乙姫は達の一部始終を見ていた。
私は乙姫の隣で、縄で縛られていて
お妙さんはサメのいる池の上に宙吊りになっている。
「地球を救う最後の希望があのような者達とは
聞いて呆れるわ。まとめて葬り去ってやる。」
「達はあなたが思っているほど弱くはないわ!!」
「心配せずともスグにそなたらの後を追わせてやるわ。
一足先にあの世へいくがいい 余を怒らせた罰じゃ。」
池のサメが餌を欲しがる鯉のようにお妙さんを睨んでいる。
あれは一番凶暴なホオジロザメ・・・・・
あんな所に落とされたら・・・・!
「・・・・殺したかったら殺すがいいわ。」
「お妙さん!?」
無言のまま睨みつける乙姫の目を
「気に食わない者を殺して、自分より美しい者を
老人にして・・・そんな事したってあなたに
永遠の美しさなんて手に入らないわ。
例えあなたが永遠の若さを手に入れようと、例え
あなたがどんなに綺麗な着物で飾ろうと
・・・私は胸を張って言ってあげる。」
真っ直ぐに見据え、お妙さんは強く宣言した。
「あなたは醜い、ホント笑っちゃう位・・・
ぶさいくな魂。」
怒り狂った乙姫がお妙さんの顔を力強く掴む。
「まだ言うか小娘ぇぇぇ!!お前に何が分かる!!
若くして美しいお前に何が分かる!!」
「やめなさいよ乙姫!!」
「大人しくしていろ!!」
飛びかかろうとした私の首を、隣にいた兵士が
掴んで壁に叩きつけた。
「何千年の時を一人老いさらばえながら生きねばならぬ
女の気持ちが・・・一人醜く腐っていきながら
それでもなお死ねぬ余の気持ちが・・・!!」
「歳をとるのは・・・あなただけじゃないわよ。
どんなキレイな人だってしわだらけになって
最後は死んでいくの。」
「そうよ!それでも・・・姿や形が変わっても・・・
変わらない何かがあると思いたいじゃない!」
「そう・・・この身が滅んでもどれだけ年月が経っても
滅ばないものがあるって信じたいじゃない。
私たちはしわだらけになったってあなたには負けない。
本当に美しいものが何か知っているから。」
乙姫が、お妙さんから手を離す
「本当に美しいものは滅びぬと・・・
面白い。ならば見せてみよぉぉぉぉぉぉ!!」
上げた手を合図に 縄が切られ
お妙さんが池へと落とされる。
「お前達の言う美しさというものを!!
私とお前達・・・勝った方が真に美しきものだ!!」
「お妙さぁぁぁぁぁん!!」
お妙さんは覚悟を決めたのか、目を瞑ったまま
池に落ちていった。
すぐに辺りのサメが反応を示し
お妙さんが落ちた所へピラニアのように喰らいついていく
「そ・・・・そんな・・・・・・」
第八話 花を散らせるのは女の子の特権
サメの姿が消え、群がっていた場所から
じわりと血が浮き出てくる
涙を流しながら 私はその血を眺める事しか出来ない。
「もうそろそろかの・・・・後数分したら引き上げい。」
「・・・・・・・・・ひどい・・・・・・・・」
「分かったか?お前も私に逆らうと
こうな「ひどすぎるわ!!何が美しい者が勝つよ!!
こんなの出来レースじゃないの!!!」
「美しいではないか・・・引きあがった姿は
さぞや美しい血の滴る真っ白な骨になっておろう」
せせら笑う乙姫が、許せなかった
「・・・・・この豚野郎・・・・・・・」
「なんじゃと!?もういっぺん申してみろ!!」
「豚野郎って言ったのよ!アンタは乙姫でも
ましてや女でもない!!感情が欠落したただの豚よ!!」
「ええい!!貴様まで余を愚弄するか!!!」
乙姫が激怒し、私の首を両手で掴んだ。
「グ!?」
「余を豚と侮辱した罪は重いぞ!!
・・・お前は苦しみながら死んでいけ!!
その後にサメの餌にしてくれるわ!!!」
掴んだ両手に力がこもり、首が絞められていく
「ア・・・・・・ガァ・・・・ア・・・・・」
(息が・・・・続か・・・・・・・もう・・・・・・)
大粒の涙を流して解こうと抵抗するけれど
それも空しく、だんだん眼がかすんできた。
・・・・ごめんなさい・・・・・・私・・・・
生きて逢えない・・・・もう・・・
「そろそろ頃合いか・・・・見てみろ
これが美しい者の・・・・・!?」
そこで乙姫の言葉が途切れた
かすんだ視界で、私も必死に引きあがったそれを見て
乙姫同様 驚きを露わにした。
引きあがったのは骨ではなく・・・・尾びれを
縛られた血塗れのサメ。
「バ・・・バカな!?何!?」
「え・・・・・・・・・?」
間を置かず水しぶきを上げて飛び出してきたのは
お妙さんと神楽ちゃん、九兵衛さんだった。
「おおおおおおおおお!!!」
彼女達がそのまま乙姫の所に突っ込んだので
その拍子に、私は首を絞める手から解放される。
「ヒイィィィィ!!」
「クッ!?ゲホッ・・・ゲホッ・・・・!」
「ちゃん!無事!?」
「お・・・・・お妙さん・・・・・
生きてて・・・・・!」
「きっ・・・貴様らぁぁ!何故ここに・・・・!?
・・・・・水が!?」
池の底には大穴が開き、そこから水が流れ出ていた
「バ・・・バカなぁぁぁ!?
下の階層から天井を破壊しただと!?」
「さん!!これを!!」
縄を断ち切り、九兵衛さんが投げ渡したのは
拳銃『グロッグ18C』。
「さんから預かった代物だ!
それがあれば連射が出来るとか言っていたが・・・」
「が・・・これを・・・。よし!」
「何をモタモタしている!者共であえぇぇぇぇ!!」
集まった兵士達が突っ込んできて攻撃を仕掛けるけれど
携えていた三叉の槍を使い、九兵衛さんが
隙のない動きで敵を蹴散らしていく
「早すぎて捕らえられん!?どうすれば・・・・ん?」
銃を構える亀達の真っ只中に
さっきのサメが叩き込まれた。
『ぎゃあぁぁぁ!!』
「キャッホぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「サメの上だぁぁぁ!!」
「サメごと撃ち殺せ!!」
サメごと銃撃を浴びせ、神楽ちゃんを撃とうとするけど
彼女は上に昇って避け 縄を掴むと
「ふんぬぬぬぬぬぬぬぬ!!」
壁を横に走って助走をつけ
「おおおおりゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その場を走り回るようにして敵を一掃した。
「くそ!!ならこの女を捕らえて」
私の所にも敵が迫ってくるけれど、咄嗟に
敵の武器を撃って 弾き飛ばす。
「女だからって・・・・・・なめないでよね!!」
構えたグロッグ18Cの引き金を引いて
マシンガンのように連射した。
私達が戦っている間 乙姫がこの場所から
逃げ出そうと慌てふためいている。
「何をモタモタしておる!!
賊だ!!早く始末ぜい!!」
「「ハッ!!」」
二人の兵士が階段を下りて
すぐに殴る音と銃声が響き、乙姫の足元へ
吹っ飛ばされていく。
『ぐげふっ!?』
銃を手にした私と拳を上げたお妙さんが
乙姫へと歩み寄る
「言ったでしょう?私達はどんなになろうと
あなたには負けないって。」
「・・・・みっ・・・認めぬぞ!!この世で
最も美しいのは余だ!!この戦い勝つのは余じゃ!!」
「もう負けてるわよ!!私達を敵に回した時からね!!」
「やかましい!!余より美しい者など認めぬ!!
若いだけの小娘共が!
その顔、醜く晴れ上がらせてくれるわ!!」
先制攻撃として乙姫がお妙さんと私の顔を
力一杯往復ビンタする
でも・・・・それは裏目に出るわ
殴られている間、私達は後ろに花を散らせていた。
「美しいぃぃぃぃ!!バ・・バカな!?
殴られながらにしてこの美しさはさながら
一輪の花弁が散る際の刹那の美!!?」
「フン、そんなビンタでブサイクに出来ると思って?
今度は私の番よ!!」
そう言ってお妙さんは乙姫の顔面に拳を・・・・・
「ぐほぉぉぉ!!」
「ちょっとお妙さん!!いくらなんでもグーで殴ったら
・・・・って聞いてないし!!
しかも的確にブサイクになる点を突いてるし!?」
けれど乙姫も反撃とばかりにお妙さんに鼻フックを
・・・私は思わず目をそらした。
流石のお妙さんも鼻フックには・・・・と
思ってたのは今だけだった。
なぜなら後ろにナオコが・・・・って何でナオコ!?
鼻がデカイから!?でもこれは効き目あるかも・・・・
幾分マシに見えてしまう・・・・
「次は私の番よ!!」
フックの構えをするお妙さんに対し、乙姫は
何を思ったのか後ろにシンジを出してきた。
お妙さんは即座に拳でシンジを殴って
・・・・って何でシンジ!?
シンジ何も悪いことしてないでしょ!!
そして間髪入れずに足での鼻フックが炸裂する・・・
ああもうとても美しい戦いとは思えない・・・・
「あなたの負けよ乙姫!!諦めて手を離しなさい!!
みんなを!世界を元に戻すのよ!!」
「そうよ!こんな事しても何も変わらない事は
あなたも分かってるはずよ!!」
「だ・・・だまれぇぇぇぇ!!余を誰だと思っておる!!
竜宮が主、乙姫なるぞ!!
乙姫はこの世で最も美しい存在なのだ!!
美しくあらねばならんのだ!!」
その必死な様子を見るうち 私はある事に気が付いた。
「・・・・乙姫、愛する人がいたわね・・・
それも大分昔に・・・・」
「ちゃん!?何でそんな事・・・・」
「お妙さん、鼻声になってます・・・・
そこまで美しさに執着するのは
誰かに見て欲しいためなんでしょ?」
乙姫は鼻声のまま 私へ視線を向ける
「良く分かったな・・・なら教えてやろうぞ!」
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後書き(退助様サイド)
退助「女だらけの戦いが勃発し 盛り上がってまいりました
ちなみにグロッグ18Cはマシンガンと同じでオート連射が
可能なので火力は拳銃の中でも高い方です。」
妙「ていうかあなた、ちゃんに何て事させてるの?」
神楽「酷すぎるアル!!
首を絞めて窒息死させようとしてるなんて!!」
九兵衛「少しやりすぎではないのか?」
退助「ちょ、そんな怖いオーラ出さないでよホント
かわいい顔が台無しだよ?」
三人「うるさぁぁぁぁぁい!!」
退助「おっと紙一重!!!ちょっと待ってよ!!
盛り上がりを見せるためにはちょっとバイオレンスに
する方がいいんだって!!
ここの管理人みたく指の爪全部に針差し込むとか
ひどくはしてないでしょ!?」
メリル・テリコ・ヴィナス「関係ないわぁぁぁぁ!!!」
退助「ちょっと!!何でこれに出ない奴らがここに・・・
ってぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」