今日も平穏な江戸の街 そこにいつものことながら
暇な万事屋の前に・・・ある人物が立っていた
「ここが・・・万事屋銀ちゃんか、よし。」
少女は小さく決意すると、万事屋の玄関を叩く。
「誰かいないの?」
「はーい!どちら様ですか?」
戸が開き、出てきた新八が応対する。
「ここが万事屋ね?
頼みたいことがあって来たんだけど・・・」
少女が言う合間に、銀時と神楽も玄関へと集う。
「おお、お客さんか。ていうかみたいな格好してんな。」
「かなり珍しいアル。」
「ささ、立ち話もあれなんで上がってください。」
「・・・そう?それじゃお邪魔します。」
案内された少女は椅子に座り、即座に依頼内容を明かす。
「実は・・・ある人を探してるの。」
「ある人?」
「オィオィ、まさか名前だけが手がかりの
生き別れのピーマン兄貴とか言わないでくれよぉ?」
「サイト内で聞いたからそのネタは!
てーかあんな事そうそうねぇからぁぁぁぁ!!」
彼らのやり取りに少女は眉をしかめつつ
「全然違うわ・・・写真があるの、
数年前の写真なんだけど・・・」
腰のポーチから一枚の写真を取り出して
テーブルの上へと置く。
3人はそれを覗き込み・・・・・・
「おい!これじゃねーか!」
「?何言ってるの、こいつはジャックよ。」
「いえ、そのさんがそうなんですよ。」
「・・・って奴が?」
「そうアル、お前もオタク集団の一人アルか?」
「何よそのオタク集団って!!」
「何だっけ・・・・フォーリン・・・じゃなかったっけ?」
「違うアル、フォルスネ。」
「違うでしょ!!フォックシャ・・・だったけ?」
「FOXでしょ!フォしか合ってないし、
何なのあんたらさっきから!!」
女の誤解は早めに解かないと惨劇の元
「ああ、すみません・・・・・毎回こうなんです。」
「よく疲れないわね・・・・・・」
「で、に何の用なんだ?」
「・・・あんた達には関係ないわ。」
少し顔を歪ませ 少女は素っ気なく呟く。
「んだよワケありか?
とりあえず呼んでやるけど、あんた名前は?」
「テリコ、テリコ・フリードマン。」
「テリコさんですか、僕が電話してきます。」
新八は電話のダイヤルを合わせ、の家へと通話を始める。
「・・・あ、忘れてたわ。これ報酬ね。」
テリコは懐から札束が入った封筒を取り出すと
無造作にテーブルの上へと乗せる。
「ちょ、マジでかぁぁぁ!
電話一本でこれだけもらえるのかよ!?」
「ま、これでいいものでも食べに行きなさいよ。」
「キャッホー!酢昆布食い放題アル!!」
「何その悲しい使い方!?」
周囲の空気に戸惑いながらも、新八は用件を
伝え終えたらしく受話器を下ろす。
「テリコさん、さん今行くって言ってましたよ。」
「そう・・・ありがとう。」
「そういえば姉ちゃん、あんた・・・下は色気ねえな。」
「初対面の人に何最低なこと言ってですか!!」
「そう?下も自信あるんだけどな・・・・・」
「ケッ、ボン・キュ・ボンのバランス悪いくせに
舞い上がってんじゃねーヨ。」
「あんたに言われたくないわ。」
少しピントのずれた雑談をしている間に、が到着し
万事屋の玄関から上がりこんできた。
「・・・よお、銀さん。どうしたんだ?」
「おお、やっと来たか。女がお待ちだぜ?」
「女?」
「きっと昔の女ネ。慰謝料請求しに来たアル。」
「でたらめ言わないの!!」
何なんだよ一体・・・てか女って誰だよ?
と、思っていたら前から茶色混じりの迷彩服を
着た女性が現れた。
「あんたが・・・・ジャックね。」
「そうだが・・・何か用か?見た所 日本と
何処かのハーフみたいだけど・・・・」
女は答えず、後ろ手で何かを持つ仕草をする。
キッと鋭い視線を寄越したまま彼女は
「先輩の仇・・・・・・取らせてもらうわ!!」
唐突に叫んで 取り出したマシンガンを容赦なくぶっ放す。
念のため身構えていた俺は、瞬時に横に避けた。
「わああぁぁぁぁぁ!何やってるんですかテリコさん!!」
「お前っ 蜂の巣にされるようなことやらかしたの!?」
「してねーよ!イキナリ仇って何のことだよ!!」
「とぼけないで!!あんた何したか分かってるの!!」
「やっぱり何かしたアル!不潔ネしばらく近寄るな!!」
「だから違うっつの!何その目!止めてくれよ皆して!!」
「何よそ見してんのよ!!」
弁明の合間にもテリコは引き金を引きつつ俺を狙う。
「うお!わけも分からんっつーのに・・・・」
「あんたを地獄に送って先輩に謝ってもらうわ!!」
「だからその先輩は誰だっつの!!」
「忘れたとは言わせないわ!
・・・シャドーモセスでオルガ先輩を殺したことを!!」
その一言は、俺を驚愕させるには十分だった。
「何だって・・・オルガを殺した!?俺が!?」
「そうよ!!オルガ先輩は父親の仇を
とるためにあの反乱を決起したのよ!!!」
まったく・・・・せっかくオルガの誤解を解いたっつーのに
・・・また面倒くさくなってきたな
万事屋を戦場にするワケに行かず、外へと出ながら
サブマシンガン『Vz61』を取り出す。
「逃げる気ね!!待ちなさい!!」
とりあえずは狙い通り テリコが追いかけてくる。
スナックお登瀬の前を戦場にしたら後がうるさい・・・・
一旦、路地裏に回って広いところへ出るしかない。
路地を駆け始め 間を置かずに銃撃戦が始まった。
テリコが持ってるのはUZI(ウージー)
超軽量型のサブマシンガンで女性でも扱いやすい銃だ。
火力もあるから正直厄介だな・・・
路地の障害物を使い、俺とテリコは弾を混じり合わせる
「お前・・・スペツナズにいただろ!」
「そうよ!先輩にみっちりしごかれたからね!
そう簡単にやられると思ったら大間違いよ!!」
遠くから、サイレンの音が近づいてくる
まずいな・・・銃声を聞きつけて真撰組が動いたか。
「おいテメェら!何路地裏でドンパチやってんだ!!」
げ・・・来たのがよりによって土方さん・・・・・・・
「あん?じゃねーかよ。誰だこの女?」
「邪魔しないで!邪魔するならあんたらも殺すよ!!」
「んだと上等だコラァ!!」
安い挑発に乗って土方さんはテリコに斬りかかろうと
だぁぁ!ただでさえ誤解されてる火元に油を注ぐなぁぁ!!
咄嗟に俺はレーザーブレードで土方さんの刀を受け止めた。
「・・・何のつもりだテメェ?」
「だぁかぁら!話聞こうよまずっ、話し合い優先!!」
「何で私を助けたのよ!先輩を殺したあんたが!!」
「お前も聞けぇぇぇぇ!!」
ようやく説明と弁解のチャンスが巡ってきたので
俺は土方さんにここまでの経緯を話し、
テリコにもオルガのことを説明した。
「そりゃまたエライ話だな・・・」
「嘘よ・・・オルガ先輩が・・・リキッドに殺されたなんて!」
「本当だ。俺は彼女とリキッドが乗るREXと戦った。
だがオルガはREXの機銃を受けて・・・・」
「何で・・・何で・・・・助けなかったの?」
「助けたかったさ。だが」
「だが何よ!一緒にいたんでしょ!!側にいたんでしょ!!」
テリコは激昂しながら俺の胸倉を掴む。
「何で助けなかったのよ!側にいたくせに!!」
「おいおい、落ち着けよ。」
「部外者のあんたは黙ってて!!」
「な・・・・・何だとこのア」
テリコの目から流れた涙が、土方さんの言葉を詰まらせた
「おーい、どうしたんでぃ?」
「沖田さん。あれ」
「あん?の旦那に土方さんじゃないですかぃ。」
間がいいのか悪いのか、そこに沖田君と山崎君がやって来た。
「お前ら、遅かったじゃねぇか」
「ちょっと野次馬の処理にてまどいやした。」
「あの・・・ところで副長、誰ですこの人?泣いてません?」
「みんなぁぁぁぁぁぁ、聞いてくれぇぇぇぇぇ!
土方が女子を泣かせてるぜぇぇぇぇぇい!!」
沖田君はスピーカーの音量を最大にして周囲に叫んだ。
「でたらめなこと言ってんじゃねーぞ総悟ぉぉぉぉ!!」
土方さんは沖田君目掛けて突っ走り、山崎君は
集まり始めた真撰組の群れの中へと逃げていく。
まったくこんな時にあのチンピラ警察24時は・・・
テリコは涙を拭い、俺の方を向き直して叫ぶ。
「・・・あんたが死ねばよかったんだ!
あんたが死ねばオルガ先輩は助かったのよ!!」
「テリコ・・・・・・それは違う。」
「なのに・・・・何で先輩を見殺しにしたあんたが
のうのうと生きてるのよ!!」
「違うんだ、リキッドは用済みのオルガを殺そうとした。
たとえ俺が死んでも・・・オルガは殺されてただろう。」
「そんなの関係ないわよ!!」
取り出した拳銃を握り、テリコは俺の右腕を撃ち抜く。
「クッ!?」
「旦那!!」
「総悟、処罰は後回しだ!を助けるぞ!!」
「動かないで!!」
土方さん達に視線を向け、テリコは次に左足を撃つ
「ぐあ!!」
「!!」
「動くなって言ってるの!次動いたら心臓狙うわ!!」
「ちっ、あのアマ・・・」
沖田君はいつの間にか構えていたバズーカを地面に置いた
「お前それも道連れになるだろーがぁぁ!!」
「大丈夫でさ、旦那なら何とかなる・・・といいな〜」
「願望!?」
ならねぇよ!この時ばかりはテリコに感謝だな・・・
って、んな事考えてる場合じゃない。
「テリコ・・・もうこんな馬鹿なことをするな。」
「何が馬鹿なことよ!先輩を殺したあんたに
そんなこと言われる筋合いはないわ!!」
「そうか・・・だったら 俺を殺せ。」
「な・・・・・・!?」
「お前の気がそれで済むなら、それでもいい
俺はオルガに謝りに行く・・・お前に殺された後にな。」
黙り込むテリコ・・・じれったかった俺は
彼女に近寄り、拳銃を握った手を掴むと
その銃口を 胸に当てた
「ちょっと!?」
「さあ・・・撃て。」
テリコは手を震わせている。
・・・・・・俺は テリコの本性を見破っていた。
誰かの死を間近で見た者、或いは誰かを手にかけた者は
無意識のうちに どこかに闇を帯びる。
けれど彼女には・・・テリコにはそれがない。
テリコは―誰も殺したことがない。
それ所か 戦場も経験していないハズ・・・
俺の予想通り、テリコは拳銃を手から離した
「何で・・・何で手が震えるのよ・・・
先輩の仇を取れる絶好のチャンスだったのに・・・」
「誰も殺したことがないんだろ?俺にはわかるぞ。」
「あんたに何が分かるのよ・・・あんたに・・・」
「もういい、俺を殺してもオルガは喜ばない。
俺を殺したら目の前にいる奴らに斬られるのがオチだ。」
口をつぐむテリコに、俺は淡々と続ける
「・・・だが、俺を責めるならいくらでもやればいい。
俺はそれだけのことをした お前にはその権利がある」
それを聞いた瞬間、テリコは俺を押し倒し、
上に乗っかって胸を叩いた
「あんたのために、何で先輩は死ななきゃいけないのよ!
何であんたがここに生きてるのよ!!
私の親代わりだった先輩を殺したあんたがどうして!!
先輩を・・・・・・・先輩を返してよぉぉぉぉぉぉ!!」
泣き崩れるテリコを前に、俺はただ
黙り込むことしかできなかった。
「・・・・・・総悟、撤収だ。」
「へい・・・」
事情を察してくれたらしく、土方さん達は
真選組を連れて帰っていった。
入れ違いのように 銀さん達がやって来る。
「さーん!無事ですか!!」
「テリコどうしたアル?何で泣いてるネ?」
「・・・こりゃ・・・」
「銀さん、しばらく好きにさせてくれ・・・」
「分かった・・・」
頷き、銀さん達もその場を立ち去った・・・・・・
それから1日経って
俺は松葉杖を突きつつ、と空港に来ていた。
「怪我、大丈夫?」
「大丈夫じゃねーよ、誰のせいだと思ってんだ。」
「フフフ・・・
でもちょっとは薬になったんじゃない?」
「よせよ・・・」
あの後、どうにかテリコと和解でき
アメリカへと帰る彼女を見送りに来たのだ。
「私・・・色々あったけど・・・
頑張っていくわ。アメリカでね。」
「ああ・・・
そうだ、FOXに来いよ。お前なら大歓迎さ。」
「いいの?」
「もちろん。向こうには連絡してあるから」
「分かったわ。じゃ、また・・・」
テリコは寂しげに飛行機へ向かい・・・
途中で立ち止まると、こちらへと振り返り
「ありがとう!先輩の本当の仇をとってくれて!」
そう言って 初めて笑顔を見せてくれた。
彼女の乗り込んだ飛行機が空の彼方へと消えてゆくのを
見送って、俺達は空港を後にした・・・
近いうち またFOXに新しいメンバーが入るだろう。
・・・これでまた にぎやかになるな
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後書き(退助様サイド)
退助「え〜まずは小説が長すぎたことにお詫びを・・・」
テリコ「いんじゃないの?私の初登場の回だし。」
新八「まーここの管理人も話長くなるフシあるし・・・
でも、結構いい話でしたねコレ。」
神楽「最後らへん 妙にエロいね。媚びてんじゃねーヨ」
退助「何処が!?何処にエロ要素があんだよ!!」
土方「つーか戦場経験してないのに、なんで
あの女 あそこまで強いんだよ。」
テリコ「スペツナズはソ連の中でもエリートの兵士を
訓練する所だけど、それ故か受ける訓練も厳しく 毎回
脱落者が絶えない所よ・・・私と先輩はそこを潜り抜けてきた」
沖田「なるほどねぃ、それで
あそこまで旦那を圧倒できたってことかい。」
退助「まあ本当はスペツナズじゃないんだけど
『銀魂×MGSシリーズ』に合わせて設定を大幅チェンジで」
新八「にしては随分変わってますけどね・・・」