「おい
、何で酒の席にゴリラ女が二人もング!!?」
「だれがゴリラですか銀さん?」
「そうよ、それと勘違いしないで欲しいわ
私はジャックと話がしたかっただけなの。」
のっけから不用意な発言をした銀さんは早速
お妙さんとメリルのWストレートをもらっていた。
あんな騒動があってか、スナックすまいるの客入りは
まだ少し疎らになっている
そんな中 飲み客のオレと銀さんと女子のメリル
それとMk−Uごしのオタコンはやたらと
客の目やキャバ嬢の目を引いているようだ。
「どんな凶悪なツンデレだよ・・・つーかアンタ旦那はいーのか?」
「ジョニーにはちゃんと伝えてあるし
彼なら浮気なんてしないから平気よ。」
いやそれは聞いてないだろうと思うが・・・・
言いたいのは山々だが、何故かこちらへ
向けられたメリルの視線が物騒で
その圧力に若干屈して 無言を貫いていると
「そういえば・・・メリルさんって
さんと何処で知り合ったの?」
横手からおりょうさんが、微笑みつつ寄ってくる。
「シャドーモセス島の基地で出会ったの。
ジャックと出会った場所・・・何処だと思う?」
「メリルそれは・・・・」
「教えろよ減るもんじゃねーし、で何処よ?」
「女子トイレよ・・・ここで言うなら女用の厠ね。」
その言葉が終わるか終わらないうちに
『えええええぇぇぇぇぇ!!?』
俺と発言者以外の酒の席のメンツ&周囲にいた
キャバ嬢全員の驚きの悲鳴が唱和した。
まったく間を置かず こちらに降り注ぐ
軽蔑と呆れの混じった目、目、目・・・・
「
さん、アンタそんな趣味あったん・・・?」
「顔に似合わず変態だったのね・・・・」
「そりゃマズイだろ
、女子便所でナニって
何ていうくそみs「更に誤解招く発言すんなぁぁ!!」
言葉半ばで銀さんの横っ腹を蹴り飛ばし
凶器に近い視線の群れをどうにかすべく言葉を続ける。
「違う違う!これにはワケがあってだな・・・」
『素直に認めなよジャック、見苦しいよ。』
「オタコンまでなんだよ!?
いいから人の話聞けお前ら!!」
尺の余りは回想シーンで誤魔化しゃ
奴ら全員騙せる…ってエロい人が言ってた
必死の説得にやっと全員が耳を傾けてくれるように
なったので、俺は一息ついて事情を話す。
「作戦上 その時は敵に気付かれないように
二人きりになることが重要だったんだ・・・・
だからトイレに入った瞬間を狙って接触したわけだ。」
「まあ、あの時は仕方なかったわね・・・トイレ以外
敵に悟られない場所は他になかったから。」
「そうだったの・・・」
軽く理解してくれたお妙さんに釣られてか
他のキャバ嬢の面々も、そこはかとなく事実を
受け入れてくれてはいるようだ。
「それで会うた後 二人はどないしたん?」
訊ねる花子さんへ、メリルと顔を合わせてから
「そっから先は・・・合流した二人で
基地の中を進んでいたんだ。」
俺は記憶を呼び起こしながら言葉を紡ぐ
あの時の事は 今も鮮明に覚えている・・・・
合流したメリルに案内され、俺達は屋外の長い通路へと出る。
「メリル、この先にREXが?」
「ええ、ここでは私が先輩だってこと 忘れないでよね。」
そこで思わず、事前に聞いた彼女の詳細などで
気になっていたことが問いとなって口から零れた
「メリル・・・その、大佐のことなんだが・・・」
途端、メリルは少しムッっとした表情を見せる。
「大佐がどうかした?」
「大佐とお前は・・・親子なんだろ?
何で大佐の反対を押し切った?」
「軍人に憧れてたじゃ理由にならない?」
「ならん、憧れで任務を受けるな。」
「じゃあ・・・大佐に見返したかったってのは?」
「何だと?」
それからメリルは、自分の過去を語り始めた。
・・・どうやら当人が子供の頃から
大佐は仕事漬けで ロクに相手もしてもらえず
どころか病弱となった母親の最後すら
看取る事も見送ることもなかったとか
仕事ばかりに目を向ける大佐とその事とを
恨みに 彼女は訓練を受け
テロリスト鎮圧のためにシャドーモセスに来た
要約すると、そういうことらしい。
「デザートイーグルは訓練を始めた時・・8歳から
愛用してたの ブラジャーより付き合いが長いわ。」
楽しげに言う相手へ、問わずにはいられなかった
「何で普通の生き方を選ばなかった?
お前の年頃なら高校に通って友人も出来て」
「私は普通の女の子みたいに化粧なんてしない」
パキリと放つその言葉には、ありありとした
他者への拒絶が滲んでいる。
「だから鏡を見る習慣なんてない。
そんな女が嫌いなの。」
「お前な・・・大佐は戦場に送りこんだことを
悔やんでいたんだぞ?何とも思わないのか?」
「悔やんでた?
逆よ、私が始末出来て喜んでいると思うわ。」
あまりにもナメた口をきく彼女に対し
俺の頭に かっと血が上る
「そんな薄情な親父がいてたまるか!!」
「何が親父よ!!
あんな奴・・・親父でも何でもない!!」
直後 俺はメリルの頬を引っ叩いた。
身体が勝手に、手を出してしまっていた・・・
「いい加減にしろ!!
そんな甘ったれはさっさと家に帰れ!!!」
悔しげに押し黙るメリルが、異変に気付く
・・・俺の身体に映る レーザーポインターに
「危ない!!」
叫んで俺を突き飛ばした、その次の瞬間
メリルの足から血が噴き出した
「あああああ!!」
「メリル!?」
倒れこむメリルへまた銃弾が飛来し
片方の足に、被弾する。
落ちたデザートイーグルを取ろうと手を伸ばす
彼女の腕にも、弾丸は容赦なく撃ち込まれた。
「メリル!!」
油断した・・・・・!
スナイパーがいることも分からずに
こんな場所で佇んでいたなんて・・・・!
歯噛みしつつも、俺まで被弾するわけにはいかず
咄嗟に近くの死角へ避難する
「ジャック・・・私・・・本当・・・新米ね・・・」
「大丈夫だ!狙いは俺だ!!」
呼びかけるが、彼女は倒れたまま首を小さく横に振る
「いくら私でも分かるわ・・・こんな古典的な罠・・・
敵はスナイパー・・・私は囮・・・・
あなたが助けに来るのを待ってるんだわ・・・」
「クソ・・・・!!」
「私を撃って・・・!自分でカタをつけられないわ・・・・」
「早まるな!!」
「足手まといにはならないって・・・誓ったもの・・・」
「喋るな!!体力を消耗する!!」
「私・・・こんなだけど・・・あなたを助けたい
・・・あなたを救いたい・・・」
メリル・・・・・・!!
「私が・・甘かった・・・親父を見返そうとして
・・・・戦場には何もない・・・戦争では何も生まれない・・・」
俺はどうすることも出来ず、ただメリルを
見ているしかなかった。
「私の代わりに生き抜いて・・・そして
・・・人を好きになって・・・・・!」
合流した際、俺は彼女に
「人を心から好きになったことはない」と言った。
まさか、それを気にしていたのか・・・・
「だが見殺しに出来ない!待ってろすぐに」
一歩足を踏み出した刹那
後頭部に強烈な衝撃が走り、俺は耐え切れず
その場に倒れ伏す。
「油断したな兄弟。」
「リ・・・キッド・・・・・」
低く聞こえた声を最後に、そのまま意識が
闇へと落ち・・・・
敵に捕まった俺へ、リキッドによる拷問が始まり
・・・・余りの凄絶さに 情けなくも
リキッドに屈服してしまった。
そこまで語った辺りで周囲の彼女らから
痛ましげな声が漏れる
「まぁヒドイ・・・」
「それで、
はどうしたの?」
「どうにかそこから脱出して、REXを
撃破することには成功したんだがな・・・」
REXを撃破した後、REX演習フロアの脇に
倒れているメリルを見つけて駆け寄る。
「メリル!」
その身体を抱きかかえるが・・・
彼女はまるで人形のように 反応が無い
「メリル!しっかりしろ!メリル!!」
身体中の血が冷えていくような感覚に囚われ
まさか、と脈を確認したが・・・・
冷たい皮膚の下 あるはずの脈動は
動く事無く静まり返ったまま・・・・・・
「メリル・・・・!メリルゥゥゥゥゥゥ!!!」
俺のせいで・・・・俺が奴に屈したせいで・・・・!
彼女の亡骸を置き、床へ拳を叩きつける
「クソ!!俺は恐怖に屈した・・・
苦痛に服従した・・・・!俺は君が思っていたほど
勇敢じゃない・・・!俺は敗者だ・・!!負け犬だ!!」
裡から競り上がる感情に任せ、なおも床を
叩きつけながら俺は叫ぶ。
「メリル・・・すまない・・・許してくれ・・・・」
「彼女は誰も許すことは出来ないよ。」
静かな声で告げながら、現れたのは・・・オタコン。
「何・・・・・?」
「彼女は逝ってしまった。」
「・・・・そうだな・・・俺のせいでな・・・・」
「そうやって自分の責めるのは楽だろうね・・・
そうやって彼女の死から目をそらす事が出来る。」
軽率としか思えない言葉に、俺はオタコンの胸倉を掴む。
「お前に何が分かる!!
メリルは死んだ!!俺は負けたんだ!!!」
だが、それでもオタコンは表情一つ
崩す事無く淡々と返す。
「じゃあ・・・ここで死ぬかい?彼女と一緒に・・・・」
「ただの科学者に何が分かる!!
簡単に死を口にするな!!」
「ジャック・・・人はいつか死ぬ、
しかしそれは敗北じゃない。ヘミングウェイの言葉だ。
僕もウルフを失った。でもそれは敗北じゃない、
僕とウルフはこれからなんだ。」
「これからだと・・・・・・・・・?」
「確かに命は失われたけど、恋は失っちゃいない。
人生に勝ち負けはないよ・・・」
「・・・それでも俺はメリルを見殺しにしてしまった!!
俺は・・・俺は・・・!」
「う・・・・・・・ん・・・・」
突然聞こえた、後ろからの唸り声に
俺は慌てて振り返り 駆け寄った。
「メリル!?」
「ジャック・・・!
生きてたのね!?良かった・・・!」
身を起こしたメリルはこちらの姿を認めた瞬間
強く俺へと抱きついてきた。
「メリル!?大丈夫なのか!?」
「大丈夫なのか?・・・しか言えないの?」
「でも何で・・・脈が止まっていたのに・・・・」
「何?人の事勝手に殺してたの?」
「すまない・・・つらい思いをさせてしまった・・・」
「つらくはなかったわ・・・・私、奴の拷問に屈しなかった。」
「拷問?」
「もっとひどい事もさせられたわ・・・・私も闘ったわ。」
「強くなったな・・・」
「闘う事であなたに近づけた感じがする。
あなたの存在を身近に感じた、だから耐えられた。
でも・・・怖かった・・・」
言うメリルの眼に、涙が浮いてくる
「すまない・・・」
「謝らないで、でも気付いた事もあったわ。
恐怖と恥辱の中、一つだけ確かな気持ちがあったの。
それにすがる事が出来たから耐えられた、
あの間・・・願っていたことは一つだけ・・・
あなたに・・・逢いたかった・・・・!」
切実なその言葉ごと、メリルを強く抱き返し
「メリル・・・
帰ろう、大佐やみんながいる場所に・・・」
「・・・・・・ええ・・・・・」
互いの温もりをしばし感じ合っていた。
・・・が、その空気を冷静に取りまとめたのは
やっぱりというかオタコンだった
「二人とも、ラブシーンはそこまでだよ。
早く脱出しないと。」
「あ、ああ・・・・・メリル、立てるか?」
「大丈夫よ。」
その後、オタコンの用意した車に乗り
基地から脱出することになった。
ちろりと銀さんの視線が画面のオタコンへ注がれる
「ふーん、やっぱオタクも言うこた言うんだな」
『まあ・・・状況が状況だったからね』
「でもやっぱお前もこいつのラブラブ
いちゃいちゃブリはウゼェと思「黙ろうか銀さん?」
釘を刺してから俺は、残り少なくなった
思い出話を語りにかかる。
外はやはり極寒の寒さで
脱がされていたスニーキングスーツを
着直していると、二人の視線が絡みつく。
「ジャックの制服はやっぱりそれだね。」
「ええ、そっちの方が素敵よ。」
「帰ったらいくらでも迷彩服を拝ませてやる。
オタコン!」
「分かったよ!この先に検問がある!
ジャックはその機銃で敵を排除してくれ!」
「任せておけ!」
オタコンのナビで検問も無事に潜り抜け
俺達はシャドーモセスを脱出し、アメリカへと
帰還し任務を終えた・・・・・
「おかえりジャック!」
「ただいまローズ。」
直後、出迎えてくれたローズを二人が
ぽかんとした顔で見つめていた。
「・・・・え?」
「ジャック、その人は・・・?」
「ああ、紹介するよ。」
「ジャックと付き合わせてもらってる
ローズ・マリーよ。よろしく。」
ペコリと軽くお辞儀するローズへ、オタコンが
少し頬を紅くして返す。
「ええこちらこそ、へぇ・・・
ジャックも隅に置けないね・・・
そんな美人どうやって落したんだい?」
「あ、ああ・・・話せば長くなるんだけどな。」
と、急にメリルが俺へと近づいて
「へぇ・・・・・そうだったの。」
「え?どうしたメリル?」
問いかけた直後、見事なアッパーカットが
炸裂し 俺はその場へと沈められた。
「ぐわ!?」
「良かったじゃない、愛する人がいて!
じゃあね!!」
苛立ちをぶつけるように吐き捨てると
そのままメリルは立ち去ってしまった・・・・・
俺・・・悪いことしたか・・・?
「あのね・・・そりゃ悪いことよ、
メリルさんの気持ちも考えないで・・・」
「いやでもさ・・・」
「そうよねぇ、もっと言ってやんなさいよ
男ってのはそーいうの全然鈍感なんだから!」
う・・・阿音さんが言うと妙に説得力がある・・・
そうこうする内にメリルが鋭い目つきで睨んできた
「そうそう思い出したわ・・・あの時は
よくも私の乙女心を踏みにじってくれたわよね?」
『ホントひっどーい!!』
話を聞いていたからかすっかり周囲は
メリルに同調している。
やばい・・・キャバ嬢含む女性陣全員を
敵に回してしまった・・・・・・・!
助け舟を視線で頼むも、銀さんとオタコンは
彼女らを恐れて無言を貫いてるし・・・
「そ、そうだメリル・・・あの時完全に
脈が止まっていたんだ。それって何でか覚えてる?」
「話逸らす気ね・・・・まあいいわ」
軽く溜息をつき、メリルは答える。
「ナオミって女に変な薬飲まされたのよ。
何が痛み止めよ・・・あれで意識が完全に途絶えたわ。」
ナオミが・・・・・そうか・・・
『おそらくメリルを助けようとして、わざと
仮死状態になるように・・・』
こちらの思考を読んだようにオタコンが呟く
「へぇー、あの姉ちゃんも味なことするじゃねぇか」
賛同する銀さんに勢いを得て、一気にこのまま
流れをうやむやにしようと
「それはそれとして」
開きかけた口を止めたのは お妙さん
「
さん・・・話に戻りましょうか
メリルさんにどうお詫びするんですか?」
「そうよ、ちゃんと責任取りなさいよね?」
『そーよそーよ!』
三度訪れた、キャバ嬢全員の視線による
非難の雨あられに耐え切れず
「ああ分かった分かった!!
今日は俺が奢るからそれで勘弁してくれ!!」
言えば 現金なまでに彼女らは満面の笑みを
浮かべて騒ぎ始め、ドンペリを用意し出す
『針のムシロってこーいう事を言うんだね・・・』
「流石のテメェも女どもにゃ形無しってか?」
「お前らが言うな、ヘタレども」
まあ、何はともあれ・・・・・メリルが
死ななくてホントによかった・・・・
それだけは 心の助けになっている。
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:えー二人の過去話はともかく、女性陣を
もう少し盛り立てられなかったのは全く遺憾で
銀時:そっちかよぉぉ!つか今回の話
俺あんまりな目に合いすぎじゃね!?
妙:自業自得です にしてもメリルさんも苦労されてきたんですね・・・
狐狗狸:軍の世界も女性にはそれなりに
厳しいだろうしねー仕方ないんだろうけどね
花子:にしてもメリルさんのオトン、オカンの
死に際看取らんて薄情ちゃうか?
おりょう:そりゃ、お父さんに反発するのも分かる気がするわ
狐狗狸:まぁ・・・長編で一応仲直りしたんだし
そこについては触れないでおきましょうよ
阿音:てーかさ、さんって無自覚で
ジゴロだから性質悪くない?
狐狗狸:・・・・・・・同感