月詠へ傘が振り下ろされた まさにその瞬間
鳳仙の手の甲にクナイが突き刺さり、その動きが止まった。
続けざまに飛び来た銀時が 携えた薙刀を
鳳仙の肩へと突き立てる。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!!!」
が、同時に傘の一撃を腹に受け よろめく銀時。
(つなぎとめろ・・・・魂を。
たぐりよせろ・・・・生を。
しがみつけ、すがりつけ!かみつけ!泣きつけ!!
どんなになっても・・・・)
嵐のような傘の乱打をすり抜けながらも
折れた刀で刺そうとする銀時だが、鳳仙はその刃を
紙一重の差で叩き折った。
「フン!終わり・・・・・・!?」
鳳仙の言葉が そこで途切れる
控えていた銀時の右手には・・・木刀があった。
「「「いけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
月詠ととの叫びが響き渡る中
振りかぶった木刀が 鳳仙の顔面へと直撃した
(護りぬけ!!)
第九話 天然パーマは根っこから図太い
一方、晴太と一部の百華
ジョニーとテリコは城の廊下を進んでいた。
「日輪様!もうしばしの辛抱です!お気をしっかり!!」
両脇を支えられた日輪を中心に移動する彼女達の
行く手を 鳳仙へ忠を誓う百華が阻む。
「いたぞ!反逆者共だ!!」
「チッ!こっちにも!!」
否が応にも両者入り乱れての戦闘が始まる
「ぐっ、鳳仙の方に人員を割き過ぎたか!」
「まだ鳳仙に与する者がこれだけいようとは!!」
女達の群れに、ジョニーが照準を合わせられず戸惑う。
「くそっ!どれが味方か分からないよ!!」
「アキバ君落ち着いて!
とにかく向かってくる奴らを優先に倒すのよ!!」
銃を手に、テリコは彼へと呼びかける。
階段下 武器を手にした二人と晴太に庇われた
日輪が静かに口を開く。
「こりゃ、逃げ切れるもんじゃないね。
・・・晴太、あんただけでも行っとくれ。」
「母ちゃん!」
「安心しな、お前だけ逃げろなんてもう言わない。
一緒に戦おう、みんなと。
私がここにいれば敵を引き付けられる・・・
お前はその間に管制室に行くんだ。」
「管制室?何でそんなとこに?」
問い返す晴太へ、日輪は答えることなく続ける。
「何人束になろうとも鳳仙を倒すことは難しい、
でも決して歯が立たないわけじゃない・・・夜王が何故
この地下深くに吉原を築いたかわかるかい?」
「自分の天国を作りたかったからじゃないんですか?」
「テリコ、それじゃあ地上でも作れるよ。
鳳仙は夜兎族、陽の光に弱いんだ。」
ジョニーの指摘に日輪は頷いた
「そう、あの男は陽の光を避けるために作った
あの男のためだけの桃源郷なんだ。
鳳仙は太陽を憎み恐れている・・・
ただでさえ陽を嫌う夜兎 長年陽を浴びていない夜兎が
太陽の下にさらされればどうなるか・・・」
その言葉に ポンと手を打つジョニー
「なるほど!太陽の光をここに出せば勝てる!!」
「でもその肝心の太陽をどうやって出すの?
あの鋼板、多分巡航ミサイルでも壊せないわよ?」
「あ・・・いや、それは・・・」
テリコの揶揄に意気消沈するジョニーへ変わり
「方法はないことはない。
ここは元は幕府の造船場だったんだ・・・
今は見えないが船を出すハッチが天井に存在する。
管制室に行くんだ・・・そこへ行けば
この鉛色の空をこじ開けられる。」
日輪が、その問いかけへと答えてみせた。
「アキバ君!すぐにメリルさんにこの事を!!」
「ああ!」
彼女の言葉で すぐさま無線で状況を伝えるジョニー
「でも・・・そのために母ちゃんを
囮にしろってのか・・・・そんなの・・・」
迷いを捨てきれない晴太へ
日輪は、強い瞳を湛えてこう言った。
「逃げた先に自由なんてありゃしない。
戦わなきゃ、檻ん中で戦わなきゃ・・・
檻を蹴破らなきゃ本当の自由なんて
手にはいりゃしない。
最後まで戦わせとくれ。晴太。」
その声音に、彼は背を向け 黙りこむ
「大丈夫よ晴太君、日輪さんは私達が護るから。
安心して行ってきて。」
テリコが励ますように言うと、晴太は一歩踏み出す。
「母ちゃん 今度会う時は鉄格子なんて
ないんだから・・・思いっきり甘えさせてくれよな」
「晴太・・・」
振り返らずに走り出した晴太の目の前には
「おい、準備は出来たかマザコン野郎。」
「さあ、行こうか。吉原に太陽を取り戻しに。」
武器を手にした新八と神楽が立っていた。
三人が管制室へ向かった頃、鳳仙の方の戦況は・・・
先程の銀時の一撃が 完全に相手を怯ませていた。
全ての者の目が二人へと注がれ
笑って傍観していた神威でさえ、真面目な顔つきで
何かに食らいつくように見ていた。
「おおおおおおおおおお!!!」
それをきっかけに銀時の反撃が始まった。
素早い連撃が、鳳仙に隙を作らせまいと叩き込まれる
(反撃する暇を与えるな・・・息さえさせるな・・・
もうチャンスは二度とねぇ・・・これで決めなきゃ負ける)
いざとなった時に対し構えるとだが
乱入する隙さえないせいで、攻撃も加勢も出来ない。
(終わりにするんだ・・・これで・・・・・・)
「おおおおおおおおおおおお!!」
木刀の先が鳳仙の腹を突き、そのまま押し込んで
力任せに壁に叩きつけた。
(シメェだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)
凄まじい音とともに背後の壁が破壊され
鳳仙の呻きが漏れる
しかし・・・その身体はまだ動くようで
片腕で木刀を握り締めたまま 開いた腕で
銀時の頭を掴もうともがく。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
瞬時に銀時は飛んで腕を回避し
無数のクナイと銃弾が鳳仙へと命中していく。
『射てぇぇぇぇぇぇ!!』
「メリル!ヴィナス!!全弾撃ちつくせ!!」
はパトリオット、メリルはXM8
ヴィナスはAN−94を構え鳳仙を狙い撃つ。
矢継ぎ早に がRPG−7を取り出したのを見て
メリルは撃ちながら彼に問い詰めた。
「ロケットランチャーまで出して・・・
いくらなんでも、そこまでする必要あるの!?」
「こうでもしないと夜兎は倒せん!!
これで、とどめだぁぁぁぁぁ!!!」
叫んでがRPG−7の引き金を引き
ロケット弾は鳳仙の方へ飛んでいった。
塵が煙のように舞う中・・・爆発は起こらなかった
しばらく静寂に、彼らの息遣いが満ちる・・・
「やった・・・・ついに・・・・やった・・・」
「鳳仙を・・・あの夜王をついに倒したぁ!!」
「自由だ!!これで・・・吉原は・・・
私達は・・・自由だ!!!」
沸き立つ百華達の中 しかし銀時は塵の隙間から
鳳仙が生きていることを察知した。
「まだだぁぁぁぁ!!」
彼の忠告の、まさに直後
塵の中から 投げ放たれたはずのクナイが飛んでくる。
咄嗟に銀時は月詠を跳ね飛ばし、は
とメリル達の前に立ち 身を挺して庇った。
「ぎ・・・銀時ぃ!!」
「ジャック!?なんて無茶を・・・!!」
「殿!なぜ・・・!!」
「あのなぁ、何度も言わすなよ・・・
俺は大事な人達を護るって・・・」
「だからって・・・・・刀くらいっ
刀くらい使ったらどうなのよ!!」
怒鳴るメリルだが、その眼には少し涙が溜まっている
塵が薄れ 消えていくと・・・
全身傷だらけの鳳仙が、依然として佇んでいた。
更に恐ろしい事に 先程のロケット弾も
片手で受け止めていた。
「嘘でしょ・・・RPG−7の弾を片手で・・・・・」
ややたじろぐヴィナスの顔から、血の気が引く。
「温い!!温いわ!!
貴様らごときか弱き光が幾ら集まろうと、
この夜王を干からびさせることはできはせぬ!!
この深き夜を、照らすことなど出来はせぬ!!!」
全身に力を入れると刺さっていたクナイと銃弾が
鳳仙の身体から飛び出て落ちる
そのままロケット弾を片手で握りつぶす夜王の姿に
「ば・・・ばかな・・・・あれだけやってもまだ・・・・」
知らず内に、百華から呟きが漏れた
眼前の光景に神威は楽しげに口笛を吹く。
「太陽などほど遠い・・・吹けば一瞬で消える
ろうそくの火の様な脆弱な光、それが貴様らだ!!
おとなしく死んだような眼で我が鎖に繋がっておれば
生かしてやったものを、まさか一度天人に消された
残り火から飛び火をもらおうとは・・・」
鳳仙の狙いし標的は ゆっくりと立ち上がる銀時
「火種は消さねばなるまい!その、鈍く光る光を!!」
月詠とが身構えたが 銀時が手を出して止めた。
「待て、もういい・・・俺だけで充分だ。
そいつは取っときな、明日のタバコのためにな・・・」
満身創痍の銀時に勝ち目はあるのか・・・・
そして、管制室に向かった三人は
無事 たどり着けたのか・・・・
――――――――――――――――――――――――
後書き(管理人出張)
狐狗狸:そろそろ吉原編も終幕を迎えつつありますが
マジ強いっすね鳳仙 ロケット弾片手粉砕て(汗)
神威:仮にも夜王だからね
狐狗狸:あれ!?まさかの二回目登場ってお兄さん!!
神威:皆色々立て込んでて、今の所ヒマなのって
俺しかいないからさ〜
狐狗狸:まーね・・・にしてもは今回本当に
いるだけになりつつあるなぁ
神威:でも俺や鳳仙の旦那とやり合って生きてるって
それだけでも結構すごいと思うよ?
狐狗狸:大半はさんのおかげもありますけど
言われると説得力が沸いてきます・・・
鳳仙:忌々しい小娘に小童どもよ・・・・
狐狗狸:ぎゃあぁぁぁ魔お・・・じゃね夜王降臨んん!?