「ハーックション!!」


「クシュン!!」





3月辺りからやたら風邪が流行ってると思った矢先


・・・・まさか俺達までかかるとは思わなかった。





あれだけ自己管理を気をつけてるっていうのに・・・・







俺とはマスクを着け、外出を控えて
安静にしてはいるが 風邪が治まる様子はない





「何だよこの風邪・・・・・やたら鼻水と
くしゃみばっかり出るし・・・目が痒い・・・」


「本当何かしら?インフルエンザでもないし・・・
かといって麻疹の類でもない・・・・」


「大事を取って、しばらくは外に出ない方が
いいかもしれないな。」


「そうね・・・・・・」





そこで、玄関の呼び鈴がなった。





「何だよこんな時に・・・・・・・」


、私が出るわ・・・・」


「いいよ、たまには俺が出るから寝てなって。」







身を起こし 玄関まで歩いて戸を開けると







俺の目の前には身長2m位ある、緑色をした
鬼みたいに怖い人が立っていた。






い゛・・・・・・・っ!?ど、ちら様で?」


「こんにちは、挨拶が遅れて申し訳ありませんでした
今度近所に引越してきました 屁怒絽です。


放屁の屁に憤怒の怒、ロビンマスクの絽と書いて
・・・・屁怒絽です。








礼儀正しくお辞儀をするその鬼の前で


俺はただ、冷静な顔を引きつらせていた。











外国で花粉症グッズはアウトオブ眼中











なななななななななななんだよこの怖い天人ぉぉ!?


江戸にまだこんな奴がいたのかよ!!







「あの・・・つまらないものですが、どうぞ。」





屁怒絽は、手にしていた小さな花の植わった
植木鉢を俺へと差し出す。





「あ・・・・ど、どうも・・・・・・・・」


「また何かとご迷惑をおかけすると思いますが、
何卒宜しくお願いします。





あくまで紳士的な態度は崩さぬまま、そう言うと
屁怒絽は家の前から去っていった。









姿が見えなくなってから扉を閉め





もらった植木鉢をテーブルへと置くと





俺とは同時に顔を引きつらせて見詰め合った。







「「こわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


何よあれ!天人にしたって怖すぎでしょ!!
遠くで覗いててもちょっと泣きそうになったわよ!!」


「言えてる!アレ絶対ぇヴォルギンのレベル3桁位
上だよ!めっちゃ怖ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!







てかあの天人・・・近所に
引っ越して来たとか言ってなかったか!?








「おっおい!ちょっと窓から辺り探せ!
奴の家を探すぞ!!


「分かったわ!!」







は双眼鏡、俺はPSG−1のスコープを手に
窓に張り付きそれらしい家を探した







あ!あれだ!!あれに間違いない!!」





・・・さほど苦労するまでも無く目的地は見つかった


万事屋のある辺りに見える馬鹿でかい木に
俺達はピントを合わせ・・・・・本人も程なく発見





うわ怖っ・・・それより何なのあの家・・・
大木を家にしてるんなんて・・・・・・」







しばらく木の方を眺めていたが、ふいに
声を上げて俺の肩を叩く。





あの家から何か出てるわ!!」


何!?ホントだ・・・・何だあの粉。」


「まさか、この原因不明の風邪はあれのせい?」


「かもな・・・だったらあいつは
地球を征服しに来た天人に違いないだろ・・・・」


「てことは、さっき置いてった植木鉢・・・・
まさか・・・・・」









そこで俺とは顔を見合わせて







次の瞬間、急いで外へと飛び出す。









「って、わー!ルガーMk.U置いてきてしまったあぁぁ!!
サプレッサーいらずの麻酔銃があぁぁぁぁぁぁ!!



「諦めなさい!爆発したらどうするのよ!!」


「えっ、爆発すんの!?あの植木!?」





その言葉で戻ろうとするのをためらった俺と
入れ違うように が戻ろうと身体を引き戻す。





「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!首飾り置いてきちゃった!
ブランド物で高かったお気になのに!!」



「んなの諦めろ!毒ガス出たらどうすんだよ!!」


「えっ、毒ガス出るの!?あの花!?」







俺達がワタワタとうろたえている時に





「あらさぁ〜ん、ちょうどいい所に
いるわねぇ 回覧板届けに着たわよ〜!」





回覧板を手にアゴ美・・・・じゃない安住さんが来た。







んなのん気な事言ってる場合か安住さん!!
悪魔の植物で地球が征服されるかもしれないんだぞ!?」


「あらやだどうしたのお二人さん?
花粉がとうとう脳みそにでもいったのかしら?」


「さりげに見下してんじゃないわよこのアゴ!!」


「誰がアゴじゃコルルァァァァ!!」





お前だお前!ったくこんな時に
ホンっトのん気な奴だよアゴ美の野郎!!







この人は俺達の懸念などお構いナシに、回覧板を
へと手渡して さっさと去っていく。





「じゃさんにちゃん、私仕事に戻るから。
じゃあねー!またお店に遊びにきてねぇん。


「うげっ・・・二度と来るかぁぁぁぁぁ!!





去り際の投げキッスに吐き気を催し
思い切り中指おっ立てて叫んだのだった。







「あー・・・そういえば、あそこで
一時期働いてたんだっけね?」


「う・・・・・・・
思い出したくなかったのに・・・・・・」









そう 過去に一度、俺は『かまっ娘倶楽部』のママ
西郷特盛さんを化け物呼ばわりしてしまい





結果、あの店のオカマ『幸美』として働いた事がある。







ちなみに源氏名の由来は"幸が薄そうな顔してるから"だと


・・・・・・余計なお世話だ









「ああああああああああ!!」


「どうした!?」





見やれば、回覧板に目を落としたそのままで
が震えた声で呟く。





「どうしようっ、回覧板
次まわすの・・・・・・屁怒絽さんの家よ!?


「えええええええええええええ!!」







なんてこった・・・よりによって
征服者の所に回るなんて・・・・・・・・・・





・・・・・どんな罰ゲームだよ?











気を取り直し、俺達は一旦部屋に戻ると
装備を整え 回覧板を回しに行く事にした。





まずは屁怒絽の家の前で様子を見ることに







先程の観察同様、花に水をやってるな・・・


一見すると 普通に花屋を
経営してるようだが・・・・・・油断は禁物だ。







「嬉しそうね・・・とても征服を企んでいる
ようには見えないわ・・・」


「いや、アレは兵器の量産具合を喜んでるんだ。」


「そ そうね・・・でも、この回覧板
どうやって渡しにいく?」





確かに、辺りには通行人はいない為
それらに紛れて置きに行く事は不可能だ・・・が





「任せろ、俺に考えがある。
ステルスで隠れてこっそり置きに行くんだ。」





俺は回覧板を受け取ると、装備してきた
ステルス装置を押す。


これなら肉眼では見えない・・・安全に置きに
行く事が可能だ。







屁怒絽の家へ少しずつ近づく。







この調子ならあと数センチ・・・・・と思ったら


ふいに屁怒絽が、植木鉢をこちらに向かって投げた。





「な・・・・・・!?」





予備動作ナシの動きに判断が遅れ、植木鉢が
直撃し その拍子にステルスが切れてしまう。







「駄目じゃないですかさん!
危うくアリを踏み潰すところでしたよ!!」



「あわわわわわわわわ・・・・・・」


「殺生はいけません、ね?


「いや、ああああのっ俺・・・回覧板届けに・・・」


「ああ、そうでしたか。ワザワザご苦労様です
けど 何も隠れなくてもよかったのに・・・・」





え゛!?こいつステルス状態でも見えるのかよ!!







「あ、どうぞさん中へ。
そちらにいるさんもどうですか?





やば!が隠れてるのもばれてる!?
何者なんだこいつ!?







「え!?い・・・いえあの・・・・・・」


「お、おおおおお俺達散歩ついでに
来ただけだから・・・・・」


そうですか?でも、仕方ない事とはいえ
植木鉢を当ててしまいましたからお詫びに・・・」


「いえホントお気遣いなく屁怒絽大統領!!


「屁怒絽でいいです。」







俺と、姿を現したは手を振りながら必死に
誘いを断ろうとする。







「いやあの俺ら・・・・・仕事に行くついでで
来たのであんまりゆっくりできないっていうか
なんていうか・・・・・・・・」


「そ、そそそそうなんですよ
本当に申し訳ないですわ屁怒絽首相!!


「屁怒絽でいいですってば。」







何でもいい、一刻も早くここから逃れなければ





間違いなくこの鬼に・・・・・ひぃぃぃ!!







「「とりあえず、これでさようならぁぁ!!」」





俺達はそう言い切ると、オリンピックの陸上選手
真っ青の猛ダッシュでその場から逃げた。









「一応回覧板は置いてきたから任務完了だよな!?」


っ、そんな事どうでもいいから早く!
早くあの鬼から・・・・・・・・」


さーん!さーん!待ってくださーい!!」







肩越しに振り返れば、後ろからもんのすごい速さで
追いかけてくる屁怒絽の姿がぁぁぁぁ!?





「「鬼が来たぁぁぁぁぁぁ!!?」」





互いの走るスピードが更にアップする。







っ、早く走れ!アレに捕まったら絶対
三途通り越して極楽浄土に導かれるぞ!!


「早く走ってるわよ!じゃないと
危篤状態の後、三途通過しちゃうしね!!


「待ってくださぁぁぁぁぁぁい!!」


「「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」







後ろからの恐ろしいオーラに振り返る事が
出来ず、そのままがむしゃらに走った結果







行き止まりについてしまった!!





「い、行き止まり・・・・!!」


「ど、どどどどどうしようっ!?」


「やっと 追いつきましたよ・・・・」





行き止まりからの出口から、情すら容易く
踏みにじるような鬼が こちらへ近づいてくる。







・・・もはや、これまでか・・・・・!







「どうやら覚悟しなきゃいけないようだな・・・」


「そうね・・・・・・・ここで死んでも
あいつを道連れにできれば、地球が救える・・・」





俺達は覚悟を決め 懐に隠した拳銃を持った。







「いいか、仕掛けてきた瞬間惜しみなく撃て。」





ギリギリ聞こえる音量での呟きに、
僅かに首を縦に振る。









じわじわと近寄り 屁怒絽は口を開いた。







「あの〜お二人とも、落し物ですよ。」


「「え?」」





軽い口調に、思わず俺達は間の抜けた声を出す。







屁怒絽は苦笑交じりに俺へと近づいて





「いえ、あの時植木鉢ぶつけちゃったでしょ?
その拍子にこれが・・・・・・」





エプロンの袋から、拳銃を取り出して
手の上へポンと置いてきた。







これ・・・・・・・・・敵の武器奪取用に
忍ばせていたリベレーター


まさか、これを渡す為だけにワザワザ?







さんにさん 仕事がお忙しいのは
分かりますが、慌てたらいけませんよ?


「「は・・・・・・・・はい・・・・・・」」







こうして、この事件は解決したのだった





つーか事件っていうものほどではなく
単なる誤解の産物だったのだが・・・・・・・













その後、立ち寄った万事屋でこの風邪の正体を
聞いたら・・・・・・・・途端に大爆笑された





「「ぎゃあぁぁぁははははははははははは!!」」


「ちょ、ちょっと銀さんに神楽ちゃん・・・
笑いすぎ・・・ププ」


「オメェもちゃっかり笑ってんじゃねぇぇ!!」


「ていうか何でそんなに笑うのよ!!!」


「いやまさか花粉症を伝染ウィルスとか生物兵器とか
勘違いしてる奴がこんな近くに・・・ププっ!


「なんかスッゲーむかつくんだけど・・・・・・・」







こめかみをひくつかせる俺に、銀さんは
腹の立つ笑顔のままで肩を叩く







「まーくん とりあえず、良かったじゃない。
生物兵器じゃなくって・・・・・ブフゥッ!


「「「ギャハハハハハハハハハハハハ!!」」」


「「笑うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」







散々笑われた事は悔しいが・・・・まあとにかく





屁怒絽が地球征服を企む天人じゃなかった事と


この病気・・・花粉症は、江戸での季節の
風物詩的なものだったということが





分かっただけよしとしよう・・・・・・








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後書き(退助様サイド)


退助「3月の末になりましたが、やっと
屁怒絽さんのご登場となりました。」


アゴ美「え〜私の出番あそこだけ・・・・・・
って何で名前表記がアゴ美なんじゃコラァ!!」


退助「だってあの安住も俺の思い込み変換だし・・・・
Wikiにもアゴ美って書いてあったし(事実)」


アゴ美「今すぐ編集してくれるわぁぁぁ!(駆け)」


屁怒絽「でもビックリしました・・・さんは
あんな物騒なものをいつも持っているんですか?」


退助「そ、そそそそそそうなんですよ。
ちょっとワケありで彼・・・だから殺さないで。」


銀時「ていうかあいつら余計なこと知ってんのに
なんで花粉症程度の事を知らねーの?おかしくね?」


退助「だってアメリカに杉ないからスギ花粉もないし、
花粉症になる位 花粉が飛ばない土地だもの。」


新八「そうなんですか、なら そっちは春は過ごしやs」


退助「やーでも、そのかわり竜巻とか発生しやすくて
そっちの死傷者結構多いんだけどね。」


新八「ちょおおおぉ致死レベル!?
花粉よりよっぽど危険じゃないですか!?」


退助「土地には土地なりの苦労があるのだよ」


銀時「てか、オカマやってたんだー初耳」


退助「あれはねー、彼がオカマの免疫がなくってさ
西郷さんに思わず『化け物だ!!』っつったのが原因。」


新八「それはまぁ、災難でしたね・・・・・・・」


銀時「何だ あいつも吉原で太夫になれんじゃん
したらあのブラコンも加えて六太夫か?」


退助「まあ出来なかないでしょうが・・・・・・
ほぼトラウマ再発ですな。」