日本に向かう飛行機の一つ・・・





エコノミークラスに座る 周囲の客の視線が
集まるのを、居心地悪く思いながら





「あ、あの・・・お客様」





笑顔を浮かべ CAは客の一人


もさもさと機内食を食べ続けている老人へ言う。





「本機は着陸態勢に入りますので
・・・お食事をお止めください。」


ん?もうそんな時間か。」





彼は注意にちらりと左目を向けてから


年齢に見合わず猛スピードで、今までどこかに
収納していたらしき大量の機内食


手品のように出しては食べてを繰り返し





「お客様っ機内食は一人一食と「うますぎる!!!」


完食したと同時に 満足したように叫び


CAと乗客を更なる驚きと混乱に叩き込んだ。





だがそんな周囲などお構いなしに





ありがとう、やはり日本のサービスは完璧だ。
我々も見習わなければならんな。」


「は、はあ・・・」





向き直り、紳士然とした老人の対応に

CAはもはや二の句が継げなかった。







『ご搭乗ありがとうございます。
またのご搭乗をお待ちしております。』






無事、江戸空港に着陸した飛行機を降り





「仕事以外で来たのは久しぶりだな。」


空港の外へと出た老人は・・・まぶしそうに
青空を仰ぎ、左目を眇めて微笑む。





「美しい・・・同じ地球の地とは思えん。」





あくまで"一般人"としての来日をするべく
身分を隠しての旅行ではあるが


只者ではないオーラと、右目の眼帯は隠しようがない





老人の名は・・・ビッグボス


かつて世界大戦を生き抜いた
伝説の英雄であり、愛国者達のCEO


世界のトップに立つ人物だ。





そんなとんでもない人物は


"とある一件"により因果が出来た街・・・

かぶき町へと、歩を進めていた。











有名人のお忍びは大概即バレする











「相変わらず賑わしい町だ。」





雑然とした風景を見渡しながら


ある場所を目指し歩くビッグボスが
反対からすれ違おうとした通行人とぶつかった。





「ああ、すまな「ぎゃああああああ!!」


「あ、兄貴ぃぃぃ!!





謝罪の言葉半ばで、ぶつかったスキンヘッドの男は
その場でしゃがみこみ悶え苦しむ。





「大丈夫ですかい兄貴!?」


折れたぁぁぁぁ!
今ぶつかった衝撃で腕の骨折れたぁぁぁぁ!!」






驚きの白々しさを体現したような男に対し


ビッグボスは、やや心配そうな顔つきで 冷静に口を開いた。





「大丈夫か?最近の若者は身体が弱い者が
多いようだな・・・何ならいい医者を」


いやいやいや!別に頼んでねぇから!」


「安心しろ、性格はさておき腕は一級だ。
ついでにアフターケアとして一日軍隊見学を」


「いらねぇよ!兄貴にケガさせたなら
とっとと金払えってんだよジジィ!!」






下っ端らしきサングラスの男の
直接的な物言いに、彼はさすがにムッとする





人の話は最後まで聞かんか それに私が
若い頃はな、集中治療が必要な身体であっても
生死をかける任務に趣いたものだ。」


「ジジィの戯言なんざどうでもいいんだよ!!」


「舐めてっといてまうぞコラァ!!」


痺れを切らし、チンピラ二人が殴りかかる。





「やれやれ、無粋な若者だ」


呟いて・・・彼は慣れた手つきで
下っ端の拳を、かわすと同時につかむ





地面に叩き付けられた舎弟を目にして


動揺を浮かべたスキンヘッドもまた


拳をやすやすと避けられ、後ろに回った
老人の腕に首を巻き締められ


仰向けの状態で 地面へと伏せさせられた。





「イタタタタ」


「何だこのジジィ・・・!」





ゆっくりと立ち上がったビッグボスからは





「血気盛んは結構だが、他人(ひと)に危害を加えるのは
・・・如何なる時であれ感心せんな。


先程の穏やかな口調と雰囲気が失せ


・・・代わりに、重苦しい威圧感が強く滲んでいる





当然ながら チンピラなどに耐えられるはずもなく





「「し、失礼しましたぁぁぁ!!」」





這う這うの体で 二人は一目散に逃げていった。





その逃げ足の速さに呆れながらも


コートについた砂ぼこりを払い、再び彼は
目的地へと歩き出し・・・たのだが





「日本の今頃では、確かアレが咲いているハズ・・・」





ふと思い立ち、少し進行方向を変えて

大きな公園へと足を運んだ。









そこにあったのは 咲き誇る一面の桜の園





舞い散る花びらの一片を手にし


梢から覗く蒼天を仰ぎみて、老人は
思わずため息を零す





「やはり・・・この花は美しい。」





その木の下では、人々が寄り集まり


持ち寄った食べ物や酒を飲み 互いに騒ぎ
桜と内輪の騒ぎそのものとを楽しんでいる。







祖国にはない独自の文化に 感心する彼の目が





つい最近になって見慣れた銀髪頭を見つける





「あれは・・・」









一つの桜の下で


万事屋と真選組 そしてMSFの面々が
酒を交えてどんちゃん騒ぎにいそしんでいて





「オラオラ飲め飲め!」


「銀さん飲み過ぎ・・・って
その人には勧めんなぁぁぁ!


ピーマン1号!ツマミ追加大至急ネ!」


「私は2号だが・・・分かり申した。」


いってら〜、っしツマミ来るまで
飲み比べ続行な〜土方くぅーん!」


「ウィ・・・上等だ万事屋モドキ!





収拾のつかない事態にため息をつく金髪の青年が


自分達へと近づいて来た老人に気づいて・・・


蒼い瞳を 丸くした。





「え、ビッグボス!?


「おおジャックか。久しぶりだな。」





と新八、ついでさほど酔っていなかった
真選組やMSFの隊員数名が姿勢を正し





「どうしてここにいるんですか!?」





の隣で酒を注いでいた
戸惑いを露わに尋ねる。


と、ビッグボスは至って気さくに手を振って見せた





「なに、慌てんでも任務などない
個人的に観光がてら 君達に会いに来ただけだ。」


「護衛もなしに・・・大丈夫だったか?」


「途中で血気盛んな若者に
平和を説いた(物理)事ぐらいだな。」





苦笑いする二人だったが





オ〜イ誰だこのジーさん?あり?
どっかであったコトあるツラしてんなぁ〜」


ゲームかなんかのコスプレかぁ?
右目に眼帯たぁどこのレッツパーリィだコラァ」





正体無くした銀時と土方が

それぞれ非常に馴れ馴れしく、手を
ビッグボスの両肩に置いたのを見て慌てる。





「お、おい銀さん土方さん!」


「構わんさジャック、若者の酒に付き合うのも
老兵の仕事だ。」


「いいこと言うじゃねぇかジーさんよぉ」


「なら一緒にコレやろうぜコレ、定番のヤツな」





言っておもむろに土方が取り出したのは


二組の・・・ヘルメットと 刀





"真剣勝負 斬ってかわして
ジャンケンポン大会"
おっぱじめるぜ〜!」


よっしゃ〜!今度こそ負けねぇぞ!!」


「「待たんかぃぃぃぃぃぃ!!」」


馬鹿侍二人にWツッコミストップが入った。





「斬ってかわしてって 前と一緒じゃねーか!」


大体ビッグボス斬り合い出来ないから!
ルール的にフェアじゃないわよ!!」


「あに言ってんだよちゃ〜ん
こいつ刀2本も持ってたじゃねーか」


「それソリダスの方!!」


「いいじゃねーか最近テメェらのゲームも
真剣使って大活躍してんじゃねーかよぉ」


「まだ進んでない話の先バレやめて土方さん!!」





肩を叩かれ、はハッとしてビッグボスを見る





「いやいや待ってくれ二人共。いいではないか」


老人の左目と・・・態度はもはや





「彼らを見て・・・少し昔の血が騒いだようだ





"勇ましき歴戦の戦士"のそれに成り代わっていた。







なんだなんだ?また真選組が不祥事か?」


違ぇーって!外国のジイさんとケンカだってよ!」





いつの間にか彼らの周りには


花見に興じていた人々が、わらわらと集まり
人だかりをなし始めている。





うげ!ちょっ、どーするんすかこれ」


「万が一が起こってはいかん!
周辺の警戒を怠・・・ウップ


「無理しないで休んでてください副司令!」





仕方なしにMSFの兵士達が、野次馬を遠ざけるが


原因の侍二人と老兵は
どこ吹く風で 戦いの準備を進めていた。





「降参するなら今だぜ〜?こちとら対戦ゲームで
サイヤ人とか死神とか北斗神拳伝承者とか
相手にしてきてんだぜぇ?」


「それテメェだけだろうが万事屋ぁ!」


「ほう・・・かくいう私も配管工ピンクの悪魔
音速のハリネズミとの戦いの記憶がある。」


(違う、ビッグボスそれ違う)


(それ、アンタの息子の方)





顔をひきつらせ、それでも心の中でだけ
ツッコんでただったが





「おっと、頭にパトランプを乗せた猿
桃太郎・・・それに爆弾男との一戦も熱かった

今となってはいい思い出の一つだ。」


「「だからそれアンタの息子の方!!」」


しみじみ振り返る裸蛇の思い出(勘違い)に
結局ガマンできず、口にしてしまった。





「ったく、これだからジジィの思い出話と
ションベンは長くていけねぇや。」


「ガタガタぬかしてねぇでさっさとこいやオラァ」


「やれやれ、年寄りは労らんといかんぞ?」


「そうでぃ とっととくたばれ噛ませ土方」


おい今の総悟だろ!後で覚えてr」


「ちくわ大明神」


「「誰だ今の!?」」







ともあれ、向かい合う二人は
"斬ってかわしてジャンケンポン"の掛け声で手を出し





「おっしゃもらったぁぁぁぁ!!」


先行を取った土方が 意気揚々と斬りかかる





あちこちで上がる悲鳴をよそに・・・老人は
袈裟気味に降ろされる腕をすんでで掴み





「フン!」


勢いを利用する形で 土方を地面へ叩き伏せた。





うおぉ!トシがやられた!?」


「すげーぜあのジーさん、何者だ!!」





湧き上がる衆人の歓声を抑え込むようにして





「まだだ・・・まだ終わっていなーい!


液体蛇のセリフを叫びつつ銀時が前へ出る。





「次は君か、糖尿は大丈夫なのか?」


あん?それを心配するのはアンタだろぃ?
つーかどっかであったんだよなー・・・誰だっけ」


「さほど顔を合わせんからな、だが生憎心配に及ばん
健康には人一倍気を使っているのでね。」





余裕な態度と軽口を返され、ムカが入った
銀時は臨戦態勢へと入り


掛け声の後のジャンケンで・・・先行を取った瞬間





「殺(と)ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


抜き打ち様の木刀で、ビッグボスを討つ。





・・・かに思われたが





相手の方が一枚上手であったようで





「とぁっ!」


「・・・んぎゅあっ!?





紙一重で避けられ、右腕と胸倉を掴まれて

あっさりと 地べたに制圧されてしまった。





「銀ちゃんが負けたアル!」


「すごい・・・さすが伝説の英雄・・・
酔っ払いとはいえ銀さんをあんな簡単に・・・」





一部始終を見ていた客達は 二人の酔っ払いを
倒した老人へ拍手を惜しまなかった。







・・・その後、酔いが醒めて彼の正体を思い出し





「「すんまっせんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!」」


馬鹿侍二人は 並んで土下座するハメになった。









薄紅の衣をまとう木々が茜色に染められても
どんちゃん騒ぎはいまだに収まらず


達も、ビッグボスを加えて引き続き

飲めや歌えやで花見を楽しんでいた。





「いやぁ〜江戸は本当に面白い」


「なぁビッグボス・・・観光目的にしても
何でまた 日本に来る気になったんだ?」





問われて、彼は少し悪戯っぽく笑って





今年は巳年であろう?同じコードネームを持つ
私としては感慨深いものがあってな」





直後 はピキリと固まった。





「ビッグボス・・・今、なんて」


ん?今の日本の年は巳年だから感慨深いと・・・」


「今・・・午年





今度は その発言にビッグボスの目が点になる。





「え・・・午年?


「ボス・・・一年ズレてるぞ」







・・・時計の針が一回りするぐらいの間が空いて





「わ、私も・・・歳だな・・・」


老人は、我から地面へと屈伏していた。





おぉ!さんがあのジーさん倒したぞ!」


「いや違うから・・・
って沖田君!携帯で写真撮んのはやめたげて!!








――――――――――――――――――――――――
後書き(退助様サイド)


退助「祝!メタルギアソリッドXグラウンドゼロズ発売!!
結局 掲載は発売前には間に合わなかったけど
三月中だし、まぁよきかなよきかな!」


土方「厚かましいにもほどあんだろテメェ!」


銀時「その前にオレらのゲーム発売されてんの
忘れてねーか?春のゲーム商戦勝ち残んの俺達だから!」


新八「銀さん、正確にはアレ
ジャンプキャラ達のゲームです。」


神楽「うっせーよダメガネ
本体メガネしか出てねーくせに黙っとけヨ」


新八「それを言うなぁぁぁぁぁ!!」


近藤「つーかズリィぞ万事屋ばっかり!」


沖田「こちとら、あんなお粗末な双六で
満足してられっとお思いで?」


ビッグボス「ご最もだが・・・負けるつもりもない
ゲーム商戦を生き残るのは我々だ。


銀時「おっし言いやがったな?じゃ来週の売上数で勝負だコラぁ。
負けたらオールギャグ短編で痴態をさらしてもらおうかぁ!」


ビッグボス「面白い、受けてたとう」


退助「あの・・・苦労するの俺なんスけど・・・」