鳳仙が息を引き取った後、支配した重い沈黙に





似つかわしくない軽やかな拍手の音が響き渡る。





「よっお見事、実に鮮やかなお手前・・・
とは言いがたいなりだが、いやはや恐れ入ったよ。」





傘を背負った神威が 屋根の上から銀時を見る。





「小さき火が集いに集って、ついぞ夜王の鎖を断ち切り
吉原を照らす太陽にまでなったか。


まさか本当に夜王を倒しちゃうなんて 久しぶりに
面白いものを見せてもらったよ。」


「フン、自分の師匠が死んだと言うのに
随分とあっさりしているな?」


「よしなさいオセロット!」







予期せぬ相手の登場に、三人の視線が集まった。







「え?オセロット?何でこんな所に。」


「なりゆきだ。」


「おお、生きておったかオセロット殿。」


「勝手に殺すな!てか
あの時は貴様のせいで本気で死にかけたがな!!」








三文芝居のようなやり取りが終わるまで待ってから


笑い顔を崩さず神威は口を開く。







「随分やかましい連中だね。
だけどこんな事したって吉原は何も変わらないと思うよ。
・・・吉原にふりかかる闇は 夜王だけじゃない。」


「お前ら春雨に幕府中央暗部のことか。」







の指摘に、彼の首が縦に振られた。







「勘がいいね、その闇は限りなく濃い。
また第二第三の夜王がすぐに生まれるだろう。


その闇を 全て払えるとでも思ってるのかい?
本当にこの吉原を変えられると思ってるのかい?」











第十一話 謎の傍観者は続編のボスキャラフラグ











「・・・変わるさ、人が変わりゃ街も変わる。


これからお天道さんも機嫌を損ねて雲から
ツラださなくなっちまう日もあるだろーが、


こいつらの陽はもう、消えねーよ。







真っ直ぐに自分を見据えて言い切った銀時へ





神威は、傘を傾け・・・楽しげに言った







「フフフ・・・そうかい、大した自信だね。
じゃあこの第二の夜王と開戦と行こう。」







ボロボロのまま身構える銀時とを手で差し止め





「銀時、殿・・・この男とは私が戦う。





前へと出たが槍を両手に握り締め
切っ先を神威へと向ける。







「やめとけ、奴は鳳仙と同等かそれ以上だ。」


「テメェだって瀕死のクセに どこにそんな
やせ我慢する度胸があんだよ。」


「・・・単に 気に入らんだけだ」







二人が止める前に クスクスと笑い声を響かせ





「別に俺は構わないんだけ・・・どっ!?





仕掛けようとした神威を、飛んできた銃弾が止めた。


跳んで避けた銃弾の発射方向と思しき部屋の壁が壊れ





「神威ぃぃぃぃ!お前の相手は私アルゥゥゥゥ!!」





銃口向けつ現れた神楽に 彼は眼を丸くする





「その捻じ曲がった根性、私が叩き直して」


「ダメだって神楽ちゃん!その身体じゃ無理だ!!」







今にも襲い掛からんとする神楽を、新八が抑えて
上の方で揉めるその様子を眺め





神威は・・・笑った。







「こいつは驚いた、まだ生きていたんだ。
少しは丈夫になったらしいね。
・・・・・・出来の悪い妹だけどよろしく頼むよ。」





言って後ろを向き、屋根の端に向かって歩く





「せいぜい強くしてやってよ・・・・
後、君達ももっと修業しておいてよね。」


「おい!お前!!」







銀時のかけた声に 一度だけ振り返ると





好物のおかずはとっておいて食べるタイプなんだ。
つまり気に入ったんだよ君達が。



ちゃんと怪我治しておいてね・・・まあ色々あると
思うけど死んじゃダメだよ 俺に殺されるまで。」





言いたい事を語り終え、神威は屋根から飛び降りた。







「じゃあね、お侍さん。」


「待て神威!!神威ぃぃぃぃぃぃ!!」





神楽の叫び声だけが空しくその場に鳴り響いた・・・











呆然とする月詠達に混じって、メリルは呟く





「・・・これで・・・一件落着ってところかしら?」


「そうだなメリル・・・結局鳳仙も・・・
自分に苦しんでいただけだったんだな・・・・」


「それで自分の首を絞めていたとはお笑いではないか。」







屋根の上にいた男が降り立ち、その場の全員が
一斉に戦闘体勢に入る。





「っ!?お前は!?


「お主、あの時の・・・!」


「久しぶりだな諸君、シャドーモセスでは
フォーチュンが世話になったな。」


「・・・ヴァンプ!?」







驚愕しているメリルとに、銀時が訊ねた。





、誰だよこのデコ穴男。
どこの寒いムショから出た変質者?」


「見たまんまかよ・・・いや、気をつけろ銀さん。
奴はヴァンプ 不死身の身体を持っている。」







ヴァンプは周囲を順繰りに見回し・・・首を横に振る







安心しろ、ここにいる者達に何かをする気はないし
満身創痍で刀が折れた貴様を相手にするほど姑息でもない。」







言われて 初めては握っていたレーザーブレードの
刀身部分が折れていた事に気付いた。





殿・・・刀身が・・・」


「折れてたのか・・・まぁ鳳仙の攻撃を防いでもいたし
流石に無理しすぎたか・・・」


「フフフ・・・今日はこれで引かせてもらおう。
また近い内に俺を殺してくれよ。」





不敵な笑みを浮かべると、ヴァンプは屋根を飛び移り
その場から去っていった。







「・・・ったく何なんだあの変態は?」


「分からぬが銀時、それよりも怪我人を治さなくては・・・」





表情にこそ出ないが不安げなへ、が肩を叩いて





「大丈夫だ、今空から来る。」


「え?」


「パラメディック隊さ。」







上空を指差せば・・・開いた所から徐々に
落下傘が降下し 城の方へやって来た。





「重傷患者を最優先!敵味方は関係なし!!」


『はっ!!』







パラメディックの指揮と月詠らの協力により


吉原内の怪我人の治療が行われていく











「ジャック、また無茶してるわね。」


「こうでもしないと鳳仙には勝てなかったんでな・・・」


「ていうか、天井が開くこと知ってたんなら
何で今までやらなかったんだコラァ?」


仕方ないだろ?警備が厳重過ぎたんだから。」







地味に膝蹴り加える銀さんを宥める





二人はとりあえず後回しにしようとパラメディックが
周囲を見渡して・・・鳳仙の遺体に眼を止めた。







「このおじいさん、身体がボロボロ・・・・
もしかしてこの人が・・・」


「ああ、夜王鳳仙だ・・・もう息はしてない。」


「そう・・・・・」







悲しげな空気の中、ぽつりと銀時が言った。







「・・・墓、造ってやろうぜ。」


「そうだな銀時。」


「それなら・・・陽のあたる場所にしてください。
せめてお墓の中では陽を浴びせてあげたいから・・・」


「分かったよ、日輪さん。」













事件が終わり 海の近くの崖に
番傘を墓標代わりにした鳳仙の墓が出来て数日・・・







人気の無いその場所に 傘を差した男がただ一人
墓前に佇んでいる。





「またえらく暑苦しい所に眠らされたもんだな
さまあみやがれ・・・・鳳仙よ。」


「遊女達がよ、あの世じゃ日浴びさせてやろうってな。」







返された返事に男が背後へと向き直る。







そこには銀時、の三人がいた。





「ん、そっちのお嬢ちゃんは初めて会うな。
兄ちゃんはどのツラ下げて俺の前に現れた?





険しい眼つきにさらされ、は苦笑いを浮かべる。





殿、何かあったのか?」


「いや・・・話せば長くなるんだけど、ごにょごにょ・・・」


「おお、この御仁が神楽の父上のハゲ殿か」


おい、今ハゲっつったろ?しかも名前じゃないし。
星海坊主だから俺の名前は。」





かなり気にしてるらしくスゴい勢いで詰め寄ると
拳での頭を小突き続ける星海坊主





「痛い痛い 何をするのだ坊主殿」


「星海が抜けてんだよ!
つーかテメェ表情変わらなすぎ!気色わるっ!!」



「まぁまぁ星海坊主さん、にも悪気はないんだし
もう過去の話をズルズル引きずるのはいかんぜ?」

「誰の頭がズルズルだぁぁぁぁぁ!?」


「言ってねえぇぇぇぇぇぇ!!」







のツッコミにより 辺りのムードは
微妙な気まずさをかもし出す。







「まあ、んなことは置いといて・・・・
あんたのダチ公だったのか・・・悪いことしちまったな。」


「いや・・・ムカツク奴ほどいなくなるとな・・・
お前の墓参りも行くことになりそうだ。良かったな。」


「いや俺の方が行くわ、通い詰めるわ。」


「いやさらに俺はそれを上回っていく
ジェット機でかけつける。」


「いや俺のジェット機の方が早い。」


「いや俺のジェット機の方がチケット安い。」





不毛な言い合いに、があっさりトドメを刺した





「・・・要するに同じ速さで通い詰めるのだな。」


「「何で普通に言う!?空気読めよお前は!!」」


「大人気ねぇなアンタらも・・・」







それを機に 再び四人は黙り込む。









重い口を最初に開いたのは、星海坊主





「また派手にやっとるらしいな、まさかあの鳳仙を
やっちまうなんざ。次はこの星海坊主様とやってみるか?


「冗談じゃねぇ、あんなモンただの袋叩きだ。
一人じゃどうにもならなかった。」


「あれほど強い敵は3度目だったな・・・」


「鳳仙より強い奴とやりあったのかお前?」


「ああ、最も一人は肉体的にではないがな・・・・」





問いかけに答えるは、複雑な顔をしていた。





「どうしたのだ殿?」


「・・・・その人は・・・・・俺の・・・・・


「・・・・いや、そこまでだ兄ちゃん。
その気持ちは分かる・・・」







星海坊主が止めた事もあってか、の頭には
何となく・・・"彼女"の姿が浮かんで消えた。







殿・・・・・・」


「だが・・・俺のガキはそうは思わなかったらしい」





墓前で苦いような笑みを浮かべ、星海坊主が
語るのは・・・








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:長かった吉原炎上篇も、あと一話で
フィナーレを迎えることになりそうです


銀時:ったく、ダチは選べよ・・・パチスロといい
あのデコ穴といい色物ばっかじゃねぇか


オセロット:オセロットだ!いい加減覚えないなら
その頭蜂の巣にしてくれるわ!!


メリル:後それ、私達にもケンカ売ってるのかしら?


テリコ&ヴィナス:そう聞こえるわね


新八:ままま抑えてくださいよ・・・それより
さん、星海坊主さんに初対面でアレは・・・


神楽:構わないアルよ むしろパピーは
ハゲ散らかってる現実を認めたらいいね


星海坊主:お父さんそんな子に育てた覚えはねぇぞぉぉ!


狐狗狸:しかし、きっちり先を見越して四話の時点で
救援を色々呼んでたさんに 拍手を送りたいよ