「消え失せろゴリラァァァァァ!!」
スナックすまいるの前まで来ていた俺の耳に
ぶつかるような叫び声が突き刺さった。
・・・また近藤さんか
やっぱり、顔ボコボコになって出てきたし・・・・
「お妙さん、いい加減にしとかないと
ホントに近藤さん死んじまうぞ?」
「あらさん、言うに事欠いて
ストーカーの味方にでもなるつもり?」
「いやあのっそういうわけじゃ・・・・」
「そう言えば、ちゃんもう上がりなのよね
待ってて呼んでくるから。」
さほど待たずにがお妙さんの後ろから顔を出す
「あらら、また手ひどくやりましたねお妙さん・・・・」
「いつもよりひどくなってないか?」
「あら普通ですよ。」
よくこれで普通って言い切れるよホント・・・・
放っておくと近藤さんが死にそうだったので
応急処置を施し、三人で近くのレストランに入った。
「君、いつもすまないね・・・・」
「ホント・・・これで何回目になるかな・・・・?」
数えたことはないが 確実に10回以上は
こうしていると思う・・・
「でも、いつもこんな目に会わされてても
近藤さんはお妙さん一筋なんですね。」
「当たり前だ!!
俺をケツ毛ごと愛してくれると言っていたしな!!」
「「言ってないと思います。」」
「うう・・・そこまで口を揃えなくても・・・・」
しまった、今のはダメージでかかったかもしれん・・・・・
「わ、悪かったよ・・・・お詫びに何か奢るから。」
けれど近藤さんは手を前に出して、首を横に振る
「いや、どうせなら聞かせてくれないか・・・・
君とちゃんが どうやって知り合ったのかを。」
「「え!?」」
「面白そうね!!私も是非聞かせてもらいたいわ!!」
「ってさっちゃん!?
いきなり出てこないでくれよ!!びっくりした・・・・」
いつの間にかついて来てたさっちゃんが
さり気なく近藤さんの横に座ると
二人して聞きたそうな眼をしてこっちを見る・・・・
まあ、別に隠しておく必要もないからな・・・・
教えてあげてもいいか。
「わかった、そこまで言うなら話してもいいだろう。」
「「よっしゃぁぁぁぁ!!」」
ホントこう言う時だきゃ息ぴったりだよな
・・・・ストーカー同士
「何から話そうか?。」
「そうね・・・・・
初めて会ったところからがいいんじゃない?」
初めて会ったのは 基地の食堂だった。
俺はお喋りしている女性3人組の席に
入ろうとしていたっけ・・・
「ねえローズもいい加減男作りなよ。」
「何でよ、男なんてみーんな体とお金狙いばっかりよ
この前の男なんてしつこくって・・・」
「隣、いいかい?」
「は、はい・・・・」
「きゃー!!ジャックさんよー!!」
「ええ!?ジャックってあのFOX部隊のジャック!?
そんなエリートが何でこんな食堂に!?」
「たまたまここの基地に駐在しててね。」
「ほらローズ!!チャンスチャンス!」
「な、何で私が・・・・」
「ホラホラ!
結構かっこいいし、あのFOX部隊なんだから結構」
「私は関係ないです!失礼します!」
当時のは、機嫌悪く席を立ち上がって去った。
「あらら・・・・何を怒ってるのかしらローズったら。」
「ごめんなさいジャックさん。
彼女あれでも気にしてる方なんです。」
「ローズ?ローズ・マリーと言えばあの・・・・・」
「そうなんです。それを知った男達は
みんな逆玉になろうとして・・・」
「だから 男達を遠下げているんです。」
「そうか・・・・・」
戦場でのロマンスも美男美女だけの特権だよアレ
「あの時はホント性格悪いと思ったな・・・・」
「あら、そんなこと思ってたんだ・・・」
「あれ?ちゃんって何処かいいとこの子?」
近藤さんの問いかけに、は言葉を曇らせる
「え、ええ・・・ちょっと・・・・・」
「あら?そこは隠すのね。・・・まあいいわ
で、その後どうなったの?」
促すさっちゃんに俺達は顔を見合わせて
「次に会ったのは、訓練の時だったよな・・・」
「ええ、たしかあの時・・・・」
俺は基地の教官に頼まれて 射撃訓練の
講師をする事になった。
「エー、今回は偶然この基地に駐在していた
FOX部隊のジョン・ドゥさんに射撃訓練の講師を
お願いしてもらうことになった。
みんなも彼を見習い精進するように。」
周囲の反応は、当然驚きにさざめき立つ
「え、FOX部隊のジャックって言うと
あのグロズニィグラードのヴォルギンを倒したって有名な・・・」
「そんなすごい人がなんでこんな基地なんかに・・・」
「私語は慎め!では訓練開始!自分の持ち場へ移動しろ!」
訓練生は全員持ち場につき、銃を構え的を撃つ
一人一人の腕前を見学する最中 一人の訓練生に目が留まる
あの時の、ローズと言う子だ・・・
ここの訓練生だったのか
声をかけようかとも思ったが、話しかけ辛かったので
そのままにしておいた。
一通り訓練生に目を通し しばらく経ってから
俺は彼らに射撃の仕方を教授する。
「いいか?敵を前にしたら弾の事は一切考えるな。
敵を倒した後奪えばいいんだ。ちょっと見ててくれ。」
言って、M1191A1を取り出し
実際の的に向かって全弾撃ち尽してみせた。
「すごいや・・・・ああやって
グロズニィグラードでも生き残ったんですよね。」
呟きを漏らしたのは、ローズの友人である訓練生
「そうだ、もし弾が自分の武器を
合わなかったら武器ごと奪えばいいんだ。」
「そんなまどろっこしい事するより
的確に倒せばいいんじゃないんですか?」
挙手と共に俺の言葉へ叩きつけるようにして
言いつつ出てきたのは・・・ローズだった。
「何?」
「見てて下さい。」
銃を構え、的の急所に全て命中させると
周囲はローズに称賛の眼差しを送る。
「相変わらずすごいわねローズは・・・・」
「でしょ?
一発で敵を倒せばそれでいいはずですが?」
後の言葉は、少し挑発的だった。
「・・・・たしかに君の射撃能力は素晴らしい
女性でここまで出来たのも初めて見た。
だがそれは訓練上でのことだ 実戦は違う。
どれだけ訓練を熟知したとしても実戦では通用しない。」
彼女は小バカにしたように鼻で笑う
「それは向こうも一緒でしょ?
だったら私に少し分があ」
あまりにもナメた発言に、俺は思わずローズを引っ叩く
「自意識過剰もいい加減にしろ!!
戦場はお遊びでやるもんじゃない!!」
彼女と共に他の訓練生も皆黙り込んで
その訓練は終了した・・・
休憩中に、ここの訓練室長であり俺がFOXに
入隊する前の鬼教官マクドネル・ミラーが顔を出す。
「ジャック、元気にしているか?」
「マスター・ミラー!元気そうで!」
「元気ではいけなかったか?」
「とんでもない、こうして生き残ってるのも
マスターのおかげです。」
立ち上がり 礼をするとマスターは鷹揚に笑った
「あまり私を買いかぶらないでくれ、私はそんな
大層な人間じゃない・・・そういえば
さっき一人の訓練生に説教をしていたな。」
「ああ、ローズと言って・・・・
かなり自分に自信を持ちすぎています・・・」
「ローズ?ああ、あの有名な・・・・」
「知っているんですか?」
「これでも元軍人だ
その程度の話くらいは聞いている。」
流石はマスター、情報収集もしっかりしている。
「そうですか・・・確かに自信を持つのは
成長することに必要です。
しかし 実戦で通用するのかどうかはまた別です。」
「そうだな、一度実戦を経験すれば
何とかなりそうなのだが・・・」
「そう簡単には行きませんね。」
少し前から気付いていたがローズが隠れて
こちらの話を聞いていたみたいで
途中からやや大きめの声で語ったのだが・・・
これで、少しはわかってくれればいい・・・
さっちゃんがしみじみとを見やる。
「へえ、さんって結構きつめの性格だったのね。」
「ええ・・・今に思うと
何でそんなこと言ってたのかなって・・・・」
「まさかちゃん その頃から気があったとか?」
「そうね、愛おしい人ほど
きつく当たってしまうものだからね。」
近藤さんの一言に、さっちゃんも納得したように
頬を染めて頷いている。
「あんたの場合は当たって欲しいんだろうがね・・・・」
「でもその時は、あんな事になるなんて
夢にも思わなかったんです・・・・」
あの訓練から数日後、俺は何者かがこの基地に
襲撃してくる情報を入手し
それを元にした対策が練られていた。
「ここは訓練生養成所だ、こんな所を
襲うメリットがあるのか・・・?」
「マスター、もしかしたら敵は俺の首が
目当てなのかもしれません。
・・・恐らくGRUのヴォルギン派ではないかと。」
「ヴォルギンの敵討ちのつもりなのだろうか・・・・
とにかく訓練生の避難を優先させた方がい」
マスターの言葉を遮るように、爆発音が響く。
「何だ!?まさかこんな早く!?」
「マスター!すぐに訓練生の避難を!!」
「わかっている!」
この爆発音は勿論、休憩場の訓練生にも聞こえていた
「な、何なの今の爆発!?」
「まさかテロリスト!?」
『第1次非常線が張られました!訓練生は速やかに
所定のシェルターの避難してください!』
「ローズ!急がないと!」
「ええ!」
動き始めた訓練生達は、次の瞬間
轟いた銃声に悲鳴を上げて竦みあがった。
『きゃあぁぁぁぁ!!』
「全員その場を動くな!!貴様らは人質だ!
ジャックをおびき出すためのな・・・!」
全員が人質に取られている事を知らず、俺と
マスターは敵の対応にあたっていた。
・・・敵はかなり手慣れているようだ。
「このままではらちが明かない・・・ジャック!
君は訓練生の所へ!少しでも安心させてやるんだ!」
「わかりました!ここをお願いします!!」
マスターにその場を任せ、訓練生の休憩場に向かう
そこに見たのは 武装したGRUの兵士達だった。
「来たなジャック!
動くなよ、人質がどうなっても知らんぞ。」
「貴様ら・・・・!」
立ち止まる俺の前に、見覚えのある男が現れる。
「久しぶりだな。」
「お前は・・・!?カニンガム少佐!?」
「そうだ、覚えていたか・・・俺も忘れた事は無い
見ろ、貴様にやられたこの右足の義足を・・・」
言って カニンガムは右足をちらつかせる
そういえばグロズニィグラードでヴォルギンは
シャゴホットで無差別攻撃をしていて
それにコイツは巻き込まれていたが・・・・って
「それは俺がやったんじゃなくて
ヴォルギンがやったんじゃないのか?」
「どちらにしても大佐を怒らせたのは貴様の責任だ!」
憤り、カニンガムが近寄ると警棒のようなもので
俺を殴り飛ばした。
「グハ!?」
「おっと抵抗するなよ?
抵抗すれば・・・わかっているな?」
くそ・・・・!!
抵抗できない事をいいことに、カニンガムが
仰向けにされた俺の腹を義足で踏みつける。
「グッ!?」
「さあ苦しめぇぇぇぇ!
俺の痛みはこんなものじゃないのだぞ!!」
ギリギリと踏みつける力が強くなり・・・・
一発の銃声が 周りの空気を凍りつかせた。
目で辿ると、銃声の主はローズだった。
「あ・・・・当たらない・・・・なんで・・・・・
なんで、訓練ではうまく使えたのに・・・・」
「お嬢さん、戦場は訓練なんかとは違う。
当たるものも当たらないのが実戦だ・・・
そして、殺される恐怖も味わえるのも実戦だ!」
カニンガムがせせら笑い、右手にはめていた
機械のレーザーサイトをローズの足に合わせ
引き金を引いた瞬間、焦げた臭いと共に血が噴き出した。
「きゃあぁぁぁ!!」
「な・・・・何をした・・・!」
「これは世界初の光学兵器だ、レーザーといったかな?」
楽しげに呟きカニンガムは へたりこんだ
ローズへじりじりと近寄っていく。
「い、いや・・・・・来ないで・・・・」
「お嬢さん、戦場では誰かに銃を向けた時点で
命を狙われる事になる。
それを知れただけ ここの訓練生は幸せだなぁ・・・」
レーザーサイトの照準が、彼女の額に当たる
「この小娘の命と引き換えに 実戦の痛みと
失うものの大きさが知れるのだからな!!」
引き金が引かれる・・・・正に直前
俺は半身を起こし、咄嗟にカニンガムの背中を撃った
「き・・・貴様・・・・!」
「そいつに手を出すな・・・!」
「全員伏せろ!!」
突然の怒号に敵以外が全員伏せ
一斉に鳴り出したライフルの銃声が周囲の敵を一掃した。
「ジャック!大丈夫か!」
駆けつけたのは、硝煙立ち昇るライフルを抱えたマスター
「マスター・・・よかった間に合ってくれて・・・・」
「すまなかったな、それにしてもまさか
GRUのカニンガム少佐が関わっていたとはな・・・・」
立ち上がりながら・・・まだレーザーサイトが
見えている事に気付く
それはローズの頭に いまだ当たっていた。
「き・・・・・・・貴様だけでも・・・・・」
「危ない!!」
刹那、ローズを庇った俺の背に
レーザーが直撃し 濃い血の臭いが香った。
「グ・・・・・!?」
「おのれ・・・・・」
一言呻き、そのままカニンガムは動かなくなったが・・・
「ジャック!大丈夫か!」
「だ、大丈・・・・夫・・・で・・・」
当たり所が悪く、出血がひどかったのか
そのまま俺も 気を失った。
・・・・・・次に目覚めたのは病室の中
気配を感じ横を見ると、そこにローズがいた。
「あ、気がつきました?」
「ああ・・・・君が看病してくれたのか・・・・・」
「ええ・・・・・あの
さっきはありがとうございました。」
「いや、いいんだ・・・・でもこれでわかっただろ?
実戦と訓練は違うって。」
「はい・・・・・今回で身を持って知りました
・・・・私・・・まだまだ甘かったって・・・」
「それに気付いただけでも十分君は成長した。
それが分っただけでも」
言いかけた言葉は、ローズが急に
抱きついてきた事によって止められた。
「な!?」
戸惑う俺に構わず 胸に顔を押し付けたまま
「私・・・・両親を戦争でなくして・・・
ひどい伯父からも逃げてきて・・・・
ずっと寂しかった・・・でも・・・
自分に素直になれなくて・・・
ずっと一人でいて・・・・!」
泣きながら・・・・ローズはそう言った。
「・・・・・・そうか・・・
両親をなくしてたのか・・・・・・」
「私・・・馬鹿な女よね・・・・
心がきれいにならないのを全部男のせいにして・・・!」
「馬鹿じゃないさ、それに君はきれいな心を持っている。
そうじゃない人が付きっきりで看病なんてしないだろ?」
慰めるように頭を撫でると、彼女は顔を上げて言った
「私・・・今なら素直に言える・・!
私・・・あなたのことが好き!」
「え!?そんな唐突に・・・・」
「あの時正直に私の悪い所を言ってくれて・・・・・
ホントに嬉しかったの・・・でも素直に言えなくて・・・」
「・・・・ホントに俺みたいなやつでいいのか?」
「構わない・・・・」
「いつ死んでもおかしくないんだぞ?
それでもいいのか?」
「構わない!」
俺達は 互いに惹かれあうようにキスを交わした
「ほほぉ・・・・ジャックもまだまだ若いな・・・」
そこにいきなり、マスターが現れ
かなり面食らいながら俺達は慌てて離れた。
「な!?マスター・・・脅かさないで下さいよ・・・・!」
「教官・・・まさか今までの・・・・」
「一部始終な、久しぶりに若いころを思い出せたよ・・・
ハッハッハッハッハッ!!」
「・・・こうして私とは付き合い始めたんです。」
話が終わり、二人は納得したように深く頷いていた。
「ウーン、戦場で結ばれた二人か〜。
なかなか絵になるねぇ〜。」
「近藤さんもいつかはいい人に巡り合えますよ。」
「そうだな・・・
いざとなったら近藤さんかっこいいし・・・」
その一言に、近藤さんの目が輝きだす
「マジで!?俺いざとなったらかっこいい!!?」
「あの事件でも結構なものだったぜ?」
は"私は?"と言いたげな顔した
さっちゃんの方を向いて、こう言う。
「猿飛さんは・・・・
大人しくしてればいいかもしれませんよ。」
「そうかしら!?」
「そうだな・・・・
さっちゃんも黙ってれば結構なもんだぜ?」
二人はとても嬉しそうな顔で俺達の手をそれぞれ掴む
「君・・・・これで自信がついたよ・・・・」
「私達・・・あなた達を見習って幸せになるわ!」
「あ・・・それはどうも・・・・」
「「絶対お妙さん(銀さん)と結ばれて
幸せになります!!」」
「「あの・・・・・ごめんなさい
その二人はやめといた方が・・・・」」
俺との同時忠告は
近藤さん達の耳に届いてはいないだろう、きっと。
一人に一途になるのもいいけど・・・・・・
あの二人はやめておいた方がどう考えても
幸せになれると思うのだが・・・・
まあ、本人が納得してるならいいか。
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後書き(退助様サイド)
退助「さあとが付き合った理由が
ようやく明かされました〜ヒューヒュー!」
近藤「あの・・・これ一応俺の話なんだよね・・・
ほとんど君達の回想なんだけど・・・・」
退助「まあいいんじゃない?」
近藤「さらっと流しちゃったよこの人!!」
さっちゃん「バレンタインネタから久しぶりの登場なのに
私あれだけ!?どれだけ放置プレイすれば気が済むのよ!!」
退助「永遠にしてやろうかコラ・・・・・
まあ痔忍者話には出すつもりだけど。」
妙「それにしてもさんとちゃんの出会いって
初めからぞっこんじゃなかったんですね。」
退助「そりゃ誰でも最初はぞっこんじゃないから・・・・
まあ彼らの場合は戦場で見つけた恋的なものだね。」
さっちゃん「私はいつでも銀さんにぞっこんよ!!」
近藤「俺だってそうだ!!俺もお妙さんにぞっこんだ!!」
退助「絶対あんたらぞっこんする相手を間違えてるって・・・」