現れるなり カズは重々しい表情を見せていた
「ジャック、落ち着いて聞いてくれ・・・」
「何だよカズ、珍しく神妙な顔つきになって」
疑問を持ちつつもそちらへ視線を向けるへ
丸めた手の中の用紙を見せつつ彼は続ける
「とある天人が運営している工場に・・・
あるものが製造されているという情報が入った。」
言いながらデスクに、その工場の図面が広げられる
「いったい何が・・・・・・・・・・・・・!!」
気楽に話を聞いていたの表情が
図面に記されていた"とある単語"を目にした瞬間
一気に緊張と驚愕へと染まってゆく。
「おいカズ、どうしてこんなモノがある?」
「お前が取り乱す気持ちは分かる、だが・・・」
「だからってコレが落ち着いていられるか!!
何で天人がパトリオットを作っているんだ!?」
紙面にはハッキリと"パトリオット"の文字が踊っていた
・・・彼らやアメリカ側の軍人達にとって
その名前は、特別なマシンピストルの事を示す
ビッグ・ママが愛用していた 弾切れを起こさない
チートじみた性能を持つその武器を天人が製造・・・
いや、量産しているであろう事実は
彼にとって受け入れがたいモノであった
「だが、そんな容易く製造できると思えないが・・・」
「恐らく、天人は何らかの方法でパトリオットの
設計データを盗み出したと思われる。」
間を置かず は立ち上がり黙々と武装を始める。
完全なオリジナルなんて現代にはないんだから
なんでもパクリパクリ言うのを止めなさい
「やはり行くのかジャック。」
「ああ、このまま放ってはおけない。」
「止めはしないさ、だがその代わり・・・」
「分かっている。工場は完全に潰し
作られたパトリオットも一つ残らず破壊する。」
「根回しは任せとけ。俺達の英雄を汚した罪
奴らに思う存分購(あがな)わせてこい。」
その一言には、ビッグ・ママの名に泥を塗られた
憤りが十二分に込められている。
短く頷いては振り返らずにバイクに乗り込み
・・・程なく、件の工場へとたどり着く。
「隠密なんて生温い事はしない・・・挨拶代わりに」
彼は持参したカールグスタフを工場の入口へ向け
沖田よろしくためらいゼロで発射する。
爆音と共に近くにいた警備員と
玄関付近の従業員数人が吹き飛ばされ
「なっ・・・何が起きた!?」
慌てふためいている周囲の従業員へ
追い打ちのようなパトリオット乱射が降り注ぐ
『ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
事態を理解できない従業員達の悲鳴があちこちで爆ぜ
所々被弾した壁や天井から爆発が起こる。
あっという間に、死人が出かねない地獄絵図のような光景が
展開されたが・・・奇跡的に死人は出ていないようだ。
混乱に乗じて工場の内部へ突入しただが
「パトリオットはどこだ!
作ったバカはどこだぁぁぁぁぁぁ!!」
偽物のパトリオットが製造されている事に対して
怒りが抑えきれないのか、若干某巡査部長バリの
キャラへと方向転換する勢いで壊れかけているものの
なんだかんだで快進撃を続け、来るまでに決めていた
予定通り工場の製造ラインまで進撃していた。
工場の薄汚れた制服を来た人々が右往左往するのを
他所には辺りを見回し偽パトリオットを探す。
が、目当ての物はこの場所にはないようだ。
「クソ!ブツは別の場所か!?しかし、ここの
製造ラインさえ破壊すれば・・・」
撃鉄を上げる馴染みの音と意図的な殺気に気づき
彼は、とっさに刀を抜いて飛び退る。
「おやおや、何やら騒がしかったのでどこの
命知らずかと思いきやさんじゃありませんか。」
そう言いながら、こちらに拳銃を向けたまま
歩み出たのは異三郎である。
「たまには地味にパトロールをするもんですね。
こんなイベント滅多に見物できるものじゃありません」
チラリと工場内の惨状へ目を通し、どこか
他人事のように言い放ちつつ彼へと訊ねる。
「それで、何の真似ですかこれは?
攘夷浪士に鞍替えでもしたんですか?」
「何とでも言え!俺はここで製造されている
パトリオットを破壊しにきた!!」
「パトリオット?ああ、ここの天人が地球で偶然
発見して、作り始めたアレを・・・」
「邪魔をするんなら攘夷浪士だろうがテロリストだろうが
いくらでも鞍替えしてやる。だがな・・・」
言葉半ばで、蒼い瞳が紅蛇眼へと変わってゆき
爛々と輝くその双眸では異三郎を
睨みつけてパトリオットの銃口を突きつける。
「ママの名を汚す様な真似は絶対に許さん」
「なるほどそれがパトリオットですか、しかし
私の知っているパトリオットh」
刹那、共和刀の刃先が異三郎へと迫り
その斬撃を 届く直前で割って入った信女が
抜き放った刀で受け止める。
「おや」
「異三郎、のんきに話せる相手じゃない。」
共和刀での二撃目で信女を弾き飛ばして
距離を置いたはその場から駆け出す。
それを追って、周囲の障害物を斬り払いながら
信女もまた地を蹴って駆けてゆく。
「やれやれお互いに火が付いてしまいましたか。
いいでしょう、彼は少し頭を冷やすべきですから。」
一つため息をついて、異三郎も行動を開始した
物見高い野次馬が剣撃を聞きつけて近寄るが
迫り来る両者の凄まじい勢いを目の当たりにして
巻きこまれては敵わんとばかりに逃げ出していく。
「あなたとはまともにやりあってないから
どこまで出来るか楽しみ。」
「小娘に用はない!
あるのはここで作られているパトリオットだ!!」
刀同士で斬り結びながら、は歯軋り混じりに言う
「テメェには分からないだろう・・・
パトリオットがどれだけ高貴なものであるか
パトリオットがどれだけこの世界のパワーバランスを
崩すものであるか!!」
「私には関係ない。私は人が斬れればそれでいい。」
にべもなく言い放ち喉元へと放たれた切っ先を
回し蹴りで怯ませて回避し
製造ラインを破壊しようと場を離れる自分を
追う信女めがけ、は手にしたものを投げた。
直後 閃光と高音が響き渡り
収まった時には、既に彼の姿は消えていた。
「見失った・・・楽しめると思ったのに。」
無表情ながら残念そうに呟き、彼女は刀を
鞘に納めて ある場所へと急ぐ。
製造ライン破壊のために工場の奥へとやって来た
の姿を認め、白い制服が再び立ち塞がる。
「信女さんを振り切るとはなかなかやりますね。
しかし私も見廻組の局長として、天人の敵になる
あなたを斬らなければいけませんので・・・」
刀と拳銃を両手に携えて、異三郎も戦闘態勢に入る
「土方さんの様に踊ってもらいます。」
放たれる弾丸を斬り落とし、勢いを殺さず
はそのまま異三郎めがけて突っ込む。
すかさず当人も踏み出しざまに斬りかかり
激しくぶつかり合う刀と刀が火花を散らす。
「光栄ですね、核から世界を救い江戸から武装勢力を
追い払った英雄とこうやって戦えるなんて まさに夢の様です。」
一撃一撃が致命傷間違いなしの攻防を
繰り広げながら涼しい顔で軽口を叩く異三郎だが
怒り狂う彼は、しかし軽口には大して反応していない
「お前らに用はないと言っただろ!
さっさとパトリオットを破壊させろぉぉぉ!!」
「さっきから言おうとしてるんですが、ここでは
あなたの知っているパトリオt」
だが、異三郎のその言葉は
予想を超える速さで叩きこまれた腹部への
蹴りによって中断させられる。
苦痛に顔を歪め 反動で身体が下がりながらも
反撃が行われるのだが
常人離れした反応速度では刀を蹴り
拳銃を弾き飛ばして共和刀を相手の首筋へ突きつけた
「その戦いぶり、まさに鬼・・・いや、蛇ですね。」
口の端を釣り上げてから、異三郎は一つ咳き込み
降参の意を示すために両手を挙げる。
「何度も申し上げようとしたのですが
また遮られては話が進みませんので、隙を見て
そちらのスマホにメール送っときました。」
見るように視線で語られ、そこで少し冷静さを
取り戻したらしく瞳の色を蒼へと戻し
は懐から携帯を取り出してメールBOXを開く。
[ここで作るパトリオット\y=ー/は重火器じゃないお
後で工場長に完成品持ってきてもらうから
絶対怒らないで欲しいお(((´д`;)))
P.S スマホ ギザ羨ましす]
画面の文章を理解し、先程までの険しい形相が
素っ頓狂な表情へと早変わりし
更に、程なくタコに似た工場長が持ってきた
パトリオットの"現物"を目の当たりにし
口をあんぐりと開けたマヌケな顔に変貌する。
「な・・・何だこのガラクタはぁぁぁぁ!?」
「いや、あの、これがウチの工場で作ってるパトリオットです・・・」
叫ぶへ、ビビりながら答える工場長。
・・・製造されていた完品は、木の棒の先端に
トイレットペーパーとティッシュペーパーを
ハンマーのような形にしてくっつけているだけの
小学生の夏休み工作並に粗末なシロモノだった。
「だから言ったんですよ、ここで作られているのは
あなたの知っているパトリオットではないと。」
「いやぁびっくりしました。まさか武器の
製造をされていると誤解されるとは・・・」
和やかな工場長の苦笑が辺りに響いたのも束の間
彼は、偽物パトリオットを床に叩きつけると
本物のパトリオットで原型を失くす程蜂の巣にする
「あああぁぁぁパトリオットがぁぁぁぁ!!」
「こんなもんのために・・・こんなもんのために
俺はあんな馬鹿なことをしたって言うのかぁぁ!!
人を馬鹿にすんのも大概にしろやぁぁぁぁ!!」
そう叫びながら、流れるようにカールグスタフを
製造機械に向け連続発射し銃弾の雨を降らせる
たちまちの内に工場は使い物にならなくなった。
「なんてことしてくれてんだぁぁぁぁ!!
せっかくのパトリオット製造を台無しにしやがって
どう落とし前「まあアナタも落ち着いてください。」
冷静になだめかかる異三郎だが、工場長の
怒りはその程度で収まろうとはしないようだ。
「落ち着いていられますか!武器を作っていると
勘違いされただけで工場が破壊されたんですよ!
佐々木殿、どう責任とるつもりですか!?」
「エリートもたまには間違いを犯すものですよ
しかし今回は間違ってはいないようです。」
「間違いだらけでしょいい加減にしろ!!」
「ええ、武器を製造していることに関しては
間違いではないでしょう工場長?」
タコ顔負けなぐらい真っ赤になっていた表情が
その一言で 面白いぐらいに青ざめる。
視線で合図され、いつの間にか控えていた
信女が壁の一部を斬ると
崩れた壁の奥から見えたのは・・・
刀や銃がズラリと並べられた武器庫の一室だった。
「武器密売、製造の容疑で逮捕させてもらいます。」
隠し部屋の出現と、観念して膝をつく工場長とを
見比べては ただただ呆気に取られていた。
・・・この後、当人達から聞いた話によれば
このパトリオット工場の者達が、裏で武器を
製造し攘夷浪士に密売している証拠を掴み
捜索へやってきた所で偶然 彼を発見し
声をかける間もなく今回の事態が発生したとの事。
「せっかくなので騒ぎに乗じさせていただきました
おかげでスムーズに事が運びましたよ。」
なお一斉検挙が済んだ後日、サニー経由で
大五郎から偽物パトリオットの製造元を特定し
「「テメェが全ての元凶かぁぁぁぁぁ!!」」
とカズによって天パがバズーカで
吹き飛ばされ、パトリオット騒動は終わったのだが
・・・今回の一件によって
[ノブたすがキンちゃんにも興味シンシン(-_-+ みたい
また斬り合いたいって言ってたから 伝えておきます
後、間接的に捜査協力に感謝するお(*´ω`*)
P.S お忙しいと思いますが、またメールしてネ]
「カンベンしてくれ・・・!」
厄介な事に信女にも目をつけられてしまい
が少しナーバスになるのであるが
それはまた 別のお話・・・
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後書き(退助様サイド)
退助「何年ぶりでしょうか、パトリオットネタで
短編を書きました。」
銀時「オイィィィィ!!久しぶりの短編なのに
セリフないままバズーカの餌食になってんぞぉぉぉ!!」
異三郎「バラガキ篇を書き終えて
唐突に思い浮かんだ短編らしいですよ。」
信女「パトリオットの下りも今さら
思い出したみたいだし。」
退助「せっかく書き終えたのはいいけど
一回も対戦してなかったからここでさせてみました。」
カズ「つーかとんでもなくジャックのキャラが
壊れていたな。ちょっと引くわーあのキレっぷりは」
退助「勘違いとはいえ形見を汚されりゃ怒り狂うって。」
銀時「怒り狂ったろか!?最近管理人からも
扱いが悪くなってる俺が怒り狂ったろか!!?」