バスの窓から見えたのは、白い白い雪景色
「ふわぁ〜!真っ白ネ!これカキ氷何個分食えるアルか!!」
「あらあらはしゃいじゃって
神楽ちゃん、これは食べるための雪じゃないわよ」
「はーいオメーら、もうすぐスキー場に
着くから降りる準備しとけ〜ぃ。」
けだるい銀八の呼びかけが車内で響き渡り
生徒は各々の荷物を棚から下ろし、準備を始める。
今年の銀魂高校は、特別学習を兼ねスキー場へ赴いていた。
え?何でスキーかって?
作者である自分の学校は宿泊学習でスキーを
行っていたからです。それ以外に他意なんてありません。
え、どうでもいい?・・・・・・あっそ
スキー場に着いた生徒達が集合し 点呼も無事行われ
「う〜し、全員いるな。」
「それじゃあ、諸注意を一発ぅかますぞオメェらぁ。」
ひとつ咳払いして、学年主任兼 体育教師の松平が
ここでの注意点などを説明し始める。
「いいかぁ?ここは一般のお客さんも利用している
普通のスキー場だぁい。スキーウェアの綺麗な姉ちゃんを
見つけても口説くんじゃねぇぞ。」
「先生、俺達にそんな度胸ありませ〜ん。」
「だからおめー違−って。
先生の眼の前ですんなって言ってんだよオジさんは。」
「それ注意になってねーよ!」
これ以降も度々 土方からツッコミが入るものの
お定まりな注意事項を述べて、松平はこう締めくくる。
「てっことでぇ、スキーを存分に楽しんでこいやぁ。」
『はーい!』
待ってましたとばかりに散っていこうとする生徒達の中
「おっといい忘れてたが、。」
「はい。」
「今ポケットに入ってるモン全部出してみろや。」
「かつ上げですか先生?」
「いいから出してみろって。」
呼び止められた当人が、仕方なしに立ち止まり
ポケットの中を探っていくと
重たい金属音を立てて拳銃・マシンガン・グレネード
ロケットランチャー等等・・・・
あからさまな危険物が山と積み上げられていった。
「先生、これで全部です。」
『何処に入ってたんだよそれ!!』
同時にほぼ三年全員からのツッコミが飛び交う。
「危険物は全部没収だ。」
「先生、これは俺の両親の形見なんです。」
「そんな物騒な形見は本編じゃねーんだから
必要ありません、てことで預かっとくからな。」
「さんの両親って一体・・・・。」
新八が青ざめた顔で彼を見ていた。
滑るのは競技場だけにしとけ
思わぬ一幕があったものの、生徒は靴や
スキー板などを各自で借りて ゲレンデへと繰り出した。
「スキーなんて初めてだからなぁ〜うまく滑れっかな
なあトシ?コケて雪だるまみたくなったらどーしよ」
「知らねーよ、まあ何とかなんだろ。
・・・ん?何であそこに女子が溜まってんだ?」
「ああ、大方あれが目当てでしょ。」
沖田が指差した方向から、軽快にスノーボードを操り
が滑り降りてくる。
雪飛沫を上げてブレーキをかけて止まり
ゴーグルを取ったその姿は・・・無駄に輝いていて
『キャー!カッコイイ!!』
と、三年のファン(女子)が黄色い声援を送る。
・・・そんな彼と、取り巻く女子の群れを
少し離れた地点からジトっとした眼では見ていた。
「あらちゃん、滑らないの?」
声をかけられて彼女は志村姉弟に気づき、会釈する。
「え、ええ・・・ええと・・・」
「もしかして、スキーって初めてですか?」
「・・・実を言うと・・・」
「ああ、それでさんに教えてもらおうとしてたんですね。」
「けど、あの調子じゃあね・・・」
女子に群がられているを見て、妙が
腑に落ちないと言わんばかりの顔でため息
「いいんです、もう少し練習してから声をかけます。」
「そう、がんばってね?」
二人がリフトへと移動したのを見届けて、彼女は
苦笑を憂うつそうな面持ちへと変えてうつむき・・・
「殿は殿と共に滑らぬのか?」
そこへおっかなびっくり滑り降りながら、緑眼の
ハーフ留学生妹が話しかけてきた。
すぐ側で その子の兄も見守るように寄り添っている。
「せめて基礎が出来てからの方がいいかと思って
・・・けど、どうしたらいいか分からないの」
「そんなに力む事ありませんよ、とりあえず八の字に
スキー版を固定すれば滑るスピードも抑えられますし
カーブも片方の足へ力を入れれば曲がれますから。」
「こ、こんな感じ?」
こわごわと足を動かすへ、彼は花が綻ぶような
やわらかい微笑を見せて頷いた。
「そうそう♪まずはゆっくり練習してみてください。
さんならコツをつかめばすぐ慣れますよ。」
「ええ、ありがとう。やってみる。」
「私にも出来たのだ、きっとお主にも出来る。」
笑顔の兄と無表情の妹に励まされながら、兄から
アドバイスを受けたはリフトに乗り込む。
初心者用のコースまで到着し ストックで身体を前へ出し
「おっとと・・・バランスさえ崩さなければ大丈夫ね・・・」
ゆっくりと滑っていくウチに、その後ろから
猛スピードで通り過ぎていくの姿が見えて
「ちょ、待ってよ!」
声をかけるけれど あっという間に遠ざかってしまい
追いかけたくても彼女はスピードを出すのが怖くて
そのままの状態でずるずると滑っていった。
やっとの思いで滑り終えた先では
彼はまたもや女子に囲まれて 質問攻めに合っていた。
「あーん上手く滑れない〜君滑り方教えて〜!」
「ちょっと出し抜こうとしないでよ!
アタシが教わるんだから!」
「ブサイク共ハスッコンデナ!
コイツヲ講師ニシテガッポリ儲ケテヤル!」
「ちょっと待つネ!その前に何か奢ってほしいアル!」
「ああもう待て待て!そんないっぺんに言われてもな・・・
わかった、次滑り終わるまでジャンケンで順番決めといて
神楽とキャサリン以外。」
別件で絡んでくる生徒を押しのけ、女子達へ
断りながら横を通り抜けて彼は
そこでポツンと取り残されていたを見つける。
「、一緒に滑らないか?」
「え、でも・・・私そんなにうまく・・・」
「大丈夫だ。後ろでついてってやるから。」
「そ、そう?わかった・・・」
後ろで歯をギリギリ鳴らす女子軍団など気にも留めず
二人はリフトへと並んで乗る。
「やっぱり・・・他の女の子にもやさしいのね・・・」
隣からの呟きに、が少し困ったように返す
「駄目か?」
「ううん、そうじゃなくって・・・
ただちょっと妬けちゃったかなって・・・」
「お、おいおい・・・・」
「オイオメェら、不純交際はいけませんよ〜。」
横合いからの銀八の揶揄が若干いいムードをぶっ壊す。
「な、先生何で反対側のリフトに乗ってんですか!?」
「いや〜なんか途中からダルくなってきたからよ・・・」
「「だったら最初からリフト乗るな!!」」
当然ながら、銀八が下の乗り場についた所で
リフトは一時停止する事態となった。
ともあれリフトを降りて下り坂手前まで移動して
「よし、滑るぞ。」
「ちょっと待って・・・
こんなに高い所から滑ったことないから・・・」
滑ろうとする彼に対し、がややたじろいで
「ファー!」
いる所に後ろからソリに乗った桂とエリザベスが突進し
「「わぁぁぁぁ!?」」
二人がソリを避けた拍子に勢いがついたのか
が滑り出してしまった・・・しかも板を平行にして
「マズイ!?」
「いやぁぁぁぁぁ!!誰か止めてぇぇぇぇぇぇ!!」
すぐさま追いかけたは、スピードを制御できず
涙をボロボロ流す彼女へと呼びかける。
「板を八の字にしろ!スピードを抑えるんだ!!」
「駄目なの!脚が震えて言うこと聞かな・・・・・」
と彼女の目の前で、一般客らしき子供が転び
「危ない!!」
とっさに身体を横に倒したため 子供を避ける事は
出来たのだが・・・代わりに森の中へとダイブし
「まずい!?」
「誰か止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
彼も追って森へと入るが、は悲鳴を上げながら
木々を抜けて奥へと突き進んでゆく。
・・・だが その進行方向上には大木があった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
幹に突進する直前でどうにか間に合ったが
横から彼女をかっさらい、庇うように木にぶつかった。
「いったたたたた・・・・・・」
「だ、大丈夫か・・・」
「ええおかげで、は・・・?」
「何とかな・・・・・っ!?」
立ち上がろうとした瞬間、右足に走る激痛にが
顔をしかめて小さくうめく。
先程の衝突の際、右足が木に直撃して捻挫したらしい。
「っ大丈夫!?」
「あ、脚が動かない・・・!」
「私の肩を持って、すぐにスキー場に戻りましょう!」
寄り添ったが彼の肩を支えた直後
一気に吹雪が押し寄せてきて、彼らの視界を奪う。
「・・・これじゃシュプールがすぐに消える。
迂闊に動くと森の奥に入ってしまう。」
「どうしよう・・・・」
手を差し出し落ち着かせてから、は懐から
取り出した銃を空に向けて引き金を絞る。
弾は眩しく光り、空中で花火のように爆発した。
「これで、異変に気付いてくれれば・・・
救助隊が来る・・・」
「分かったわ・・・そうだわ、さっき滑ってた時に
洞窟を見つけたの。そこなら吹雪が凌げるわ。」
完全にホワイトアウトする前に 二人は洞窟へ歩を進める
一方、空に向けて放たれた発光弾は
「んだありゃ?」
しっかりと銀八の眼に届いていた。が
「へぇ・・・ゲレンデにも花火があんだな。」
二人に起こった深刻な事態など微塵も
気付く事無く 銀八は二度寝を始めた。
・・・発光弾を撃って数時間が経つものの吹雪が
止むことは無く、陽も落ち始め辺りが暗さを増してくる。
「救助はまだかしら・・・」
「大丈夫だ、あの発光弾は1km離れていても気がつく。」
明るく言ってはまだ隠し持っていたC4で
火を起こし、二人で寒さを凌ぐ。
「不思議ね・・・これ爆弾のはずなのに
火をつけても爆発しないなんて・・・」
「プラスチック爆弾は信管で起爆しない限りは爆発しない
こうやって暖をとるために使われることもあるんだ。」
「へぇ、爆弾男もたまには役に立つのね。」
「普段何だと思ってんだよ?」
「あなたのせいでどれだけ弁償したと思ってるの?
キャンベル校長が。」
「そ、それはだな・・・」
しどろもどろになる様子に小さな笑い声がもれて
やがてお互いの笑い声へと変わって行く
けれど、寒そうに震えるを見て
は上着を脱いで背中へそっとかぶせてやった。
「寒いだろ?着てろよ。」
「だ、駄目よ!あなたが凍えちゃう!」
「大丈夫だ、男の場合は多少寒くても問題ない。」
「大アリよ!ただでさえ怪我してるのに・・・!」
しかし頑なに"大丈夫だ"と繰り返し、やせ我慢する
姿を見かねて 彼女は・・・
「・・・わかった、こうしましょう。」
上着のファスナーを開けて 相手へ抱きついた。
「お、おいこんな時に何してんだ・・・!?」
「テレビで見たの、雪山で遭難した時はこうやって
互いの体温で暖めあうの。そうすれば生存率が上がるの。」
「だ、だけど・・・」
「それに・・・わ、私だってあなたじゃなきゃ
こんなこと出来ないんだから・・・」
身体を密着させているから、呟いたが耳まで赤いと
丸分かりで彼は気まずそうに頭を掻く。
「・・・・・ねえ。」
「何だ?」
「この調子じゃ救助は来ないし・・・
朝までこうしていましょう。」
「・・・・・・・・・ああ、そうだな。」
二人の視線が絡み合い、顔が徐々に近づいて
「は〜いストップ!」
間の抜けた呼び声に 彼らが動きを止めて入り口を見やれば
そこには救助隊と、松平・銀八・お登勢がいた。
「ったくよぉ、必死こいて助けに来てみりゃよー
いちゃこくために遭難したんですか?オメェらは」
「偉そうな口利くんじゃないよ!こいつらのSOSに
いの一番に気づいといてグータラしてたろアホ天パ!!」
「オジさん不純異性交際にゃ厳しいんだがなぁ・・・
ま、今回は事情が事情って事でぇ多目に見といてやらぁ。」
「「す・・・すいません・・・」」
担任や救助隊の人々にこってりしぼられた後、二人は
無事旅館へと戻れたのだが
女子一同からの心配と涙の出迎え(ただしに限る)と
「で、どうだったんだよ実際問題?」
「さんと上手くイッたんですかぃ?」
「総悟、変換間違ってっぞ。」
「やはり男たるもの、女子は命を掛けて愛するものだ。」
「はぁ・・・うぜぇ・・・」
男子一同の質問攻め・・・ついでの猥談に絡まれ
は休まるヒマも寝付く事も出来なかったのだった。
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:よく言われる"雪山でお互い抱き合って〜"は
実はデマなので、鵜呑みにしないようにしてください
新八:いきなりバッサリいったー!!
狐狗狸:ついでにゲレンデでいちゃつくカップルと
スキー教室だからって滑ることを半ば強要する講師とか
学校とか滅べばいいと思うんだよね本当に本当に本当に本当に本当に本
銀八:だからトラウマモードやめろってーのぉぉ!
つか滑れねーのはテメーの運動神経が原因だろーが!
沖田:大丈夫、ギャグや展開は尽く滑ってやすぜ
土方:総悟それ傷に粗塩擦り込んでっから
近藤:しかし羨ましいわー俺もお妙さんと
一度はそういうシチュエーションに
妙:神楽ちゃん、そこのスコップ取ってくれる?
神楽:わかったアル!
銀八・新八・土方:何ヤる気だぁぁぁぁ!?