「5、4、3、2・・・」


現場の結野です。私は今、江戸に駐屯している
MSF日本支部にお邪魔しております。」





構えられているカメラのレンズは、営業スマイルの
結野アナと その後ろにあるMFSの基地を捉えている





「今回は24時間密着取材と言う事で、皆さんの活動を
追いたいと思いますのでよろしくお願いします。」


「ああ、普段の俺達をバンバン見せるとも!」





白い歯を輝かせる金髪リーゼントへ、約一名が
恨みがましい眼差しを送っていたが


あいにく当人の目にもカメラにも映らなかった。







政府などとも外交を結び、着実に江戸の勢力として根付きつつある
MSFに興味を持ったTV局が番組で特集を組み

取材を依頼したのが始まりで


MSFの組織性からは取材を断ろうとしたのだが


カズが断りもなしに許可をだしてしまい、結果
こうして撮影が始まったのである。





「銀時がいたら羨ましがるだろうな、なぁボス?」


こんな調子で陽気に言うカズへ、いまだ
腑に落ちないらしい表情では口を開く。





カズ、俺達はあまりメディアで目立っていい
組織じゃないだろ。てかまだ怒ってんだぞ一応」


何を言ってるんだ!これもMSFの営業活動の一環だ
真撰組もやってたし俺達も対抗して」


「それお前がしたかっただけだろ・・・」


「さて、まずはMSFという組織について
ニ、三お伺いしてもよろしいでしょうか?」


「ああいいとも さぁ〜どうぞお嬢さん」





割って入った質問に答えながら、さりげなく
結野アナの肩に手を回してカズが基地内へ案内しようとし





「あの・・・段取りがありますんで、案内は後で
お願いします それと手はどけてください」


ADから注意を受け、残念そうな顔で手を下ろす。





放送されたらファン実兄を敵に回しそうな
その行為がカットされる事を祈りつつも


顔に手を置き呆れるを他所に取材は進んでゆく。











切った貼ったも一続きの日常











【AM−7:30】





MSFの朝はランニングから始まる。


走り終わり、CQCの組み手を一通り行って
朝のメニューをこなしてから朝食を取る。





淡々としたカズの説明の合間も止まる事のない
組み手を眺めながら結野アナはマイクを向けて訊ねる。





「このCQCと呼ばれるものは柔道のように見えますが?」


「ああ、そもそもこの格闘技は前大戦の偉人達が
柔道を戦闘向きにアレンジしたものがルーツなんだ。」


「と、申しますと?」


「相手の動きを迅速に封じる事が出来る柔道は非常に役に立つから
その技術を戦場で利用できるように、様々な型を編み出したのだとか。」


なるほど、日本の武道が
世界で役に立っているようで光栄です。」





インタビューが続く中、はMSFの
兵士達の組み手相手として指導を行っていた。







どうした!この程度ではすぐに返り討ちにあうぞ!」


「まだまだぁ!!」


「気合が入っていますね。」


「隊員の中でも日本支部の連中は血の気が多く
腕っ節もいい。いい戦士達だ。」


「覆面越しではありますが、勇ましさが伝わってきます。」


「彼らに弱点はないと言っていい、弱点を見せていては
戦場で生き残りはできない。」


「よしこれまでだ!飯にするぞ!」


『ありがとうございます、ボス!!』





即座に整列し、彼の言葉に全員が息を合わせて答え―







「ワン!」


と、不意に犬の鳴き声が聞こえて


全員がそちらへ顔を向ければ、定春が
ダンボールに乗った子犬を連れてそこに座っていた。





「定春?」


「ご覧ください、演習場に巨大な犬が紛れ込んできました!」


「何だ?神楽は一緒じゃないのか?」


「ウ〜」





唸り声と表情から、銀時達と喧嘩でもしたのだろう
察しつつ は大きく白い頭を撫でてやる。





「喧嘩でもしたのか?相変わらずだな・・・」


「それに・・・何で子犬まで連れて」


言い終わる前にカズは、子犬へまっしぐら
駆け寄った隊員達に跳ね飛ばされた





「ネビュラ!?」


『きゃ、きゃわゆいぃぃぃぃぃ!!







さっきの訓練時に発していた勇ましさと打って変わり


ゆるゆるな声で子犬を抱っこし、撫でさすり
頬を寄せて嬉しそうにする彼らを


TV局のクルー一同は白い目で見つめている。





「・・・カズヒラさん、MSFの弱点丸出しです。」


何してくれてんだテメェらぁぁぁ!!
せっかく作ったMSFのイメージが子犬一匹で
駄々崩れじゃねーか!!」



だってカワイイんですもん!
いいじゃないですか小動物を愛でても!」


バッキャロー!!俺達みたいな野郎が
"きゃわゆい〜"なんて気色悪ぃだけだろうが!
それを言っていいのは美しいパリジェンヌだけだ!!」


「なんでパリジェンヌ限定?」





そもそもその発言がMSFの評判を落としかねない

心の中でつぶやくボスを余所にボケ合戦が続いていく。





「じゃあ副指令捨ててきてくださいよ!」


「そーだそーだ!」


わーったよ捨ててきてやるよ!昔お袋に子猫拾ってきて怒られて
捨ててきたこともあるからな!こんくらい余裕・・・・・・・・・」





強く言いながら、首の皮をつかんで子犬をぶら下げ


・・・キョトンとしているつぶらな瞳と目が合い
しばらく見つめ合っていたカズが





半笑いのような顔で振り返ってこう言った。





「・・・・・・・ボス、ソ連のグレートデン
手強かったって言ってたよな?」


『テメェ人の事言えてねぇじゃねーかぁぁぁぁ!!』





手のひらを返したその発言に隊員からの非難が集中する。





「ち、違―よ、これアレだ。
俺達も軍用犬の導入をだな・・・」


「・・・組織内で統率が取れていないようなのですが
大丈夫なんでしょうか?」


「ハハハ・・・定春、ずっとは無理だがしばらくここに」





の言葉半ばで、何を思ったか定春がカズへ
思いっきり体当たりをぶちかまし


「チワワ!?」





放り上げられた子犬を奪還してダンボールへ乗せ


そそくさとその場から退散していった。





「え、何で?何でこーなるのっ?


「定春・・・?」





巨大な犬の意図を知る事なく、彼らはぶちかましを
喰らった副司令官の手当てへと急いだ。







・・・呆然と定春が逃げていくのを見ていた


ここでのやり取りが真選組と同じだと聞き


同じように変なモノを食わされる展開を予想したから
逃げたのだと理解するのは、もっと後である。









【PM−13:00】





江戸の街を巡回すべく走らせている装甲車に
結野アナとカメラマンも同乗して 撮影を続ける。





「今度は市中見回りですか?」


「ああ、既に日本の警察組織が行ってはいるのだが・・・

生憎 彼らでは対処しにくい問題も多くある。
そこで何処の国にも帰属しない俺達の出番というわけだ。」


「確かに警察ではできない事態も多くありますからね。
侵略者による江戸制圧ターミナルテロなどの
大規模な事件も記憶に新しいです。」





彼女のセリフに答えるように、爆発音が辺りで響く。





「さっそくか。」


「突然爆発音が聞こえてきました!テロでしょうか!?」


「行ってみれば分かる。」


「現場に向かいます。」





アクセルを踏み込み現場へ急行した彼らが目にしたのは







「待ちやがれ土方ぁぁぁぁぁ!」


「てんめ上等だコラァァァァァァ!!」


真選組内で行われている、いつも通りの喧嘩だった。





「・・・確かにあれは警察じゃ解決できないな
そもそも警察が原因だし。」


「鎮圧はしないのですか?」


「いや、下手に手を出せば逆に国際問題となる。
ここは敢えてスルーだ。」





国際問題(と言う名の面倒事)を回避するため

装甲車は何事もなかったかのようにその場を去っていく。





・・・ちなみにこの喧嘩は 後で乱入した少女が
いつも通り瀕死になって収束した事を付け加えておく。









【PM−20:00】





「今度は徒歩で見回りですか。」


「ああ、やっぱり装甲車では見つけることの出来ない事件もある。
やはり肝心なのは自分の目「ボス大変です!」


駆けつけ様に隊員がカズへと報告する。





「民間人が無抵抗で暴行にあっている所を発見しました!」


「さっそく事件ですね!」


「ああ、MSF総員現場に急行!


「了解!」





ボスそっちのけで指揮を取り出すカズに
もはやため息をつくしかないも同行して


民間人が暴行されているという広場に着くと







「・・・また会ったね、お嬢ちゃん。」


「まだ殴られ屋してたアルなおっちゃん。」





ベンチで肉まんを頬張る神楽と、顔面が
無残に腫れ上がってる男がいた。





こいつか?殴られてた民間人ってのは」


「おおにエセ銀ちゃん、どうアルか
殴られ屋アルよ?一発殴ってすっきりしてくネ」


「しねーよ・・・って、殴られ屋?」


「ていうか神楽、定春と仲直りしたのか?」


うん、心配かけてゴメンネ。」







近況と現状を軽く話し合い、殴られ屋を名乗る
男の話へ彼らが耳を傾ける。





「お客のストレスを殴られて解消する殴られ屋・・・か。」


「中々身体を張ったユニークな仕事だな、確か中国や
韓国では殴れない殴られ屋がいるって聞いているが・・・」


「それ殴られてないよね、逆にイライラが溜まるよね!?
そんなんで客取ってんの異国の人達は!?」






やたらキレのあるツッコミをしておいてから





「って事で兄ちゃんらもどうかな?安くしとくよ」


と殴られ屋の男がボコボコな自分の顔を指差す。





「いや、俺達はむしろ護る方だから
むしろマトモな仕事を見つけるべきだろ」


「そう言われてもこれが仕事なんだっつーの」


「まーここは一つ俺に免じて、これで・・・」





カズが懐から取り出したのは





「このメタルギアのソフトで勘弁してくれ。」


MSXのソフトカセットだった。





お前らもファミカセかぁぁぁ!!何流行ってんの!?
ファミカセ金銭代わりにするの流行ってんの!?」


「何言ってんだこれはMSXのカセットだ。
ファミカセではない、それ以上でもそれ以下でもない。」


「機種が違うだけだろうが、そんなんで
殴られてやるとでも・・・・・・・・・」





そこで何かに感づいて、殴られ屋がカセットを取り上げ
裏面を見て・・・そして叫ぶ





やっぱりたけしのかぁぁぁぁぁ!!

何でたけし借りパクされるの分かってて貸してんだよ
いい加減懲りろよたけしぃぃぃぃ!!」






ツッコミの後、思い出したらしい
殴られ屋の手からカセットを取り返して言う。





待てよカズ、これ俺がたけしから借りた奴だろ
勝手に殴られ屋なんかに渡すな。」


「ジャック、これはお前から借りた奴だぞ
お前が又貸ししてきただけだろ。」





言い合ううちに司令と副司令、二人の大人が
MSXのカセットを子供のように取り合い始め





「返せよ、たけしがかわいそうだろうが!」


「や〜め〜ろ〜よ〜ボ〜ス〜」


「オイどっかで見たことあるんだけど!?
何なのコレこれも流行ってんの!?


「おおがボケてるネ、めちゃんこレア映像アル
よく撮るヨロシ結野アナ。」


「は、はあ・・・・・・」





ツッコまざるを得ない殴られ屋とテンションだだ上がりの
神楽の様子に、彼女は思わず顔を引きつらせたのだった。









そして波乱だらけの・・・概ねいつも通りの
日常を映した数日に及ぶ取材が終わり





放映された内容に、隊員達の目は釘付けになった







「さすが日本のテレビマンはすごいなぁ」


「あれだけ日にちかけて撮影したのに
24時間ホントに取材したかのように見える!」


「ボス見てくださいよ!」


「はあ・・・・・・・」





喜んでTVにかじりつく彼らと 問題部分が
上手い具合にカット編集され脚色済みの中身を眺め


VICBOSSは何度目かのため息をついたのだった。





ていうか・・・・・・アリ?オチなし?








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:異国の殴れない殴られ屋は問答無用で
ひっぱたけばいいと思います、ニラ


神楽:食べ物は粗末にするモンじゃないネ!


沖田:そーでぃ、代わりに土方を叩けばすっきりすらぁ


土方:上等だ叩き返してやらぁ!てか総悟テメェ
いい加減たけしにソフト返してやれよ!


狐狗狸:こんだけ借りパクされてんだからたけしは
訴訟起こしても許されるレベルじゃね?


殴られ屋:今回たけしネタだけじゃねーから!
他の部分も拾えよアンタらぁぁぁ!!



狐狗狸:だって後は今日のワ○コと24なネタしか
なさそうなんで広がりようが(定春に噛まれ)


結野:あぁっ!巨大な犬が人らしきモノの頭を
かじってどこかへ連れ去って行きます!!