「サニー、遊びに行くアルよ!」
「はーい!」
年が明けてのある日のこと
サニーを迎えに屋敷に赴いた神楽へ
玄関先で見送りながら、は言う。
「神楽、時期柄ちょうどいい機会だから
お正月の遊びも教えてやってくれ。」
「そのつもりアル 任せとくネ!」
「気をつけてねサニーちゃん!」
「うん!行ってきますジャック、ローズ!!」
元気に挨拶して家を出ると 二人はいつもの路地裏で
よっちゃん達と落ち合った。
「よ〜神楽ちゃん、サニーちゃん。」
「お待たせみんな 今日は何して遊ぶの?」
「まずはこれネ!」
そう言って自信満々に彼女が取り出したのは
二人分の羽子板と、羽根
「何これ?」
「羽子板知らないアルか?」
「うん。」
「この羽根を打って落とさないようにして
落とした方は、顔に落書きされるってやつアル。」
「要するにバドミントンと同じってことね。」
遊びに慣れるため、最初はサニーと神楽とで
羽子板を持って実際に行うことに
「がんばれー!」
「よーし、まずサニーから打つアル!」
「うん!」
やや緊張した面持ちでサニーは羽根を高く上げ
「えい!」
と、かわいらしく板で打ち付けて
相手の方へと羽根を飛ばしていく
・・・・・・だがしかし
「うおらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
血走った目で神楽が羽子板を弾き飛ばしたので
普通では有り得ないスピードで羽根が返り
側の壁にめり込んでしまった。
季節ネタは最低でも月中が期限…だからって
ぽんぽん出てくるモンでもねぇぞゴラァ!!
「・・・・・え、ちょっと!?何今の!?」
呆然としてしまった彼女に代わって
周りで観戦していたてる彦とよっちゃんが
青ざめた顔で神楽へと詰め寄る。
「神楽ちゃん少しは手加減してやれよ!」
「何言ってるアルか、勝負は甘くないネ
いつでも全力で挑まなきゃいけないヨ!」
「オメェの全力は俺達が束になっても勝てねぇんだよ!」
「ほらサニーちゃんめちゃめちゃ驚いてるよ!
見てはいけないものを見たって顔してるよ!」
てる彦が示すのを見て 他のみんなも一様に首を振る。
「お正月の遊びはやめやめ!普通に遊ぼうぜ。」
『さんせーい!』
多数決には勝てず、しぶしぶ神楽は羽子板をしまう。
「ちぇぇ、仕方ないアルな・・・
じゃあベタにかくれんぼでもするアルか。」
「まぁそっちの方がサニーちゃんもフェアにできるかな・・・」
「隠れればいいの?」
「ダンボールは使っちゃダメアルよ。」
「いや別にいいじゃんダンボール位。」
「駄目ネ、サニーんとこの連中は
ダンボールで隠れるのが日常アルから。」
「そうなのサニーちゃん!?」
「そんなわけないでしょ 一緒にしないで。」
「な、何で怖い顔してんの・・・?」
よっちゃんは、理由は分からずとも何やら
立ち入ってはいけない雰囲気に退いていた。
ともかく子供たちでじゃんけんをして
神楽を鬼と決め、かくれんぼが始まった。
ある程度の範囲から出ないようにしてみんなは散り
「ここに隠れればいいかな・・・?」
サニーは少し離れた場所のポリバケツを目にすると
そこを開けて・・・・絶句する
そこには血にまみれて虫の息の大きなg
「うう・・・あ、サニーちゃ」
無言のままポリバケツのフタを閉じ、重石を乗せて封印し
ついでに心の目まで閉ざして彼女はその場を立ち去る。
「困ったな・・・そろそろどこかに隠れないと」
辺りをさまよって角を曲がった先で、彼女は
土方と沖田に遭遇した
「お、オメェんとこのガキか。」
「あ、真選組の・・・」
「ちょうどいい、頼まれ事を引き受けてくれねぇか?」
「え、でも今神楽と・・・」
「あのチャイナにゃ俺から説明しておくから 頼まぁ。」
「う、うん・・・」
それなら、と頷いてサニーはメモとお金をもらい
近くのコンビニへと走っていった。
「これください。」
カウンターに並べられた品を見て、店員は
怪訝そうな顔をしながらレジスターを打ち込む。
「お嬢ちゃん、パンばかり食べてないで
ちゃんとしたものも食べないと大きくなれないよ。」
「ううん、これお使いなの。」
「お使いかい・・・こんな子供に
何買わせてるんだその人は・・・まったく」
大量のあんぱんと牛乳を袋に詰めながら
嘆かわしげにため息をつき、店員はそれをサニーへ渡す
その足で彼女は土方に教えられたアパートへ入る
散らかった室内には 窓辺に座り込んだまま
ずっと向かいの店を覗く山崎がいた。
「あ、山崎さん。こんにちは」
「こんにちは・・・あれ?
何でサニーちゃんがあんぱん持ってきてるの?」
「副長さんにお使い頼まれて・・・」
「ああ、なるほど。考えたもんだ
サニーちゃんの様な子供なら怪しまれないから・・・」
「何してるの?」
少し憔悴したような顔で山崎は
苦笑いをしながら、やや早口で答える。
「張り込みだよ張り込み、犯人の動きを追ってるの。」
「そうなんだ・・・」
「ここはいいよサニーちゃん、あんぱんありがとう。」
「うん・・・」
品物を置いてサニーがアパートを出た瞬間
あんぱんが飛び散る音が聞こえたのはまた別の話
・・・・にもやんないからいいか。
「何その投げやりな表現!?」
とにかくなんだか不穏なものを胸に抱えつつ
早く神楽と合流しようと足早に路地を歩いて
出っ歯でリーゼントをしたタカチンが
彼女のすぐ側へと駆け寄ってきた。
「ああいたいたサニーちゃん!
新ちゃんが呼んでたから ちょっと来てくんね?」
「え、でも神楽と約束が・・・」
「大丈夫だって、ホラ早く。」
「え、ちょっと!?」
タカチンに引っ張られるようにしてサニーは
海岸へと連れて行かれ
「よく聞けお前るぁぁぁぁぁ!!お前らの要望通り
サニーちゃんを1日隊長に任命したぁぁぁ!!
今日のお通ちゃん新春ライブはいつも以上に気合入れて
池谷栽培ダメゼッタイ!!!」
『一日隊長
よろしくお願いしマッスル検定!!』
「よ、よろしくお願いしマッスル検定・・・・・・」
親衛隊の法被と「一日隊長」のタスキをつけられ
親衛隊達の整列する様を見やる、普段とはかけ離れた
厳しい顔つきの新八の隣に立たされて戸惑う。
「それじゃあ一日隊長、よろしくねサニーチャンコ鍋」
「う、うん・・・何すればいいの?」
「ああダメダメ、語尾にはお通語を使わないと
ダメだゾウさんの鼻めっさデカイ。」
「え、ええと・・・私は何をすればいいの・・・・
の・・・・・の・・・・」
恥ずかしそうな顔でお通語を言おうとする
サニーだが、とっさには思いつかず困惑する
「あのー隊長 一日隊長は別にいいんじゃないんですか
言わなくてm」
軍曹が咎めようとした瞬間、新八の鼻フックが炸裂する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「軍曹ぉぉぉぉぉぉ!!
テメェ寺門通親衛隊隊規第1条を言ってみろぉぉぉぉ!!」
「ひえぇぇぇぇ!!て、寺門通親衛隊に入ったものは、
いかなる理由であろうとも必ずお通語を使うべし・・・!!」
「その通りだぁぁぁぁぁぁ!!貴様は幹部の身でありながら
これを一日隊長に破らせようとしたぁぁぁぁぁ!!
よって、鼻フックデストロイヤーファーストレコードの刑に
処すぅぅぅぅぅぅ!!」
そのまま軍曹は、海の底へと投げ飛ばされた。
青ざめた顔のままその場を動けぬ親衛隊とサニーに構わず
新八はビシッと続きを強要する。
「さあ一日隊長、ビシッと決めてくだ
サイのウ○コめっさデカイ!」
「え!?
ええと・・・・・・の・・・・・の・・・の・・・・・!」
だんだん彼女の目が潤むのを見て、彼らの良心が咎め
「し、新ちゃん。そんな無理して言わせても
俺達嬉しくもなんとも・・・」
思わずタカチンが止めに入りかけるも
新八の形相が それを許しはしなかった。
「さあ一日隊長!お願いしm「サニーに
何やらせてんだダメガネェェェェェェ!!!」
更に迫った新八の顔面に
走り様の勢いを乗せた神楽の飛び蹴りが炸裂した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
砂に着地を決めた少女は、ふっ飛ばした相手を
軽蔑をこめて見下す。
「ドS野郎にコキ使わされたと思ってたら
今度はテメェらが拉致ったアルかこの糸屑共が!!」
「ち、違うんだよ神楽ちゃん!隊員の士気向上のために
サニーちゃんを一日隊長に任命したんだよ!」
「そうなんだ!むさい俺らだけじゃなく
可愛らしいお子様にもお通ちゃんが人気だと広まれば
それだけで親衛隊のモチベーションも」
皆まで言わせず神楽の上あご蹴りがタカチンを砂浜に沈める。
「関係あるかキモオタ集団!サニーを
こんな汚らわしい肥溜めに入れてんじゃねぇヨ!!」
「神楽ぁぁぁぁぁ!」
ボロボロと涙をこぼして抱きつくサニーを
神楽はやさしく受け止め 頭を撫でる。
「よしよしサニー、もう怖い事は何もないアル。」
「ご、ごめんサニーちゃん。僕も言い過ぎたよ・・・
でもせめてお通ちゃんの歌を歌ってくれるだけでm」
言葉半ばでみぞおちに一発もらって、新八は倒れた。
「サニーは連れてく、それでいいアルなクサレオタク共。」
『は、はい!!?』
少女の鬼の形相は隊長のそれより恐怖と威圧を感じさせ
平伏した隊員達はあっさりとサニーを解放した。
「人聞きの悪い表現だなおい!!」
雑音はこの際無視をして・・・
駄菓子屋でしばらく神楽はぐずり泣くサニーを慰め
「はいサニー、これでも食べて元気を出すアル。」
「ありがとう・・・・神楽。もう大丈夫。」
「今回はアイツらによく言って聞かせとくけど
次からはヤなことはイヤってキッパリ言うアルよ
聞かなかったら殴るか○玉蹴り上げてOKヨ」
「う、うん・・・」
気持ちが落ち着いた所で、屋敷まで無事に送り届けた。
「ありがとな神楽、遊んでもらって。」
「はいこれご褒美の酢昆布。」
お礼を受け取り 神楽は飛び上がって喜ぶ。
「キャッホー!これで今月の酢昆布は困らないネ!」
「どんだけ溜めこんでんだよ酢昆布を・・・」
「神楽、今日はありがとう。」
ふわりと微笑むサニーへ、神楽も明るい笑顔で返す。
「いいってことネ、後あのメガネは帰ってからも
シバいておくから安心するネ!」
「何があったんだ新八君に!?」
の疑問をよそに、彼女は楽しげに笑って
「もうすっかりサニーちゃんのお姉さんね
神楽ちゃんは。うらやましいわ」
「え?」
その一言を聞いた瞬間
神楽の顔が 僅かに赤みを増す。
「・・・・そうかもしれないな
結構サニーと遊んであげてるしな・・・」
「そ、そんなことないアル・・・サニーは
優しすぎて押しが弱いからほっとけないだけネ
もっと私やピーマン娘のズ太さ学べばいいヨロシ」
「あらあら、照れなくてもいいのに・・・」
「あ〜もう帰らないと銀ちゃんに怒られるネ!
それじゃ!」
小さな笑い声を背に、彼女は足早に
万事屋へと帰って行った。
・・・・・日の暮れる その道中
「私が"姉御"アルか・・・・・・・似合わないネ」
ぼんやりと、虚空を見つめながら呟くも
・・・・・少しだけその図を考えて
「・・・でも、悪くないアル!」
すぐに満面の笑みへと表情を変えると
神楽は、万事屋への階段を一気に駆け上がった。
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後書き(退助様サイド)
退助「今年は兎年ってことで神楽を書いてみました。」
神楽「着眼点は悪くないアルな〜
でも、最初と最後だけってのはいただけないネ。」
退助「それはまぁ・・・色々と
やってみたかったものもできたので。」
山崎「ああそれで俺の方にもスポットライトが・・・」
退助「いやアレはただの埋め合わせ。」
山崎「やっぱそんな扱いかい!!」
土方「おい・・・まさかとは思うが
あのポリバケツにいたのって、結局・・・」
退助「一人しかいないでしょ。」
沖田「メス豚と流されたハズなんですがねぃ
・・・・旦那方に」
退助「いいの、ギャグ漫画の方式はいい加減だから
一ページや一コマあるいは一週間で何事もなかったように」
土方「修正出来るかぁぁぁぁ!!」
タカチン「ていうか新ちゃん、なんだって
あんなにサニーちゃんに真剣になって・・・」
新八「し、仕方ないだろ!今年初のお通ちゃんの
ライブだったんだから。頭に血が上っちゃって・・・」
テリコ「そこのメガネ君?こっち来なさい。」
土方「あー・・・オメェあの女に目ぇつけられちまったな。」
新八「ちょ、ちょっとちゃんと反省してますから!
サニーちゃんにも謝りましたから土下座で!」
テリコ「それでもサニーの心の傷は癒えないんだよ!
・・・・あんたにはPWの拷問にかけてやるんだから!!」
新八「何ですかPWの拷問って!?」
ストレンジラブ「ああ、アレのことか。」
神楽「アレって何アルか?」
退助「それは本編でも再現するのでお楽しみに。」
テリコ「さあ来いメガネオタク!!」
新八「誰か助けてぇぇぇぇぇぇ!!」
沖田「おい、俺も混ぜてくんなぁ。今回も出番少ねぇ上に
チャイナとドンパチしそこねてヒマなんでぃ」
退助「助けるどころか便乗しちゃってるし!?」