「じゃあ俺は任務に向かうから・・・
夕方には戻るから 留守番頼んだぞ。」
「サニーちゃん、ごめんねお留守番させて。」
「ううん、いいの。いってらっしゃい。」
笑顔で仕事に行くジャックとローズを見送って
私は一人 辺りを見回す。
・・・・・・・・・この時を待っていたの。
ずっと江戸に興味があって、思い切って日本に来た
でも大抵は家の中で過ごす事の方が多い。
ジャックといても行く所は制限されて
かといって他の国には旅行したくないし・・・
だからせめて 一人で江戸の街を歩いてみたかった。
早速着替えて、私は外へと繰り出す。
初めての一人歩きは とても新鮮な感じがした
「こんな開放的なの初めて・・・・・」
あれ?駄菓子屋に見覚えのある人が・・・・
「あの・・・・・・・」
「ん?あれ、お前んとこにいたサニーアルな」
「う、うん・・・・・ええっと・・・」
「私は神楽って言うネ、またの名を
かぶき町の女王アル!」
「かぶき町の・・・女王・・?」
「要するにエライってことアル。
で、こんな所で何してるアルか?」
あ・・・・そういえば外に出ること以外は
何にも考えてなかった・・・・・・・・・
「もしヒマしてるなら私と一緒に遊ぶアル!こっち!」
「え!?ちょ・・・・」
急に手を掴まれて引かれ、神楽に連れられるまま
私は路地裏へと入っていく。
ガキの頃の危険な思いも成長へのステップ
それから辿り着いた公園のベンチに二人で座り
「とりあえず酢昆布食べるヨロシ。ほれ」
言いつつ渡された昆布らしきモノを口にして・・・・
「酸っぱ!何これ・・・・!」
味わった事の無い酸っぱさに顔をしかめた。
「その酸っぱさがクセになるネ。」
見れば神楽はさもおいしそうに昆布をくわえている。
こんなの良く食べられるわ・・・・・
ハル兄さんの料理の数倍、タチが悪いのに・・・
それでももらった昆布を何とか押し込んだ所で
「ちょっと待ってるネ、んまい棒買ってくるアル!」
「え!?ちょっと・・・・!」
神楽は私を残して 何処かに行っちゃった・・・・・
仕方なくそこで神楽を待っていると、向こうから
神楽と同じ年くらいの男の子二人が寄ってくる。
「おい小娘、テメェ何処のモンだ?」
「え?」
「ここはな、かぶき町の帝王であるよっちゃんのモンだ!
ここで遊びたかったらんまい棒10本献上しろ小娘!」
え?そんなことしなきゃいけないの・・・・・?
「ご、ごめんなさい・・・・そんなに持って・・・・」
「ないのかよ!じゃあさっさと出て行け」
「定春!」
「ワン!」
怖い顔をした男の子達は、戻ってきた神楽が
連れて来た大きい犬に弾き飛ばされた。
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」」
「か、神楽・・・・!」
「テメェら寄ってたかって
サニーになんて事してるねクソガキ共!」
「また神楽だぁぁぁ!逃げろぉぉぉぉぉ!!」
「ちっきしょぉぉぉ、覚えてろよぉぉぉぉぉ!!」
泡を喰らって男の子二人は逃げていく。
それを睨みつけてから、神楽は私に向き直った。
「サニー大丈夫だったアルか?」
「う、うん・・・・ありがとう。」
「よしよしもう大丈夫アルよ・・・・
さ、これから色々な遊び場に案内するネ!」
神楽と一緒に、まずはゲームセンターという場所に
着くと プリクラというものをすることに
「サニーもっと笑うネ!
ピーマン妹と同じ能面だとブラコンが移るヨ」
「え?誰その人?」
「いいからスマイルスマイル!」
「う、うん。」
画面に向かって笑いかけると フラッシュがたかり
四角い所から写真が出てきた。
そこに映っていたのは・・・笑顔の神楽と私。
「きれいに映ったアル、じゃ半分はサニーに。」
「ありがとう!」
それから・・・神楽は私にたくさんの遊びを
教えてくれた・・・・・・
アーケードゲーム・・・駄菓子屋でお買いもの
・・・・・・広場で皆でなわとび。
これが、普通の女の子の遊び・・・・・
私の知っているネットには全然
見つけられなかったことがここにはあった。
外の世界も いいかも・・・・・・・・・・
「サニーが!?本当なのジャック!?」
「ああ!早く任務が片付いて帰ってきたら
何処にもいないんだ!!」
家に戻ってサニーの姿が見当たらないと気付いた瞬間
俺は偶然江戸にいたテリコ、ヴィナス、ジョニーを
呼び集め サニーの捜索を依頼し始めた。
全く・・・・何処に行ったんだよ・・・・・
「とにかく俺は警察に連絡する!
ジャックとヴィナスさんは先に!!」
「私はこっちを探すからそっちお願い!!」
「「分かった!」」
それから全員で足取りを追って1時間が経過するが
状況は、依然として進展しない。
真撰組も協力してくれてるが 一向に見つからない・・・
くそっ、万が一こんな所を賢者達のあの兵士が
現れて襲われたら・・・・・・・
ダメだダメだ!!そんな事を考えるな・・・・・
きっとサニーは無事だ!
私達は近くのお店屋さんのベンチに並んで座っていた。
「神楽って何でも知ってるのね。」
「これが今時のヤングの遊びアルヨ、まあ全部
銀ちゃんに教えてもらっただけなんだけど。」
でも、色んなことを教えてもらって楽しかった
こんなに遊んで疲れたのって初めてかもしれない。
そういえば陽も沈みかけて・・・・・・・・あ!!
「どうしよう、もうすぐジャックが帰ってくる!
早く帰らないと・・・!」
「そうアルか、じゃ送ってくアルよ!
達には文句言わせないヨ。」
「いや、そういうわけにはいかねぇな。」
声と一緒に、私達の目の前に
黒い軍服のようなモノを着た男の人が
タバコをふかして立ちはだかった。
「やっと見つけたぞの連れのガキンチョ。
さっさと来ねぇか。」
「・・・・・サニー・・・・・」
戸惑い、進みだそうとしたその瞬間
神楽が私の手を強く握った。
「テメ!?何してんだ!!」
「神楽・・・・・!?」
ニッと笑った神楽が 私の腕を引いて逃げ出す。
「やば!?確保!!」
逃げる私達の目の前に、後ろにいる男の人と
同じような人達が現れる。
でもこの人達はノースリーブ・・・ていうか何あのカッコ?
彼らに混じって そこに見慣れた人を見つける。
ジョニーにテリコ・・・・・!
江戸に来てたんだ・・・・・
「サニー!ジャックに頼まれたんだ!!
絶対君を捕まえてみせ「どくアルゥゥゥゥゥゥゥ!!」
制止の言葉を無視し、神楽は私を抱えると
ジョニーを踏み台にして屋根に飛び上がった。
「ふぎゃぁぁぁ!!?」
「あいつ・・・!
の旦那のガキ抱えて跳びやがった!!」
「また万事屋の怪力娘か、全く君とこの子も
あんなのと付き合ってたら「さっきからデタラメ言わないで!
あの子はオルガ先輩の子供!ジャックは預かってるだけ!!」
テリコの剣幕には近藤さんも形無しである。
屋根の上を逃げ回る神楽に、下にいる真撰組の隊士達も
どうしていいか当惑しているようだ。
「それよりどうするんですかぃ?
なんならバズーカでチャイナを狙い撃ちやすけど?」
「「ダメだって!サニーちゃんに当たるでしょうが!!」」
「大丈夫でさ、俺はその昔スナイパーと
呼ばれていたらいいのにな〜。」
「「ただの願望!?」」
「つーかそよ姫ん時もそんな事してなかったか総悟!?」
「ダメよ、そんなので狙えるわけがないわ。」
ヴィナスがスッと前に出ると
「狙撃とはこうするものよ?」
SVDを当たり前のように 神楽に向けて構えた。
「「だぁかぁらぁ!!
サニーちゃんに当たったらどうするのって!!!」」
近藤とテリコのツッコミがハモった。
あるビルの屋上で 私達は座り込んで
話し合っていた。
「サニー・・・ごめんネ、早く切り上げて
帰ればよかったヨ。」
「ううん・・・いいの・・・・
迷惑掛けてごめんなさい・・・・・」
「そうだ、さんざん迷惑を掛けやがって
・・・・サニー!」
目の前にいたのは、怖い顔をしたジャック。
「!?」
「ジャック・・・・・!」
「サニー・・・・・・・」
つかつかと私の前までやってきたジャックが
右手で、ほっぺたを叩いた。
「何でこんな勝手な事をした!
自分の立場を理解していないのか!!」
「テメっなんて事するアル!!
女の子の顔を「神楽は黙ってろ!!!」
ジャックの怒号に 黙りこむ神楽。
「サニー・・・行くぞ。」
「え・・・・・・・」
「早くしろ!!」
怒鳴られ、私はビクリと身を竦ませると
神楽の方へ振り向けず・・・歩き出したジャックへ
走り寄っていった。
騒動が治まり 俺は皆に頭を下げた。
「近藤さん、迷惑掛けたな。」
「いや、君が謝る事はないさ・・・・・
サニーちゃんも年頃だ、いろんなモンに
興味を持つのは当たり前だよ。」
隣でいまだぐずり泣くサニーを気にしながら
近藤さんは労わるようにそう言う。
「だがサニーは・・・・・・何者かに狙われている。
ホントなら閉じ込めておく位の事をしないと」
「、さっきからエラそうに言うけどよ
テメェにこのガキを縛り付ける権利があんのか?」
思わず顔を動かすと、鋭い目をした土方さんと
視線がかち合った。
「この年頃だと何でもしたがるだろ?話には聞いてるが
ずっと閉じこもりっきりだったそうじゃねぇか。
・・・縛り付けておくのがホントに大切な事か?」
「そ、それは・・・・・・・・」
答えに詰まる俺を笑うように 土方さんは
口の端を上に吊り上げる。
「そうでもねぇだろ?ここなら俺達がいる。
それにあの怪力娘がいりゃ大抵は何とかなんだろ?」
その言葉は、最もだ・・・・・・
神楽といれば危険は近づかないし 彼らなら
サニーを守ってくれるだろうから・・・・・・
「・・・・・サニー。」
「・・・・・・・え?」
俺はしゃがみ込み、まだ俯き気味だった
サニーの頭を優しく撫でる。
「神楽といて・・・・楽しかったか?」
「・・・・・うん!こんなの初めてだった・・・!
初めて・・・外で友達が出来たの!」
ああ・・・サニーがこんな笑顔をするの初めて見たな。
「・・・・そうか。」
呟いて、俺は微笑みを浮かべた。
「つーかまさか土方さんからそんな事聞けるたぁ
驚きでしたねぃ。」
「そ、それはだな・・・・・」
「ははは照れるなよトシ!こいつだって
子供に優しくしてやる事ぐらいあるだろうさ!!」
「いやいや、案外ロリコンなのかもしれやせんぜぃ?」
「ざけんじゃねぇぇぇ!何勝手ほざいてやがる総悟!!」
「あんた・・・・・・・サニーに手ぇ出したら
オルガ先輩に変わって地獄を見せてやるから覚悟」
「「お前も本気にすんなぁぁぁぁぁぁ!!」」
殺気交じりのテリコに俺と土方さんがツッコんで
それでも収まらない彼女をジョニーとヴィナスが
どうにか説得したのは、また別の話。
そして・・・騒動から数日後・・・・・
「ハル兄さん、これMk.Uに貼ってもいい?」
『え?シールかい?それはちょっと・・・・』
「サニー、Mk.Uに貼るより
これに貼った方がいいんじゃないか?」
ジャックが出したのは竜宮城で使った事のある「EZGUN」
「これのスライドに貼れば剥がれることはないだろう。」
「うん!」
私はあの時撮った 神楽と映っている写真を
EZGUNに貼り付けた。
「サニー!迎えに来たアルヨ!」
そこに、神楽が玄関を開けて顔を出す。
隣にはよっちゃんと言う人も笑って立っていた。
「サニーちゃん!缶けりで遊ぼう!」
「今行く!」
「待てサニー、忘れ物。」
ジャックは 私にEZGUNを握らせた。
「神楽がいれば安心だが用心する事に越した事はない。
・・・・くれぐれも気をつけてな。」
「怪我するようなことはしないでねサニーちゃん?」
二人に 私は笑いかけながら頷いて
「はーい!行ってきます!!」
「サニー早く来るアル!!」
呼びかける神楽達の方へと、走っていった。
こうして・・・私に始めて友達が・・・
たくさん出来た・・・・・
私の・・・・初めての・・・・外側の友達・・・・・
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:サニーちゃんが江戸で馴染み始める話ですね
ほのぼのしてていいですねぇ・・・
神楽:お前もあのロリコンと同じアルか?
狐狗狸:いやいやいやいや違うから!てーかそんな
汚らわしいもん見る目止めてって!泣くぞ!!
土方:てかあのパツキン女もどっかの槍ムスメと
同じ思考かよ・・・・
狐狗狸:あー、確かに一緒かもしんない(苦笑)
それより何でまた皆ノースリーブ?
沖田:今年の夏もパねぇ暑さなんで、皆で
俺の考案した夏服にしたんでさぁ
近藤:これ結構涼しいしカッケーんだよ〜
君もだまされたと思って着て見ちゃどうだ?
狐狗狸:着ないと思うよ てか騙されてるのは
あんたらの方だからねそれ