捜せ!何処かにいるはずだ!!必ず見つけて斬り捨てろ!!」


「ったく・・・しつこい奴らだ・・・」







高杉の誘いを断ってから、目をつけられたらしく
あれから俺は事あるごとに攘夷浪士に追われている





・・・何処からそんな情報を聞いたのか知らないが
なんにしても迷惑な話だ。





奴らを撒くこと最優先で、俺は近くの柵を跳び越し身を隠す。







くそ!何処にもいないぞ!」


「他をあたれ!」





浪士達の声と足音が遠ざかる・・・


どうやら気づかず行ったようだ







一息ついて後ろを振り返ると、央国星の大使館が見えた





やば!よりによってこの間潜入した場所に逆戻りなんて!!


まずい、まずいってレベルじゃない・・・早く抜け出さないと・・・


立ち上がった瞬間、足に激痛が走る





クッ・・・さっきの銃撃 足に当たってたのかよ・・・」





このままじゃ大使館の警備隊に捕まって最悪 死・・・







何かが足に当たり、慌てて下を見やれば
そこにいたのはアザラシみたいな見慣れない生物





「・・・な・・・何?」


「キュウゥゥゥゥ。」





愛らしい鳴き声でそのアザラシは俺の足に擦り寄ってきた


普段なら頭のひとつも撫でてやる所だが
生憎今はそんな余裕なんてない





「おいちょっと・・・どいてくれ・・逃げれな・・」







アザラシを剥がそうとするも・・・遅かった。


バ・・・もといハタ皇子がこちらへ近づいてきた











バカだって話せば良い悪いぐらい分かる











「おお〜そこにいたか宇宙アザラシの太助
・・・うん?誰じゃそち、新しい庭師か?」


「あ・・・ええと・・・あの・・・」


やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!







俺の動揺に全く気づく素振りなく、皇子は足に身を寄せたままの
アザラシに不思議そうな視線を送っている。





珍しいの〜太助がそちに懐いておる。
余にしか懐かないはずなのに・・・ほれ」





差し出した手を踏み台に アザラシは凶悪なジャンプを
見せて皇子の頭に生えた触角を噛み千切った


いやそれ懐いてねぇぇぇ!てーか意外と怖ぇこのアザラシ!!





再び足に擦りつくアザラシに恐怖を覚えていると







「うん?そち怪我をしてるようじゃな 大丈夫か?」


ああ、いいんです!お構いなく!!
てゆうかあなたこそ頭の方を手当てした方が・・・!」


「あーいいのいいの、これすぐ生えてくるから
それよりそちの方が大変じゃろ血だらけで。爺!!





呼び声に 皇子の後ろから緑色の顔をした付き人が現れる。





「爺、この者怪我をしておる。手当てをしてやるぞよ。」


「いやあんたもでしょ皇子 まーた厄介そうなモン拾ってきて
地球人の一人二人、野垂れ死にさても罰はあたら・・・」


「何を言うか!太助が懐いてる者を野垂れ死になぞ
余が許さん!!いいから早く手当てを施せ!!」



分かりましたよ皇子がおっしゃるなら・・・
タンカー持ってきます。」





一括され、渋い顔をしながらも付き人は奥へと駆けてゆく。







「待っておれ、すぐに手当てしてやるぞよ。」


「いや頭・・・まあ、あの ありがとうございます
でも、何でそこまで・・・」


「動物に懐かれる者に悪い者はおらんのじゃ
だから、そちを見捨ててはおけんでの。」







・・・ただの馬鹿とだけ思っていたが、間違いだったな。


馬鹿ではあるけど 動物思いの一国の皇子だ。











それから俺は大使館の医務室へと運ばれ、そこで
治療を施してもらった。





・・・さすがに天人の技術は優れてる。すぐ痛みが消えた。







しかし、話はそこで終わりではなかった







「傷は治ったようじゃが、まだ安静にせねばな
今日はここに泊まると良いぞ。」


「いや、治療だけでもう十分なんで・・・」


「何を言っておる。良いな?絶対安静じゃぞ?」


「はいはい・・・・」







強く念を押され、仕方なしに皇子の要請を承諾し


ここの家政婦に案内された部屋に泊まることとなった。









俺は人が周囲にいない事を確認し、持っていた無線を
取り出し に連絡を入れる







そう、あの皇子の家に・・・でも 大丈夫なの?
一度そこに入って破壊工作したんでしょ?』


大丈夫だろ?痕跡は残してないし、
大体からここの連中はアホだからな。」


『ならいいんだけど・・・何か武器は持ってる?』


「ナイフと拳銃程度だ・・・だが問題ないだろう。
仮にバレても、浪士も迂闊には手は出さないハズだ。」


そう?でも気をつけてね。』


「分かってるよ、じゃ。」







無線を切り、仰向けにベッドへ沈み込む。





・・・仕方ない 今日だけここに泊まるとしよう









とりあえずはそのまま眠りにつこうと目を閉じた所で
ハタ皇子が部屋に入ってきた為、慌てて半身を起こす。





「あ、皇子・・・スイマセン」


「苦しゅうない、楽にしていろ。」


「ありがとうございます・・・あの、聞いてもいいですか?
何で 得体の知れない俺を助けたりしたんです?」







ぶしつけな質問だとは自分でも分かっていたが
責めることなく、皇子は笑みを浮かべて答えてくれた。





「動物に愛される者を放っておくわけにもいかんしの。
近頃は、地球人もそう悪くはないと思えてきたのじゃ。」


「そうですか・・・。」


「それに、この間の爆弾事件で宇宙ゴキブリの五郎が
死んでしまってとても悲しくての・・・


もう目の前で 命が死ぬのは見たくなかったのじゃ。





寂しげにうつむく皇子に、釣られて俺もうつむいた。









この間の爆弾事件・・・高杉と鉢合わせした時の事か・・・







・・・いくら脅威があるとはいえ、本人にとっては
大切な一つの命を 俺は奪ってしまった





すまない事をした・・・心の中でだけ、そっと呟く。









「湿っぽくなってしまったの、とにかく今の世の中
不況だのなんだので心が荒んでおる。


皆が余のようにラブ&ピースの心を持てばよいのにのぅ
自然と 世の中も変わるぞよ。」


ラブ&ピース・・・か・・・」







そこの所は、他の国にも見習って欲しいものだな・・・







「何じゃ、しけた顔をして・・・そうじゃ!
特別に癒されるペットを今から呼んでこよう!!」


「いや余計な気遣いは本当いらないんで!」







俺の言葉を無視して付き人を呼び始めた皇子に
立ち上がって 断ろうとして―











外から響いたけたたましい爆発音が館内を揺るがした。







「な・・・何事じゃ!?


「爆発?」







血相を変えて入ってきた付き人が、息を切らしながら叫ぶ。





「皇子っ大変です!攘夷浪士が襲撃してきました!!」


「何じゃと!?」


「浪士が・・・」





何てこった・・・!
奴らがここまでなりふり構わない連中だったとは!





「ここは危険です!皇子、すぐに避難を!!」


待て!この者も連れて行け!」


「皇子、俺のことは構わず逃げてくれ・・・
恐らく奴らの狙いは 俺だ。







これ以上ここにいたら、皇子の身が危険だ


彼を避難させ 俺もこの場から離れねば・・・・







「何を言っておる!そちも一緒に逃げるんじゃ!!
命を無駄にしてはいかん!!」



「だが・・・・」







再び爆発が起こる。
恐らく外の警備隊とやりあってるのだろう







皇子、俺なんかのために必死にならなくてもいい。
頼むからもう気にするな。」


貴様!こんなんであっても一応一国の皇子に
対してその口の聞き方は・・」


こんなんって何だコラ爺?いや、今は
言い争いは後じゃ・・・余はそちを護る義理がある!
皇子の命令じゃ!そちも共に避難せよ!!







ここまで真剣な目で言われたら、離れるわけにも
いかんな・・・しばらく同行してやるか!









失礼いたしました、では共に避難いたしましょう。」


「分かればよい。」





今度は警備隊が泡を食った様子で顔を出す。





「大変です!!浪士が数人防衛網を突破してきました!!」


何!?何で通した!!真選組は呼んだのか!!」


「何故地球人にそんなことを言われなければいけない!!」


よい!この者にも状況を知らせよ!!」





皇子の言葉に警備兵が面食らった顔をし、渋々頷く。





皇子・・・分かりました。真選組はもう呼んだ。
奇襲でラインが固まらなかったのだ。」


「ここに武器は?」


「ない。とにかく皇子、早く避難・・・がっ!?





警備兵が倒れ、その背後から刀を構えた浪士が現れる。





「いたぞ!だ!!」







まずいな・・・もう来やがったか。





「皇子!下がって!!」





俺は素早く拳銃を取り出して刀をはじきとばし、
間髪入れずに懐へ入り みぞおちを食らわせた。







「ゴハッ!?」





うめき声をひとつ上げ、浪士が床に倒れこむ。







「強い・・・」


「助かったぞ、褒めてつかわそう。」


「皇子、今はとにかく避難を。」











それから皇子と付き人との三人で館内を移動し
隠し扉から部屋へと入り







「わ、わしはここから救援を呼びますので
皇子とあんたは奥の方で避難しててください」





付き人と通路で別れ、俺達二人は奥にある部屋に立てこもる。









ざっと見た所 状況は結構悲惨だ・・・上手く救援が届いて
真選組が来てくれれば 何とかなると思うが・・・


まずいことに、足の傷がじくじくと痛み始めてきた。





大丈夫かえ?先程ので足の傷が・・・」


「大丈夫ですよ、これくらい大したことはない。」





心配させまいと笑顔で答える・・・そうさ、こんな傷の
一つや二つに構っていられる場合じゃ





足音と共に、即席バリケードした扉が大音量で叩かれ軋み


その様子に驚きおののく皇子を背にかばい
俺は武器を手に扉の前へと対峙する。





程なく扉が破壊され、浪士達がなだれ込んで来た。







くそっ、もうここまで入ってきたとは・・・


警備隊の弱さを差っ引いても、ここまで簡単に
たどり着くとは予想外だ・・・!







ついに見つけたぞ、
やはり天人と手を結んでいたとはな。」


「おいおい、何かの間違いだろ?
いつ俺が天人と手を結んだっつーんだ?」


「今更ごまかしが聞くとでも?その証拠に央国星の皇子
行動を共にしているではないか。」


「言い逃れは出来んぞ、貴様に攘夷の鉄槌を下さん!覚悟!!」





一斉に刀を引き抜く奴等に、俺は銃口を向け







「そうかい、じゃあこっちも本気で・・・・・っ!?





一歩踏み出した途端、足の傷口が開いて血が出てきた。


激痛を堪え切れず その場に膝をついてしまう。





くそ、こんな時に・・・!!







「手負いだったか・・・なら斬り捨てるのは簡単だ。
やってしまえ!!







雄たけびを上げ襲いかかる浪士達と、俺の間に





足を震わせ ハタ皇子が割って入った。









ややややめんか!この者は足に怪我をしておるのだぞ!!
手負いの人間を斬るのが、さ、侍のやることなのか!!


何してる・・・どいてくれ、斬られるぞ。」


「こっこここの者の命を奪うようなことは
余の目が黒いうちは ぜぜぜ絶対に許さんぞ!!







皇子・・・怖いクセに無茶しやがって・・・





「だがこのままでは二人もろとも斬られる・・・
頼む そこをどいてくれ皇子・・・!





必死に声を振り絞るが、彼は首を横に振るばかり







「しゃらくさい、天人が命を語るか!
ならその目を白くしてからも斬り捨てるのみ!!」






痺れを切らした浪士が皇子へと刀を振り上げる





「ひぃぃぃ!!」


「やめろぉぉぉぉぉ!!」







俺が叫んだその時、後ろの壁が爆発し
全ての者達の動きが 止まった










立ち込めた土煙を断ち割って







「御用改めである!真選組だぁぁぁ!!」





啖呵を切って登場したのは 土方さん達だった。







「皇子達ぃぃ!遅れてスマンかった!
どうにか救援を呼び込めたぞぉぉ!!」






彼らの隣にいる付き人が 叫んで腕を振り上げる





よかった・・・これで何とかなる・・・!







真選組!?もう来たのか!!」


「くそっ、おのれ!
ならこのバカだけでも斬り捨ててやる!!」






最後の悪あがきとばかりに浪士の一人が皇子へと斬りかかる


―今度こそ、させるものか!





俺はとっさに皇子を突き飛ばし ナイフでかろうじて
刀を受け止めると、空いた手で渾身の拳をお見舞いした。





僅かに受け損ねて頭から流血するが


・・・大した傷ではないので 放っておく







!?何でこんなところに!?」


「何をしている・・・!早くこいつらを・・・!!」


「あ、ああ!てめえら、まとめて召し取るぞ!!







真選組が部屋へと押し寄せ、浮き足立った浪士達を
次々と検挙していった。







・・・・・・やれやれ、これで本当に助かった













捕り物も終わり1時間後 俺は大使館を出ることにした


・・・一応今回の奇襲の原因だった俺が、
いつまでもいるわけにはいかないからな







何も言わずに去るつもりだったのだが 俺がいない事に
気づいたらしく、ハタ皇子が走りよってきた。





とやら!待つのじゃ!!」


「皇子・・・」


そちには命を助けてももらって感謝しておる!だから・・・
またここに来てくれんか いつでも歓迎するぞえ!」


「・・・・ええ、機会があれば・・・ね。」





言って微笑むと 皇子もニッと笑い返してくれた。





「そちもラブ&ピースの心を忘れるでないぞ!」


「もちろん!」







俺達は握手を交わし、大使館を後にした。









外に出ると 側の曲がり角に土方さんが
タバコを咥えて佇んでいた





・・・下の吸殻の量からして、あれから俺を待ってたらしい







「遅かったじゃねぇか、早速用件を言っとくぞ


あの連中から締め上げた話だがな・・・
お前 強硬派の連中から懸賞金を掛けられたみてぇだぞ?」


「俺が?」





土方さんはたばこを吹かせながら話を続ける




ああ、何でもその懸賞金を掛けたのが一人の侍らしい。
生憎 相手が誰かまでは分からなかったが・・・」


「そうか・・・いや、そこまで分かれば十分だ。
わざわざありがとう。」







手を上げて 俺は彼と別れて家へと戻ってきた。







っ何このヒドイ怪我!頭からこんなに血が・・・
あの大使館の珍獣にかじられたの!?」


「いや、そういうワケじゃ・・・」





帰ってきてからも 散々に頭の怪我やら何やら
指摘されて心配されて泣きつかれて・・・大変だったが。







しかし ラブ&ピース・・・・か


・・・・もしアメリカを先導するときは、ぜひとも
この言葉を使わせてもらおうかな。








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:久方振りの出張と、まさかのハタ皇子
短編です・・・考えもしなかったよ


爺:だよなぁ、普通こんな・・・馬鹿皇子と
マジな話を書こうなんてしないもんな


狐狗狸:うんうん でもおかげで面白い話読めたし
アンタもいい所それなりに見せれたんだし
退助様に感謝しなきゃねー


皇子:・・・お主ら、わしの存在ないがしろかコラ


爺:あーすいまっせぇんハt・・・ヴァカ皇子


皇子:今普通に言えそうだったよね?
ワザと言い直したよね?



狐狗狸:はいはい話内でシリアスモード使い切った
からってここでハッチャケ無いよ触角二人


土方:てか、のヤツに懸賞かけた侍って
誰だコラ?あん?


狐狗狸:それはー…オイオイ判明で(苦笑)