「「肝試し大会?」」


「そうさ、悪いんだけど
アンタんとこの連中にも声かけてくれないかねぇ?」





揃えた二人の声音に、煙草を燻らせながら
かぶき町四天王の一人・お登勢は静かに告げた。







ヘイヴン事件が解決して大分日も経ったものの


かぶき町に戻ってくる住民の数は未だ少なく


町内会の集会 ひいては夏の出し物の企画に
振り分けられた班の人数は


両名を入れても極端に少なかった。





その辺りの事情を了解してはいるものの
彼の表情はあまり思わしくはない


「MSFなら簡単に来ると思うが・・・
FOXメンバーは、全員アメリカにいるからな・・・」


「ダメ元でいいから連絡してみておくれよ」


「わかった、連絡してみよう・・・あ、お登勢さん。」


「何だい?」


ちろりと寄越された視線に、珍しくも萎縮しながら
は自らの希望を告げる





「その・・・ドラキュラは・・・なしの要望は
「却下に決まってんだろ!ホラーにドラキュラは
つきものだろうが!ワガママ言ってんじゃないよ!」



「す、すいません・・・・・・」


お登勢の厳しい叱責により陳情は瞬殺されたのだった。





何はともあれ集会は終わり、二人は屋敷に戻ってすぐ
FOXメンバーに連絡を取り合った。











第一話 長編のタイトルをつけるのも一苦労











『肝試し大会?もちろん行くわよ!





自他共に認めるB級マニアのパラメディックは
早速興味を持ったようだ





「そうか、衣装は貸出されるがどうする?」


大丈夫、自前で用意するから。たくさん持ってくるからね。』


ニコニコと笑う彼女に一抹の不安を覚えつつも

ヴィナスとテリコにも連絡を回す







肝試しって・・・何?』


『要するにお化け屋敷って事よヴィナス。』


「そんな感じだな、一番怖がらせた奴には
賞品がプレゼントされるらしいぜ。」


『面白そうね、参加させてもらうわ。』





"お化け屋敷"のイメージは未だにピンと来てなかったが
何となくイベント自体は理解したらしく





私も参加する!
メリルさんやアキバ君も呼んでおくね?』


「ああ、助かる。」


声を弾ませたテリコに微笑み、彼は次の相手へとコールする。







肝試しかい?仕掛ける側も面白そうだね・・・』


『私も参加するわ、中国で有名な妖怪を用意しておくからね。』





こちらも乗り気なオタコンとメイ・リンだが


スネークは不満げな顔で異を唱えた。


肝試し?くだらん、俺は行かんぞ。』


『何よスネーク、怖いの?





が、エヴァのその一言で彼は若干焦りを見せる。





『ば、馬鹿なことを言うな!怖くはない!』


思わずといった叫びを"参加表明"と受け取り


してやったり、と笑って彼女もまた宣言した。





『ということで私達も参加するわ。』









こうして滞りなくMSF・FOX双方メンバーが
江戸に召集され、肝試し大会の準備が整・・・


整う・・・ハズだったのだが、





「・・・?あたしゃ肝試しの妖怪
連れて来いって言ったんだけどね・・・」


「あ、ああ・・・」


「何なんだいこのイロモノ集団は!?」





お登勢の目の前に並ぶのは様々な仮装・・・

ってーかぶっちゃけコスプレしたメンバーの姿。





「バーさん、いーんじゃねぇの別によぉ?
俺達の分まで働いてくれる気満々っぽいし。」


何サボろうとしてんだアホンダラァ!
家賃滞納してんだからアンタらもやるんだよ!」


「屋台行きたいネ・・・銀ちゃんが甲斐性ナシじゃなけりゃ
私もサニー達とお祭りエンジョイ出来たアル」


「我慢しようよ神楽ちゃん、これで1ヶ月チャラに
してくれるんだから優しい方だよ?」





隣に揃った万事屋トリオに一通りの激を飛ばしてから





「まあ、一応仮装の趣旨をそれぞれ聞こうかね」


三人とお登勢、それと呼んだ当人と
交えた六人で参加者の仮装チェックが入る。







まず真っ先に目を引いたのは ハエのマスク
被っている男装のパラメディック。





「何なんだい、その気色悪い被りモンは?」


「わからない?これハエ男のマスクよ。」


「何で女がハエ男の仮装なんてしてくるんだい!!」







怒鳴るお登勢を尻目に、万事屋メンバーは女子二人組に注目する。





どう?ネコ耳つけてネコ女になってみたんだけど・・・」


ネコ耳と水着姿なテリコはやはり肝試しを
あまりよく理解していないようだ





「テリコ、ここミスコン会場じゃないアルよ?」


「どうせならフェ○シアみたいに際どくいけよな。」


銀さんんん!セクハラにもほどがあるでしょ!?」







ツッコミが飛んで、隣に移ればいつもの
スニーキングスーツの背中+悪魔の羽のヴィナス。





「私は・・・サキュバスっていったかしら?」


「妖魔か、これはこれでいいかもな。」


「うん・・・いいと思うよ?」


納得したように頷くワニ男某宇宙戦争の暗黒騎士


・・・もとい、ワニキャップ装着スネークと
騎士フル装備の気合入ったオタコン。





「あのワニ本物アルか」


「さあ・・・てゆうかオタコンさんのあれ
下手したら管理人から殴られるんじゃ・・・」


「おーい、そこのエロ親父と根暗メガネ
やらしい眼で見てんじゃねぇっつーの。」





小声で会話する神楽と新八の横 ヴィナスの
ナイスバディを舐め回すように見つめて銀時は言う。





「「お前に言われたくないわエロ天パがぁぁぁぁ!!」」


無論、ワニ男と暗黒騎士モドキは憤慨し


一秒後に彼はきっちりヴィナスのカカト落としを食らった







そんなアホらしい情景を傍観しながら





「まったく、男は紳士でなくては
ならないというのに馬鹿な奴らだねぇ。」


悠々と言い放つのはジェ○ソンのマスクを
被っているのに 得物が棍棒のカズだった。





「カズ・・・何なんだよそれ?」


「あれだよ、鬼に姿を変えたジェ○ソンだ。」


それ馬鹿の考え方だよ!怖いものを二つ足せば
さらに怖くなるっていう馬鹿の考え方だよ!!」


「あ、そのセリフ・・・なんかデジャブです・・・」


身に覚えがあり、気まずげに呟く新八。







「もう、みんな真面目にやってよね。」


呆れ混じりに言うのは、どう見ても孫悟空の格好にしか
見えないと思われるメイ・リンだ。





「なぁメイ・リン、孫悟空って妖怪とは違うだろ?」


知らないの?孫悟空もれっきとした
中国伝統の妖怪よ。おとぎ話じゃないんだから。」


「まあいいか・・・あれ?そういえばメリルとジョニーは?」





辺りを見舞わずへ、テリコが答える。





「・・・あの二人なら、屋台に行っちゃったわよ?
参加する気はあまりなかったみたい。」







話題に出た二人へ焦点を当ててみれば・・・







「ジョニー、次は綿菓子に焼きそばと・・・
あ、チョコバナナもいいわね・・・」


「メリル・・・少し休もうよ・・・」





ジョニーは、珍しさから色々なモノを買い込む
メリルの荷物持ちが板についていた。





「何言ってるの、こんな機会滅多にないんだから
たくさん食べておかないと・・・」


「そんなに食べたら太っちゃうよ?・・・はっ!?


軽率な発言をしたと、言ってから気付いて
ジョニーは顔を青ざめさせた





メリルがこちらへ振り向いた瞬間


はったおされる・・・・!?と確信し

出るであろう手に対しガマンの構えを取るジョニー


・・・が、予想に反し彼女の顔は赤かった。





「だ、だから・・・
あなたと食べようかと思って・・・・」





手にした荷物に自分の分も含まれていたと理解し


彼は、ふっと微笑んだ。





「そっか、最初から言ってくれればよかったのに。」


「だ、だって・・・私そんなのに慣れてないから」


「いいんだよ、メリルはメリルのままで・・・」







・・・・・・もし、この甘ったるい空気の只中
銀時達がいればこう言うかもしれない。





「ホッントうぜぇなバカップル2号が。」


「銀ちゃん違うアル、馬鹿夫婦ネ。」


・・・・・スンマセン実際に言ってました。





「ぶえっくし!!?」


うわ汚ね!?何だよカズ急にクシャミして・・・」


「いや、何か俺の噂をされたような・・・」


「何の話?」





そんな状況にも気にせず、残ったエヴァの格好へ
最後のチェックが入るが・・・


彼女は全身タイツの不○子風の格好をしており

そりゃもういつもより割り増しでムンムン来ていた。





「エ、エヴァさん・・・仮装は?」





思わず問うに、色っぽくも戸惑いを含んだ声が返る


「え、肝試しって男が自分の欲求を抑える行事じゃないの?」


「「それじゃ理性試しになるだろうがぁぁぁぁぁ!!」」


元祖バカップルが同時ツッコミを見せた直後





「アンタら全員そこで正座しな!
肝試しナメんじゃないよこの馬鹿野郎共がぁぁぁぁ!!」






堪忍袋の緒が切れたお登勢の怒号が、全員の耳を
塞がせるほどの大音量で轟いた。









小一時間に及ぶ説教が終わり 集まったメンバーは

普通の仮装へ着替えさせられたのだった。







「・・・で、何で砂袋を持たなきゃいけないわけ?」





一般的な幽霊の扮装をしたテリコが、小脇に抱えた
砂袋について不満と共に訊ねる。





「そいつぁ砂かけ婆だよ。日本伝来の妖怪さ。」


「バ、ババア!?





お登勢の言葉に硬直する彼女へ、静かに笑いかけるは


「フフフ・・・散々な役ねテリコ。」





悪魔の羽の代わりに、口にマスクへ変更したヴィナス





「そういうヴィナスは何なのよ?」


「見たい?」





おもむろにマスクを取った、その下の口は・・・





「どう、私って・・・・美しい?


特殊メイクによって恐ろしい裂け方をしていた。





「「怖!?美しいけど怖!?」」


何気に演技派な彼女にビビる新八と銀時。





「・・・で、僕のは何なんだい?」


子泣き爺だよ、なんか似合いそうだったからね。」


「・・・僕、まだそんな歳じゃないのに・・・」


ガックリと肩を落とすオタコンは、哀愁たっぷりで
本人には悪いがそれなりに似合って見えた。





「で、俺のは何だ?」





原始人のような姿のスネークへお登勢はさらりと


「ビックフットだよ。なんか似合いそうじゃないかい?」


それただのUMAじゃねーか!?どうせならもっと
渋くて似合う役割にし「この皿の意味はなんなの?」





彼の文句を遮って、これまた一般的な幽霊姿の
パラメディックが訊ねてくる


テリコと違い 抱えてるのが砂袋でなくだが。





「それはね、皿の数を数えて一枚足りないって
言ってうらめしや〜って怖がらせる奴さ。」


「皿が一枚足りないだけで、何で恨むの?」


「そういう怪談があんだよ 文句言うんじゃない。」


「すいません、私のさっぱり分からないんですけど?」


挙手しつつ言うメイ・リンはというと・・・


セーラー服に血まみれの鉈を持っていた。





「いや、なんか余ってたから着せただけだけど?」


「ていうかなんていうひ○らし?





思わず訊ねる銀時に構わず、側に寄った神楽が
腕を振り下ろす身振りをしつつこう言う。





汗の代わりに血を垂らせばいいやぁ!って
言いながら掲げた鉈を振り下ろせば完璧ネ」


「何を本格的にレクチャーしてんの!?」







・・・関係ないけど、"能面"と呼ばれた彼女が
その仮装したら シャレにならないくらいハマる気がする


最も当人は屋台を兄とサニーの三人で楽しんでいるが





「それで私のこれは何かしら?」


やや不満げな声音を漏らすエヴァは


自慢の金髪を黒い長髪カツラでもっさり覆われ

あちこち血塗れメイクの白いワンピースといういでたち





「それも余りもんだよ、言うなりゃ貞○かねぇ」


「いやー伽○子かもしれないアルよ
どっちにしろ基本膝とヒジで這い回れば完璧ネ」


「だから何のレクチャー神楽ちゃんソレ!?」





恐らくTVから得た知識の披露をする彼女を
末恐ろしく思う万事屋二人に







「おい、お寺に吸血鬼ってないんじゃない?」


割って入るのは、黒いコートに牙を見せたカズ





あん?気にすんなそこは、俺もやってたし。」


「げ、お前と一緒かよ・・・」


「まあ声とか似てる時点で十分予想出来てたネ。」


「そうだね・・・ってあれ?さんは?







気付けば彼らが新たに着替えた時点で
の姿は どこかに消えてしまっていた





なら・・・カズさんの格好見て
何処かに行っちゃったけど・・・」


のその一言で、新八を始め事情を知る者達は納得する。





「ああ〜あいつ昔からこのドラキュラが苦手だったからな。」


「たしかさんは、ドラキュラの話を聞くと
夢の中で怪物と殺しあうんでしたよね?」


「ったくどんだけグロい夢見てんだよあいつぁ。」


「流血とホラー大好きバ管理人が
喜びそうなシチュエーションアルな。」


「ちょっと、好きで見てるんじゃないんだから
そんなこと言わないでよ。」







そこで、銀時が不敵な笑みを浮かべた。





フッフッフッフッフ〜いいこと思いついたぜ。」


「何ですか銀さん、その意味深な笑い方は・・・」


「お前ら、ちょっと耳貸せ・・・」


「何ネ銀ちゃん?」


「いいから、あのな・・・・・・・」







全員が輪になるように集められて耳を貸し
彼の思い付きをしばし聞いて・・・





示し合わせたように、納得の表情が一致した。





「なるほどな、それなら協力しよう。」


「でも・・・私気が引けるわ。」


「いーんだよちゃん、あいつも男だ。
これくらい克服しないと後がツラいぜ?」


「そんなにうまくいくかしら?」


まぁやってみる価値はあるさね
それじゃみんな、手はず通りにやろうじゃないか?」


『ラジャー了解!』





カズの一言で全員は所定の位置についた。





銀時の思いついた策略は、一体何なのか?


まあ しょうもないことだけは確かである・・・








――――――――――――――――――――――――
後書き(退助様サイド)


退助「え〜いつまででも長編を版権に頼っていては
いかんと思い純粋なオリジナル長編を書いてみました。」


銀時「初っ端なんで肝試し?夏だからホラーっぽく
しようとかそういうウッスい魂胆なワケ?」


パラメディック「そこはおいおい判明するでしょ?
ていうか私の持ってきた衣装全部無駄だったじゃない。」


お登勢「当たり前ぇだろが!
仮装パーティしてんじゃないんだよこっちは!」



メイ・リン「あーあ、もう少し時間があれば
青龍や朱雀の衣装も出来たのにな・・・」


オタコン「中国の四神を擬人化するつもりだったの?」


銀時「つかバ管理人がやたらひ○らしう○ねこネタを
引っ張ってんのは知ってたけどよぉ、ついに
テメェもそっちに傾きやがったか」


退助「いやーだってアレも言っちゃえばホラーだし
・・・管理人の脳内であの娘も固定かかってるし」


スネーク「そんな内輪ネタはどうでもいいんだ。
それより、久しぶりの登場なのに俺の扱い悪すぎだろ!」


ヴィナス「それくらいでいいのよスネークは。」


テリコ「そうよ、ジャックの方が華あるし。」


エヴァ「あ、あなた達・・・容赦ないわね?」


退助「カワイソすぐるからそれ以上言わんといて
ダンボールに篭っちゃうから、あの人。


神楽「それよりなによりも声を大にして言いたいネ
・・・リア充消滅しろぉぉぉぉ!!


新八「神楽ちゃんんんん!鉈持ってどこ行く気!?」


退助「新たな惨劇フラグ!?つーか知らず知らず
メリルとジョニーも同ポジションにしちゃったよ・・・」


カズ「チョコバナナについては、色々ググれば出てくる・・・はず。」


銀時「マジで何の話だよそれ?」