星海坊主は神威の真意を語り始めた。





「奴め、鳳仙は自分が殺したとのたまわってるらしい。
鳳仙の死は吉原査定の結果、己が下した結果だと・・・」





背後にいる三人へ聞かせるように、淡々と続ける





「春雨は強大過ぎる鳳仙の力を疎んでいた。
鳳仙を始末した功で奴は吉原の全権を任されたが・・・」


「だが・・・吉原には何も起きてないぞ?」


「ああそうだ兄ちゃん・・・
奴は吉原に何も手を出そうとしなかった。
それどころか人員も寄越さず全くの手放しの状態だ。」


「何故ゆえ神威は、そんな事を?」


「奴は吉原に興味はない、奴が興味あるのは・・・
お前らだ。」


「何?」





が思わず言葉を零す。





「余計な連中がお前達に手を出せぬよう
吉原を手に入れた。結果、吉原は救われたが・・・・


お前ら・・・殺されるぞ?





彼らからは見えないが、最後の一言を呟いた
星海坊主の目は・・・本気だった。







黙っていた三人は やがて誰からとも無く動き出す







「星海坊主殿・・・お言葉だが私達は
そこまで間抜けではない」


「そうさ、たとえ春雨だろうが何だろうがな。」


「まあとりあえず
今度会ったら助かったって言っといてくれ。」







立ち去ろうとする彼らへ 振り返らずに





神楽は奴を救いたいと思っている。
憎まれ口を叩いても 奴は以前のような兄に
戻ることを望んでいる。」





星海坊主の言葉がぶつかり、足を止めた。







「お前らが奴と対峙する時が来てもきっと・・・


お前らならどうする・・・神楽の前で奴に命を
狙われた時、お前らならどうする?






その問いかけに答えられず 三人は口をつぐむ


始めからその反応を知っていたかのように
星海坊主は次の台詞を口にする。





「地球人ってのは妙な連中だ、憎んだ相手の墓まで作る。
憎しみがあってもそこに同じだけ愛情もある。


俺達はダメだ、愛情があったとしても一度憎めば
全て黒く染まる・・・あの時俺は 黒く染まった。





銀時達の脳裏に、瞬時に語られた神楽達の過去が甦った





「神威に命を狙われた時か。」


「そうだ、そして奴を黒く塗り潰してしまった。
もしかしたらお前らなら 俺と違う答えが・・・・」


「星海坊主さん・・・あんた・・・


「ちとしゃべり過ぎたか・・・忠告はしたぞ
親の責任として。」







立ち上がった星海坊主が三人の前を通り過ぎざま





「じゃあな、死ぬんじゃねえぞ?」





ぽつりと呟きを残し、どこかへと去っていった。











第十二話 お天道様を肴に一杯も洒落たモノ











それから数日が経ち、怪我もすっかり完治した
銀時達は 様子見も兼ねて吉原に赴いていた。







「良かったじゃないスか、結果オーライですよ。
アッハッハッハッハッハ
とにもかくにもこうして吉原は救われたんだ。」





笑いながら明るく言う新八の顔面を


神楽は怒りに任せ殴り飛ばした。





何がオーライだコノヤロー!その気になれば奴ら
この街どうにかできるってことアルヨ!!」


「まあ言われてみればそうかもな・・・・」


「そもそも何で奴は私達を泳がすようなマネしてるアルか!
私達をおちょくってるアルか!!ムキー!!!」



「落ち着くのだ神楽。怒ると胃が悪くなるぞ」





論点がややずれた諌めの言葉をかけるだが
神楽の怒りは治まっていない。





「心配いらねーよ、俺とが生きてる限り
奴ぁここには手を出さねーよ。」


「・・・そうだな、言わば俺達が抑止力ってとこだ。」


「え?どういうことですかそれ?」


「まぁそういうことだ。」


「いや全然分かんないんですけど・・・」


「わかんなくていいんだよ新八君
とにかく大丈夫ってことだ。」





起き上がり、腑に落ちないといった顔をしてる新八へ
はやんわりと言い含めた。







銀時が店の外へ ついと眼を向けつつ呟く。





「しかし難儀な連中だねぇ、さっさとこんな街捨てて
地上で生活すればいいものを・・・」





答えたのは、キセルをふかしつ銀時の対面に座る月詠





「この街の遊女達は皆、分別のきかぬ幼き頃に
売られた者ばかり・・・


地上で生きていくにもどうやって生きていけば
いいのか分からない者、自由の意味さえ
分からない者もたくさんいる。


そんな遊女を捨て置けないと日輪が残ったんじゃ。」





話を聞き、意外そうにが声を出す





「日輪殿が?」


「そうじゃ、私達で新しい吉原を作っていこうって
私達の子供に見せても恥かしくない
・・・立派な街を作ろうって。」


「・・・そうか 日輪殿も月詠殿も立派だな」







飾らぬその一言に、月詠は笑みを綻ばせた。







新八とは試しに店の外へ一歩出て 街を眺めていたが
・・・どこを見てもいかがわしい店ばかり並んでいる。





「・・・・・え?どの辺が変わったんですか?」


「遊郭がなくなってヘ○○ソー○が増えたな、
キャバクラお○りパブも人気だなうん。」





満足げに言う月詠へ新八のツッコミが飛んだ





全然変わってねーだろうが!
全然子供に恥ずかしいだろーが!!
何?って聞かれても答えられねーよ!!」


「まあまあ落ち着け新八君、今までは
強制されてたのが問題だったからさ。」





宥めるに、流れで銀時も参戦する。





「そうそう、今は選択の自由があるわけでしょ?
着物だけじゃなくい、ナースにメイドに
ミニスカポリスとか色々・・・」


「それあんたが自由になってるだけだろうが!!」


「いや、もう鎖は解かれたわけだから
皆もう呪縛から解かれたわけだから。」





そこで彼らのいる店の目の前を、鎖に繋がれた
四つんばいのおっさんと妙な格好した女性が通る。





早くおし!この豚野郎!!」


「ワン!」


「何で豚がワンとか言ってんだ!殺すよ!!」


「思いっきり鎖に繋がれてる人いるよ!!
自分から呪縛されてる人いるよ!!」


殿、何故あの御仁はあんなかっこ」


、まじまじと見ないの。」





横手からの兄である
彼女の視界を遮るようにして現れた。





「あれ、さん?
どうしたんだい・・・何でここに?」


「いえね、近いうちにここのお店で
働こうかと思ってまして・・・」


「私は兄上のお出迎えも兼ねてこの場にいるのだ」







は難しい顔をして 小声でボソリと





「・・・となるとパブとソー○はダメだな
ガチ的な意味で。」


「ちょ!何言っちゃってんですかさん!?」





耳聡く聞きつけていたが驚きながら
ツッコミを入れる。





ちょっとぉぉ!これ晴太君大丈夫なんですか!?
ちゃんとまっとうな生活送れてるんですよね!?」


「ああ、晴太なら大丈夫じゃ。日輪と共に寝泊りし、
今はおもちゃ屋でバイトしておる。」


「ああ、よかった ちゃんと子供らしい店もあ・・・」







顔を動かし、晴太がいる店を見た瞬間





「「「ってただのモザイク屋じゃねーか!!!」」」





と新八、トリプルツッコミが炸裂した。







「悪いけど今おもちゃ屋言われた時点で
予想ついてたから!!くるなって思ったから!!」


「そうか、次はがんばるとしよう。」


「頑張んなくていいんだよ!
ボケてんの!?ナメてんの!?」








やや遅れてそちらへ注目しようとしたの目を
が慌てて手で塞ぐ





殿、兄上 何故目を塞ぐのだ?
これでは何も見えぬではないですか」


いいからいいから見えなくていいから本当
にはアレはまだ早すぎる。」


「そういう問題なのかよさん!?」





が上げた声に気付いてなのか、店のおもちゃを
フル装備した状態の晴太が走り寄ってくる。





「銀さぁぁん!!みんなー!!久しぶりー!!」


「お前はメタルギアみたいな音出して
近づいてくんじゃねぇ!!」



「いや・・・メタルギアあんな音出さないから!
どっちかっつーとモビルスーツじゃ・・・」


会いたかったんだよみんな!!
おいらこの街でがんば・・」





言いかけて晴太は石に躓き、その拍子におもちゃが
勢いよく手を離れて・・・


ヤクザもののケツに思いっきりぶっ刺さった。





かっきり三十秒はその場が凍りつく





「おのれは何さらしとんじゃぁぁぁぁぁ!!」


月詠さんんん!!ヘルプです!事件発生で」


言葉半ばで新八の顔面にクナイが刺さる。





「ぎゃああ!!何処狙ってんのー!!」


「待てや眼鏡ぇぇぇぇぇ!!」


「ぎゃー!何で僕まで!!」





晴太と新八を巻き込んだ騒動で街が騒ぐ







それを、どこか懐かしく感じる銀時達の側に
静かにメリルがやって来た。





「ジャック、ここにヴァンプが来た理由が分かったわ。」


「どうだった?」


「何でも鳳仙と協力体制を取りたかったらしいわ
あの城にいた位の高い遊女から聞いた情報よ。」


「そうか・・・・」


「ちょいとお兄さん、何暗い顔してるのさ」





沈んだ面持ちのが顔を上げる







車椅子を軋ませ 徳利と猪口を乗せた盆を
ヒザに置いた日輪が、銀時達の前に現れた。





「どうだい?私達の街は?」


「・・・どっかの街そっくりアル。」


「俺にいたってはどっかの軍隊とそっくりだな。」


「そうだな、俺達の街と何も変わらねえ。
下品で凶暴で、優しくて冷たくて、笑顔も涙も・・・
お天道様もある ただの普通の街だ。


「素敵でしょ?」







銀時の言葉に日輪は笑顔で答える。







「唐突な質問で悪いんだが日輪さん
あの男・・・ヴァンプに心当たりは?」


「あの人のことね・・・あの男がボスと呼ぶ人に
連れられてここに来たのは見たことあるわ。」


「ボス?どんな人だった?」





の問いに、しかし彼女は首を横に振る





「いえ、そこまでは・・・
分かる事は刀を2本持ってて・・・鳳仙と戦っても
引けを取らなかった位強いって事だけね。」


「そうか・・・そんな刀2本扱える人物
ウチの組織にもいないぞ・・・」







思案顔のの背を、銀時がぽんと叩いた







「いんだよ今は、細かいことは気にすんな
・・・は未成年だから、代わりに
ピーマン兄貴も飲めよ。」


「そうか、じゃあ・・・・
ってピーマン兄貴ってなんだよ・・・・」


「ホントですよ、いつまでも引っ張らないでください。
地味にそのあだ名イラっと来ますし」


「まあまあ あなた達も一杯どうぞ。」







微笑んで、日輪は三人が持った猪口へ酒を注ぐ







「そこのゴツイ姉ちゃんもどうだい?」


「誰がゴツイのよ・・・私は遠慮しておくわ
まだ18だから、未成年なの。」


マジ?その割には老け」





皆まで言わせず


メリルが銀時にデザートイーグルをつきつけた





「誰が老けてるですってえぇぇぇぇ?」


「ま、まあまあメリル落ち着いて・・・」


「そうですよ、軍の人といえど女性なんですし
おしとやかにしてないと・・・」


「そうだぞメリル殿、兄上を見習えば
立派な淑女に・・・」


「何で男に教えてもらわなきゃいけないの!!」





による説得を、が丸々ぶち壊す





「ああもう、これだから軍育ちは・・・」


「あなたも同じでしょうが!!!」





猛る彼女をはどうにか落ち着かせる。









三人は気を取り直し 青空に輝く太陽を眺めながら
継がれた酒を口にし・・・口元を緩ませた







「・・・・こういうのも悪くないな。」


「ええ本当に、今回はまた一味違いますね。」


「ああ・・・・・・うめえ。









まだ数多の謎が残っているものの 吉原は
夜王鳳仙の鎖から解き放たれ、平和な街へと変わった。








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:波乱に満ちた吉原炎上篇、これにて閉幕です!
読んでいただきありがとうございました〜


全員:ありがとうございました〜


新八:え、全員って内訳どうなってるんですか!?


狐狗狸:万事屋トリオと晴太君でしょ?それに
日輪さんに月詠さんにさんが救援で呼んだ方々に
百華の皆様方・・・これ位かな?


銀時:Σ高っ人口比率高っ!何その密度の多さ!!


神楽:百華だけに、百人乗っても大丈夫アルな!
私社長のポジションとったネ!


新八:上手くないから神楽ちゃんんん!!


月詠:しかし・・・の兄、始めて会ったが
アレは本当に男なんじゃろうか?


狐狗狸:ある意味吉原に一番馴染む人ではありますね


日輪:あの人の事も気にはなるけど・・・皆さんのお陰で
私達もこうして笑い会えるようになった


晴太:うん、オイラ みんなに感謝してるよ


狐狗狸:・・・本当、こちらこそ色々ありがとうだよ




そして書いてくださった退助様と読んでいただいた
あなた様にも 最大級の感謝を送りたいです


本当に、ありがとうございました・・・・・・!