「何だって?ヴィナスを?」
『そうだ、彼女をFOXにスカウトしてくれ。』
俺は大佐と無線連絡をしていた。
何でもソ連との再同盟の締結によって
FOXの戦力増強のために
ヴィナスをスカウトしろとの命令が下ったとか。
「だが何処にいるのかわかってるのか?」
『それは問題ない、日本にいることは分かっているのだ。』
「日本に?何でまた?」
『真意は分からんが・・・
とにかく、彼女を見つけてスカウトしてくれ。』
「了解した。」
無線を切ると、すぐさま質問が飛んでくる。
「、ヴィナスって誰なの?」
「ああ、ヴォルギンのとこにいた潜入工作員だ。」
ヴィナス ライコフと並ぶヴォルギンの側近だった女性だ。
あの赤くてボディラインがくっきりはいった
派手なスニーキングスーツは 今でも覚えている
「だとしても手がかりがないとなるとな・・・・・・・」
「、だったらコンビニに行って来てくれない?
ちょっと読みたい本があるんだけど・・・」
「分かったよ、ついでだ。」
ということで俺達はコンビニに向かった。
「あれ?土方さんじゃないか。どうしたんだ?」
「いや・・・ちょっとな・・・」
珍しい所で会っただけでなく、顔を引きつらせ
歯切れの悪い返答を返す土方さんに首を傾げる。
ふと 外のビルの屋上に何かが光ったのが見えて
確かめるために双眼鏡を取り出し確認すると・・・
「い゛ぃ!?」
屋上の柵に身を乗り出してスナイパーライフルを
構えた近藤さんと沖田君、それと松平がいた。
何してんだあの人ら・・・・・・・
女は性格問わず色恋沙汰に興味深々
「見ちまったモンは仕方ねぇ・・・
事情は後で話す、今は放っておいてくれ。」
「分かったよ・・・苦労人だなあんた。」
様子見に回ると、店員である娘が
店員の男3人に詰め寄られている事に気付く。
仕事そっちのけで何やってんだか・・・
眺めていると土方さんがレジの前に行った。
いよいよ行動を起こすのか、てーかビルの上の
アイツらの目的って何なんだ?
真偽を確かめるべく見守っていた時
ふと その隣のレジにいた長髪で能面の女性が気になり
まさかと思った俺は、こっそりそのレジまで行った。
「・・・・・・おい。」
「いらっしゃいま・・・・・あらジャックじゃない?
どうしたのこんな所で?」
上げたその顔は 探していたヴィナス当人だった。
「やっぱお前か!俺が聞きたいわ!!」
「私はあの戦いが終わった後、日本に来たの。
でも仕事がなかったから・・・」
「だからって何でコンビニでレジ打ちしてんだよ!!」
「だって・・・なんか好きだもの・・・
敵を撃ってるみたいで。」
「うまいこと言ってんじゃねーよ!!」
結果オーライと言えばアレなんだが
まさかこんなところでヴィナスに会うとは
思わなかった・・・つーか思わないだろ普通。
そうこうしてる間に向こうの用事は終わったらしい
・・・ように見えたのはその時だけだった。
「面倒な事になったもんだぜ」
「まあ、気持ちは分かるよ土方さん。」
この状況の引き金となったのは松平の娘、栗子
彼女が男に告られそうになってるのを
親バカの松平が逆上して始末しようとしたが
土方さんが止めに入って告らないようにあの場で
愛人を演じたのが仇になり
そのままデートに行くことになってしまった・・・
ということで、それを彼女が傷つかずに
別れさせてくれと土方さんが万事屋へ依頼し
あの場にいた俺も協力することになり
銀さん達に付き添ってきたのだった。
「・・・で、何でお前も来てるんだよ
つーかまたそのスーツ着てるのかよ。」
「いいじゃない、私結構こういうの好きよ?
それにコンビニのレジ撃ちより面白そうじゃない。」
「字が違ぇし、ああもう・・・・」
「いいじゃねえかよ〜
こんなエロイ格好した姉ちゃんと知り合えてよ。」
「嬉しくないわ!元は敵同士!!」
「静かにしてくださいよさん!」
「ああ、すまん・・・」
依頼が依頼だけに、俺達は基本 二人を陰ながら
尾行する形になっている
ので騒がしい言動は極力抑えなければならない。
尚、計画の相談は要所要所で栗子にバレないよう
土方さんも交えて行われている。
土方さんは栗子と並んで歩き、映画館で足を止めた
「実は僕・・・この手の映画に目がないんだよね・・・」
そこに掲げられていた看板は・・・
アニメでも文章内でもなんとも言い難いシロモノだった。
「うわ・・・これは痛い。」
「普通に引くアル。」
「奴は一度へたれたオタクを経験済みだ、
奴にはへたれたオタク『トッシー』を演じてもらう。」
「女引かすにはオタクは最強ネ!」
「そんなにオタクって駄目なの?」
不思議そうに首を傾げるヴィナスに 俺は言う。
「まあ全部がそうじゃないんだが
生理的に受け付けない奴もいるからな・・・」
このオタク映画作戦の結果は・・・惨敗で終わった。
向こうは土方さんが好きなものは自分も好きになりたいと
いうことで映画に同行、見事にあの映画に食い付いた。
つーか18禁映画なのに女の子が食いつくって・・・・
親もアレだが娘も随分変わってるなホント
まあとりあえず次の作戦に移るため、二人と
俺達は共に定食屋に向かった。
「ヘイ!土方スペシャル一丁!」
「・・・ジャック、何なの
あのトグロを巻いた黄色い物体は?」
「マヨネーズだ。土方さんはあれが大好物なんだ。」
「土方スペシャル、別名『犬の餌』
あれを見て嫌な気持ちにならん奴はいない。」
「嫌な気持ちっていうか見ただけで
口の中が酸っぱいアル・・・うえ。」
「でもおいしそうね・・・」
頼もうかと思案するヴィナスに待ったをかける。
「ヴィナス、やめといた方がいいぞ。
俺達は俺達なりのものがあるだろ?あれとか」
「・・・そうね、じゃあそれを頼みましょうか。」
「あれって何です?さん。」
「まあ見れば分かるさ。」
店主に"いつもの奴二つ"と伝え、程なくして
店主が丼を持ってきた。
「ヘイ!コブラ丼2丁!」
カウンターの上にはとぐろを巻いたコブラの丸焼きを
乗せたできたてホカホカの丼が二つ並んだ。
「お前らのそれもとぐろ巻いてんじゃねーかぁぁ!
つーかどっから取って来たそれ!!」
「サバイバル風コブラ丼だ。」
「この鳥に似た食感が絶品なのよ。」
俺とヴィナスは丼を頬張りながら銀さん達にかざして
「「食べる?」」
「「「いらんわ!!!」」」
「そうか?こんなにうまいのに・・・なあ?」
「そうね、こんなにおいしいモノが
食べられないなんて不幸な人たち。」
顔をしかめる万事屋トリオに構わず丼を食べる俺達。
そうこうしてる間に栗子も土方スペシャルを食べ始めた。
さすがにあれを平気に食べるのは無理かな、と
思っていたのだが・・・・・・
「口の中が味覚のワンピース!味の三千世界やー!!」
うええええええええええええええええええええ!!!
マジかよ!!あれを平気で食べてしかも絶賛!?
つーかどんな絶賛の仕方だよ!!!
しかも土方さんちょっと喜んでるし・・・
「そんなにおいしいのかしら?」
「間違っても食おうとするなよ」
興味を示したヴィナスに諭しつつ、丼を平らげ
定食屋も後にした。
銀さん達は栗子の天然ぶりと献身ぶりに
圧倒されて 段々投げやりになっていた・・・
「もうアレしかねぇな 失敗したら
とあんたでフォロー頼むわ」
「・・・・・・上手く行くのかこんなの?」
とにかく次の作戦に移ることにした。
まずは万事屋トリオによる『チンピラのかつ上げ作戦』だ
三人は路地で待ち構え、頃合いを見て二人の前に出る。
「ようようお暑いねえ!
ずいぶんと見てつけてくれんじゃねえの!!」
「女の前だからってかっこつけてんじゃねーぞ!!」
「チャラチャラいちゃつきやがってよー!
ぶっころされっぞコノヤロー!!」
「・・・何してんだあの人ら・・・」
呆れながらも俺とヴィナスはその次の作戦に移るため
少し離れた場所でスタンバイしていた。
名づけて『人質作戦』・・・俺は悪の組織のボスで
ヴィナスは正義の味方という設定で栗子を人質にとり
土方さんはその隙に逃げて見捨てるという作戦だ。
ズサンだなんだとか言う苦情は受け付けないぞ
「あれが日本のチンピラってやつね
あんまりアメリカと変わらないけど・・・」
「当たり前だろ。格好が格好だからな。」
「す・・・すいまっせーん!!!」
土方さんは3人の前で情けなく土下座をした。
伊東が出てきた時にもこんな事してたような・・・
デジャヴって奴なのか?これ
「命だけは勘弁してくださーい!!
靴の裏でも何でも舐めますんでー!!!」
やっぱり・・・あの時見た光景と一緒だ・・・・
「何だよこいつ!!
3千円とsuicaしか入ってねーぞ!!!」
「んだコノヤロー!!
いい大人が3千円てどういうことだー!!!」
「まだ持ってんじゃねーの!!」
「ヘッ!!隠してんじゃねぞコラー!!」
銀さんは言いながら土方さんに蹴りを入れている。
「毎回毎回キザったらしい台詞言いやがってよー!!」
「何回DVDの表紙になれば気が済むんだコノヤロー!!」
「かっこつけてんじゃねーぞコラー!!!」
なんか、楽しんでないかあの三人・・・?
「てーいい加減にしろよゴルァァァ!!」
流石に耐え切れなかったらしく土方さんが切れた
「なっげーよ!いつまでやってんだよてかそれ
俺のことだろ!!素の俺のことだろ!!
何この期に日ごろの鬱憤晴らしてんだコノヤロー!!!」
「あーあ、台無しだ・・・」
「これじゃ人質作戦も出来ないわね。」
日が暮れて 俺達は冷めたムードを漂わせつつ
とりあえず木が一本立った広場へ向かった。
銀さん達と土方さんが、栗子に聞こえないように
最後の作戦を思案し 行動し始めたようだが
状況はどう見ても八方塞がり、これはもう諦めるしか・・・
遠巻きに見つめていると 向こうから誰かが
近づいてくるのが分かった。
見た所 攘夷浪士達みたいだが・・・何でこんなトコに?
次の瞬間 ヴィナスが真剣な顔で耳打ちする
「ジャック、あれはあの男を狙ってるわ。」
「何?行くぞ!」
「ええ!」
俺とヴィナスは 土方さんの元へと
駆けて行こうとする浪士達の前に立ち塞がった。
「何奴っそこをどけ!我々は土方を抹殺しに行くのだ!!
邪魔立てするなら貴様らもまとめて斬り捨てるのみ!!」
「やれるものなら・・・」
「やってみなさい!!」
俺とヴィナスは即座に拳銃を取り出して連射し
構えていた浪士の刀を次々と弾き飛ばした。
「な・・・何だこいつら!?」
「まさかあの男・・・高杉らを退けた奴か!?」
「そうとも、俺の名は
聞いたことぐらいあるだろ・・・まだやるか?」
「あと、私はそこらの兵士みたいに甘くはないわ。」
「くそ!!退却だ!!」
自分達の力量を悟ったか、そそくさと浪士達は帰っていく
・・・よかった 土方さん達には
今のイザコザは気付かれなかったようだ。
「・・・まったく、ややこしい連中だ。」
「腕が上がったようねジャック。」
「そりゃあれから数年経ってんだ 腕も上がるさ。」
「そういえばあの二人は?」
「お?そうか。どうなって・・・」
ふと見るとマヨネーズの格好をした土方さんが
って何してんだあの人!?
あの人も色々と投げやりになってないか!?
なんか話してるみたいだが あのシチュエーション
何処かで見たことがあるような・・・
ぼんやり眺めるうちに銀さん達も同じ格好をして出てきた
「王子!そろそろ出発マヨ!」
「お迎えでゴンスマヨ!」
何してんだあの人ら・・・てーか
相談してた最後の作戦って、コレの事かよ。
土方さんはリアカーに乗ってどこかへ行ってしまい
かくして、計画は成功した・・・ようだ 多分。
「・・・ずいぶんと騒がしい連中だったわね。」
「ああ、そこんとこもFOXと変わらないよ。」
ふぅんと一つ返事をして ヴィナスが微笑む。
「興味が沸いたわ・・・私、FOXに入るわね。」
「え?マジでか?」
「ええ、あの人達が好きになったのよ。
FOXに入れば色々聞けるでしょ?あなたから。」
「・・・まあこれで手間が省けたってもんだ。
よろしくな、ヴィナス。」
「こちらこそ。ジャック・・・いえ、さん?」
記念に 俺とヴィナスは握手を交わした。
この時の笑顔は見たこともなくきれいだった・・・
その後、ヴィナスは正式に
FOXの隊員になったとの知らせが入った。
テリコも入ったし、これでまた賑やかになったな・・・
――――――――――――――――――――――――
後書き(退助様サイド)
退助「さあ、順調に仲間加入フィーバーを出しております。」
銀時「ていうか原作沿いで登場ってどういうこった?
…ここの管理人、この回見逃してっから色々アレしてっけど」
新八「前回のテリコさんの時はシリアスパートだったのに
何でヴィナスさんはギャグパートなんですか?」
退助「それもあって今回はギャグパートにしました。
それに原作設定ではエンディングにレジ打ちしてるっての
あったから今回コンビニのバイトをしてる事にしました。」
土方「あんな格好でよく大通りを歩けるもんだな。」
退助「着慣れてるってこともあるし、
周りの目はあまり気にならないようです。」
神楽「あのアマ侮れないアル・・・恐ろしい子・・・・・」
退助「何で対抗心燃やしてんの?」
栗子「私の台詞がほとんどないって、一体
どういうことでございまするか?」
退助「いや、今回のメインはヴィナスであって
あんたはオマケっていうことで我慢してください。」
松平「てめえ、娘をダシにしやがって
ゆるさねえぞクオルルルルルァァァァァァ!!」
退助「ちょ!!戦車隊引き連れることじゃ・・・
ぎゃあああああああああ!!!」