「姉上遅いですね・・・」





新八君の呟きは、さして騒がしくも無い
朝っぱらにはよりハッキリと聞こえた。







珍しく万事屋に金が入ったという事で


銀さん達と俺と、ついでにも呼んで
新八君の家で鍋をすることになった。





色々世話になっているお礼とお妙さんのために
鍋を作っていたのだが・・・・







「どこをどう間違ったんだ・・・」





これはどうみても闇鍋だ・・・





「冷蔵庫に入ってるやつ適当に入れたからな。
神楽、どうだ?」


「銀ちゃんの足みたいな味がするネ。」


「おいおい、最悪じゃねーか。兵器だよ兵器。」


「自分の足の裏だろ・・・」





ツッコミどころは色々あれど、問題はこの鍋の処遇だ。


新八君も同じ心境だったらしく銀さんに尋ねる





「ていうかどうするんですかそれ!」


「清潔に心がけるよ。」


うむ、いい心がけだ銀時。」


「足の裏じゃねぇぇぇ!鍋だよ鍋!!」





相変わらずの無表情で感心するにツッコミが
炸裂する間、神楽が何かを入れていた。





「・・・神楽・・・何入れてんのそれ?」


ハーゲンダッツアイスネ、姉御大好きだって言ってたヨ。」


「おお、鍋と好物を合わせるとはさすが神楽だ。」


「いや、それ好物を溝に捨ててるようなもんだから・・・」







お妙さんが帰ってきて、流石に身の危険を感じ





「片付けよう・・こんなのない方がいい!!」





銀さんと新八と俺は顔を見合わせ、テーブルごと
鍋を処分しようと端を持ち上げ始める。







「三人とも 心を込めて作った鍋を何処へ持っていくのだ?」


「やめろや〜、諦めたらそこで試合終了ネ!!」


「諦めろよ!闇鍋以外も何物でもないからぁぁぁ!!」





神楽との抵抗のせいでテーブルは一行に運び出せない。


そうこうする内に・・・







新ちゃーん、冷蔵庫にあったハーゲンダッツ知らない?」


「やべえ!早くもハーゲンダッツに気づきやがった!!」


早く!早くなんとかして!!」





慌てふためく中、銀さんは何とかハーゲンダッツを
鍋から救出しようと試みる





いや溶けてるし!それ以前に素手じゃ無理だろ!!







「アヅアツアツアツアッヅァァァァァ!!」





掬い上げられた塊が宙を走り


不運にもお妙さんの顔面に・・・・・・







数分後、ぼこられた顔とボロボロの服で俺と銀さん
そして新八君はコンビニに来ていた。





「「「ハーゲンダッツ100個ください。」」」


「お客さん・・・ハーゲンダッツ100個食べても
別に願いは叶わないよ?」


「いいから出せっつってんだろ、ハゲ。
代金は全部こいつで。」


「払わねえよ、きっちり3等分だ。」











夢は己が血反吐級の努力をしないと叶わない











「はァ インチキ宗教


「そやねん、エライもんにひっかかってしもて…」







銀時と新八と殿の三人がアイスを買いに行っている間





残された私達は、妙殿の連れてきた客人と話をしていた。







客人の花子殿は妙殿と同じ店で働く女人で
入水しようとしていた所を妙殿が助けたとか。









花子殿は無幻教と言う団体に騙され、踊り子になる
夢の為に溜めていた資金を全て奪われたらしい





「どうしてそんな?」


だまされてん!!あいつら人の弱みにつけこんで」


「何と言う非道な・・・詳しく話していただけるか?」





頷き、花子殿はその様子を訥々と語り始めた







・・・難しい話はよく分からぬが 要点をまとめると





夢を成功させるにはそれを掴む力が必要で





それを持っていた要人や有名人には、どうやら
ホクロに毛が生えてると言うので


擬似的に作り上げたそのホクロを買った・・・







語る言葉半ばで、妙殿は花子殿の顔を鍋に押し付けた。





「おのれは馬鹿かぁぁぁぁぁ!そんな汚らしいホクロを
携えてダンス踊るつもりだったんかァ!!
そんなんで人生左右されてたまるかぁぁぁぁ!!」



オーカサァァ!!這い上がって来い!!
泥の中から這い上がって来い!!!」


「妙殿 加減せぬと花子殿が溺死する」







どうにか窒息寸前で解放された花子殿が
息絶え絶えに言葉を続ける。





「・・・それからその無幻教に入信させられて
コツコツ溜めたお金 全部お布施でもっていかれてもうた」





他にも新聞を9枚取ってしまったり、消火器を
20個も買わされたと語られ







「私も似たような事があった故 お主の気持ちは分かる」


そやろちゃん!あの人ら強引やもんな!」





頷いたら花子殿に涙顔で手を握られた。


その後 花子殿はすぐさま妙殿に縋りつく





「とにかくもう江戸は恐いわぁぁ!!ウチこんな
コンクリートジャングルで生きていかれへん!!」



「おめえはナマケモノばかりのジャングルでも
生きていけねーよ!!」



怠け者のジャングル・・・銀時やマダオ殿のような
者ばかりが沢山いる森の中ということか?」


「今のはいい例えアルな!」


「二人とも ちょっとは空気読みなさい?









ひとしきり泣いて落ち着いたらしく 花子殿が
今の心境を静かに口に出す。







「大阪は人情の町や・・・勿論タチの悪い奴もおるけど
みんな、どこか他人と思えんあったかさがあるんや


でも江戸モンは冷たいねん、他人は他人で一線引いてしまっとる
ウチ・・・もうここでやっていく自信ないわ」







肩に優しく手を置き、諭すように妙殿は言う。





「死ぬほど苦しいなら地元に帰った方がいいんじゃない?
踊りなんて 何処でも踊れるんだから・・・」







確かにそうだ 踊ろうと思えば江戸に限らずとも踊れる。







「でも、まだ江戸に残って夢を追うっていうのなら
私はいつでも力を貸すわ。」





言葉を切り 妙殿が不意に縁側へと視線を向ける。







「江戸には江戸の人情ってもんがあるから・・・
ねぇ?銀さん、さん?







そこにはいつの間にか戻っていた銀時と新八
殿が各々アイスを頬張っていた。







俺ぁやらねえよ?宗教だのなんだの面倒だしな」


「さっき無幻教って言ったな?あそこの教祖はタチが
悪い事で有名なんだぞ。詐欺師の上に一度入信させられて
帰ってこない奴がどれだけいることか・・・」


「花子さんは無事やめれただけ良かったじゃないですか。」


「そーそー、お前ぇは大阪帰って踊ってな。
通天閣で踊り狂ってな。





花子殿は少しムッとした顔をする。


私も、今の言葉は少々聞き捨てならなかった





「銀時、殿。お主ら少し言い過ぎではないのか?」


「ちょちゃん その目少し恐いんだけど・・・」


「いや、俺無幻教の話しかしてないよね?」





まぁまぁと私を諌め 妙殿が銀時に向けてこう言った。





「あら残念、夢見る女の子は貯めこんでるものよ?
お金とりかえしたら報酬もはずむだろうに。」


「馬鹿いってんじゃねーよ、17,8の娘に
そんな額あるわけ・・・」


「オーカサ、いくらか教えてやれ。」





神楽に促され 花子殿は巻き上げられた金額を
含めた貯金額を私達へと公開する。







「・・・・・マジでか?」


「へえ、結構貯えたんだな?」


「おお、私も負けられんな。」


ちゃんも何か夢追ってるん?」


「無論、兄上との結婚資金にと・・・」


え 兄上?
ちゃん今お兄さんと結婚する言うた?」


「実のな。」





その瞬間 何故か花子殿は硬直してしまった













何はともあれ、俺たちは無幻教へ乗り込むことにした。
手作りのホクロ毛をつけて・・・







「みなさーん!!夢見てますかー!!!」


『見まくってまーす!!!』





なんつう気迫だよ・・・これ全員信者なのかよ・・・


まるで某ネズミの遊園地みたいだよ
版権に引っかかるから名前や映像は出せないけど。







「今日はダンサーを夢見る花子ちゃんが 新しい
夢追い人を連れてきてくれました!夢見てますかー!!


『見まくってまーす!』





2,3人やる気のない声が混じっている。





「ではそちらのお嬢さんの夢は何ですかー?」


「父の道場を復興することです!」


「花子ちゃんは言わずとしれた・・・?」


インチキ宗教に巻き上げられたお金を取りもど・・・」





余計な事言いかけた花子さんは、銀さんと
お妙さんに 同時で頭を叩かれた。


それを尻目に神楽が力一杯夢を宣言する







「私の夢はご飯一膳に「ごはんですよ」
全部まるごとかけて食べることです!!


でも夢は叶うと寂しいから
ずっと胸にしまっておこうと思います!!」


「はい、そーですか。君の夢は・・・・
どうせ目が良くなるとかそんなでしょ?」


「オイイイイイ!!ちゃんと聞けぇぇぇ!!!」


「ちなみに俺の夢は狙撃、突撃銃を共用している
M14EBRが欲しいです!!」


「はいマニアックな夢をありがとうございます。」





流し聞きって、興味なしかよこの野郎・・・・!







燃やした静かな怒りに気付かず 教祖はへ問いかける。





「えーちなみにそちらの三つ編み娘は何を叶えたいんだい?」


「私の夢は兄上と結婚することです!!」


「ハイ、兄のように慕っている男の人と結婚ですか。
ぜひ夢を掴んで幸せになってください!」


「あのー教祖さん、こいつが言ってるの
血の繋がった実の兄貴だから」





やっぱりと言うか当然と言うか・・・
案の定、教祖はちょっと戸惑っている





「あの〜、お嬢ちゃん。夢を叶えるのはいいけど・・・
法律は護らなきゃいけないよ・・・ね?」


「何故だ?ここは何でも夢が叶う場所ではないのか!」


「「それでも法律破ったら駄目!!!」」







表情を変えぬまま、腑に落ちない様子で首を傾げる
を物珍しい目で見つめる教祖。


その気持ちは ちょっとだけ分かる気がする。







「気を取り直して・・・ではあなたの夢はなんですか?」





問われ、銀さんはどこか遠くへ視線を向けて





夢?そんなの当の昔に忘れちまったい。」


「お前何しに来たんだー!」


「んなこと言われてもねーもんはねーんだよ。」


「夢が無いとは悲しくないか銀時」


「お前みてーに法律ブッチギリアウトな夢持つよかマシだ」





間髪入れずにアゴに槍の柄みたいなトコで打撃喰らって
少し悶絶する銀さんへ、新八君がささやく。





「銀さん、さらさらヘアーになりたいとか
そんなんでもいいんですよ。」


「じゃあサラッサラヘアーで。」


「帰れぇぇぇぇぇ!!!」







その態度の中で、俺は直感的に確信する





銀さん・・・何か試そうとしてるな。







「君達、ロクな夢持たないでここに入信してくるとは
・・・ホントに信者か?」


「そいつはこれから決める、何でもあんた
夢を叶える神通力とか使えるらしいじゃねーか。
そいつをこの眼で一度拝んでみたくてなぁ。」







なるほど 花子さんのお金を取り戻すついでに
奴の化けの皮を剥がすつもりか。







「何だとテメエらぁぁ!
斗夢様を愚弄する奴は許さんぞ!!」






いきり立った信者達が俺達へ野次を投げてくる。


今に見てろ・・・こいつの化けの皮を剥がせば・・・!







教祖の斗夢は、ふてぶてしい笑みを浮かべる。





「ククク・・・そんなに私の力がみたいか。

ここは夢を叶える理想郷、ここで修練をつめば
夢を叶える力を得ることができることを教えてやろう。」





言いながら斗夢が・・・何処かで見た構えをした。







「ドリィィィィィム・キャッチャァァァァァ!!」





おいぃぃぃぃぃ!それ思っくそ○Bのパクリじゃん!
んな薄っぺらい術で夢なんて叶うかあぁぁぁぁ!!







と、思えたのはその時だけだった。


次の瞬間、俺達はとんでもないものを目撃する・・・・・








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あとがき(管理人出張)


狐狗狸:まさかのさんとの共演で
潜入する話が出るとは!ありがとうございまーす!!


新八:ってこれ時系列おかしいでしょ!?


神楽:この話だと、まだここにいないネ


狐狗狸:まぁそこは銀魂だから大体の流れとか
無視して行きましょうよ!面白きゃヨシ!


銀時:テメェも結構いい加減だな


妙:それにしても 銀さんに新ちゃんにさん
・・・誰が勝手にアイス食っていいって言った?


銀時&新八:スンマッセン!!(土下座)


狐狗狸:そこで仁王になるのは止めてください(滝汗)


神楽:オーカサだけでなく、もセールスに
引っかかったりしたアルか?


狐狗狸:まあね でも幼少期のしつけと彼女の
トンチンカンぶり、あとお兄さんのお陰で
花子さんみたく購入までは行ってないよ


銀時:オイィィ!人の作品に勝手に自キャラ設定
乱入させすぎじゃね?


神楽:達に訴えられてしまえばいいネ!


狐狗狸:マジでか!?やっべスイマセンでしたぁぁぁ!