広間で決着がつかんとする頃と前後し





晴太と新八、神楽の三人は襲い来る百華を倒し
管制室へと突っ走っていた。







身体を大きく開き 神楽が百華を薙ぎ倒すが


生き残った一人が死角から迫る





チッ!!一本足んなかったネ!!」





舌打ちし、身構える神楽へ百華はクナイを振り上げ


間髪入れずに新八が突き入れた 折れた薙刀に
よって倒される。





「グッジョブアル新八!!」







二人が気を抜いた一瞬をついて、背後から
クナイを投げる百華





彼女達の狙いに違わず


それは真っ直ぐと晴太へ向かう







「晴太!!危ない!!」





神楽の防御が間に合わず 晴太にクナイが当たる
・・・と思われた瞬間


6度の銃声と同時に、クナイは全部弾き飛ばされた。







「な・・・何だ今の銃声は!!」


「何処からだ!!」







ざわめきだつ百華達の後方から





「フン・・・女を撃つのは気が引けるのだがね・・・」





ガンアクションをしながら近づいてくる男がいた。







「あ・・・あなたは!?


「久しぶりだな。ザンジバーランド以来だな。」


「オセロットさん!?何であなたがここに!?」


「単なる気まぐれだ。ジャックは関係ない。」





警戒する新八と神楽に対し、初対面の晴太は
突如として現れたオセロットに戸惑う。





「大丈夫なのかこいつ・・・?」


「心配無用だ、ここは任せて管制室に急げ。」


「そんな嘘 信じると思ってるアルか?」


「信じる信じないはお前たち次第だ・・・・行け。」





無言で視線を交わし 三人はオセロットをその場に置いて
管制室へと急いだ。







百華達は残されたオセロットを取り囲み、クナイを構える





「さあ・・・邪魔者はいなくなった。
存分に楽しませてもらうぞ!!





SAAの装填を完了し、2丁構えたスタイルの彼は
不敵な笑みと共に宣言した。











第十話 絆には決まり事もない











銃声交じりの轟音を背後に 三人が管制室へたどり着く







晴太がハッチを開くべくパネルを弄る間


新八と神楽は入り口で、百華の侵入を防ぐ。







操作を進め 最後のレバーを引く段階となったが
長年使われず錆びついていた為 硬くて引けない





「晴太君!!」


「早く!!」






水際で防ぐ二人だが徐々に百華の数は増える







と、一発の銃声が飛び 連なる百華が一人
また一人と倒されてゆく。





「・・・間に合ったようね!!」


「エヴァさんも来てたんですか!」


「ええ、ジャックに頼まれてね!
零れた奴は私に任せて!!」







室内へ乗り込んだエヴァは晴太を護るように立ち
得意の馬賊撃ちで二人の援護を果たす。





晴太は 全身全霊を込めてレバーを引っ張った







「うおおおおおお!!!」







少しずつゆっくりと・・・レバーは傾き、ついに
全て倒されきる そして吉原の空に轟音が響いた。
















すっかり荒れ果てた広間では・・・





銀時が 鳳仙と最後の決着をつけようとしていた。







「武士道とやらか、殊勝なことだな。己の命を捧げて
女達の免罪を乞おうというのか。


無駄だ、貴様が終わればそこの娘と小童共、次は女達だ!


「そんなこと・・・俺が許さ・・・」


「無茶しないで!!そんな身体で!!」





必死に抵抗の意を見せるだが、メリルに抑えられた







「消せやしねーさ、もう誰も。
たとえか細いろうそくの火でも 集まりゃ闇も照らせる。


たとえ火が消されても一本でも火が残っていれば
また火を灯せる。


・・・お前にゃ俺の火は消せねぇよ。







銀時の呟きと共に、吉原の天井から轟音が響く。







「何度吹き消そうとも無駄な話だ。
俺にゃとっておきの火種があるんだ。
絶対に消えねぇ太陽がついてんだ。


奴らがいる限り、俺ぁ何度消されても何度でも燃え上がる。







彼の真っ直ぐな瞳に 魂に呼応するように





銀時の背から・・・光が差し込んできた・・・・








何だ!?・・・これは・・・・この光は!?」


「お前なんぞに、俺達の火は消せやしねぇ。」





光は強くなり・・・・・そして、闇に沈んだ街を
余す事無く照らし出した。


ハッチが開き 太陽が姿を現したことによって








「これは・・・・この陽は・・・まさか・・・・!!」





吉原にいる人間・・・遊女達・・・そして月詠達は
思わず、空を見上げていた。






「た・・・・・太陽ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」







陽の光を浴びた鳳仙の身体へ 見る見る内に
渇いたような傷が刻まれ始めていく







「ぬぐあああぁぁぁぁ!!」







(血が・・・・・・肉が・・・・・


魂が・・・・渇いていく・・・・・・)







新八と神楽は百華を蹴散らして、と共に叫んだ





『行けぇぇぇぇぇ!銀さぁぁぁぁぁぁん!!』







床を力強く蹴り、銀時は鳳仙へと駆ける





『夜王の鎖を・・・焼き切れぇぇぇぇ!!!』


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」







咆哮と共に突き出された木刀が額を突き





鳳仙の身体を、宙高く跳ね飛ばした。










城の壁を破壊し 外の方へと突き抜けて
瓦の上へと倒れこんだ鳳仙は





仰向けのまま太陽を見つめ、手をかざす。







「我が天敵よ・・・・久しぶりに会って何も変わらぬ・・・


はるか高みからこの夜王を見下ろしておって・・・・
全く・・・なんと忌々しい・・・・


だが・・・・なんと美しい姿よ・・・







崩壊した壁から先程まで戦っていた者達が覗く中





いつの間にか 鳳仙の側に神威が佇んでいた。







「人とは哀れなものだね 己にないもの程欲しくなる。
届かぬものに手を伸ばす・・・夜王にないもの、それは陽。





笑みの下から滲む見下した眼が、夜王を睨む。





「旦那、あなたは太陽のせいで渇いていたんじゃない。
太陽がないことに渇いていたんだ。


誰よりも疎み憎みながらも誰よりも羨み焦がれていた。


冷たい戦場ではなくあたたかい陽の下で生きる事に、
決して見えないその眼の陽に・・・」





何の感情もこもらぬ神威の声が続く





「故にその陽を奪った。女達を己のいる夜へ
この常夜の国に引きずり込んだ・・・


そしてそれでもなお消えぬ陽を 憎み、愛したんだ。」








沈黙を挟んで、低いせせら笑いが起こる。







「ククク・・・愛?
一体何処でそんな言葉を覚えてきた神威。


そんなものわしが持ち得ぬのは
貴様が一番よく知っているはずだ。


神威 お前はわしと同じだ、戦う術しか知らぬ・・・
欲しい物も気に食わぬものも戦って・・・
愛も憎しみも戦うことでしか表現する術を知らぬ・・・」







語る鳳仙の身体の傷は際限なく増え





それに従い、徐々に皮膚が剥がれていった・・・







「神威、お前もいずれ知ろう。
年老い己が来た道を振り返った時、我らの道には何もない。


本当に欲しいものを前にしても抱きしめる腕もない。
爪をつきたてることしかできぬ。


引き寄せるほど爪は食い込み
手を伸ばすほど遠く離れていく。」









再び手を太陽へとかざした鳳仙の声は







「何故・・・お前さえわしを嫌う・・・
何故お前さえわしを拒む・・・


何故・・・こんなに焦がれているのに・・・
わしは・・・渇いていく・・・







どこか 寂しげに聞こえた・・・・・・・・・











(見えない・・・もう何も・・・
いかなる陽も届かぬ、真の夜。


死してなお・・・夜を往くが夜王の運命・・・)







暗闇に立つ鳳仙は、目的も無く歩く









深い深い闇に・・・唐突に 陽が差し込む。







(これは・・・この陽は・・・・)











眼をゆっくりと開けると、そこに日輪がいた





「ひ・・・日輪・・・」









テリコとジョニーがの側へ静かに加わる。





「隊長!」


「やったのね・・・鳳仙を・・・」


「二人とも・・・これを眼に焼きつかせておけ。」





彼は興奮する二人を諌め、屋根へと視線を戻す









「やっと、見せてあげられた・・・ずっと・・・
見せてあげたかった・・・この空を・・・あなたに・・・」





太陽を見上げ、日輪は名に恥じぬ笑みを浮かべる。





言ったでしょ、きっとお日様と仲直りさせてあげるって。


知ってたのよ、どんなにエバリくさったって
どんなにひどい事したって、あなたは夜王なんて
大層なものじゃないってこと位。


あなたはただ・・・こうして日向で居眠りしたかっただけの
普通のおじいちゃんなのよね・・・」







気付くと、彼女の瞳には涙が一筋流れていた







「ただ・・・それだけなのに・・・
こんな馬鹿げた街まで創って、みんなを敵に回して・・・


バカな人・・・・・・・・・
本当に・・・バカな男・・・・・・








最後に見せたその笑顔は 夜王とは思えないほど
穏やかな・・・・・・優しい笑顔だった。





そして・・・鳳仙は、静かに息を引き取った・・・・













一つ屋根の上にコートを羽織り、額に穴のような傷が
ついた男がその様子を見下ろしつつ携帯電話を使う。







「ボス・・・夜王鳳仙が倒れました。」


『フン、所詮は隠居生活をし渇いた老人に過ぎんだか。
それより奴は?』


「健在です。前に会った時より力をつけています。」


『フフフ・・・蹶起の時は近いか。
気があるのなら少し顔を出してから帰還して構わんぞ。』


「はい・・・そうさせてもらいます・・・・では・・・」








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:感動と涙なくしては語れない、鳳仙との決着
そして・・・夜王の最後です


銀時:テメっ、なーに女の前でカッコつけてやがる


新八:ちょシリアスな所なんだから後書きもキッチリ
締めましょうよ・・・ね?


神楽:は銀ちゃんを銀ちゃんて呼ばないアル
てゆうか私も銀ちゃんて呼ぶアル


新八:いや・・・そこは雰囲気に飲まれてたとか
言ってたけど周囲の声と混じった的なアレで行こうよ


ジョニー:それより屋根にいたのって誰です?
ぶっちゃけ新しい敵!?あわわわわわわわ!!


新八:シリアス台無しぃぃぃぃぃぃぃ!!


狐狗狸:うーん・・・ここでシリアス保とうってのが
そもそもの間違いだったかも