賑やかな歓楽街から離れた、かぶき町のうらさびれた
路地にある愚痴り屋の屋台で
「親父ぃ・・・記憶が飛ぶくらいのもう1本」
銀髪の天然パーマがベロベロに飲んだくれ
空になった銚子を差し出していた。
「旦那それくらいにしときなって、何があったんだい?」
見かねたように訊ねる店主へ、彼はとろんとした目でがなりはじめる。
「せっかくバトルモノのゲームに参加できたっつーのにさぁ・・・
歴代のジャンプキャラが勢揃いしたゲームがよ?2時間でクリアできる
お試し当然のゲームにボロ負けするなんざ納得できねーよ・・・」
「旦那、あっちは世界に誇る大ブランドですぜ?
ジャンプとはいえ寄せ集めて勝てりゃ世話ねぇでしょうや。」
「ドラゴンボールとか北斗の拳とかだって世界ブランド物じゃねぇか。
なのに配管工と戦国武将にも負けちまうなんてよぉ・・・」
「土俵が違ぇよ。てかさっきから思うんですがね
仮に売上1位とっても旦那の手柄にゃならんでやしょ?そいつぁ」
慰めながら熱燗を目の前に置かれても
銀時の口から吐き出される愚痴は留まらず、店主も思わずため息。
「うるっせぇよ!アレさえ売れりゃジャンプ効果でオレらもあっち側に
行けたかもしんねーじゃん!世界側に飛びたてたかもしんねーじゃん」
「そいつぁ無茶ってもんでさぁ、聞いた話じゃあちらさん
トンデモねぇツールを使ってるそうじゃねぇかぃ」
しかめっ面でそう返した直後
勢いよく立ち上がった客に、店主は目を見開いて固まる。
「そうだそれだ!!その手があったか!!」
「えっちょっと何が・・・あららいっちまいやがったよ・・・」
思い立って立ち去った銀時が、乱暴に置いていった勘定を
数えながら呟いて彼は
二度目のため息交じりに片隅で突っ伏すもう一人の客を見やった。
「ウィ・・・」
「ほら、旦那もその辺にしときなって」
「親父ぃ・・・これ書いたの一年以上前だし
当時のランキングうろ覚えなんだよ。」
「はぁ」
「しかもロクにメールもよこさない体たらくだしさ・・・
こんな俺でもさ・・・ここの管理人、受け入れてくれるかな・・・?」
「・・・しらね」
573の回し者?違う!オレはただMGSシリーズを
マーケティングしたいだけのドおたくだ!
翌朝
銀時は新八と神楽を連れ、源外の工房へと訪れていた。
「・・・で、達の元ネタプロダクションに忍び込んで
データを盗んで欲しいと?」
「ああ、オメェなら楽勝だろ?」
「ふざけんな。」
目の前の侍と瓜二つの顔をしかめ
かつてひと騒動を起こした機械、坂田 金時は機嫌悪げにこう返す。
「わざわざオレを目覚めさせたのがそんな下らない理由かよ!」
「朝っぱらから何かと思えば・・・まだそれ妬んでたんですか?」
「勝ち目ないことくらい見え見えだたアル
もう勝負ついてるのに今更どうしようって言う気アルか。」
事情説明にかこつけてゲーム売上1位になれなかった恨み節を
延々と聞かされたため 子供ら2人もジト目で呆れている。
「仕方ねーだろ?たまが協力してくんねぇんだから」
「当たり前だろ、それにあそこのデータ盗ってみろ。
絶対ぇロクな事にならねぇぞ?」
言われて彼らが想像をめぐらせれば・・・
「見損なったぞ銀さん。これでアンタ達とのコラボはお破産だな」
「盗人死すべし、慈悲はない」
冷え切った声で淡々と怒りを乗せる赤い目のと
サングラス越しに右目の瞳孔ガン開きさせ、わけのわからんネタを
口走るカズヒラの姿が容易に浮かんでいた。
「た、確かにそうですね・・・」
「最悪MGSキャラ全員日本に来なくなるネ」
「元からほとんど来てねぇからいいだろ?
てーか本来銀魂にゃいねぇハズの連中ばっかなんだしよぉ」
呑気に鼻くそをほじる銀時へ新八が声を上げる。
「いやダメでしょ!?あっちサイド日本好きが多いんですから!」
「つーことだ、オレは寝るぜ」
踵を返し 眠りへつこうと歩き出した金時の足は
「・・・データを盗んでこればJスターズに出られるとしたら?」
その一言でぴたりと止まる。
「知ってるぜ、テメェがJスターズに参戦したがっているのをさ」
「な、何故それを!?」
「そうだろ?赤犬・ラオウ・志々雄・・・人気ライバルキャラも
大勢出張ってんのに出られねぇキャラもいるんだぜ?お前もそのクチだろ」
身体ごと向き直った相手の目が見開いているのを確かめ
「奴らの人気を途絶えさせてJスターズに人気が向けられれば
そーいった浮かばれねぇキャラどもがダウンロードコンテンツとして
追加で登場することだって十分可能だ。そうだろ?」
不敵な笑みで銀時はつかつかと歩み寄り
「それを成し遂げるにはお前の力が必要だ・・・兄弟!」
金時へと手を差し伸べた
じっと、手を見つめ・・・彼は意を決して手を伸ばす
「やろう、兄弟!」
「ああ、俺達がいれば向かうところ敵なしだぜ」
「交わしたぁぁぁぁ!最低最悪の兄弟の契を交わしたぁぁぁぁぁ!!」
「金ちゃんは銀ちゃんのダメな部分を補っただけだから
根本的な部分は一緒アルな。」
最悪の事態に たまらず新八がツッコミつつ割って入る。
「アンタら何やらかそうと企んでんですか!?
今更そんな事してもJスターズに出られるわけないでしょうが!」
「おいおい新八、テメェもサポートキャラですら
出られなかったくせにやせ我慢してんじゃねーよ」
言葉を詰まらせた所へ、ダメな大人二人ががっしりと
新八の肩をつかんで畳みかける。
「オメェだってToラブるなサポート受けたいだろ?
ギャングのツンデレに罵倒されたり高飛車女にメロメロにされたいだろ?」
「遠慮なんかいらねぇぜぱっつぁん、一緒にJスターズに返り咲こうや。
それに上手くやってキャラ追加の流れに持ち込めたなら
サポートキャラにお通ちゃんを出すことだって不可能じゃないぜ?」
「とうきびウ○コぉぉぉぉぉぉ!!」
眼鏡掛け機もその一言であっさりと落ちた。
「ケッ、男ってのはどいつも単純でいけねぇアル」
もちろん傍で毒づいているチャイナ娘にも抜かりなく
悪魔の誘いはかけられる。
「お前も来いよ神楽。
サポートキャラで満足するオメェじゃないだろ?」
「オレ達の力でメインキャラに昇格させてやる。」
「マジでか!?
心太食べ放題アルか、クリリンの仇が討てるアルか!?」
「クリリンどころか灰色マッチョマンとか殴りたい放題だぞ」
「キャッホォォォ!オラワクワクすっぞ!!」
こうして、史上最低のチームが結成された。
入念な準備を行い、作戦決行時刻の深夜
集った一同は某プロダクション開発スタジオ内に潜入する。
「それらしいモンあるか?」
「どれにそのツールっていうのがあるか分からないですね。」
「面倒だなぁ、この建物全部のPCスキャンした方が早いぜ」
「さっそくやるアル金ちゃん!」
頷き、金時が一番奥の部屋にあったデスクのPCに体内から
引っ張り出したケーブルを接続(つな)げ
「ちょっとまってな」
ネットワークへの侵入を始める。
全員が固唾を飲んで見守ること数分・・・
「・・・よし、見つけた!」
ハッキングの成功が彼の口から告げられ
三人は思わず嬉しそうに顔をほころばせる。
「よっしゃ!さっそくそのPCで見てみようぜ」
接続したPCから開発ツールをコピーすると
"オタ魂"と描かれたロゴのデータファイルが画面に映った。
「これって・・・」
「FOXENGINE(フォックスエンジン)
最近発売されたMGSで使われた開発ツールだな。」
「あ、サンプル映像って書いてあるネ!」
ファイル内のサンプル映像を開き・・・
映し出された、実写と比べて遜色のないほど鮮明で細やかな
3Dモデルに一同が息をのんで驚く。
「すごいですね・・・!」
「ゲームにしちゃいくらなんでもリアルすぎヨ
カメラで撮ったとかじゃないアルか?」
「いや、よく見ると実写と違う部分がある。だがこれは・・・」
「ああ、ゲーム界に革命が起きたぞ。これでJスターズを
リメイクすりゃ俺達が返り咲くのも夢じゃないぜ」
「って、別に僕たちが返り咲けるわけじゃないですよ銀さん」
他に何かないのか、PC内のデータを探していると
とあるデータが新八の目に留まった。
「あ!これゲームデータじゃないですか!?」
「本当だ・・・
タイトルは"メタルギアソリッド5・ファントムペイン"・・・?」
何のデータかしばしの間全員が首を傾げていたが
金時が、はっと気づいて顔を上げる。
「これ、次に発売されるゲームのデータじゃねえか!?」
「ええ!?何でそんなデータがこんなところに!?」
「マジでか!?アイツらシコシコと姑息アル
こうなたらついででこれ消してしまうアル!」
「ダメだって神楽ちゃん!いくらなんでもそれはマズイって!」
とんでもない暴挙へ走ろうとする神楽を抑える二人を尻目に
銀時は、無言でポケットから取り出したUSBメモリをPCに挿す。
「え、銀さん・・・何ですかそれ」
問い質した新八は、次の瞬間
次々と画面いっぱいに現れた "獏"と書かれたウィンドウを
目にして硬直する。
「ちょっと何やってんですかアンタァァァァ!!」
「お前・・・まさかコンピュータウィルス"獏"を流したのか!?
そんなことをすれば」
「ああ、このPCはおろかこの会社のデータは獏に食われるな」
分かり切った態度で答える銀時へ、金時が声を荒げて掴みかかる。
「バカな、いくらなんでもここまでするこたねぇだろ!?」
「甘ぇんだよ金時、やるなら徹底的にだ・・・
ってマダオが言ってただろ?」
「それ長谷川さんじゃなくて赤犬!!」
「叩く時は追っかけて根まで叩け、叩いて潰せって
どっかの武将と槍ムスメも言ってたぜ?」
「薩人マシーンとあの女の戯言をここに持ち込むなよ!」
「ごちゃごちゃやかましいネ・・・やっちまったモンは
仕方ないアル、さっさとトンズラするぜオメーら」
「「誰だオメェは!?」」
騒ぎすぎて見つかる危険性を恐れ
獏に食われた警報システムが復旧されない内に、銀時達は
プロダクションから脱出したのであった。
・・・かくして銀魂キャラによる
「Jスターズリメイク計画」が今、始まろうとしていた。
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後書き(退助様サイド)
※GZ発売直後のシーンです
退助「よ〜しMGSXGZプレイしてくっから
後書きよろしくね!」
新八「投げたぁぁぁぁ!?散々待たせておきながら
後書き投げちゃったよこの人!?」
銀時「勢いで後篇つくっちまってまぁ・・・
てかこれよぉ続けさせて収集つくのか?」
退助「大丈夫大丈夫、オチはもう考えてあるから」
金時「アンタの大丈夫は信用しきれねぇな
オチはいいとしても今後の今後の展開はどうなんだよ?」
退助「心配すんなっつってんだろ、あと服を着ろ」
金時「うおっいつの間に!?
・・・って別の漫画ネタすんじゃねぇよ!!」
神楽「あい、仕方ないよグr」
銀時「頭ん中のネコどっかいけぇぇぇ!!」