!!
答えねぇとギフトにして送り飛ばすぞ!!!」






何だ・・・大して動揺を表さなかったのに
どうして今、こんなに血相を変えている?







疑問に思う俺を他所にファットマンは口の端を持ち上げ







「そうだ・・・・
そうやって慌てふためいて死んでいけ・・・・・」





楽しそうに言って、ついに目を瞑る。





「笑う・・・・門には・・・福・・・来る・・・・・・」







その言葉を最後にファットマンは動かなくなった。











「一体何処にあるんだ・・・凝った場所に
仕掛けている暇はなかったはず・・・・・」





効率で考えれば、ここで爆破した方が火の回りが速い
・・・・・だが何処にそんなものが・・・・







くそ!!胸糞悪ぃぜこのクソデブ!!!」





苛立った全蔵が床に転がるファットマンを蹴り飛ばす。







その下にあったものは・・・・・・・C4!?





「あった!!こんな所に・・・・」


「おいおいマジかよ・・・・・・」





爆発まで数十秒・・・早く冷凍処理しないと!


即座に冷却スプレーを吹きかけるが
デカイせいか、冷却速度が遅い・・・・







時間が、残り10秒を切った・・・!







まずい!間に合わない・・・・・と思ったその時







横からスプレーが吹きかけられ、冷凍処理が完了した。







「中身が残ってて良かったわ・・・後これ
に持たせねぇで正解だったな。」


「今回ばかりは助かった・・・ありがとう。」


「礼なんていいぜ。」


「・・・なぁ、聞かせてもらいたいんだが
さっきはどうして奴にあんな怒ってたんだ?」


「ああ・・・・お前、天眼通って知ってっか?」





天眼通・・・・まさか 天眼通の阿国の事を
言っているのか・・・?





「一応は・・・彼女が、どうしたんだ?」


「いや、そいつの家がこの近くにあるからよ・・・
爆発したらヤベーんじゃねーかなって・・・・」





全蔵はやや照れたように、ポソリと言う







なるほど・・・・どういう経緯かは知らないが
コイツにも護りたいものがあったんだな・・・・







あ!置いてきぼりだよ・・・
どうしよあのまま死にかけてたりしたら・・・?」


「ああ、俺が拾っておくから心配すんな
じゃあなライバル兵士。」


「え?ライバル兵士?」


「ほら・・・いっつもコンビニでライバル買ってたろ?
何処で会ったかと思ったが やっぱそうか・・・」





どっかのコンビニでニアミスしてたのか?







まあ意識してないから仕方ないが・・・・







「ライバルもいいが、たまにゃジャンプも読めよ。」


「ああ、そうする。」





ニッと口元に笑みを浮かべ、全蔵は何処かへと
去っていった。







・・・あ、C4の後片付けも手伝ってもらえばよかった。









しかし 何はともあれ







スティルマン・・・





アンタの無念を今度こそ払えたぞ・・・だから
安らかに眠ってくれ・・・・・・
















ファットマンとやらの仕掛けた特大爆弾を探すため
私は外に出ていた。







恐らくあやつは建物内にあると見せかけ、外に爆弾を
仕掛けたハズ・・・





見つけたものが内部に集中していたのがその証拠


私はそう簡単には騙されんぞ。







ある路地裏に出た時、不気味な笑い声が
風に乗って耳に届く。







咄嗟に槍を構え角の方へ身を潜めつ覗き込むと





そこに腰を抜かした浪士が数人と・・・


天人のような異形の人間が佇んでいた。







『ククククク・・・ここには、ジャックはいません。』


「そうか・・・・・殺れ。





男の声が異形に命じ、異形が浪士達へと顔を向け


―見えたその顔に驚愕した。







先程別れた殿の顔・・・!奴は一体何者だ!?







『笑え!笑え!!笑うがいい!!
アーッハハハハハハハハ!!!』






異形の者は楽しげに言うと、背中の触手で
浪士の頭を掴み地面に叩きつけた。







「うわぁぁぁぁぁ!!」





逃げ出そうとした浪士が後ろから触手で貫かれ





「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」





離れた所で倒れる浪士の頭が掴んで持ち上げられ
続いて足に触手が絡み 両側から引かれる。


あの者・・・あの浪士を引き裂くつもりか!





思わず助太刀に入るべく飛び出しかけ・・・





「オクトパス!!そこまでだ!!」


『ハハハハハハハハ!アーッハハハハハハハ!!』





先程の男の声が 異形へと突き刺さった







それでも行動を止めぬ触手にナイフが
突き立って、異形はようやく静止する。







『ん?


「一人残しておけ。」







一拍の間を置き 異形が触手を繰って
浪士を自らの顔の近くまで持っていくと





にやけた殿の顔で睨みつけた。







『この顔を忘れるな、お前たちの仲間を殺した男の顔だ。』


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」







解放された浪士は泡を食って逃げ出していく。









唐突の事で奴等の目的などは全く分からぬが
一つだけ 確かな事がある





奴を野放しにしていては、いずれ兄上に危害が・・・!







「待て!!」





去りかけた奴等の前に 今度こそ私は身をさらす。







「ん?誰だ貴様!!」


「人に名を尋ねる時はまず自分から名乗るのが礼儀だ。」


『ハハハハハハ!無表情で臆する事無く
言い放つとは面白い奴だ!!』








睨みあった短き時間の直後







「待て、侍の礼儀であろう。すまないなお嬢さん。」





私達の間に 黒いマントを羽織り
左目に眼帯をしている新たな男が現れる。







「私は・・・そうだな
ジョージ・シアーズとでも名乗っておこうか。」







この者・・・かなりの手練と見る・・・・!







「そうか、私は・・・ だ。」


何処かで聞き覚えが・・・・まあいい。
ここであったことは内緒にしてもらえないかな?」


「この者がいつ兄上に手を出すか分からん
そう安請け合いをするわけにはいかぬ!」


兄?そうか・・・わかった、どの道すぐ江戸を出る
君の兄に危害は加わらん。」





あっさりと言われ、流石に少し拍子抜けする。





「信用しても・・・・・いいのか?」


もちろんだ、私にもたくさん兄弟がいる。
江戸にも一人いるが・・・・まあいい。
その兄弟を思う気持ちは痛いほどわかる。」







意味は分からなんだが その言葉には
ウソが無いように思えた。









「ではこれで失礼させてもらう。」







こちらの言葉も待たずジョージとやらは
見慣れぬ車両に乗り込み、ナイフを持っている男が
変わりに私を睨みつけていた。







 か・・・・・
お前なら俺を殺せるかもな・・・・・!」





狂気染みた笑みでナイフを舐め 奴も車両に乗り込む







残った異形もこちらへ顔を向け





 ・・・・その顔、覚えておこう・・・
ククククククククク。』





瞬く間に私の顔に己が顔を変化させた。


こやつ・・・・変装の達人なのか・・・!?







驚いている内に異形が触手を車両へと絡みつけ







それを合図に車両は走り去り 闇へと消える・・・











「一体あの者は・・・・
あの感じ・・・殿に似ている・・・・


「おい、何処までほっつき歩いてんだよ?」





背後からの呼びかけに、慌てて私は振り返る







肩を叩いて顔を出したのは・・・全蔵殿だ。





「どした?何かあったのか?」


「・・・いや、何でもない。」


「ああそう・・・あの後爆弾が見つかって
無事解体したから、さっさとここズラかるぞ。」


「真か・・・一体どこに?」


あの野郎の下だよ、奴もそこまで凝った事は
しなかったみてぇだぜ?」


「そうか・・・安心した。所で殿は?


「大丈夫だ、あいつも先に帰った・・・さ、行くぞ。」







その後 仕事の件についてややごたついたものの
騒動に関しては沈静化されたのだが・・・・・・







あのジョージと言う男、一体何者なんだ・・・・・?








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:共演終了〜爆弾魔の因縁はともかくとして
似たもの同士の対面とサブタイ通りのフラグが


全蔵:俺、痔があるからあんま屈みこむとか
無理な力仕事やりたかなかったんだけど・・・


狐狗狸:それはまぁ・・・展開上仕方ないって事で


全蔵:てかあのライバル兵士といいといい
どこであんな動き身に着けたんだか・・・


狐狗狸:幼少からの努力と訓練と境遇の賜物ですな


全蔵:あとよぉ、アイツら出てきてよかったのか?
なんつーか話の時期的に


狐狗狸:今後の短編やら私側の共演長編にも絡むから
いんですよ、あと吉原編でナイフの人出てきますし


全蔵:サクっとネタバレすんなよぉぉぉ!!