彼らがとんでもない事を企てているとは露知らず
とぼとぼと屋台通りを歩きつつ、は呟く。
「はあ・・・やっぱりドラキュラ込みかぁ
参加したくない、むしろ今すぐ帰りたい・・・」
意外と子供のような考え方だが、しかし当人も
きちんと自覚はあるらしく
「でも、いい加減克服しないとな・・・
いつまででもドラキュラを怖がってちゃ周りにも
MSFの隊員にも示しがつかないしなぁ・・・」
楽しげな人込みでごった返す路地で煩悶を繰り返し
そして、彼は腹を括り一つの決心をする。
"そろそろいいかな・・・ドラキュラ克服しても"と
直後 背後から肩を叩かれ、やや驚きつつも
振り向けば・・・そこには微笑むがいた。
「、みんな探してたわよ。」
「あ、ああ・・・すまんな。」
「あ、あのね・・・」
「何だ?」
少々言い淀み、しかしもう一度意を決して
彼女は言葉を口にする。
「お登勢さんが本番前に、一度肝試しの
リハーサルをしたいからお客役をしてほしいって。」
「ああ、わかったよ。」
ぎこちなくも微笑む彼にやや罪悪感を感じつつも
笑み返して、は手を握る。
肝試し会場の神社の その入り口の前まで
戻ってきた二人を迎えたのは受付役のお登勢
「じゃあ演技の評価を頼むよ。
奴らにゃ遠慮せずくれぐれも厳しくいっとくれ。」
「は・・・はい。」
「それじゃ、行ってくる。」
繋いだ手もそのままに、は順路を歩き始めた
・・・その先に何が待ち受けているとも知らずに。
第ニ話 もうそれイジリじゃなくイジメってパターン
集団だとよく見かけるよね?
「ねぇ、最初誰が出るかしら?」
「さあな・・・出来れば初っ端で
カズじゃないのを祈りたい所だな。」
克服すると決めたものの、まだ心の準備が
整うまでは待ってもらいたい。
そんな思考を彼が浮かべた直後、
前方の茂みから誰かが急に飛び出す
「ん?何だ随分雑な登場のしか・・・た・・・」
現れた者達の姿を見て、の顔が強張った
まるで彼の内心と決意とを嘲笑うかのように
出てきたテリコとメイ・リンの格好は
完全無欠なまでにドラキュラだった。
「「ウリィィィ!血をよこせぇぇぇぇ!!」」
「きゃあああ!私こわ〜「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドサクサ紛れに抱きつこうとした彼女より早く
は悲鳴を上げ、たまらず森の奥へと
猛ダッシュで駆け抜けて逃げた。
「・・・・あ・・・・あれ・・・?」
「そんなに怖いのかしら?」
呆然とする二人を他所に、メイ・リンは
すかさず無線を取り出してコールする
「プランE発生、手はず通りにお願い。」
控えていたヴィナスとスネーク、それに
エヴァがその通達を受け取る。
「プランE発生ですって。案外早いわね」
「まったく・・・何で俺までこんなことに
参加しなきゃいけないんだ?」
「面白そうだからいいじゃないの。」
小声で交わされるやり取りの合間に、目標が
三人の待機ポイント付近で立ち止まる。
「はあ、はあ・・・はあ・・・テリコ達がドラキュラ・・・だと・・・!?
ドラキュラはカズのはz「「「貴様の血は何色だぁぁぁ!!」」」
予想だにしない情報と展開に切れた相手の息と
思考が整う前に 首尾よく取り囲んだ三人が迫る。
・・・言うまでもなく彼らもドラキュラだ
「わ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
決心したものの覚悟が固まり切らぬ内に起こる
立て続けの異常事態には
さしもの英雄も一目散で逃げるのみだ。
「・・・ホント、反応が面白いわね。」
「オタコン、そっちに行ったぞ?」
先手を打ちオタコンへ連絡するスネーク。
「こっちに来たみたいだよ?」
「じゃあ手筈通りにね、エメリッヒ博士。」
連携を取り、手分けして茂みに隠れるパラメディックとオタコン
そこへ更に息を荒くして目標がやってくる。
「い、一体何なんだよこれ・・・
ドラキュラだらけじゃないか、聞いてないぞ・・・!」
近くの茂みが揺れ、ビクリと大きく肩が震える。
「こっこここ、今度は誰だぁ!?」
裏返った声でよたよたと情けなく歩きながら
揺れた茂みに近づくと・・・
ぽん、と後ろから軽く肩を叩かれて
咄嗟に後ろを振り返れば
「やあジャック。」
極めて陽気に ドラキュラ姿のオタコンが
笑顔で話しかけてきて
「のぅあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
は冗談でなく10cmほど飛び上がり、ダッシュで逃げた。
「は、話しかけただけなのに・・・」
「筋金入りの怖がりね。」
こうなると茂みを鳴らしていた
パラメディックでさえ、呆然としか出来ない。
さほど長くもない順路の終わりが見えて
彼は表情をようやく綻ばせる。
「よっしゃあ・・・で、出口d「おい」
呼ばれて 神社へ至る階段の最上段へ
ついと視線を走らせれば・・・
腕組みや両手上げなど思い思いのポーズをした
万事屋トリオ+カズのドラキュラ軍団が
一段ずつ駆け下りながら寄ってくるではないか
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「お、落ち着いてくださいさん!
僕らですよ!ホラっよく見て!」
立ち止まり、呼びかける新八の声音で
ようやく彼の後退さりと動揺は止まった。
「な、何だお前らかよ・・・
驚かせやがって・・・ハハハハハハ」
「ったく、ホントに苦手なんだなドラキュラ。」
「うう・・・こればっかりは俺にも勝てねぇよ。」
宥めるカズへ彼は不満げに返すものの
「ぷっくっく、ホント怖がりだなぁー
ちゃんってばよぉ?」
小バカにした目でそう呟くのは、銀時。
「この程度で怖がってて・・・
英雄の名が泣くんじゃない?ぷっくくく」
「こんな奴が人生の勝ち組なんて片腹痛いアル。」
続く神楽のセリフが、容赦なく相手の心に
矢をニ三本ぶっ刺していく。
折り悪くそこにドッキリメンバーも集い始める
「ここまで怖がるなんて予想外よ?」
「でも、ジャックの反応もなかなか面白かったわ。」
「普段は見せないかわいい部分が見れるしね。」
テリコ・ヴィナス・エヴァの発言もまた
彼の心へ矢を追加で抉り込んでいく。
「でも・・・やっぱりちょっとやりすぎたかな?」
「フン、この程度で怖がるようじゃ軍人失格だな。」
「ちょっとスネーク、いくらなんでも
そこまで言う必要ないじゃない!」
素っ気無いスネークの発言へ釘を刺すメイ・リン
だが、そんな気遣いさえも矢となって
突き刺さっている事に 彼女は気付いていない。
「まったく、これがなければ
アンタは完璧な人間なんだけどね。」
肩を竦めて お登勢は煙草の煙を吐き出す。
「いやいやバーさん、これだけじゃなくても
コイツ十分ダメな所あっから。」
「銀さんにだけは言われたくないと思います。」
「そうヨ、はまともなチャランポランネ。」
「ってチャランポランでもないでしょ!?」
矢がハリセンボンの如く刺さりまくったは
徐々に涙目になっていた。
「まあ一つ言えることは・・・
コイツもへたれな時があるってこった!」
その一言で話をシメた銀時へ共感してか
『ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!』
全員がいとも楽しげに笑い始めた・・・が
「ちょっとみんないい加減にしてよ!!」
笑い声へ割り込み、堪りかねてが怒鳴る。
「彼のドラキュラ苦手を克服するために
このドッキリを仕掛けたんでしょ!?
なのにみんなで寄ってたかって・・・
こんなのただのイジメじゃないの!!」
彼らの笑いが 一瞬にして沈黙へ変わった。
「を陥れるだけなら、帰らせてもらいます!」
怒りをあらわに 彼女は俯いていた彼の側へ寄る
「、帰るわよ!」
「え・・・で、でもサニーが」
「あの兄妹に任せてれば大丈夫よ!
いつまででも泣いてないで早く来なさい!!」
「は、はい!!」
素早く立ち上がり、は先へと歩き出す
相手を追いかけていく。
そんな二人の背を見送ってから、
「・・・確かに、少しやりすぎたかねぇ。」
長い沈黙をようやく破ったのは お登勢だった。
「仕方ない、今回はあの二人無しでやるかねぇ
明日でもいいから 後でみんなで謝りに行くよ
・・・それでいいね?」
確かに当初の目的は、"相手の苦手の克服"だった
しかし予想以上にビビリ過ぎた彼へ
悪ノリが過ぎ、目的からズレていった感も
否めなかったと反省してもいる。
「・・・そうね、私達も言い過ぎたわ。」
「僕達にも責任があるから、謝っておくよ。」
「私も、嫌だって言ってるのに
ドラキュラ映画の話ばっかりしてたから・・・」
「俺達のボスが拗ねて脱退でもしたら
たまったものじゃないしな。俺も行くよ。」
その為全員が、へ謝りに行く事へ
口々に賛同の意を示していた。
・・・・但し、一部を除いて
「ったく、こんな低レベルな問題で
どうにかなるようじゃ人間としても失格だな。」
「考え過ぎだろ、この程度でアイツが
どうにかなるようなタマかぁ?」
銀時とスネークのその発言は、しかし
周囲の人々にとっては軽率でしかなく
「アンタらも謝りにいくんだよ
こんのロクデナシ野郎共!!」
ものすごい形相でお登勢に怒鳴りつけられて
二人は、蛇に睨まれた蛙さながらに固まるしかなかった。
「「わ・・・わかった・・・謝るって」」
痛過ぎる視線の雨に負けて二人が同意した頃・・・
とは、神社から少し離れた
見晴らしのいい場所にいた。
「もう、どうしてドラキュラにだけ勝てないのよ!」
「そんなこと言われてもなぁ・・・・」
傷ついた心はまだ修復中らしく、いじけた彼は
顔を下へ向け人差し指同士をツンツンしている。
まだ眉を吊り上げてはいたものの
見かねた彼女は・・・緩く微笑んでから
後ろからそっと、抱きついた。
「いいわよ、訳はもう知っているから。
あなたはドラキュラよりもずっと怖い相手に
何度だって勝ってきたじゃない・・・
いつかはドラキュラにも勝てるわよ。」
「・・・」
は、ようやく顔を合わせて相手と向き合う。
「でも、今は・・・私だけを見て。」
「・・・・・・ああ。」
二人がキスを交わした直後、見事な花火が
闇色の大空に咲き乱れる。
・・・そして彼らは自分の屋敷へと帰り
戻っていたサニーと、様々な話をしてから寝付くこととなった・・・
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後書き(退助様サイド)
退助「え〜・・・今更なんですけど・・・
二人のこのバカップル表現に嫌悪感を感じた
管理人を含むすべての人々に・・・
すんまっせんしたぁぁぁぁ!!」
銀時「ホンっトーに今更だなオイ。」
神楽「もう慣れたネ気にしなくてもいいアル。」
新八「神楽ちゃん、目が許してないよ全然。」
カズ「まったく羨ましい、いつか俺も彼女みたいな
パリジェンヌと○○○したいなぁ。」
テリコ「ちょっとカズさん!セクハラ発言は
やめなさいよサニーが聞いたらどうすんの!」
エヴァ「じゃあ私とやる?ナイスガイ?」
カズ「おお!では遠慮なk」
スネーク「色々問題ありだからやめろっての!!」
退助「・・・まあ家に帰ったら色々やってるのは
言うまでもないけどね。」
メイ・リン「ホントにやってたんだ・・・」
パラメディック「ていうか何よこの猥談部屋は。」
ヴィナス「ここのサイトに足りない潤いを
こっちで補充してるだけじゃないの?」
お登勢「まったく・・・ガキもいるってのに
もうちょっと自重出来ないもんかねぇ」
退助「サーセン」