「レウスの考えてる事を知りてぇだぁ?」
万事屋の事務所で銀時がけだるそうな声を上げる。
「ええ、江戸になら色んな翻訳機があるはずだから。」
「面倒くせーなー、そっちのメガネとか
銀髪ねーちゃんとかに作らせればいいじゃねぇか」
「のっけから話終わらす気かよ、そー言わず
協力してくれよ銀さん。」
パスの隣にいたは、慣れた様子で語りかけた。
彼らが二週間程の滞在の際 MSFで保護されていた
リオレウスが暴れる一幕があった
その時、言葉が通じない相手であったにも関わらず
巨竜はパスに気を許し・・・説得されて
レウスと名付けてもらい、仲間となった。
後日 その理由を知りたいとパスに頼まれ
ははるばる江戸に訪れた彼女を伴って
万事屋へ依頼を持ち込み・・・現在に至る模様。
「来てくれたのはうれしいけど、パス
出歩いてても大丈夫アルか?」
「ええ、ジャックにボディガードをお願いしたから。」
和気あいあいとする少女二人を横目に
彼はここへ来た目当てを口にする。
「ほら定春に使った翻訳機あっただろ?
それがまだあるかと思ってここに来たんだが」
「んなモンとっくに粗大ゴミに出しちまったよ。」
面倒くさそうに頭を掻いていた銀時だったが
「・・・そう残念そうにすんじゃねーよ
源外のジジイに話してみっから。」
「本当?」
気落ちしたパスを放っては置けず、源外に翻訳機を
作ってもらうよう約束すると返事した。
獣も人も、考える根は大差なし
さほど時を待たずに手配はすみ
翻訳機を使うため、わざわざレウス当人(?)も
以前オロチ騒ぎがあった山奥へ連れて来ていた。
「全く、私らこんな事してる場合じゃないんだけど」
「いいじゃないかアマンダ、ニカラグア奪還の態勢を
整えるのに時間がかかるんだ。コレ位なら問題ないさ。」
「そーだよ!それにレウスの言葉が分かるチャンスだよ!」
レウスの運搬ついでに 話す言葉の内容を知りたがった
チコの強い希望によって
アマンダも半ば仕方なく日本へ同行したようだ。
「銀さん、ここって・・・」
「あんまり来たくなかったネ、いい思い出ないアル」
「しょーがねぇだろ?こんなデカブツ
置いとける場所がそうそうあるかっての」
期待に目を輝かせるパスやチコの側で、どうしてか
げんなりした顔の万事屋3人が話す光景を
巨竜はただ大人しく眺めている。
「で銀時、例のモノは?」
「ああはいはい、アレね。」
カズに言われて銀時はズボンのポケットへ手を入れ
「タラリラッタラ〜、ガウリンガル〜(ダミ声)」
スリーサイズ全部一緒の某猫型ロボのモノマネしつつ
"わんじゃこりゃあああ"に似た機械を出した
「あれ?それ定春の時と同じ機械じゃないですか」
「基本はね、けどこいつを使えばどんな生き物の言葉も
瞬時に人間の言葉に訳してくれる道具なんだ(ダミ声)」
はじめは言い方に疑問を抱いていたMSFの面々だが
その説明で改めて源外が制作した機械に
関心し、近寄ってまじまじと眺めだす。
「ねえ、これどうやって作ったの?」
「飲み屋でおじさんにエイひれと
交換してもらったものを改造したのさ(ダミ声)」
「「まがいモン改造しただけじゃねえか!!」」
「前の時は枝豆と交換だったんだよ(ダミ声)」
「「宇宙一どうでもいい!!」」
いつものWツッコミが出た所で
咳払いをして、カズがガウリンガルの使用を
いの一番に名乗り出る。
「よーし まずは俺に試させてくれ。
レウス、日頃の俺に対する感謝を述べてみろ。」
デジャブを感じる約3名を他所に
「グオ」
言葉がわかるのか、すぐにレウスが返事をし
ガウリンガルに訳した文字が表示され・・・
《何故お前はわざわざ目を覆い隠している?
早死にしたいのか?》
書かれていた文面に、一同が考え込んだ。
「これ、アレだな。」
「完全にサングラスに対するツッコミですね。」
「レウスから見たらそう見えるアルか」
ふ、と機械から目を離したは
すぐ側にある木の下で屈みこんでるカズを目にする。
「おいカズ?何そんなトコでうずくまってんだ」
「・・・わかるわきゃねぇよな
・・・あんな奴に俺のファッションセンスが
分かるわきゃねぇよな・・・」
「い、いじけてるわねミラーさん・・・」
「てゆか薄々感づいてたアルな。」
「グラサンで視界が奪われるからね
レウスが言うコトも納得だわ。」
うんうん、と頷くアマンダの追い打ちの直後
「グオ!グオオオ!!」
レウスは突然、首を真上へ伸ばすと子供の様に
飛び跳ねながらはしゃぎだした。
「どわっ!?な、何アルか突然」
「ギャーギャーギャーギャー
やかましいんだよ、発情期ですかコノヤロー」
「ずいぶんと懐かしいフレーズ来たな。」
「銀さん・・・これ、見てください。」
新八が顔をしかめガウリンガルの画面を彼らに見せる
《うおおおお!メンコい姉ちゃんがおるやないかー!!》
「・・・本当に発情期みたいです」
「はぁ?つか姉ちゃんって誰のこっちゃ」
「あああ!!あれ見てよあれ!!」
「あれって何よチコ?」
叫ぶチコが指差す方へパスも目を向ける
そこには・・・緑色の、レウスに似た生物が
翼を広げて飛び迫っていた。
「え!?レウスと同じ!?」
「リオレイアだよ!
すっげーやっぱ江戸ってUMAの巣窟なんだ!!」
「オメーそれ結構失礼だから、うれしくねぇから」
付近にリオレイアが着地したらしく震動が大地を揺らす
と、同時に
「本当に現れたぞぉぉぉぉ!!」
「やれぇぇぇぇ!!」
「第2のオロチを狩れぇぇぇ!!」
生い茂る木々の間から、武器を持った村人らしき人影が
多数奥へと移動する姿を銀時達は肉眼で捉える。
「・・・おい、これってもしかして」
「あの人達・・・まさかさっきのリオレイアを?」
「何か知らないけど、オロチと勘違いしてるアル!」
「そんな!オロチってあの時何処かに
行ったはずじゃあ・・・!」
「ていうか、オロチって何だ新八君?」
「あーうんそれぁ後で説明すっからよ」
「グオオオオ!」
《呑気に話している場合か!早く助けに行かねば!》
意外と流暢に言葉を並べたレウスは
その場で飛び上がり、緑鱗竜の頭上へ飛来すると
リオレイアを取り囲む村人達の近くへ火球を吐く。
「な、なんじゃあ!?」
「もう一体おったんか!?」
パニックを起こした人々が、怯んで下がった分
出来たスペースへと降り立って
「グオオオオオオオオオ!!!」
紅き巨竜は空気を揺るがす咆哮を轟かせる
あまりの恐ろしさに、耳を塞いだ村人達は震え上がり
「ひ、退け!退くんじゃああ!!」
村長らしき老人が、泡を食った表情で
指示を出したのを皮切りに
蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
入れ違いで駆けつけた万事屋とMSFの面々は
その様子を見届け・・・新八の手にある
ガウリンガルの画面へと目を落とす
《さっさと失せろ人間
貴様らに、俺達の命を奪う権利などない!》
彼らを追い払ったリオレウスの姿は
まさに"空の王者"に相応しいものだった。
「レウス・・・最高にカッコよかったよ」
「よ〜し!そのままリオレイアにアタックだ!」
パスとチコの激励を受け、レウスはリオレイアへ
向き直ると距離を詰め・・・
「グォォォォォ!!」
大きく翼を広げ、勇ましい雄叫びを上げる。
「ガウリンガルには何て書いてあるアルか!?」
《俺との卵を産んでくれ!!》
と新八は思わずずっこけた
「「何でそうなるんだぁぁぁぁ!!」」
「プロポーズ銀さんレベルだよ!原始人並だよ!」
「いや間違ってねーんじゃないの新八君?
やっぱりこの世に生きる全ての動物は原始に還るんだy」
「だとしてもアンタだけ還れそして忘れ去られろ!!」
金髪青年のツッコミが炸裂している最中にも
二体の状況は変わりつつ
「グオ」 《は?何言ってんのアンタ?》
・・・否、悪化しつつあった
「グ、グオ?」 《え、ええ?》
「グオ」 《ていうかアタシの獲物どうしてくれんの?》
「グオゥ?」 《獲物てどゆこと?》
「グオ」 《ストレス発散に人間いびり倒そうとしたのに
勝手に蹴散らしてくれちゃって何様のつもり?》
固まるレウスと一同に構わず、相手とガウリンガルは
容赦無い言葉を羅列していく。
「グオウ」 《つーかアンタみたいなはぐれ者って
タイプじゃないのよね〜顔ダサイし。アタシのタイプは
ハンティング能力が高くて縄張り争いが強い人がいいの。
てことでアンタと○○して卵なんて産みたくないから
とっとと失せてもらえるかしら?三秒以内に今すぐこの世から》
「すげーえげつない事言ってんぞあの雌ドラゴン!?」
「つーかあの一言でどんだけ凝縮してんだ!?」
カズとがようやくツッコミを入れると
「クゥゥゥゥン」 《そ、そこまで言わんでも・・・》
凛々しかったレウスの様子が見る見ると・・・
「レウスめがっさ落ち込んでるアル!」
「おいアレふ○っしーレベルの着ぐるみアクターでも
中にいるんじゃねぇのかぁぁぁ!?」
ちなみにリオレイアの台詞を人間に当てはめれば
ハンティング能力=経済力・縄張り争い=権力
ということになる。
「グオ」
《そういうことだから、じゃ〜ね〜負け組トカゲ》
「「「もうやめたげてぇぇぇぇぇ!!」」」
止めの一言を吐き捨て、陸の女王はそれきり
興味をなくしてどこかへと飛び去っていった。
どん底オーラを背負うレウスを励ますべく
全員が苦笑いを浮かべて駆け寄る
「き、気にしなくていいのよレウス
彼女だけが女じゃないんだから、ねっ?」
「そうさ大丈夫だレウス、場数を踏めばいつかきっと」
「そういう問題じゃないよミラーさん!」
「ゴガ!!」 《いいよもう!女なんて嫌いだ!!》
「オイこいつホントに獣か!?
もう下手な人間より人間らしいんだけど!!」
いつも通りの問答を続ける彼らとは別に
下顎を優しく撫でながら、パスは問いかける。
「ねぇレウス、さっきあの竜が
アナタの事"はぐれ者"って言ってたけど・・・」
「そういえば言ってたアルな。」
「チコ、リオレウスって群れで行動しているの?」
アマンダに聞かれ、少し考えてチコは答える。
「確かに対になって行動しているっていうのは
聞いたことあるけど・・・」
「グオ」
《いや、一応俺たちは群れを作って行動している。》
「銀さん、なんか語りだしましたよレウス」
「あーうん もう喋らせとけ新八」
もはや銀時ともツッコミを入れる気力を
無くしたらしく 項垂れて竜と少女の会話を見ていた。
「グオ」 《この自然が人間共に壊されていくのを
仲間は、黙って見ているだけだった。》
「そうなの?」
「グア」 《俺は言った、人間共を好き勝手に
やらせていいのかと・・・だが無駄だった。》
低く呻く声と、面持ちが悲しげなモノへ変わる
「グウ・・・」 《仲間の弱腰を見ていられなくて
俺は群れから離れ、あの地を住処に人間共に抵抗した》
「あの地・・・コスタリカだな。」
「グオ」 《それからずっと一人で・・・何人殺したか
分からなくなってきた時、お前に出会った。》
縦に裂けた大きな瞳孔が パスをまっすぐ映しとる。
「グオ」 《ずっと一人で何かと戦って
ずっと一人でいるのが寂しかった。
俺と同じそのニオイが・・・あの時のお前からした。》
「え・・・」
「パス、どうなんだ?」
が尋ねれば、渡してもらっていた機械を手に
しばし考えて・・・パスは口を開いた。
「言われてみればそうかも・・・
何となくだけど、あの時のレウスに共感が持てた。
だから私は暴れるレウスを止めたかった。」
自らの気持ちを口にして、改めて納得して
微笑んだパスは顔を上げてレウスへ返す。
「私達、似た者同士だった・・・ってことね。」
「グオ」 《ああ、きっとそうだ。》
より一層、両者の絆が深まった様に見えて
隣り合う美女(パス)と野獣(レウス)だけでなく
や新八達も笑い合って
「いやいや、女にコナかけそびれてる
ヘタレ竜と一緒って情けなくねーかぁ?」
銀時のこの一言に 周囲の空気が再び凍りつく
「グオ・・・?」 《ヘタレ・・・だと・・・?》
「あの性悪竜じゃねぇけど甲斐性ねーし
気が利かなくてモテなそうだし、パッケージ飾る割にゃ
大したクエストレベルでもねぇしまだ定春のが需要あるんじゃ」
「グォアァァァァ!」
《テメー言わせておけばこのクソ天パぁぁぁ!!》
あっという間に怒りゲージがMAXになったレウスが
襲いかかってきたので、銀時は慌てて逃げ出した。
「口は災いの元、ってこういう事を言うんだな。」
「さんも立派に日本通ですね」
賑やかな笑いと、悲鳴と怒号が辺りに木霊する。
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後書き(退助様サイド)
退助「MH4発売と劇場版銀魂DVDBlu‐ray発売
そして年内にて巳年ネタをお送りしました」
新八「詰め込みすぎだろぉぉぉ!!
てゆか巳年ネタってオロチだけじゃね!?」
銀時「これ書いてからどんだけ経ってると思ってんだよ!」
神楽「傾城篇も投げっぱなしで管理人の疲労がマッハネ」
退助「大丈夫だ、作成日時を見れば
全く経ってない問題ない。」
チコ「え〜と・・・
"2013年6月30日"って書いてあるけど?」
アマンダ「半年も寝かせてたわけ?」
パス「その割にはなんか・・・ねぇ?
村の人達がリオレイア狙った理由も希薄だし。」
退助「うぐぐ・・・どうしよレウス」
レウス「いや俺に言われても困るなっしー」
全員『普通に喋ったぁぁぁぁぁぁ!!!』