満月が昇っている、絵に描いたような夜・・・
俺はある奉行所に忍び込んでいた。





何でも悪徳奉行が武器密売に関与しているとの情報が入り


早速潜入調査と、密書の奪取を命令され 今に至る。





ついでなんで、現在俺はあの作戦で手に入れた
『スピリット迷彩』を着ている。


着用時は夜間のカムフラ効果が上がり、いくら走っても
足音が鳴らない・・・つまり床の上を走っても
軋む音がならず足音で気付かれない仕組みだ。


これで気にせず敵の後ろを通り過ぎれるってもんだ





おっと とにかく、早いとこ密書と情報を
手に入れて脱出しないとな・・・・





事前入手した情報では既に潜入される事に感づかれ
奉行側が用心棒を雇ったらしい。





実力がどれほどかは分からんが


出来れば 出会わずに済みたいもんだ・・・・・







思いつつも周囲を用心しつつ、ある広い空間に
入ったその時 突然サーチライトが俺を照らした。


しまった!?もう気付かれていたのか!?





「残念だったな!!こちらはとうに貴様を
捉えていたのだ!!袋のネズミだな!!」






くそ・・・・!最近スニーキングをしくじるな・・・


今までしくじった事なんてなかったのに・・・・!





「話には聞いているぞ!
!!貴様の年貢の納め時だ!!」






定番のように室内隅の高みから見下ろす悪徳奉行が
せせら笑うような顔を向け





俺の目の前に 忍者の格好をした男が降りてきた。





「そいつは元お庭番衆で最強と恐れられた男だ!
いくら貴様でもそ奴には勝てまい!!」





忍者か・・・・


ウワサには聞いていたが、まさかこの状況で
日本のエージェントにお目にかかれるとはな・・・





残念だったな兄ちゃん、俺と対峙して
生き残った奴はいない。悪いが死んでもらうぜ。」


悪いな、俺は死ぬわけにはいかないんでな。」





長い前髪で半分隠れた顔の、口元だけで
不敵な笑みを浮かべる男に


俺は笑い返し、すかさずアサルトマシンガン
『M63』を取り出した。











腐れ縁って会いたくない奴ほど強いんだよね











これは装填数、威力に特化された戦闘用マシンガンだ。


一度に100発も撃てるから素早い相手にも
遠慮なくぶっ放せる。





「そんなデカいエモノで俺を倒そうってか?
やめとけ兄ちゃん。そんなんで俺は倒せねェよ。」


「やってみないと分からんぞ?」


「どうだか・・・なっ!





最後の一言と同時に、手にズラリとクナイが現れ


忍者は床を蹴って高く跳び そいつを大量に投げてくる







だがM63を唸らせ、俺は全てのクナイを
床へと撃ち落していった。







「ほお・・・言うだけあってそこらの奴より
使えるみたいだな。
いざとなったらを出すか・・・」





誰なんだ・・・こいつらの仲間・・・・?







「何をしている全蔵!!さっさとそ奴を始末しろ!!」







埒の明かない現状に、業を煮やした主が
忍者をたきつける。







「言われなくても分かってますよ・・・・ちっ


二人がかりならすぐ倒せるかな・・・・
おい!!出番だぜ!!





いよいよとやらがおでましか・・・・・・







呼びかけに、再び高台の上から誰かが
全蔵という男の隣に跳び下りてきた。







あれ?何処かで会った事あるような・・・・





目をよく凝らしてみるけれども


そこにいたのは・・・・間違いなくだった。







「な、何でお前がこんな所に!?」


「何だ?あいつと知り合いか?」


「・・・・・・いや、知らぬ。」





珍しくちょっと困惑してるな・・・・・まあ
あいつも仕事で悪徳奉行と手を組んでいる。


あまり深入りはよそうか・・・・うん。







とにかく、向かって来たへ当たらない程度に
M63を撃ち牽制したが





「・・・すまぬが仕事ゆえ、加減はせぬ





弾丸が掻い潜られ 鋭い槍の突きが襲いかかる。







咄嗟に避けたが、一瞬でも反応が遅かったら
やられていた・・・・・これが有守流の槍術か・・・







息付く間もない変則的な槍捌きを防ぎつつ反撃するが
こちらの攻撃もあまり当たってはいない





柳生の剣術も厄介だったがこれも十分厄介だ・・・・・







「おぉ中々やるなあいつ・・・珍しくがあんなに
苦戦してやがる・・・何モンだあいつ?
侍でもなさそうだし・・・・」


「気をつけろ全蔵殿・・・あの者は
兵士と呼ばれる人種で、侍より強い。


「兵士?なんだそりゃ?」


「私もよく分からぬが 強いのは確かだ」


「何をコソコソ話をしている?
それとも降参する気にでもなったか?」







距離を取り、二人がこちらへ視線を向ける。







ハッ!馬鹿言うなよ兄ちゃん
受けた仕事を途中で投げ出す主義はねぇんだよ」


「同じく」





だろうな・・・仕方ない、大怪我の一つ二つ
覚悟してもらおうか。







俺と全蔵、はお互い武器を向け睨み合う









間合いと攻撃するタイミングを計っていた時







突如奉行所から爆発が起こった。







「な、何だ!?何が起こった!?」


お奉行!!金庫が爆破されました!!」


「何!?」





高台にいた奴等は慌てふためき、対峙していた
二人でさえ動揺を隠せずにいる。





「オィオィ一体どうなってんだ?聞いてねぇぞ」


「何故ゆえ奉行所から爆発が?」


「この爆発・・・・C4か・・・!まさか!?





この爆発規模、的確な爆破ポイント・・・・
こんな芸当が出来るのは奴しかいない!!


しかし 奴は死んだはずじゃ・・・







このゴタゴタの内に奉行所にいた者は
泡を食らって逃げていった。





しまった、あの悪徳奉行も取り逃がしてしまったか







追うべく数歩踏み出した所で ローラースケートで
走る一人の巨漢が目の前に来る。







あいつには・・・・見覚えがあった。







「まさか・・・・ファットマン!?


「そうだ!久しぶりだなジャック!!」


「おい兄ちゃん、誰だこのデブは?」





問う全蔵へ俺は奴から視線を外さぬまま答える。





爆弾の天才と呼ばれたファットマンだ。
こいつは10歳で水爆を造り上げたんだ。」


水爆?何なのだそれは?」


「後で説明する。ファットマン!!
何故お前がこんな所にいるんだ!!」


「お前に復讐するためさ!あの時は
俺の爆破ショーを邪魔してくれたからな!!」



「だからと言って多くの兵士を巻き添えにした事が
許されると思っていたのか!!」






激昂すると、ファットマンは口の端を歪ませる
嫌味な笑い顔でこう言った。





「おっとまだ爆破ショーは続いているぞ?
今度はこの建物全体を吹き飛ばせる代物だ!」







それだけ言うと 何かを言う前にローラースケートで
奴は何処かに逃げていく。







「待てファットマン!!」


「笑う門には福来る!ハーッハハハハハハ!!」





くそ・・・!あいつ爆破を楽しんでやがる・・・・!!







この場に残された二人が、俺とファットマンとの
会話についていけず呆然としていた。





「さっきから何ワケわかんねぇ事言ってんだあいつ?
何か知らねぇけど 俺まで面倒に巻き込むなよな。」


「済まない・・・事情が変わった、あんた達二人は
どうにかして先に逃げてくれないか?」







顔を見合わせ 口を開いたのは







お断り申す 殿、仕事でないのならば私は
お主を見捨てるつもりはない・・・手伝わせてくれ」


「って待てよ!」


「全蔵殿、ここは一時休戦といかぬだろうか?
いつ爆ぜるか分からぬ爆弾が仕掛けられているとなれば
私達もただでは済むまい。」


「仕方ねぇな・・・おい兄ちゃん!
今だけ協力してやるよ。爆弾はどうすりゃいい?」


「これを使って探して冷凍処理してくれ!
匂い探知機と冷却スプレーだ。」





言って俺は探知機と冷却スプレーをに手渡す





匂い?オィ何で匂いなんて探知すんだよ?
爆弾って普通無臭だろ?」


「いや、ファットマンは必ず爆弾には香水を
つける癖があるんだ。それが奴の・・・
ファットマンの爆弾に対しての美学なんだ・・・」


「美学ぅぅ?なんつー気色の悪ぃ。」


「とにかく見つけたらすぐに冷却スプレーで
冷凍処理してくれ!見つけても冷静に対処するんだ。」





流石に全蔵は飲み込みが早く、理解を示した。







しかしは・・・いまだに手にしていたスプレーを
眉一つ動かさず見つめている。





殿・・・これはどう使えば良いのだ?」


ちょっ待てちょっと待て!噴射口を覗くな!
押そうとするな!使い方分かんねぇなら俺がやるから!!
センサーも俺が持つからぁぁぁぁぁぁ!!」





そうしてもらった方がいいかな・・・・


だと誤って身体に吹きかけて
夏の人間アイス再来になりかねんからな。


てゆか・・・渡す相手間違えたかも。







あ、これだけは伝えなければ・・・





「これだけは絶対守ってくれ、俺が全て
解除し終わったら発煙弾を撃つ!


最後の爆弾を見つけても俺が来るまで
絶対処理するなよ!!いいな!!絶対だぞ!!







言葉に対し、俺に向けられた両者の視線は
どこか訝しげだった。





殿?
何故そこまで怖い顔をしておるのだ・・・?」


「オィオィ冷静に対処しろって言ったの
アンタだろ?落ちつけよ。」


「あ、ああ・・・・すまない・・・・
センサーの反応だと10はあるな。」







こうして成り行き上 俺達三人で奉行所の爆弾を
処理する事になった。







全蔵はと同行し、俺は反対側で爆弾処理に当たる。





気をつけて奉行所内を進みつつ


センサーの反応を見て爆弾を探す。







「あった・・・」





発見したC4に冷却スプレーを噴射して
動きを止め、解体していく。







「ファットマン・・・あの時倒したはず・・・・・
いや、死亡は確認していない・・・運のいい奴だ。」






次の爆弾へと進みながら、俺はグロズニィグラードで
起こった事を思い出していた・・・・・・













あの時、グロズニィグラードの中継基地で
デットセルの一人であるファットマンが


俺を排除しようと基地内にC4を仕掛けていた。





そこにいる兵士もろとも・・・・・・







俺は基地の独房で出会ったファットマンの師
スティルマンに解体方法を教えてもらい
爆弾を順調に解体していった。







この時の俺はまだ経験の浅い新米当然で


思ったよりも簡単な作業だと、少し調子に乗っていた







それが・・・・あんな事になるなんて・・・・・









「最後のC4発見、簡単だったな。」





処理をして解体へ移ろうとした所に
スティルマンから無線が入った。





ジャック!最後のC4を解体したか!?』


「ああまだだ、だがこれで最後だ。」


『待て解体するな!!これはファットマンの罠』





止める言葉を聞かず、俺は最後のC4を解体する。







『・・・・遅かったか・・・・・』


「一体どうした?」


『ジャックよく聞け、ファットマンは最初から
君を殺すためにこの爆破ショーを始めたのではない。
全ては私を殺すためにやった事なんだ!!


何だって!?
でもアンタは独房に入れられているはずじゃ」


君が解体した直後に作動したC4が・・・・
私の目の前にあるのだよ。』





呟かれたその言葉に、俺は耳を疑った。





何!?すぐにいく!!」


来るな!!後1分もない!!
君も巻き添えになってしまう!!
見張りの兵士も泡を食らって逃げたから心配ないぞ。』


「だがアンタは!!」


「奴は私を超えたな・・・・・爆弾の技術に限りな。」







忠告にもっと耳を傾けて考えるべきだった
今になっても思う。







「スティルマン・・・・すまない・・・・
俺がもっとしっかりしていれば・・・・!


『フフフフフ・・・出来の悪い者の後始末には慣れてるさ
・・・・・私はな、もう目の前で若い命が
散っていくのは見たくないんだ・・・・






俺はここで、悔しさのあまり泣きそうになっていた。





『あの事故でも・・・多くの若者が命を落とした・・・
私はもうあの悲劇を起こしたくない・・・・』


「スティルマン・・・・・!」







無線から、スティルマンの怒号が鳴り響く。





『すぐにここから離れろ!!
爆発の破片が飛んでくる可能性がある!!


この炸薬量では建物ごと吹っ飛ぶ!!


ファットマンをこれ以上野放しにはするな!!
こんな悲劇を二度と起こさせないと思うのなら!!



「スティルマン!!」


『君のような若者に出会えてよかった・・・・・
命を大切にな・・・・』







何かを言おうとして口を開きかけた





まさに、その瞬間







『ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!』





無線越しに爆発音とスティルマンの断末魔が聞こえた







直後 無情にも通信が途絶える。







「スティルマン!!スティルマァァァァン!!!」





思わず爆発が起こった所を見ると、そこには
見事なキノコ雲が立ちこめていて


爆風で舞った小さい破片が 俺の所に飛んできた。









奴がローラースケートを滑らせて俺の目の前で止まる。


ワインの入ったグラスを持ちながら・・・・・





「うまいこと引っかかってくれたな、俺は
貴様を殺す気なぞ 一片たりともなかった。」





楽しげにファットマンはワインを飲み始める。







・・・俺はただ俯いて怒りを抑えるのに必死だった。







「うむ、いい味だ。
スティルマンに乾杯って所だな。」


「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!」





怒りに任せ、俺は拳銃を連射した。







ファットマンが 動かなくなるまで・・・・・・











事が収まってから、俺は少佐に無線を入れる。





『ファットマンを倒したな。』


「ああ・・・・
けど・・・スティルマンが・・・・・」


『ジャック、スティルマンは
何で死んだか分かるな?』





何も言えずに口を噤む俺に、少佐は淡々と告げる。





『言えないか・・・・なら私が言おう。
君の甘さが原因だ。


少佐!!いくらなんでもそれは』


『ここは戦場だ!一つの判断が人の死を招く!
君はそれをパイソンから学んだのではなかったのか!!』






俺は ただ黙る事しか出来なかった。







そう・・・戦場では僅かなミスや油断が死を招く





これは、俺の未熟さが引き起こした結果だ・・・







『気持ちを入れ替えろ、さもないと
次に死ぬのは君なんだぞ。いいな?』


「・・・・・了解。」





ようやくそれだけ言うと、そのまま無線を切った。







ゼロ少佐の説教を聞いたのはその無線と


ツチノコを持って帰らなかった事以外は何もなかった。













「・・・い、おい兄ちゃん 何ふけってんだ?





声をかけられ、俺はようやく我に返る。





うわ!?
な、何だ・・・・・・と全蔵か・・・・」


殿、こちらはあらかた片付けた。
そっちはどうだろうか?」


「ああ・・・・俺の目の前にあるのが最後だ。
何か怪しいものとか見つけなかったか?」


「いや、特には見当たらなかったが?」


「そうか・・・・良かった・・・」


だが油断は禁物だ殿、あやつを倒さなくては
また爆弾を仕掛けられるぞ。」


「そうだな・・・・今度はファットマンを探そう。
香水をつけてるハズだからセンサーに反応するだろう。」





そう・・・・ここで倒さないとまた
スティルマンのような悲劇が起こってしまう・・・・・







二度とあんな事を引き起こさない為に





絶対に・・・・・ファットマンを倒す・・・・・・!








――――――――――――――――――――――――
後書き(管理人出張)


狐狗狸:はーい、またもや二話連続での共演夢
書いていただけるなんて感激っすわ!


全蔵:なんつーかの知り合いって妙な奴多くね?
あの兄ちゃんといいジャンプ侍といい・・・


狐狗狸:それ、自分も勘定に入りますよ


全蔵:はぁ!?俺はいたって普通なんですけど?
一緒にすんなターコ!!


狐狗狸:・・・年末に銀さんとジャンプ奪い合って
死闘してる時点で普通じゃねーよ


全蔵:うるせぇぇぇぇぇ!


狐狗狸:ともあれ、次回のさんの活躍が
楽しみで仕方ありません