「貴様・・・・誰だ?」
「なぁに、ただの女好きの遊び人さ。」
「ぎ・・・銀さぁぁん!!」
叫ぶ晴太へ、呆れ混じりに銀時は言う。
「何してやがる、俺らはいいから早く行け。」
「・・・でも、行ってのいいの?血も繋がってないのに
おいらみたいな汚いガキがあんなキレイな人・・・
母ちゃんって呼んでもいいの?」
戸惑うその背を とが押す
「大丈夫さ晴太君。俺も同じだったから。」
「行くのだ晴太、思いっきり甘えるといい。」
二人に励まされ・・・晴太は日輪の元へ歩いた
「か・・・母ちゃ・・」
「・・・いいのかい?血も繋がってないのに、
こんな・・薄汚れた女を母ちゃんなんて呼んでも・・・」
「母ちゃ・・・・ん・・・」
「いいのかい、今まで、アンタに何も
してやれなかった私を・・・母ちゃんなんて呼んでも・・・」
「母ちゃん・・・!」
「いいのかい、私なんかが
アンタの母ちゃんになっても・・・」
「母ちゃぁぁぁぁぁん!!」
「晴太ぁぁぁぁ!!」
向き合った二人は抱き合い、泣き崩れた
それを尻目に 神威が楽しげに銀時へ言う。
「へえ・・・アンタも生きていたんだね。」
「そうか・・・貴様らが童の雇った浪人共か
わしの街を好き勝手やってくれたのは主らか。
・・・やってくれたではないか。」
腰に刀を差した銀時が淡々と答える。
「好き勝手?冗談よせよ。
俺ぁ女の一人も買っちゃいねーよ。」
「そうか・・・ならばこれから酒宴を
用意してやる。血の酒宴をな。」
パトリオットを向けながら も口を開く
「そんな気遣いはいらん。
俺達はこんな所で酒を飲む気は一片もない。」
「そうだ、どんだけ美女を集めようが
どんだけ美酒を用意しようが
俺達ぁテメーの街で酒なんざ一適たりとも飲まねえ。」
「鎖で繋がれた女からの酒も、泣きながら酒を注がれても
うまくはない。私は未成年だから飲めぬしな」
も槍の穂先を、鳳仙へと突きつけた
「ババァだらけのブラコン女が紛れ込む、薄汚ねぇスナックでも
笑ってシャクしてくれんならそれがいい。
悪辣な彼氏も入ってくるキャバ嬢がはびこるぼったくりバーでも
みんなが笑って酒飲めるなら、俺ぁそれがいい。」
そして銀時も 刀へ触れて身構える
「美女も美酒も屋根さえねぇ野っ原でも、月見て安っい酒
飲めるなら俺ぁそれがいい。女の涙は酒の肴にゃ辛過ぎらぁ。」
第七話 怒り任せの無謀な突撃も死亡フラグ
「鎖を断ち切りにきたか。この夜王の鎖から日輪を・・・
吉原の女達を解き放とうというのか?」
「そんな大層なもんじゃねぇ。俺ぁ旨い酒が飲みてーだけだ。
天下の花魁様にご立派な笑顔つきで
シャクしてもらいたくてなぁ。」
刀身をさらす銀時の顔は笑っているが 目は獣のように鋭い
「こりゃ面白い。
たかだか酒一杯の為に夜王に喧嘩を売るとは
地球にも中々面白い奴らがいるもんだねぇ。鳳仙の旦那?」
神威が鳳仙の肩に手を置いた瞬間
払うように振られた腕が直撃し 近くの柱が倒壊した。
「ハハハ・・・お〜怖っ。
そんなに怒らないでくださいよ。」
ケラケラと笑う神威が、いつの間にか
兎の像の背に座っている。
「心配しなくてももう邪魔はしませんよ。」
「神威、貴様何が目的だ。わしの命を獲ろうとした次は
童を手助けし日輪の元まで手引き、そうまでして
わしの邪魔をしたいのか・・・
それとも、病の母親を見捨ててきたお前が
罪滅ぼしでもする気でもなったか?」
嘲笑う鳳仙に対し 神威は態度を崩さず言う
「何を余迷い事を・・・夜王を腑抜けにした女
一体どれ程の女かと思えば、ボロ雑巾に縋る
ただの惨めな女とは 吉原の太陽が聞いて呆れる。」
次の句を告げるその顔は いつもの笑顔ではなく
至極真面目なもの。
「違うんだよ。
俺の求めてる強さはこんなしみったれたものじゃない。」
それに答えたのは、鳳仙ではなかった
「妹だろうが親父だろうが構わずぶっ殺す。
・・・そういう奴かい。」
「皮肉なものだな、血が繋がっていても
家族を殺そうとする兄上がいるならば」
「例え血が繋がっていなくとも
親子より強い絆で結ばれている者もいる。
どちらが本物か分からんな・・・」
三人の言葉に黙した神威に変わって
「面白いではないか。」
兎の像へと飛び移り その頭に乗る鳳仙
「その絆の強さとやら、見せてもらおうじゃないか。」
向き合ったまま 銀時が二人へ呟く。
「テメェら・・・手は出すなよ?」
「何故だ銀時!夜王相手に一人で・・・」
「、ここは銀さんに任せよう。」
抑えられ、大人しくは引き下がった
「・・・すまねぇな。」
「いいさ。」
銀時が木刀の元へと歩き始める。
「貴様らがわしの鎖を断ち切れるか、わしが
奴らの絆を断ち切れるか。勝負といこうではないか!」
叫びと同時に鳳仙は兎の像が咥えていた傘を
銀時は刺さった木刀を引き抜いた
「この夜王の鎖、断ち切れるか!」
「エロジジイの先走り汁の糸で
出来たような鎖なんざ、一太刀でシメーだ。」
向き合う二人から闘気が放たれる
とは、晴太と日輪の近くで彼らを見守っていた。
「明けねぇ夜なんざこの世にゃねぇ、この街にも
朝日が昇る時が来たんだ。」
銀時は鳳仙へと飛び掛り、鳳仙もまた足場を蹴った
「夜の王は日の出と共に、オネンネしやがれぇぇぇぇ!!」
「銀さぁぁぁん!!」
「「おおおおおおおおお!!!」」
気合と共に振り下ろされた木刀を鳳仙は片手で受け止める
間髪入れずに刀でも攻撃する銀時だがその攻撃が
届くより遥かに早く重い蹴りを喰らい、飛ばされる
「がはっ!?」
落下する前に鳳仙の傘が振り下ろされ
橋が衝撃で崩れ落ちた。
「銀さん!!」
悲愴な晴太の声が短く響き 塵が消えた先には・・・
傘を二本の刀で受け止めている銀時の姿があった。
「ほう、わしの一撃を止めたか。」
「なんて奴だ・・・まだ鳳仙は本気を出していない。
受け止めるのがやっとだなんて・・・」
「すごいすごい、あの夜王相手に10秒持つなんて
コイツは面白くなってきた。がんばってよお兄さん。
俺応援しちゃうから。」
パチパチと手を叩く神威へ、歯を食いしばりながら
銀時が呻くように言う。
「なめんじゃねぇよクソガキ。
10秒どころか天寿全うしてやるよ。
孫に囲まれて穏やかに死んでやるよコノヤロー。」
「貴様の天寿などとうに尽きておるわ。
この吉原に、この夜王にたてついた時からな。ふん!!」
鳳仙が力をさらに加え、押しつぶそうとする。
「ぬぁぁぁぁぁぁ!!」
「銀時!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
銀時は下にあった板を思い切り踏む
それは鳳仙の手に当たり、僅かながら隙を作る
「るおあぁぁぁぁ!!」
傘の下を滑り込みながら木刀を振るうも
跳んで避けられ 傘の猛撃が襲った。
息つく間もない怒涛の攻撃に、かわすのが精一杯の銀時
飛来する鳳仙の蹴りを木刀で防ぐも
衝撃を受け止めきれず吹き飛ばされて壁に当たり
手にしていた両の刀が離れて落ち
よろめいた瞬間、迫りよった鳳仙が
銀時の顔を鷲掴みにした。
「うがぁぁぁぁ!!」
「銀さん!!」
「ありゃりゃ、もう終わりか・・・つまんないの。」
もがく銀時に構わず 壁に頭を押し付ける鳳仙が
何か呟いているようだ
けれど、とのいる場所からは聞こえない
「銀時!」
「くそっ・・・銀さん!!」
吹き出した血飛沫が 鳳仙の頬にかかる
・・・それは、何かが刺さった鳳仙の左目から
噴出したものだった。
「なっ・・・!?」
「負けてなんかいねぇよ。俺達
・・・・・・今でも戦ってるよ俺ぁ。」
「き、貴様ぁぁ!!」
キセルが刺さったままの鳳仙を、銀時は蹴り飛ばす。
奴が離れた隙を縫い 晴太が銀時の元へ行こうとした
「銀さん!」
「来るな!!何してやがるテメェ、さっさと行かねーか。
母ちゃん連れてここから逃げるんだ。」
「いやだ!!
銀さん置いておいら達だけ逃げ出せって言うのかよ!!
こんな事に巻き込んでそんなマネできるかよ!!」
「巻き込んだ?勝手に顔つっこんだの間違いだろ。
行けよ・・・てめーら親子に何かあったら俺達ぁここまで
何しに来たのかわからねーよ。」
「いやだ!!そんなの絶対いやだ!!」
「晴太君、ここは銀さんに任せて・・・」
宥めるの声も 晴太には届かない
「オイラを泥棒から足洗わせてくれた。
まともに生活を送れるようにしてくれた。
一人ぼっちのオイラと・・・一緒にいてくれた・・・」
「晴太・・・」
「短い間だったけど、楽しかった。じいちゃんが
死んでから初めてだった、あんなに楽しかったのは・・・
みんなは・・・銀さんは・・・」
晴太は眼に涙を溜めて 叫んだ。
「オイラにとっちゃ大切な家族なんだよ!!
大切な事をいっぱい教えてくれた
かけがえのない人達なんだよ!!
それをこんな所に捨てていけって言うのかよ!!
こんな所に見殺しにしていけっていうのかよ!!」
銀時は・・・・・・重い口を開く。
「そいつが聞けただけで十分だよ。
行ってくれ、俺をまた・・・敗者にさせないでくれよ。」
「ぎ・・・銀さ・・」
その直後、無常にも鳳仙が銀時を蹴り飛ばした
壁が崩れ・・・銀時の上半身が見えなくなる。
「ぎ・・・・銀さぁぁぁぁぁん!!!」
一拍の間を置いて 晴太はその場に泣き崩れた
血塗れの侍を見下ろし、片目の潰れた夜王が哂う
「哀れな男よ・・・護るものを全て失い
最後は他人のものを護って死んでいくとは
己の剣にそんなに意味が欲しいか。
そんな剣では何も護ることなどできんわ。己の命すらな。」
経緯を見守っていた神威が、晴太へ呼びかける
「泣いている暇なんてないんじゃない?
男が己の命を賭した最後の頼み・・・
こいつは聞いてやった方がいいんじゃないのかい?」
涙を無理やり堪え、日輪の元へ走る晴太
「神威・・・お前何を考えているんだ?」
「別に、お兄さんには関係ないさ。」
両者の視線が絡んだのは、一瞬
もまた と共に晴太を手助けするため走り出す
「無駄なマネを・・・」
「母ちゃん!!逃げよう!!
今すぐここから逃げるんだ!!」
晴太が必死に手を引っ張るが、日輪は動こうとしない。
「何してるんだ!日輪さん!!」
「私は・・・逃げられない・・・ここから逃げる事は
出来ないんだよ 私は。あんただけでも逃げておくれ。
お二人方、晴太をよろしくお願いします。」
「そんな頼みは聞けぬ!諦めるな、日輪殿!」
けれど日輪は悲しげに首を振るばかり
何かに気づき、晴太は日輪の足を見ようと
長く伸ばされた着物の裾をまくる
「やめなさい!晴太!!」
そこには・・・とんでもない光景があった
日輪の足首につけられた深い傷跡が
晴太と二人の思考を硬直させる
「こ・・・・これは一体・・・!?」
階下から 鳳仙の声が響いてくる
「言った筈だ、日輪はわしのものだと。
どこにも逃げられはせぬと。
飛び立とうにもここには空がない。
まして翼などとうの昔にちぎれておるわ。」
悔しげなの呟きが 漏れる。
「傷が深すぎる・・・アキレス腱をやられてるな・・・
もう・・・・立つことも出来ないか・・・」
「もうどこにも行けはせんのだ、わしの元から
飛び立つことなど出来はせぬのだよ。」
歪んだ笑みを浮かべ 上を仰ぐ鳳仙
その一言をきっかけに、の中で何かが弾けた
槍を構え 下にいる鳳仙を睨む双方の緑眼が
眼力だけで相手を殺せそうな気迫を宿す。
「晴太の・・・晴太の母殿が何をしたというのだ・・・・
何故日輪殿がこんな・・・貴様の自分勝手のせいで
こんな目に遭わねばならん・・・・」
「・・・・おい!やめろ!!」
止める声も聞かず は夜王の元へ駆けた。
「貴様に日輪殿を傷つける権利があるのかぁぁぁぁ!!」
距離を詰めながら身を捻り、動きに合わせ槍が舞う
穂先の輝きが まるで散り行く白木蓮の
花びらの如く見える神速の突きに
神威と鳳仙、両者の目の色が変わった
「その槍捌きに身のこなし・・・・有守流槍術か。」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭を貫かんと槍を振るうだが、鳳仙は寸前で見切り
素手で刃を掴んで槍ごと彼女を投げ飛ばす。
「!!」
壁に叩きつけられ、むせぶへと走る
「しかし、怒りに身を任せてはその流派も塵芥だな。」
「クッ・・・おおおおおおぉぉぉぉ!!」
怒気を充満させ 同じ型で向かっていく
けれど今度は届きもせず、回し蹴りを
胴に喰らって吹き飛ばされ
血を吐き出し・・・そのまま動かなくなった
「!眼を覚ませ!!」
「フン、有守流を使えるとはいえ所詮は娘っ子。
わしの敵ではないな。」
側にいたをぶん投げてから、鳳仙は傘を振り上げる
「あの世で 殺めた田足の者と再会するがいい!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
頭上へ降ろされる攻撃を防ぐべく、は駆けた。
果たしての運命は・・・
そしての援護は 間に合ったのか・・・・・
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:銀さんだけでなくまで死亡フラグ・・・
は いつもの事か、うん
新八:いやこれ、かつて無いほどのヤバさでしょ!?
狐狗狸:ちょ!今回出番無いのに何でいるの!?
神楽:何言ってるネ 今回出てきた奴等に会話させて
いいアルか?本当に
狐狗狸:え・・・ええと・・・晴太と日輪さんなら・・・
あ、でも会話進まなくなるかも
晴太:失礼だぞ!おいらだって姉や銀さんや
兄の心配してたってのに!!
日輪:こらこら晴太・・・
狐狗狸:あー、ご ゴメンなさい・・・
新八:頭に血が上った状態とはいえ、さんの
あの技がかすりもしないって・・・
神楽:マジで化け物アルなあのジジイ
狐狗狸:君のお父さんとやりあったぐらいですから