「・・・・・・任務完了・・・・・」
呟いて俺が手元の起爆スイッチを押すと、同時に
央国星の大使館から爆発が起こった。
今回の任務はバカ・・・・・・・もといハタ皇子が
持ち込んだ宇宙ゴキブリの女王の駆除
やはりここの大使館の連中はバカばかりらしく
思ったよりも容易に工作が出来た。
ていうかゴキブリ一匹殺すのだけで なんで
ここまで大げさにやる必要が・・・・・
まぁ一匹見たら三十匹って、どっかで聞いたけどな
とにかく、仕事を終えた以上 ここを離れた方が
いいだろう・・・流石に捜索隊が派遣されるだろうし。
見つかったらまた厄介な事になり兼ねん。
立ち上がり、一歩踏み出そうとした直前
背後から唐突な殺気が生まれた
「ククク・・・・相変わらず仕事に精が出るなあ、」
俺は振り返りざま、AKS−74Uを向ける。
「心配するなよ。命もらいに来たわけじゃねえ。」
「何の用だ?」
ライフルを油断無く構えながら 俺は尋ねる。
目の前の男―高杉晋助に。
高杉はキセルを吹かせながら、言葉を吐く。
「ちょうどお前が仕事してるのが見えてな。
見物させてもらったんだがな・・・
中々器用に細工するもんだ、あの時もそうやって
俺達の邪魔をしてくれたのかィ?」
あの時・・・紅桜での件か
確かに俺はその時、色々と手を回してもいたし
行きがかり上船に乗り込んで 春雨の増援を妨害もした。
「そうだと言ったら・・・?」
挑発的に返すと、奴は口元の笑みを深くして
意外な言葉を口にした。
「そう構えんな、別に俺ァ大して気にしてねぇよ
なーに、似蔵の穴を埋めたくてな。鬼兵隊に来ないか?」
蛇の丸呑みは実際パない
似蔵・・・・・紅桜の犠牲者となった男で
俺も橋田屋事件の時に 顔を会わせている。
その口振りからすると、やはりあの時の痛手は
相当大きいようだ・・・いやいや んなことより!
「俺を・・・鬼兵隊にだと?正気か?」
「ククク・・・俺ァホラは吹かねぇんだよ
お前程チャカを使える奴がいなくてな・・・
その腕前を部下共にご教授願いてぇと思ってよぉ。」
確かにコイツの言う通り。
何回も銃火器を使っている浪人を見たことがあるが
・・・俺からみたらゲリラ少年兵よりヘタクソだ。
だが・・・・・・・
「そんなの断るに決まってるだろ、
大体 そっちにもプロは一人いるんじゃないのか?」
「また子か・・・あいつァ度胸だけの猪武者ってトコだ
世辞にも まともな扱いとは言えねぇだろ?」
高杉の言葉に、俺は首を縦に振った。
鬼兵隊に所属する 早撃ちの異名を持った女、来島また子。
発射速度は異名に違わぬものだが・・・・・・如何せん
扱いは雑と言っても差し支えなかった。
「それでも俺の答えは変わらんぞ。」
「つれねぇな・・・・・母ちゃんが悲しむぜ?」
「何?」
コイツの言う母は・・・十中八九ビッグ・ママだろう。
「お前の母ちゃんはな・・・この国を消そうとしてたぜ?
お前んとこの国ごと消せる兵器でな・・・」
国ごと消せる兵器・・・・核兵器のことか?
「デタラメ言うな、ママはそんな事を考えてはいなかった。
俺のためにと あの事件を起こしたんだ。」
「だが、結果的にお前は親を失った・・・・違うか?」
鋭い高杉の言葉に、俺は何も言い返せなかった。
元々アメリカがそうさせたとはいえ・・・・・・
それは、真実だからだ。
まるで俺の心を覗き込んだかのように、高杉は続ける。
「俺は知ってるぜ?お前の親を殺したのが
テメェの国がやったことのせいだってな・・・・」
「なっ、何でそのことを知っている!?」
「悪ぃが、全部聞いちまったんだよ・・・
お前の母ちゃんとあの金髪の姉ちゃんの会話を よ。」
湖での、ママとエヴァの会話が聞かれてた・・・!?
動揺が収まらない俺を嘲笑うように口角を吊り上げ
高杉は 低くささやいた。
「俺には分かるぜ、お前の中には獣・・・・・
いや 獣をも食らう蛇がいることを、な・・・・」
「・・・どういう意味だ?」
「知らねぇと思ったか?似蔵から聞いてんだぜぇ
お前の中に 蛇が巣食ってるのをよぉ。」
笑っている奴の目は、確信に満ちていた。
やはりあの時・・・・似蔵には見えてたのか・・・・・・
記憶は 後に橋田屋事件と呼ばれる一件までさかのぼる。
銀さんが成り行き上拾った赤ん坊、橋田勘七郎
彼の母親が 橋田嘉兵衛に連れてかれたことを
俺は、お登瀬さんから聞いた。
独自で調べた所・・・嘉兵衛は孫である勘七郎を
親から取り上げ、橋田屋を守ろうと企てていたと知り
俺は 今までにもない怒りを溜めていた・・・・・・
己の都合で親と子供を引き裂こうとする、その所業に
俺はすぐ橋田屋に乗り込み、嘉兵衛がいる大広間を
しきっている壁をRPG−7で破壊する。
そこには新八君や長谷川さんもいたが
・・・・・・その時は、眼中になかった
「な・・・何だ!?」
「壁が爆発したぞ!!」
浪人達が慌てふためく中、新八君達は俺に気づいていた。
「さん!何でここに!?」
「おいぃぃぃ!ちょっ何あの物騒なエモノ!!
無職仲間の君がなんであんなヤバそうなの持ってんの!?」
「マダオに仲間扱いされたら、おしまいアル。」
問いかけも、今ならツッコめそうなセリフの数々も
すべて無視して俺は奴の前まで進む。
嘉兵衛が歪んだ顔で こちらに問いかけてきた。
「な・・・何だ貴様は!!橋田屋を壊す気か!!」
「・・・・・・テメエに・・・・分かるのか・・・・・?」
そう呟くと持ってたRPG−7を横に投げつけ、
事務的に腰のレーザーブレード―
起動させると刀身に電気が流れ 相手を気絶させることが
出来る、無殺の刀―を抜いてスイッチを入れる。
「何じゃと?」
「テメエに・・・目の前から親が消える
子供の気持ちが・・・・・分かるのかって聞いてんだ!!」
秘めていた怒りを目の前の男へぶつけた瞬間
何故か 世界が違って見え始めた。
・・・新八君から聞いた話だと、その時に俺の眼が
一瞬にして豹変したらしい。
まるで 蛇の眼にそっくりだったそうだ
「き・・・貴様に何が分かる!やってしまえ!!」
嘉兵衛の命令を受け、新八君達に向いていた浪人が
全員こちらへ斬りかかって来たが
俺はたったの一振りで全員を吹き飛ばした。
「な・・・・何なんだ・・・あれ・・・
本当にさん・・・・?」
「あの君の眼・・・・人間に出来るモンじゃねえよ
・・・・まるで、鬼か何かだ」
倒れた者達の呻きも 微かな呟きにも答えずに
俺は嘉兵衛の側まで近づき、近くにあった
浪人の刀を手に取ると
嘉兵衛に向かって ためらう事無く振り上げた。
「死んで侘びてこい・・・!!」
「や・・・やめ・・・・・・・」
怯えるその顔が 頭が二つに断ち割られる僅か手前で
似蔵が間に現れ、刀で俺の攻撃を受け止めた。
「おやおや、いけないねぇ・・・・
老人は大切にしないと・・・・」
「そこを、どけ・・・・・・・!」
「それにしてもこんな所に蛇がいるなんてねぇ・・・
あんた 一体何者だい?」
「どけって言ってんだ!!!!」
怒りに任せ 似蔵を蹴り飛ばした後の事は、
記憶に残っていない。
その直後、何が起きたかはわからないけれど
俺は・・・気を失ったからだ。
再び意識を取り戻したら、公園のベンチにいて
銀さんに張り手で叩かれたことを覚えている。
「確かに、アンタの言う通りだ・・・・・
だが、あれ以来 蛇の眼になった事はない。
あの作戦でも・・・そうはならなかった。」
「なるほどな、さしずめ蛇眼とでも名付けようか?」
蛇眼・・・・か・・・・
何かどっかの漫画で聞き覚えのある名称だが、
とりあえず知らないことにしておこう。
「だがなぁ、今でもお前の中にいる蛇は
出たがってやがるぜ。俺には聞こえるんだよ・・・
『奴らを殺せ。奴らに同じ苦しみを。』ってな。」
ささやく高杉のその目は、暗く 鋭かった。
しばらく黙っていたが・・・俺は、
ようやく重い口を開く。
「奴等を憎む気持ちは、俺の中にもあるだろう
・・・・・・・だが俺は そんなことをしても
ママが喜んでくれるとは思えない。」
高杉は、キセルの灰を足元へと落として踏み消し
「じゃあどうするよぉ?
この江戸に居座ってチマチマ壊すか、
俺と一緒にこの国を壊すか。好きな方を選びな。」
笑みの消えた顔で 俺へ問いを突きつけた。
「・・・俺は 壊す気は一切ない。
ここに・・・・・・大切なものが出来すぎた・・・・」
そう この江戸に来た時は、江戸が滅ぼうが
俺にはどうでもよかった。
だが銀さん達に出会ってから、いつの間にか
そんなことは考えないようになっていた。
新八君にお妙さん。
神楽、真選組の近藤さんに土方さん、
沖田君、攘夷志士の桂さん。
そして・・・・・あの兄妹も・・・・・・・・・
俺にとっては、大切な人たちばかりだ。
奴が再び浮かべた笑みは 嘲りと言うより
何かを懐かしんでいるように見えた。
「ヅラと同じこと言うんだな、お前。」
・・・桂さんも、同じことを?
まぁ考えてみれば 紅桜の直前位から
穏健派に成り代わっていたからあり得なくはないか。
「ハッキリ言って、お前が何を壊そうとしても構わない。
だがその刃が俺達に向けられた時は
俺が命を張ってでも守り通す、それだけだ。」
一拍の間を挟み、高杉がフゥと息を吐く。
「大層なこって・・・・・・・・
ま、断られることは薄々感づいちゃいたがね・・・・・」
「高杉・・・・・・俺を消すか?」
「言っただろ?俺は命を取りに来たわけじゃねぇ。」
・・・念のため、ライフルを片手に持ち替え
空いた手にレーザーブレードを掴んで身構える。
「オイ!こっちに誰かいるぞ・・・!」
捜索隊らしき声と足音が聞こえた。
・・・どうやら、こちらに近づいてるようだ
少し長話しすぎたようだ。
「じゃあな、早くズラからねーとヤベェぞこりゃ」
「・・・言われなくてもわかっている!」
というよりほぼコイツのせいなのだが、
今はここから少しでも離れることが先決だ。
俺と高杉は 大した別れの挨拶も交わさず別れた・・・
その頃から、攘夷浪士からつけ狙われるようになった
恐らくは高杉を崇拝する強硬派の連中に違いない。
・・・俺が鬼兵隊入団を断った=天人の味方になったと
ごちゃ混ぜにしたに違いない。迷惑な話だ。
だが これがあの真選組の事件に繋がってしまうとは
今は、思いもしなかった
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後書き(退助様サイド)
退助「さて、予定通り高杉との絡みを
交えることが出来ました。」
高杉「まあほとんどの回想だったがなァ。」
退助「アンタとの絡み難しいんだよねーホント。
このサイトの作者も言ってたし。」
また子「ていうか誰の扱いが雑なんスか!
そのドタマに一発ぶち込んでやろうかぁぁ!!」
退助「お前以外の何者でもねぇよ!ハンドガン風情で
リロードなしの連射なんて有り得ねぇだろ!!」
また子「それ言われたら私おしまいっスよぉぉ!!」
高杉「所で名付けといて何だが・・・蛇眼って何だよ。
そこんとこ詳しく教えてもらえんかね?」
退助「はいはい、今やりますよ。(カンペ持ち)
今回、登場した新設定 『蛇眼』
眼が蛇の眼ように豹変し、戦闘能力が上がります。
この状態だと熱を敏感に感じ取れることが出来、
隠れてても熱で位置が分かります。
しかも、動くものにも敏感に反応するので
気配を殺してもほとんど意味がなくなりますが
その分 動かないものには反応しなくなるので
狙撃兵に狙われやすくなってしまいます。
発動条件は今のところ怒りが頂点に達した時
・・・・・が有力ですがそうではありません。」
高杉「じゃあ何だよ?」
退助「それ教えたらオリジナル小説の意味なくなるって」
高杉「ま、気長に待つかねぇ。クククク・・・・・」
退助「その笑い方不気味で怖いんだけど・・・・」