捕まえた亀に俺達が取調べを始めると


奴は先程とは打って変わり、土戸座で謝ってきた。





「住所は?」


「あのぉ・・すいません、家族に言うのだけは
勘弁してもらえないスか もうすぐ嫁さん産卵なんですよ。
デリケートな時期なんです。」


「そりゃ泣きながら卵産むことになるね。」


「亀って元々産卵する時に涙流さなかった?」


「サ、サニーちゃん、ちょっとカキ氷買いに行く?」


「う・・・うん・・・」





サニーには生々しすぎて教えられんからな・・・
ナイスフォロー





「いやホント、マジすいませんって!
もうホントやらないんで!ホント昆布に誓います!


「何その誓い方?亀の世界で流行ってんの?」


「こんな事でもしお腹の卵に何かあったら
・・・・『昆布の川流れ』っすわ!」


「何それことわざ?全部昆布とからめるの?」


「もぉ〜!昆布があったら食べたい!」


「穴があったら入りたい的なアレですか?」


「酢昆布ならアルよ?」


「あ、すいません。」





何なんだよこのやり取りは・・・・・





「あ、銀さん 所持品に免許あります。
船舶免許ですね。」


「亀なら泳げよ・・・」


「えー、住所は竜宮城三丁目2の5の3
メゾンコンブ305号室・・・」





竜宮城?聞いた事無いぞそんな城・・・


訝しがる俺とは逆に、二人はメッチャ食いついていた





「竜宮城にって!竜宮城に住んでんの!?」


「あ・・・ハイ、実は俺
竜宮城の案内人やってるんスけど・・・」


マジでかぁぁぁ!!
え?あんの?竜宮城マジであんの!?」


「え?ありますけど?普通に。」







二人の表情が その一言で固まった。







「・・・なぁ銀さん、竜宮城って何だ?」


「何だよ、そんなもんも知らねぇのかよ?」


〜!カキ氷買ってきたよ!」


「いい所に来た、さん聞いてください!
竜宮城が実在してたんですよ!!」


「「竜宮城?」」





事情を知らないとサニーが 口を揃えて言う。


・・・だからホントに何なんだよ竜宮城って?











第二話 伝承も案外事実に近かったりする











罪を帳消しにする代わり、俺達は亀にその
竜宮城とやらに連れてってもらうため


・・・・・オンボロ船で大海を漕ぎ出していた。





ビキニじゃ流石に風当たりが強いからか
はカッターシャツのような服を上から羽織っている。







「むっかしーむっかしー浦島は〜
盗撮した亀を捕まえて〜、竜宮城に行ってみれば〜」



「やめてくんないスか・・・その歌やめてくんないスか
・・・・伝承されたらヤバイんで。」


キャッホー!!竜宮城で夏休みアル!!」


「いや〜、まさか竜宮城が実在してたなんて
じゃあ浦島太郎もホントにいたんですか?」


「ええ、僕は知らないスけど初代の亀が連れてきた
最初のお客さんが浦島さんとかで・・・
以来僕らはお客さんのことは皆『浦島さん』と呼ぶんス。」





うん?浦島・・・何処かで聞いたような・・・・・







「浦島って・・・宇宙に行ったら地球と過ごす時の流れが
遅くなる現象のウラシマ効果のこと?」







サニーの呟きに、俺達は同時に納得した。





「そうか!」


「ウラシマはそこから来てるのね!」







テンションの上がった声で新八君は言う







「聞きました銀さん!さん!僕ら浦島さんだって!
スゴクないですか、歴史に名を刻みましたよ!!」



「日本の歴史にあったとはな・・・知らなかった。」


「どーでもいいけどさっきからお客さんって
まさか金取るつもりじゃねーだろうな?」


滅相もないっス!!竜宮城は確かに普段は選ばれた
セレブのみが訪れる事が出来る桃源郷、どれだけ大枚を
はたこうと入る事の出来ない海の聖地です!」


「その時点で歴史に名を刻めなくね?」





俺のツッコミを無視し、亀は握りこぶしのまま続ける





「それに、こう見えて亀は義理を通す仁義の生物。
寄せては返す波が如く受けた恩はキッチリ返すのが海の掟。」


「こう見えてってお前みたいな亀いねーよ。」


「大体から恩じゃなくて仇を恩で返してるからなこれ。」


「皆さんには今回は特別・・・ドリンク飲み放題!
サービス券を「「「タダにしろよ!!」」」





言いながら亀の顔面に神楽は蹴り、銀さんは拳
俺はモシン・ナガンの柄をぶつけた。







「分かりました、今回は特別・・・
ポイントカードが2倍付きます「「「タダにしろよ!!」」」





顔面への攻撃が繰り返される







「分かりました!!ローションつけます!!」


「「「何の店だよ!!」」」





顔面への攻撃が(ry







「ローションって何?」


「サ、サニーちゃん・・・
そんなこと知らなくていいわよ・・・・ね?」


「う、うん・・・・」







どうにかうやむやに出来たが、好奇心ってのは
恐ろしいな・・・・・







「それはそうと、いつになったら竜宮城に着くんだ?
かれこれ2時間は海漂ってるぞ。」


「お前船舶免許持ってんだろ?
もっとブワーっといける船持ってねーのかよ。」


「以前イルカと人身事故起こして今裁判中なんスよ。」


「「あんた前科何犯!?」」







全く・・・話を聞いた所、竜宮城は海底にあるらしいが・・・





こんな船で海底はおろか竜宮城の真上にも
行けるかどうかも怪しいんじゃないか?







「オイオイ勘弁してくれよぉ
これじゃあ玉手箱開ける前にじーさんになっちまうぜ。」





銀さんがぼやきつつ水平線を眺めていると


視界を遮るかのようにクルーザーが近づいてきた。





「オイなんだあのクルーザー!!」


「あ・・・・あれは・・・・!」





甲板には、お妙さんと九兵衛さんが乗っている。





「姉上!九兵衛さん!!」


「あら〜新ちゃん、どうしたのこんな海の真ん中で?」


「あ、姉上たちこそどうしたんですかそれ・・・
今日は九兵衛さんとショッピングのはずじゃ・・・」


「お妙ちゃん、九ちゃん。」





彼女等の後ろから、カジキマグロを片手で持っている
亀・・・・のようなよく分からん人が現れた。





「いいカジキマグロが釣れた、竜宮への道すがら捌こうか。」


「な、何だぁあの亀はぁぁぁぁ!!」


超かっけぇぇぇ!!黒光りしてるアルヨ!!」


「つーかアレ亀なの?」


「カジキ釣ってるよ!胸毛生えてるよ!!
あ、姉上ぇぇ、まさか姉上達も・・・・」


「実は彼の娘が悪い男にひっかかっている所を偶然助けてな
いいと言っているのに竜宮城に招待すると聞かんのだ。」







淡々と九兵衛が説明をしてくれた。





なるほどな・・・・彼女達ならそうするだろう







亀が義理堅いってのは嘘じゃないらしい







「そろそろ出るよ、竜宮城この時期混むから急がないと。」


「ああ、ハイ。」





亀の言葉に二人が頷く。


あれ?今この時期 竜宮城混むって言ってなかったか?







じゃあ、新ちゃんみんな!何をしてるのか知らないけれど
危ないからそろそろ陸に戻るのよ!」





2人を乗せたクルーザーはあっという間に
速度を上げて、俺達の前から去っていった。







「ちょ、ちょっと待ってぇぇ!!
姉上ぇぇ!!僕らも乗せてぇぇぇ!!」



「姉御ぉぉぉ!!」







瞬間 俺と銀さんはこっちの亀へと詰め寄る







「オイイィィィ!どういうことだぁぁ!!
何で亀が複数存在してんだ!!
そう簡単に行けないんじゃなかったのかよ!!」



「何だあの亀は!!何なんだこの差は!!」


「銀さん言ってる場合じゃないです!!
竜宮城混むって言ってましたよ!!急がないと!!」


「くっそだらぁぁぁぁ!!負けてたまるかぁぁぁ!!
俺達の夏休みぃぃ!!」



「急ぎたい気持ちは分かるがサニーが乗ってるんだぞ!
もうちょっと安全に」





言葉半ばでいきなり波がうねり、海が荒れ狂う。





投げ出されないようしがみつく俺達の側に現れたのは
・・・・・・・戦艦!?





「なっ、なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!!」


「ちょっと待て!!
何でアイオワ級の戦艦がこんな所にあんだよ!!」






見上げると、人影が見えて・・・・・





「あ・・・あれは、マダオだぁぁぁ!!


「オイなんだあの亀ぇぇ!!
絶対誰もいじめられねーよ!!あんな亀!!」








長谷川さんと、隣にいかつい顔をした・・・・
亀?みたいなものが現れた。







「よぉ銀さん、俺ガケから身を投げようとしてたらな
この亀に救われて 今竜宮城にいく所なんだ。」


「助けるどころか助けられてるんですけどあの人!!」


「長谷川さん、いいスガシガオが手に入った。
竜宮への道すがら捌くか。」


スガシガオって何だよ!!どう捌くんだよ!!」





そこにアイオワ級の乗組員が、亀の元へと寄っていく。







「艦長ぉ!!上空に未確認飛行体が!」


「何!?」







轟音が響き 俺達が上を仰ぎ見ると
上空には四肢の部分から火を噴く巨大な甲羅が。





「バッ、バカな・・・あれはまさか・・・・巨大な亀っ」





火の出ていない部分から首が出てくると
それは亀ではなく、スッポンのものだった。







「・・・・あれ・・・スッポンですね・・・」


「スッポンだな・・・」


「微妙に間違ってんですけど・・・」


「いや待て、乗り物は俺達だってボートだぜ
案内人は・・・・」







乗っているのは桂さんと、犬・猿・キジを連れた男







「いや、間違ってんですけど・・・・・
昔話間違ってんですけど・・・」


「銀時ぃ!!!こんな所で会うとは奇遇だなぁ!
俺はキビ団子をいただいた礼にこれから天竺に向かう所でな!」



「「何処の国の昔話ぃぃぃ!!!」」





シンクロツッコミが炸裂した次の瞬間


アイオワ級からの砲撃がスッポンに直撃した。





撃てぇぇ!竜宮城へ行くのは長谷川さんだぁぁ!!
生きる希望をなくしたマダオに光を与えてやるんだぁぁ!!」


「誰が竜宮など行くかぁぁぁ!!我等が目指すのは天竺だ!!」


「ねーよんなもん!!」







戦艦vsスッポンの状態に、何故か
先程のクルーザーが舞い戻ってくる。







「てめーらぁぁ!!『海の帝王』と恐れられる
俺の前で暴れるたぁいい度胸だ!!
全員たっちゃん漬けの重しにしてやらぁ!!」



「ちょっと待って!」







自身の身とサニーに危険を感じた俺達は急いで
その場から逃げるようボートを漕ぎ始めた。







「あわわわわわわわ・・・・・・!」


「大丈夫だからねサニーちゃん、大丈夫だから・・・・」





怯えるサニーをは庇うように慰める。







「なんで・・・・竜宮城に・・・来たのに・・・・
こんな眼に・・・・」





力一杯ボートを漕ぐも、飛んできた流れ弾が運悪く
当たり ボートが爆散してしまった。





「あわなきゃいけねぇんだぁぁぁぁ!!!」







全員が海に投げ出され もがきながらも俺は
必死に海中でサニーの姿を探す。





彼女は泳げなかったはずだ!早く探さないと・・・・







今にも息が切れそうなサニーを何とか見つける


まずい、早く助けないと・・・・・!





近づいて手を掴もうとしたけれど、直前で
砲撃が海を荒らし その手は遠くにすり抜けて行く。







力尽きてしまったのか、サニーが沈んでいくのを


見る事しか出来ないまま・・・息が切れ
俺もそのまま気を失った。













サニーは薄れていく意識の中、自分の勝手で
江戸に来てしまった事を後悔していた。





(ジャック・・・ハル兄さん・・・・ わがまま言ってごめんなさい・・・・)







彼女が気を失う直前・・・・赤い光を見た。







(何だろあれ・・・・もう何でもいいや・・・・・
お母さん・・・・・)







意識を無くしたサニーは赤い光を発する物体に食べられ





その物体は、鳴き声を上げながら海上へと浮き上がる。







・・・それは生き物などではなく


そこに"あるはずのない"ものだった。








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後書き(退助様サイド)


退助「さあ竜宮城に行くって言うのに大変な目に。」


銀時「合いすぎだろうがぁぁ!!」


新八「ていうか謎の物体に
食べられちゃったサニーちゃんはどうなるの!?」


神楽「か弱い乙女を殺しやがったな!!
八つ裂きにしてやるアル!!」


退助「待て待て待て!!こんな所で死なせたら
オリジナルできないから!!ちゃんと生きてるから!!」


武市「ふむふむ、それなら許すとしますか・・・」


退助「2話に続いてまたあんたかロリコン。」


武市「ロリコンじゃありません。フェメネィストでっす。」


退助「言い方変えただけだろそれ!キモいんだよ!」