マザーキル作戦が終わって数ヶ月が経って







俺は、平和なひとときを送っていた。







相変わらず 仕事はさほど入っていないものの


ママが残してくれた『賢者の遺産』の一部を私用に使えるので、
装備の注文や何か入用の時には とても助かっている。







無闇に金を使うのは好ましくは無いが





金を使うことで円滑になる物事や状況もある為
そういった出費は止むを得ない事も理解している。







・・・・・・・しかし・・・・・・・







おぉうぃー!ドンペルィーノおかわりぃ!」


「あー、俺も俺も!!」


「はーいドンペリ二つ入ります!」


「・・・・なんで俺がこんなトコに来なきゃいけないんだ」







この状況は明らかに 金と時間の無駄遣いだ。









俺はお妙さんに呼ばれて、銀さんと長谷川さんと一緒に
「スナック すまいる」に来ていた。







「そういう事言わないの
お妙さんのクビが掛かってるんだから。」


「だからってここで遺産を使うってどうよ?」


「硬ぇこと言うなよ。ちっと息抜きして
ハメ外したって母ちゃんも文句は言わねぇだろぉ?」


「俺は、女遊びなんかに
遺産は使いたくないって言いたいんだよ」


「いいじゃありませんかさん
人助けだと思えば、お母様も許してくれますよ。」





ていうかアンタは金が欲しいだけだろ


喉元まで上がったセリフを何とか抑える。







…ここで彼女にそう言った所でスルーされそうだし





最悪、キレたお妙さんによってこの場が戦場
なることだって十分有り得る


そうなったら オセロットより数倍タチが悪い。







そうこうしてる内、向かい側で接客している
女達から黄色い悲鳴が沸きあがる。







「きゃー!!松平のとっつぁんが来てくれたわよ!!」







入り口に視線を向ければ、


キャバ譲を従えた怪しいグラサンの親父が悠々と入ってきた。





アレは確か警察のトップの・・・・松平と言っていたし
恐らく本人には間違いないが、


何で唐突にこんな場所に?







「やばいよお妙、あの人 遊び方が派手で有名なんだから。」





同僚のおりょうさんの言葉に
お妙さんの表情が少し厳しさを増す。







どんなトップだよ・・・


てか、税金使って遊んでんじゃないだろうな?





人の事を言えた立場じゃないが こんなの
トップでいいのかこの国は?











ドンペリってそんなテンション上げてまで飲むもんか?











こうなった発端をまだ話していなかったが





から聞いた話も含め、掻い摘んで説明すると







お妙さんは同僚の阿音ってキャバ嬢と
店で色々問題を起こしていて


それが転じてクビを賭けた勝負をすることとなり


それでお妙さんは自分が勝つ為に知り合いに
片っ端から召集をかけた・・・と言うわけだ。





俺にしてみればどちらが勝ってもプラマイ0、


てゆーか遺産が減るだろうしマイナスなんだが・・・







にどうしてもと言われたし、何より
お妙さんの頼みを断ると後が怖いので


渋々この場所に来たのだった。









よくよく見れば松平を向かいの席に案内する女は、件の阿音だ。


・・・てことはあっちも召集作戦に出たって事か
これは正直言って厄介だ。







「パパァ、私ドンペリが飲みたいな〜」


あん?あーんなのジュースと同じじゃねーか。
好きなだけのんめぃ」





っておぃぃ!!あの馬鹿高い酒をジュース!?
どんだけ遊びなれてんだ!!


しかも、来て早々ビン一本がぶ飲みしてるし・・・・・







俺には悪いが そこまでしてドンペリなんか
飲む気はしない、ワイン飲んだ方がまだマシだ・・・・







「すいません、ワイン一つくださーい。」


うん?誰だあの若造?」


「あぁ の彼氏みたいよ、パパ。」





パパって何だよ・・・・・







サングラス越しであっても、松平が俺に
軽蔑めいた視線を寄越していることが分かる。





「なーんだ、まだ青臭いガキじゃねぇーか。
キャバクラ来ておいてワイン?女遊び知らない奴ァ居酒屋に行けや」


のこと、悪く言うのやめてもらえませんか?」


「おうー、ちゃん久しぶりぃ
そんな青いガキほっといてこっちへどうだぃ?







既に酒の回った松平が へと手を伸ばしかけて―







「すいません!ワインやめてドンペリ二十本!!」


『えええええええぇぇぇぇぇ!!!』





店中の人が俺に視線を向けた。







やばい、ついその場のノリで言ってしまった・・・・・





でもこうなった以上は仕方ない てーか
あのオヤジにを近づけさせたくないしな!







「いいぞ君!!俺もさらに十本追加だ!!」


「ドンペリ三十本入りまぁーす!!!」





近藤さんんん!?アンタ何便乗してんだよ!!
ハードル余計に上がったじゃねぇかぁぁ!!


いや、それよりどっから沸いて出た!?





「お妙さん、店の女の子から事情は聞きました。
俺達夫婦なのに水臭いじゃありませんか。


僕に任せてください!これでも稼いでいますから!!」





いやアンタのも税金だよね!?







ドサクサに紛れて夫婦とか言い出したことに
ツッコミが入るかと思いきや


意外にもお妙さんは頬を染めて、





ゴリラさん・・・」


「いや、ゴリラじゃないから・・・」


「じゃあ・・・ゴーリラっさん・・・」


「いや、言い方変えただけだよね?」







松平が席を立って こっちに移ってきた近藤さんを指差す。







「近藤ぉぉ!!テメかぶき町で
俺より目立つなんざぁ百年早えぇよ!!」



「うるっせーよジジイ!!
今日からかぶき町の帝王は俺だー!!!」






流石にその言葉は聞き捨てならなかった。





「あぁ!?ざっけんなオッサンども!
量見りゃほとんど俺の方が勝ってんだ!!
俺が帝王だ!!!」



が・・・・・壊れちゃった・・・・
どうしよう、遺産全部使っちゃったら・・・・・・」


「大丈夫、元々遺産を使う気はない。


ビッグ・ボスになってから給料が鰻上りだからな
多分そっちでなんとかなる。」





俺はにだけ聞こえるようにそう呟く。





「そう?ならいいんだけど・・・・」







望まない形の三つ巴になってしまってるが





もはや引っ込みなんて付くはずも無い。







ふざけるなぁ!
俺の邪魔する奴ァたとえ将軍であろうとゆるさねえ!
ドンペリ十五本持ってこい!!」


「きゃー!!パパかっこいいー!!」


「お妙さん!!こっちもドンペリ」


「やらせるか!!!!こっちも」


「「すいませーん、これでドンペリおかわり!!」」


「「もう頼んでるし!?」」





つーかもすっかり便乗してるし!?


すっかり二人で飲んで出来上がってるしぃぃ!!





「せめてかっこいいー、とかないの!?」







近藤さんが寂しげに言うと、代わりに
酔っ払ってる銀時と長谷川さんが答えた。





「いやー、あんたらかっこいいよ・・・
特に・・・無職なのに頑張るねえ・・」





万年無職のマダオに言われたくねーよ!!!


涙ぐむの止めれ!同情される立場逆だしそもそも!!





「オメーらスゲェな、普通こんなに貢げねーよ?
ゴリラも今日はGOLLIRAに見えるよ!」


「横文字になっただけじゃねぇか!
つーか店の子でもないお前らが飲むなぁぁぁ!!」



「細けぇこと気にするなよ なっ!」


「するわぁぁ!!」


「ドンペリあと三十本追加!!」


「「勝手に増やすなァァァ!!」」





あれよあれよと言う間に テーブルの上には
飲み切れないほどのドンペリが積み上げられ


いつしかお妙さんと飲んで盛り上がってるまで
ドンペリ競争に参戦の形を取り





本格的に三つ巴となって、デットヒートを繰り広げた。









しかし酒に酔った勢いとはいえ よく近藤さんと
松平の資金が尽きないもんだ







俺の方は、店の在庫がなくなるだろう程度は
持っているから構わないのだが・・・









やるじゃねーか若造に近藤ぉ!
だがそろそろ財布の中身がねーんじゃねぇの?」


なめるなよ!俺は夫婦貯金を全部下ろして
・・・・・あれ?もうない!?何で!?」





財布を見つめ 近藤さんが慌てふためく。







当たり前だろ・・・どれだけ高いと思ってるんだ?







これで近藤さんが抜けるのも時間の問題、
後はあちらの資金力だが・・・





ハッハッハッハッハッハッハ!!
どうしよー!母ちゃんに怒られるー・・・」


「「お前もやばいんかぃぃぃぃ!!」」





半ば涙声になった松平へ、近藤さんと同時にツッコんだ。







やれやれ これでそろそろカタが着くのか・・・







「近藤さん・・・・・・・
ここまでやってくれただけで充分です・・・・」



「お妙さん・・・・」







近藤さんの現状を察してか、神妙な顔でお妙さんが呟く。





流石の彼女も、知った相手の身を滅ぼさせてまで
勝ちたくはないのだろうな・・・・







お妙さんは 少し俯いて、





「後は・・・
これ売っぱらってくれるだけで充分ですから・・・・」






刀を抱きしめてそう言った。







・・・あれ?あれって近藤さんの刀だよな?
てか まだ酔っ払ってないお妙さん!?







「・・・・あの・・・・・それ武士の魂なんですけど・・・・」


「魂なんてまた買えばいいじゃないですか・・・」


「いや、そういう問題じゃなくて・・・・」





身を滅ぼさせてまで勝つ気だこの人ぉぉぉ!!

戸惑う近藤さんへ ろれつの回らない銀時の野次が飛ぶ。





そうだそうだ!刀なんざ中古で買え買え!
俺なんて通販で刀買ってんだぜ?」





え?その木刀って通販んんんんん!?


メタルギアRAYの口を破壊したその木刀が
通販って・・・・それでいいのか主人公!?





「初耳だよ、仙人に貰ったんじゃなかったのかよ・・・
俺なんて専門店で悩んで悩んで・・・」


「お前はグラサンな?」





お妙さんはいつの間にか 長谷川さんの前に立っていた。





「え?」


「だぁから・・・グラサン売って来いって
・・・言ってんだろ!!





頭スレスレにパンチを繰り出し、怯んだ長谷川さんに
グッと顔を近づけてささやく。







「高ぇーんだろ?・・・・行け。」







脅してまで勝ちたいのかよぉぉ!?





とぼとぼと歩く近藤さんと長谷川さんに、
同情の念を禁じえない。







「貧乏のくせに見栄張ってっからそんなことになんだよ!!」


「いやアンタも人のこと言えないから」





一応ツッコんでみるが、思った通り酔っ払った銀さんは
全く聞いてなんかいなかった。





「俺ぁ普段から質素に生きてるから
失うもんなんて何も・・・・」


「お前は借りてこい。」


「・・・・・・え?」


「だから、金のねぇ奴は借りてこいっつってんだよ」





お妙さんは真っ赤なオーラを放ちながら銀時へそう宣言した。







これで逆らえば・・・間違いなく命はない。







「全く、貧相に生きていてもそうなるんだ。
俺みたいに日頃から気をつけてれば手持ちだけでどうとでも・・・」


「あらさん?こんなに貯金があるのに
ポケットマネーで済ますつもり?





彼女は俺に通帳らしきものをかざして笑う。







懐を探れば、そこにしまってた筈の貯金通帳が無くなっていた。
・・・・・・ついでに財布も。







「え?あれ?アンタいつの間に・・・・!」


「おろして来いや・・・・・テメェの手持ちだけで
ここの在庫が無くなると思ってんのか?」






ええええ!!マジで!?
そんなにドンペリがあんのぉぉぉ!!?





たかがキャバクラだと侮ってただけに予想外だ。







・・・・仕方ない・・・・わが身大事だ・・・・・







俺は三人の後を追って、一緒に銀行へ行くハメになった・・・・・













三人の姿を見て 頭にネクタイを巻いた
グデグデの松平が勝ち誇ったように笑った。







ヘッ!だからガキが夜遊びするなぁ
百年早ぇぇーっつってんだぃよ。


そんな懐じゃ、かぶき町で生きていけねぇんだよ!


ってことで財布もいいカンジに軽くなったし
阿音ちゃん、そろそろお勘定・・・」







そこで 先程までベッタリだった阿音の様子が豹変する。







「何言ってんだ?
財布が空でも通帳は空じゃないだろ


・・・・早くおろして来い、奥さんに全部バラすぞ?





冷徹な宣言に 松平の表情が固まった。





「阿音さん!何もそこまでしなくても・・・・」


「うるさいわよ
あたしゃこうでもしないと生きていけないの!」







こうして、松平も銀行へと駆け込んだのだった。









・・・・・そして、閉店時間となって夜が開け







男達の狂宴は終わりを告げた・・・・・













あの後、売り上げの結果を聞いた所・・・・







二人の売り上げも拮抗しまくってたのだが





なんと驚くべきことにその二人をぶっちぎって
トップに躍り出てしまったため


本来の勝敗を付けれず、仕方なく二人とも合格





両者で店を盛り上げてくれって事でそちらの話は収まったようだ。









それはいいとして・・・・・





俺は、朝日を仰いでため息をつく。







隣には資金が盛り下がったオッサン四人が
パンツ一丁で立っていた。







こいつら 本当にダメだな・・・分かっちゃいたが。





「おい、何で君だけ裸じゃないんだよ?」


「俺はアンタらと違って身の程弁えてんだよ
本当なら 手持ちで何とかなってたしな。」


「だからってオジサン達だけ裸ってどうなんでぃ?」


知るかよ!自業自得だろ!!」


「一人だけ無事で済ますと思ってんのかぁぁ!
おいテメェら!パンツ一丁にしちまおうぜ!」


「っしゃー手伝うぞ万事屋ぁぁぁ!!」


「ちょっ逆恨みじゃねぇかぁぁぁヤメロォォォォー…!」









・・・・まあちょっと見苦しい部分も含め、
俺の手持ちは貯金も含めて大幅に持っていかれた。





幸い、に出た特別ボーナスで
今月の生活費くらいは何とかなったのだが







・・・・・・けど、三人は借金をかなり背負ってたらしく


使わずにすんでた筈の遺産でそれを
肩代わりすることになったのは また別の話・・・・・・







って、そんなんで丸く収まってたまるかぁぁぁ!!








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後書き(退助様サイド)


退助「長編が無事に一つ終了したので、ギャグ方面に
短編を書いていってるわけですが・・・・・」


銀時「おぃぃ!最初の短編がドンペリってどーよ?」


退助「結構インパクトがデカかったのと、
さんの手持ちアピールのために書きました。」


長谷川「ていうか君って俺の同類じゃなかったの?
何で最後裸じゃなかっんだよ!?」


退助「あんたは知らないだろうけど・・・(説明省略)」


長谷川「えぇぇぇぇマジで!?そんな稼いでんの!?
頼む!ちょっとだけ貸して!!


銀時「人にたかんなマダオぉぉ!(蹴り)」


退助「いやーアンタも人の事言えないって」


松平「あの若造がまさかあんな持ってるたぁな
オジサンもビックリ仰天したってばよ。」


近藤「だよなぁ、うんうん」


退助「仮にも警察のトップがびっくりするって
・・・・どんだけ持ってたんだか。」


銀時「テメェが作った設定だろうがぁ!
つーかこんな勝手、管理人が許してくれるわけが・・・・」


狐狗狸「銀魂だし アリでしょ」


全員『管理人降臨、じゃなくて公認んんんんん!?』