煙玉で百華を撒き、六人は階段を駆け上がる。





通路の左右から現れる彼女等を倒しながらも銀時達は
進むが 追って来るその数にキリは見えない。







埒が明かないと悟ってか


ある通路の階段を駆け上がった所で左右からの敵が
いない事を確認し、が片方を指差し叫ぶ







銀さん!俺とはこっちを捜す!!」


「分かった!」







二手に分かれて動き始める五人を他所に





しんがりを護っていた月詠が階段を駆け上がった直後
動きを止める。







「ここでしばらく食い止める。先に行きなんし。」


「月詠さん!?」


「お前、死ぬ気アルか?」


部下の躾は頭がするさ。」


「・・・火種をよこせ。こいつが使えなくなるだろ」


銀時!月詠殿を一人にさせる気か!?」





咎めるを素通りし、月詠は言う。





「最後になるやもしれん・・・一服」


駄目だ、さっさとよこせ。」







決して引かぬ口調に、ため息と共にキセルと煙草が
銀時へと投げて寄越される。







「銀さん!ホントに置いてくつもりですか!!」


「・・・そんなに吸いたきゃ戻って来い。
必ず吸いに戻って来い、じゃねぇとしゃぶり倒すからな。





キセルを振りかざしながら、銀時は向こうへ歩き去った。







「ぬしらも早く行け。」


「・・・いいのか月詠?」


「何度も言わせるな、わっちが護るは日輪のみ。
ぬしらを護るために捨てる命など持ち合わせておらん。
・・・早く行け。」







頷き 神楽と新八も走り出す。







月詠、あまり無茶するなよ。
・・・今 俺の仲間がここに向かっている。」


「いらん心配を・・・・ぬしらも早く行け。」


「月詠殿、しばしのおさらばです・・・ご武運を!





礼をして も先へと急いだ。











第五話 第六感はほぼ勘違い











通路の曲がり角で立ち止まり、周囲の確認をしてから





は黒い三つ編み頭をくしゃりと撫でる。







・・・何があってもお前は俺が護る。いいな?





撫でられたそのままで、珍しくハッキリと
眉を潜めて槍の柄を握る。





殿、私も戦うのだ。いらぬ心配はせんでくれ。」


「そうか?強がり言えんのは今のうちだ。」







短い会話を終えて再び進む途中、百華と幾度か出くわすが







「どけぇぇぇぇぇ!!」


「貴様らの相手をしてる暇はない!!」






二人に適う筈も無く 次々と倒されてゆく。









槍の刃先が閃き、襖を割いて彼らはある部屋へ突入する





「晴太!何処にいる!!」


「待て・・・この部屋、厄介な奴がいるぞ。」







刺さるような殺気に両者が自然と戦闘態勢に入る。





「あらら・・・・生きてたんだね君達。」





そこに・・・神威が笑って立っていた。







「俺達があの程度で死ぬとでも思ったのか?」


「ははっ言うねぇお兄さん・・・面白くなってきたよ
俺とやり合わないかい?







身構える神威から視線を外さぬまま、二人は言葉を交わす







「仕方ない・・・あまり戦いたくなかったが
こいつを何とかしないと進めそうにもないし・・・」


殿、隙を見て先を急ごう。」


「・・・そうだな。」







畳を蹴り、勢いの乗ったパンチをへ繰り出す
神威だが 彼はそれを紙一重で避け


逆に腕を掴んで投げ飛ばす。





体勢を立て直す間を与えず間合いを詰めた
身の捻りを活かし 下方向から槍を突き出すが


神威は手で床を叩き宙へと舞って避け


僅かな落下のタイミングで回し蹴りを見舞い
彼女の身体を蹴り飛ばす。





「かはっ・・・!?」


!!」







怯みながらもは槍を反転させ、神威を弾き飛ばし





飛ばされてきた彼の身体を 更に
蹴り飛ばして壁に叩きつけた。







「やったか・・・・?」


「これで倒せたら苦労しないんだけどね・・・」







その通り、夜兎族というのは伊達でなく





もうもうと立ち込める塵の中から影が見える。







「へえ・・・意外にやるんだね。」


「まあ俺の場合はパワードスーツのおかげなんだけどね。」


「ぱわぁどすぅつ?」





首を傾げるが簡潔に説明する。





人工筋肉を使った、身体能力向上の為に開発されたスーツだ。
無かったら始めの一撃は避けれなかったな・・・」


「変なモノ着てるんだね、もしかしてあんたアメリカの?」


「よく知っているな・・・」


「そりゃ春雨がリキッドって言う奴の協力をしてたからね
名前だけは聞いた事あるよ。」


「流石は第7師団の隊長だな・・・」







笑みを浮かべる二人だが、神威のそれには"余裕"がある。







「お主、神楽の兄なのだろ?
・・・何故あのような真似をした?





槍の切っ先を向けながらの問いに神威が目を丸くしたのは







問いを投げた当人の眼が あまりに
真っ直ぐだったから







「あいつか・・・俺は家族だなんだで躊躇はしない。」


「たとえ父親でも・・・か?」


「そうだ、家族だなんだそんな柵に囚われてる奴に
真の強さは得られない。」


「だからお主は・・・そこまで強くなったと?」


「そうだよ、単純だろ?じゃあ続き行こうか?」





その言葉に三人はまたもや身構え―







「・・・・・・やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!







上階から、神楽の叫び声が彼らの耳を打った。







「あらら・・・あいつ随分荒れてるね?」


「あの叫びは尋常じゃない、何があったんだ?」







不意にが身体を震わせ 顔を青ざめさせると
の腕を乱暴に掴む





「うん、どうした?。」


殿・・・・・神楽の様子が・・・!


何?どういうことだ?」





一拍遅れて 神威も何かを感じ取った







「変なトコで勘がいいんだね君・・・・・・・
流石に、こいつはちょっとやばいかもね・・・・」


「さっきからなんだお前ら、何があるってんだ!?


「分からぬが・・・神楽が神楽じゃなくなったような・・・」


「だから分からんって!!」







混乱するへを無視して、神威は意外な事を口走る。







「行きなよ。」


「・・・どういうつもりだ?」


「あんな奴でも一応妹だ、俺が行ったら殺してしまいそうだし
君らじゃないと止められないだろうから。」


「そんな見え見えの嘘を鵜呑みにするとでも」





銃を突きつけかけるを は手で制した。





行こう殿、今は神楽を止めることが優先だ。」


「ったくまで・・・・分かったよ。
だが保険は出させてもらうぜ。」





そう言うとはスモークグレネードを投げ、煙で
彼の視界が悪くなった隙に二人で上の階へ急ぐ・・・







「まったく・・・そんな小細工しなくてもいいってのに
・・・・うん?」







神威の視線に晴太が写り 自然とその顔に笑みが浮かぶ







「ちょうどいい、ちょっと日輪に会いにいこうか・・・」













『やれぇぇぇぇぇぇぇ!!!』







階段の最上段を陣取る月詠は部下の攻撃を次々と
弾き飛ばすものの、反撃は一切せず佇んでいた。







「何故反撃してこない?何故黙って打たれるままでいる?」





百華の問いに 月詠は淡々と答える。







「わっちにぬしらを殺す権利はない・・・わっちらは
今まで掟を犯したものを裁いてきた。


そんな所業を重ねてきたわっちが掟に背きながら
己だけ生き残れると思っておらん。
・・・だが時間稼ぎだけはさせてもらう。


「己が身を挺して賊を護るというのか!!」





再び投げられるクナイに対し、ただ防御に徹する月詠。





「この街に・・・護る価値はありんせん、
そう思いながら吉原を・・・掟を護ってきた。


日輪のいるこの街を護る事によって、日輪を護る事に繋がる
そう思って今まで剣を振るってきた。」







矢継ぎ早で連投されるクナイが腕へと刺さり


持っていたクナイを落とした直後、大量のクナイが
月詠の身体へと突き刺さる。







「わっちは・・・何も護っちゃいなかった。わっちが
護っていたのは日輪でもこの街でもない・・・自分の檻。







身体から血を滴らせ、血を吐き 彼女がその場で膝を付く





同時に百華の攻撃が一時的に―止まった。







「吉原に檻を張ったのは誰でもない、わっちらじゃ。
鳳仙を恐れる余り全てを諦観し、己が心に檻を張ったのじゃ。


己の身をかわいさあまり、その檻を必死に護ってきたのじゃ。


逆らっても仕方ない、わっちらは・・・己の臆病さを
隠すために日輪を利用したんだ。」







水を打った静寂の中 声を響かせ
歯を食いしばってゆっくりと月詠は立ち上がる。







「何にも変わっちゃいなかった。わっちゃあの頃から
何一つ変わっちゃおらんかった・・・・


日輪、わっちはもう逃げん、檻を破るために戦う・・・





彼女の脳裏に浮かぶのは あの時の銀時の言葉





(背筋伸ばしてお天道様まっすぐ見て
生きていかにゃならねーんだ)








「最後の最後まで・・・太陽に向かって。
まっすぐに立ち続ける。」








そこで、止まっていた時が動き出したかのように





『やれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』





止めといわんばかりにクナイを構える百華達。







月詠は覚悟を決めて目を瞑った・・・・









だが、何時までたってもクナイは飛んでこなかった。





カランとクナイの落ちる音に 月詠が眼を開ける







「・・・もう・・・出来ない・・・」


「もう・・嫌だ・・・・」


「頭、あんたは臆病者なんかじゃない、あんたは
何も護っていなくなんかない。護ってくれたじゃないか!私達を!





涙声で百華全員が、口に覆った拭いを取る


隠れて見えなかったその顔には・・・


月詠と同じような傷跡がいくつも見受けられた。





「吉原から逃げ出そうとした女達、掟を破った女達を
始末するように見せかけて百華に紛れ込ませて
かくまってくれたのは・・・他でもない、あんただ!


「・・・わっちは・・・ぬしらが女として生きる道を奪った。」


「ここに売られた時から既に女は捨てています。」


「商品としてではなく人として
生きる道を作ってくれたのはあなたです。」


「ここいる者たちは皆、あなたが今まで護ってきたものなんです。
空に輝くのは日輪だけではありません。」


「太陽も月も、この街になくてはならない・・・光なんですよ。」







百華達の言葉に口の端を上げると・・・
月詠は後ろに倒れこんだ。







「頭!?」


「頭ぁ!!」





彼女達が近づいてくる足音の中、ぼんやりと月詠は思った。





(日輪と月詠・・・日輪・・・わっちはずっと
隣でぬしを護り続けていたつもりだったが・・・
ぬしの存在はどこか遠かった。


今始めて・・・ぬしの隣に立てたような気がする・・・







気を失いかける寸前、階段下から誰かが彼女達へ接近する







「あれ?何かもう終わってないですか?」


「変ね・・・ジャックの話じゃ
もんのスゴい激戦になるって聞いたのに・・・・」





現れたのはの仲間のテリコ、ヴィナス、メリル
ジョニーの計四名。





「何者だ!!」


「鳳仙の回し者か!!」





警戒する百華に落ち着いた様子でメリルが宣言する。





「待ちなさい、私たちは敵じゃないわ。アキバ。」


「はい、我々はジャック・・・じゃなくての仲間だ!
そちらのリーダーの援護をしろと命令されてここに来た!」


?あの変な服を着た・・・
ちょっとかっこいい男の事か・・・?」


「そうか・・・・奴らがの仲間・・・グッ!?


「頭!?頭しっかり!!」





人込みを掻き分け、テリコが苦しむ月詠に走り寄った。





貸して!止血しないとあんたらのリーダー死ぬよ!?」


「余所者に頭を任せられん!」


「よい・・・こいつらに任せろ・・・・」







弱々しい月詠の言葉に困惑しつつも、百華達は大人しく従う







「交渉成立ね。出血がそこまでひどくないから大丈夫よ。」


「アキバは門の見張りを、ヴィナスと私は城に乗り込む!」


「「了解!」」







ジョニーは門の前に向かい、メリルとヴィナスは
足早に鳳仙の城内深くへ乗り込んで行く








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:神威さんとの戦闘だけでなく、神楽のシーンまで
絡めてくださりマジありがとう退助さ


神楽:オーバーヘットシュートォォォォォ!!


狐狗狸:ぎゃあぁぁぁ!何すんの神楽ちゃんんんん!


神楽:今回、私の見せ場が丸々ザックリ削れて
達だけ目立つってどういう事アルかあん!?


狐狗狸:だってこれ元々夢小説だし!そもそも文句を
言うなら私でなくて文書いた


銀時:ヒトのせいにしてんじゃねぇぇぇぇ!


狐狗狸:ぶりたぁぁぁぁにゃぁぁぁぁぁぁ!?(飛)


新八:何か危ない叫び声で吹っ飛んだァァァ!!