「さーて、ライバルも買ったし帰るか・・・・」
今月号のライバルを買い、ホクホク顔で
家路へと向かう途中
はファミレスで 銀時が小汚い子供を
掴みながら出てきたのを目撃した。
「うん?銀さんじゃないか、どうしたんだ?
いやそれより誰その子?」
「おーか。今ちょうどスリ捕まえたトコなんだが
金返してくんねぇから警察に行こうかと・・・」
「だからあんたの財布は空だったんだって!!」
スリは犯罪だが、しかしこんな子供にも
容赦ねえこの人・・・・とは思う。
「で、警察つれてくのか?」
「勝手に決めんなぁ!だから金が入用のワケを
教える為に吉原に行くんだってば!!」
関わりのある単語に、の目が丸くなる
「吉原だって!?何でそんなところに?」
「何だ?知ってんのか?」
「ああ・・・よーく、な」
今更周囲へ語りはしないものの 彼は
何度か吉原の潜入任務に就いたことがあり
その度幾度と無く、そこの自警団と対峙した事もある。
ともあれ渋い顔のといつも通りの顔した銀時は
子供の案内で、専用エレベータに乗り
吉原の街へ行くことになった。
「旦那〜、ウチで楽しんでいかな〜い?」
「はいはい!あとで行くから!!」
「後で来る位なら今来てよ?」
「そっちのイケメンの兄貴もどう?」
「悪い、俺にはもう女がいるから・・・・」
「たまには他の女と付き合うのも悪くないわよ〜。」
「しつけーよテメエら!
俺達ゃ積極的な女は嫌いなんだよ!!」
「あんたと一緒にしないでくれる!?
俺は結構好きだから!!」
二人が今いる街は吉原桃源郷
中央暗部の触手に支えられ幕府に黙殺される
超法規的空間 常夜の街
・・・男達の聖地である
第一話 財布は鎖で繋いどけ
群がる女郎を振り切り、先を歩く少年へ銀時が言う。
「マセガキめ。
俺達を色気で垂らしこむとは気が回るじゃねーか。」
「俺は違うけどな。成り行きで付いてきてるだけだから。」
「だが、俺ぁそんじょそこらの女じゃ満足しねえよ?
例えば・・・・」
銀時は立ち止まり、ひとつの店の頂上にいる
凛とした佇まいの太夫を目線にやりながら呟く。
「あれくらいの玉じゃなきゃ・・・・・」
は不思議そうな顔でその太夫を眺め、一言
「あの女の何処がいいんだ?」
それもそのはず、彼はアメリカの軍人。
日本の女性の美しさの基準が
全くと言っていい程分からないのである。
「テメェもまだまだ青っちょろいな。
ああいうすました女ほど、何かとプレイが半端なく」
「そっちかよ!見た目じゃねぇのかよ!?」
「・・・悪いけど、兄貴達の手には届かないよ。」
少年は淡々と話を進めた。
「日輪太夫、この町一番の花魁だ。
気に食わなきゃどんなに金を詰まれても
殿様でも相手にしない。高嶺の花だよ。」
「へえ・・・・・いくら金詰まれてもねぇ・・・・」
「なら楽勝じゃね?」
「アホか!そんなのに金なんて使いたくねえよ!!」
確かには軍人の中でもトップクラスで給料も
他の職より半端なくもらっている上
マザーキル作戦時にビッグ・ママから莫大な
『賢者の遺産』とママの個人資産を継承されている。
金の面だけならば十分すぎる程持ち合わせがあると言えよう。
しかし、そんな彼と銀時に睨みをきかせ
少年は次の言葉を強く言い切る。
「それに・・・・あの女はおいらが
先に唾付けてんだからな・・・」
「え?」
戸惑う両者に構わず、門屋の前にいる男へ近づき
少年は懐から出した金を渡した。
「おっさん、ちゃんと帳簿に付けといてくれよ?」
「はいはい・・・毎日ご苦労なこって・・・」
「・・・おい、何やってるんだ?」
「決まってるだろ?ここは吉原だぜ?」
振り返った少年はさも当たり前のように
常人なら予想もしないであろう事を口走った。
「女買うんだよ。」
「「え?」」
二人は、しばし顔を引きつらせていた
・・・こんな子供が吉原一の女を
落とそうとしているのだから 驚くのも無理はないが。
三人は一度地上に戻り『スナックお登勢』に着くと
女主人のお登勢とそこで働いているキャサリンに
今までの経緯を話し 聴き終えた瞬間
「「ハーっハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」」
二人は醜悪なツラ丸出しに、大声で笑った。
「こんなチンチクリンな餓鬼が吉原一の女落とすだって!?」
「ガキガ発情シテンジャネーヨ!
ウチニ帰ッテ母チャンノ乳デモ飲ンデナ!!」
「いやいや笑い事じゃないですよ。
これ下手しなくてもサイト閉鎖になるじゃないですか。」
心配そうに言う新八を、横目で笑う神楽。
「細かいこと言うなよ新八〜
ガキに先越されて焦ってるアルか?」
「あ・・・焦ってねーシュ!」
「お・・・皆の者、こんにちは。」
店の入り口を潜り、作務衣を着た緑眼の少女
が現れ頭を下げる。
「よお、どうした?急に。」
「たまたまここを通りかかったのでな。
・・・所で何故新八はそのような顔をしているのだ?」
「お〜ちょうどいいとこに来たアルな
新八今ごっさ焦ってるアル。
焦ってねえッシュって言ったアルよ。」
「そうか、どうしたのだ?新八。」
「い・・・いや別に!さんに関係ないし!
僕だっていつでも出来るし!やらないだけだし!!」
真っ赤になってしどろもどろに弁解するその姿は
何処からどう見ても、焦っている以外の何物でもなかった。
無表情で首を傾げつ 彼女は側にいたへ訪ねる
「殿、一体新八はどうしたのだ?」
「うん?お前には関係ないさ。」
は"には聞かせられないな"と思っていた
「いいいいやあの、そういうんじゃなくて・・・・
そもそも子供があんな街に行き来するなんて・・・・」
「ガキじゃない晴太だ、童貞(ガキ)」
「うおい!何言った!!何と書いて何言った!!
テメエ意味分かって言ってんのかぁぁぁぁぁ!!!」
「落ち着くアル童貞(シンパチ)」
新八はおもっくそ崩壊した顔で晴太を揺らす。
「童貞なめんなぁぁぁ!30過ぎまで童貞貫いたらなあ!!
ゴットハンドと呼ばれ加藤の鷹という存在に
転生出来るんだぞ!!!」
・・・賢明な読者諸君は理解されているだろうが
もちろんそんなことはない。ただの負け犬になるのがオチだ
「殿、童貞とはなんだ?」
「聞き流せそして忘れろ
女の子は知らない方がいい単語だ。」
『データに加えておきます。30歳まで童貞を・・・』
「いるかんな情報!!」
お登勢は卵の頭を平手で叩き、記憶化を阻止した。
「まあまあ放してやれよぱっつぁん。
ガキの分際で女に興味持つなんざ大したもんだよ。」
肘を付きつつ 銀時がそこでようやく口を開き
新八も、渋々晴太の身体から手を離した。
「いやでも・・・幾らなんでも早過ぎじゃ・・・」
「別にいいんじゃないのか?俺も同じ頃に興味持ったし」
「うっわーも結構ムッツリアルなー」
「おお、では殿もゴットハンドに・・・・」
「何処をどうしたらそういう解釈になんだよ!!」
思わずをどつくを気にせず、銀時は話を進める
「しかも女買うための金を集めようとスリを
やってたとは、末恐ろしいガキだぜ。」
しばらく黙り込んでいた晴太が、重い口を開く
「孤児のおいらが金を手に入れるっつったら・・・・・・
これしかなかったんだ・・・・」
「殿、どういうことだ?」
「まだ話してなかったな・・・実はな・・・・」
事情の飲み込めていない彼女へ、が
簡単にこれまでの説明をする。
「何と・・・スリ!?貴様さては兄上の財布も狙ったのだな!!
兄上を困らせるとは子供とはいえ容赦せ「ちょっ!
今そんなこと言っても仕方ないだろ!つーか槍出すな!!」
「油断スル方ガ悪インダヨコノアホ娘」
「三味線にされたいか猫もどきがぁぁぁ!!」
「「「火に油注ぐな前科持ちぃぃぃ!!」」」
を止めると、頭を叩いたお登勢とついでに
新八のトリプルツッコミが店の中で唱和する。
その間も晴太は 再び沈黙を貫いていた。
怒られるのも無理はない。それだけの事をしたから
・・・・そんな覚悟が見て取れて、は槍を収める。
「お主の罪、水に流そう・・・話してくれぬか?」
いたわる様なその声音に頷き、晴太は自分の
生い立ちを語りだした。
自分は親に捨てられた事
拾ってくれたおじいさんの事
3年前におじいさんが亡くなる時に
母親が 吉原で太陽として輝いてると伝えた事・・・
語る内、晴太の眼には涙が溢れ出す。
「母ちゃんかもしれないんだ・・・・・・あの人
・・・おいらの母ちゃんかもしれないんだ!!」
何時しか、みんなは黙り込んで彼の話を聞いていた。
会って話がしたい けど自分の手には届かない
だから少しでも届くようにとスリを繰り返していた
そこまで言い終えて・・・晴太はその場に泣き崩れた。
彼らと同じように、は考え込んでいた。
彼も実の親を戦争で亡くし、育ての親である
ビッグ・ママは自分の手で殺してしまった。
だからなのか・・・彼の気持ちが分かるのだろう
生きるために盗みを働いていたことに関しても
どこか自分と重ね合わせて見ているようだ。
沈んだ重い空気を払うように、お登勢が言葉を紡ぐ。
「本末転倒だよ 母親に会うためにそんな真似して
母ちゃんが喜ぶと思うんかい。」
俯く晴太に、続けて彼女の声が振ってくる。
しかし・・・・・・
「働きな ここで。花魁買えるだけの金なんて
出しゃしないがね・・・少しは足しになるだろうさ。」
表を上げた彼に微笑みかけ
「だからスリなんて、もう2度とするんじゃないよ。」
お登勢は普段とは裏腹な 優しい声でそう言った。
「・・・・がとう・・・・ありがとうございます!!」
晴太は泣きながら、お登勢へ何度も頭を下げた。
そんな彼の肩を叩いて
「俺の財布の10万の方もしっかり稼いでくれよな?」
銀時はまたおかしなことを言い、玄関の戸を開ける。
「だから最初から空っぽだって言ってんだろ!!!
つーかなんでさりげに増えてんだよ!!!」
「利息だ。」
ピシャリ、と彼の口と玄関の戸が閉まり
それを合図にお登勢が声を張り上げた。
「じゃ始めるかい。」
「ハイヨ!」
「了解しました!」
立ち上がる卵とキャサリンの目がなぜか光り
「んぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
悲鳴を上げて暴れる晴太は
卵とキャサリンの二人に風呂場へと連行されていった。
「おいおい・・・大丈夫なのか?お登勢さん。」
「でも二人だけじゃ不安だね・・・・
、ちょっと手伝ってくれないかい?」
「お安い御用だよ。」
「お登勢殿、私も手伝うぞ?」
申し出るに手を軽く横に振りながら、お登勢は言う
「お前はここで待ってな。
今あの童をきれいにしてやるんだからね。」
「それじゃ行って来るかね・・・」
すぐに状況を飲み込んだと違い、この手の事に
とにかく疎いは首を捻るばかり
「殿、何故私は手伝ってはいかぬのだ?」
「あー・・・だから、お前があっち行ったら
一生モンのトラウマになるの。待ってた方がお互いの為だよ」
「おや、じゃあ卵はどうなんだい?」
「・・・アレは大丈夫だろ?機械なんだから。」
とりあえずは晴太の体を、卵が手が出せない部分まで洗い
じっとしてられなかったはお登勢のおつかいで
晴太の着物を買ってきて・・・・・・
キレイになった晴太は、前とは別人のように子供らしくなっていた。
「ほう、似合うじゃないかい。」
「大体の菌は除去出来ました。残っているのは股の間にある・・・」
「「言わせねえよ!!!」」
とお登勢は同時にツッコミを入れて卵の口を塞いだ。
「・・・そうだ、早速 晴太君に仕事を頼もうかと思うんだが」
「何すればいいんだい?何でもするよ!」
ニコリと笑い、は何処からかライフルを取り出して
晴太の目の前にそっと置いた。
「AK−102、AKシリーズの最新モデルだ。
これを磨いて欲しい・・・報酬ははずむぞ」
「お安い御用だぜ!兄貴!」
「はは・・・・兄貴か・・・・
セイフティを掛けてあるから心配ないぞ。」
賢明に磨く晴太の姿を見て も
何処からか信玄袋を取り出して近寄る。
「晴太殿、なら私の槍も磨いてもらおうかな?」
「わかったよ姉!」
「私はお主の姉になった覚えはないが?」
「違う違う。敬意を表した言葉だよ。」
「そうか・・・・・よろしくな、晴太。」
僅かに表情を和らげ、微笑したような顔をしたに
晴太は笑顔で答え 周囲の者達は
珍しいモノを見た顔をしていた。
この日から晴太は心を入れ替え、お登勢の元で
働くことになった。
それは全て母親かもしれない日輪太夫に会う為に・・・・・
しかし、その時はまだ
その心が踏みにじられる事を誰も知らなかった・・・・・
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:退助様プレゼンツでさんとウチのが
共演しての初長編!しかも吉原炎上篇!!
そしてずっと管理人のター
銀時:うるせぇ(後ろから踏み)
狐狗狸:ぶべら!痛い、鼻血出たァァァ!!
何するんですか記念すべき小説のあとがきで!!
神楽:グダグダ説明しすぎネ 私の出番が何で
こんな少ないアルか!
狐狗狸:これから嫌でも増えてくるしガマンガマン
新八:てーかさん、キャサリンさんと仲が
メチャクチャ悪いですね・・・
狐狗狸:主に人の神経逆撫ですっからキャサリンが
銀時:てか冒頭の管理人のターンって何?
狐狗狸:吉原炎上篇関連のあとがきがずーっと
出張で終始するって意味ですよ
三人:えぇぇぇぇぇぇぇー
狐狗狸:露骨に不満がられたっ!?