おーい、
すまねぇな〜場所取りに行かせちまって。」


「何、気にすんな 早く来いよ!」





向こうから近づいてくる銀さんとに、俺は
その場から動く事無く手招きして待つ。







江戸では随分昔から、春に入ると
花見と呼ばれる行事があるらしい。





内容は桜の花を見ながら飲んだり騒いだり・・・





ただそれだけの事に この国の人達は
こぞって桜の下を陣取るらしく


場所取りが苦労するからと銀さんに頼まれ


3日前からベストポジションを確保した。





ていうか、3日前からもう場所取りしてる人がいて
流石に驚いたが・・・







「お疲れ様、お弁当持ってきたわ。」


「おお、サンキュー。」





の弁当を真ん中に置き、俺達は確保した陣地に
ゆっくりと腰を下ろす。





「じゃあおっぱじめるか。」


「あれ?お妙さんは?」


「呼ぶわけねぇよ・・・折角の花見に
あんな可哀想な卵が並ぶ絵面は最悪だろ?」







まあ・・・・・分からんこともないが・・・・





今のはちとタイミングが悪かったな・・・







「銀さん、後ろ。」


「え?」


「何が可哀想な卵ですか?銀さん?」





ちょうど銀さんの後ろに お妙さんと
新八君、神楽が来ていた。











花見の酔っ払いはどこでも無礼講











「姉上、お花見くらい穏やかにやりましょうよ。
さん達お花見のこと勘違いしますよ。」





新八君の一言により、お妙さんの背負っていた
ヴォルギン三乗くらいのオーラが消え去る。





「それもそうね。」


「早く弁当食いたいアル!!」







た、たた助かった・・・危うく辺りが戦場になる所だ









三人を新たに交え お花見が始まった
・・・・・・とでも言えばいいのだろうか?







俺達以外の人達を見ても


皆一様に桜を仰いで弁当食って酒のんで
ドンちゃん騒いでハシャいで・・・ああ危ねぇなもう





とにかく、飲み屋の一コマと同じようにしか見えない







手製の弁当を摘みつつ 新八君に訊ねる。







「なぁ・・・花見って弁当食って騒ぐだけなのか?」


「それがこの国での花見ってモンだろ


「いやアンタには聞いてないから」


「一応桜を見ながらですけど・・・まあ
今ではそんな感じですね。」







そういうもんか・・・





確かに桜の花は話で聞くより 実物の方が
キレイではあるけれど


これをワザワザ騒ぐワケはやっぱりよく分からない







「桜がキレイでメシがウマいなら花見としては
文句なしの点数ネ!」



「まだ料理は沢山あるから そんなに急いで
食べなくていいのよ神楽ちゃん」







・・・神楽はまさに"花より団子"って感じだな
見たまんまで非常に分かりやすい。







「それにしても賑やかな花見なんて何年ぶりかしら・・・
父上が健在だった頃は桜の下でハジけたものね」





ハジけたって・・・・・何をどうハジけたんだよ・・・・







喉元からせり上がるツッコミが出るよりも早く







「ハハハハハ!
相変わらずこっちは賑やかですねお妙さん!!」






何処からか沸いて出た近藤さんが、お妙さんの肩を
実に気さくなカンジで叩いていた。





「また性懲りもなく出てきたのかゴリラァァァァ!!」





阿吽の呼吸で振り向き様に一発食らわせ
お妙さんはのしかかって拳の連打を浴びせ始める。









「・・・ホント懲りないよな・・・・近藤さん。」


「あれで警察っていうのも驚きよね・・・
アメリカじゃ考えられないわ。」


「悪かったな、俺達みたいなのが警察で。」





声のした方へ視線を向ければ、そこには
酒瓶片手に不機嫌面した土方さん達真撰組の面々が







何だてめぇら?ジャンフェスの再来かコノヤロー。」


「知るかよ、つーか何度も言っただろ
そこは俺ら真選組の特等席なんだよ。」





特等席ねえ・・・・・・・・・・・





「悪いが、俺は3日前からここ取ってたんだぜ?
それを今更特等席とか言われてもねぇ・・・」


3日!?お前ここに3日もいたの!?」


「メシとか大丈夫だったんすか!?」


「大丈夫ですよ、は目標に狙撃出来るまで
3日飲まず食わずじっと出来ますから。」


『何気にすげぇぇぇぇぇ!!』







さして自慢にならない事なのに 真撰組の人々と
ついでに銀さん達も驚いていた。


いや、嫌味とかじゃないんだこのセリフは





だって俺よりすごいスナイパー知ってるし・・・・・







「まあとにかく・・・そこ、退いてもらおうか?







言われて"はい、退きます"って退くほど
俺達は簡単な連中じゃない。







「ジャンフェスでも言ったろ?
俺達動かすならブルドーザーでも持って来いよ。


「M72A3でも持って来い。」


「ハーゲンダッツ1ダース持って来いや。」


「フライドチキンの皮持って来いよ。」


「グッチの鞄でも持ってきて下さい。」


「アンタら意外と簡単に動くな、約三名」





てーか、ほぼ現物要求じゃんそれ・・・







「何このデジャブ・・・・まあいい、退かねぇなら
今年も血の舞う花見になりそうだな」







その言葉と共に彼らが身構える。





俺達も自然と戦闘態勢へと入り―







「まあまあ、堅気のみなさんが
昼間からチャンバラとはいけねーや。」







俺達の間に割って入った沖田君が懐に手を入れ







「ここは一つ・・・」


「待て総悟、まさか・・・」





何故か戸惑う土方さんに構わず、おもちゃのハンマーと
プラスチックのメットを取り出した。





「陣地争奪・叩いて被ってジャンケンポン大会〜」


『またそれか!!』


「また?」


「ああ、去年も同じことしてたんですよ・・・」





さり気なく俺の横に移動していた山崎君が
ため息混じりにささやき、簡単なルール説明をする。







・・・過去に何があったかは知らないが


要はゲームの勝敗でこのポジションを
勝ち取ろうって事か。







「面白そうだな・・・俺にもやらせてくれ。」











そして、流れで三回勝負の大会が幕を開けた。







「では第一回戦はさん対清蔵さん!」





と向かい合うのは額にホクロのついた
神妙な顔の隊士・・・





見覚えがない、新しく入ってきた隊士か。







「では、心清らかにお願いします。」


「ええ、こちらこそ。」


「では・・・叩いて・被って・・・」


「「ジャンケンポン!!」」





がグー、清蔵がチョキ。の先攻だ。


しかし動きは清蔵の方が僅かに早かった





「これでセー・・・」


「はあ!!」





はスナップをきかせハンマーを額に投げる


それは見事に命中し 相手を仰向けに倒した。







「すごいわちゃん!!」


かっこいいアル!!」


「だ、第一回戦はさんの勝利!!





迅速な判断に無駄のない動き、流石だ・・・・





ルール的にはハンマーは投げて叩くモンでなく
持って叩くモンだが・・・まあいいか。







身を起こした清蔵が 何故か慌てて地べたを這う。





「わあああ!また私のホクロがぁぁぁぁぁ!!」





取れるの!?ホクロって取れるもんじゃないだろ!!







戸惑いまくる清蔵を他所に





「続けて第二回戦を・・・」





合図をするよりも早く、既に
神楽と沖田君が試合を始めていた。







「もう始めてんぞ!!
早ぇぇ!!ものっすげ早ぇぇぇ!!!」



「二人ともあの時と同じように
メットとハンマーを持ったまんまに見えんぞ!!」





二人ともハンパねーなおい・・・こりゃ
決着がつくまで時間かかりそうだな









突然肩を引かれ、振り返るとそこには


待ちくたびれて酒盛り始めちまってる
大人二人の姿があった。







「おぃ、オメェもこっち来て飲み比べろぃ」


「うおクサっ・・・もう飲んでんのかよ二人とも
いい年して飲みすぎはよくないぞ。」


「るせぇよ いいからこっちこいやぁ!」





顔を朱に染めた土方さんが乱暴に腕を引き
日本酒のビンを片手に迫る。







ちょ!!何して・・・」


「いいから飲め飲め!一気にいっちまいな!」


「や・・やめ・・もがががががが・・・・・」





抵抗するも、酔っ払い二人にガッチリ肩を掴まれ


俺は一気に日本酒を飲まされた







「いい飲みっぷりじゃねーか
おーし次はテッキーラいってみよぉかぁ!!」


「うぃ、上等だこら!


「もうどーでもいいや・・・俺も付き合うぜ!!







何か遠くで「またあの二人が乱闘に入ったぁぁ!」だの
聞こえるけど、そんなもん関係ねーや!









酒の飲み比べに参加してると





「ちょっと3人揃って何飲んでるんですか!!」





輪郭のぼやけた新八君がこっちにやってくる







「あれー新八が三人に見えるぅ」


「テメェ目ぇ腐ってんのか万事屋ぁ、五人だろ」


「お前らこそバカだろ人間は増えねぇよ
ステルスに決まってんだろー新八君?」


酔い覚まして来い酔っ払いどもがぁぁぁ!!
ああさんまでデロデロに・・・」





何だよ、あの二人はともかく俺はあそこまで
酔っ払ってなんかいません バカにすんなー





「細かいことは気にすんな新八よぉ
桜の下で食って飲んで騒いで、それが花見だろ」


「そうとも・・・桜の下ではじけるのが花見だ」


「黙れダメ大人!
ああもうさん完璧勘違いしちゃったよ!!」








頭を抱えてわめく新八君を見つめていると







「前から思ってたんだがよぅ・・・」





ゆらり、と土方さんが立ち上がり





ドンパチしか出来ねえのにぃ
なんでを腰に差してんだぁぁ・・・?」





俺の腰に差してあるレーザーブレードを指差す。







「俺の知り合いがくれたモンに文句でも
あんのか土方さぁん・・・
それに即席の剣術よりはドンパチのが性にあうんだよ」





言いつつ立ち上がると、あちらは機嫌悪げに眉をしかめる







「前から思ってたんだがな・・・
一度てめえと斬りあいたかったんだよな・・・


おっし、分かった。一度決着付けるか・・・」


「上等だコラ・・・」







俺達は互いに距離を取ると、刀を抜いた。







「ちょっとぉぉ!これ去年と同じじゃないですか!?」


「いいんだよ新八ぃ、たまには
ハッちゃけなきゃダメなんだよ。」


もう十分ハッちゃけてるでしょ!さんんん!
これ以上デロデロになったら監督に怒られますって!!」


「小島○夫がなんぼのもんじゃいぃぃぃぃ!!」


言っちゃったぁぁぁぁ!言っちゃったよこの人!!」







外野の叫び声なんぞオール無視で、真剣一発勝負の
斬ってかわしてジャンケンポンが始まる。







「「せーの・・・斬ってかわしてジャンケンポン!!」」





俺はチョキ、土方さんはパーを出し





「くたばれぇぇぇぇぇ!!」





瞬間 刀を放り、代わりに取り出したFA−MASを
目標目掛けて全弾撃ち尽くした。







「おいいいいい!もう斬ってねえし!!撃ってるし!!!」







手ごたえがあり 重い地響きが背後で響く









「土方さぁん・・・俺の勝ちだな・・・・
今まで潜入してきたのはこれで帳消しだな。」


テメェっ万事屋と一緒か!
グーしか出してねーじゃねーか!舐めてんのか!!」


「どうした?血すら出てねぇぜ・・・・?」


「まったグーかおい!!」







・・・後で気付いたが、この時はお互いグデングデンに
酔っ払いすぎて姿も声もハッキリしてなかった。





ので、俺の撃った弾は桜の木を一本
ボロボロにして地面に倒し


土方さんは定春とジャンケンを続けていた。







「・・・さんだけはまともだと思ったのに・・・」


「同感だよ新八君。」





地味な二人の呟きがやけにクリアに聞こえた気がした。











それから陣地の事なんかすっかり忘れ





桜の下で真撰組の人達も交えた花見を仕切り直し







一緒に騒いだり飲んだりして 輪は溶け込んでった。









こういうのが花見だっていうならば


皆が騒ぐのも分かる気がした。





色々あったが結構楽しかったので
今度はアメリカの連中も連れて行こうか計画中だ・・・








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:何度目だナウ○カLvで繰り返される
花見の回がここで繰り広げられました〜


銀時:ちょっ、春っぽいネタ台無しにすんなよな
そこはリメイクとかカバーリングとか復刻版って


新八:何にしても使いまわしでしょうがぁぁぁ!


狐狗狸:まーいいじゃないですか、この話は
アニメでも人気あるんだし


近藤:俺今回殴られたまま放置なの!?


妙:ゴリラは速やかに消えるのが世の運命ですから


狐狗狸:桜に映えるい〜笑顔で言わないで


沖田:桜の下には死体が埋まってるって
言いやすよねぃ 土方の


土方:その振りかぶったスコップは
一体全体何のつもりだ総悟コラァ!!



山崎:・・・さんも酒グセ悪いっすね


狐狗狸:飲まされた量が量ですし・・・


清蔵:私の出番はアレだけですか!?


狐狗狸:・・・・・・ご愁傷様(合掌)