イラスの橋を渡ったは、巡回する兵士の目を
掻い潜りながら火口内基地へと潜入を果たす。





内部の搬入口へ進むと数匹のラバの隣に


いくつかのトラックが並んでいた。





カズ、基地内部に潜入した
・・・・・・トラックがたくさん並んでいる。」


『沿岸から運ばれてきた核弾頭の目標地点がそこなら
さっきのトラックもそこに停まっているはずだ。』


トラックのナンバープレートは覚えているか?』





桂の問いに、彼は首を緩く横に振る





「・・・いや、正直あまり覚えていない。
視認したのは一瞬だし、妙な乱入もあったからな。」


『とりあえず手当たり次第探せばいいんじゃねぇの?』


『銀さん、時間がないんですよ。そんな呑気に・・・』


「いや・・・時間がないからこそ手当たり次第に
探した方がいい事もある。とにかく見つけ次第連絡する





無線を切って、はトラックへと近づいていく







まず「140.96」のプレートのトラックを覗くと


メイ・リンのポスターが貼られていた。





「・・・・・何でメイ・リンのポスターがこんな所に?」


気になる部分があったが、今は核弾頭が最優先だ。





そこを無視して次に「777」のプレートのトラックを覗く





中には・・・カジノ用のコインが積まれていた。

恐らくここの兵士達の余興のためにあるものだろう





「こいつは違う。」





次にプレートが「00000」のトラックだが・・・


中に詰まれていたのは





「太陽ぉぉぉおお!!」


聞き覚えのあるダミ声で叫ぶ謎の物体。





「・・・・・なんだよこれ?」





目を点にしつつ、彼は次に品川ナンバーの
「57577」のトラックを覗く


そこには・・・冷凍保存されたマグロがずらり。





魚河岸?
てゆうか何で品川ナンバーのトラックがこんな所にあるんだ??」


ツッコミ所はたくさんあったが、一刻も早く
核弾頭を見つけるのが先決と考えて割り切り


「64779」のトラックを覗くと・・・・





明らかに他のトラックとは違う様子に
アタリを引き当てたと気づいた。











第8話 人の数だけ思考や思想があり
…まぁぶっちゃけ才能の無駄遣いもある












このトラックだ 排気管もまだ温かい。
・・・だが積み荷は運び出された後だ。」





早速カズへと連絡を終えて、彼は急いで基地内部へと進んでゆく





・・・足早に通路を駆けていると


すぐ側の階段の上から、言い争う声が聞こえてきた。





「・・・待ってくれ!話が違う!」


「もういい、変更は決定事項だ。」


「撃たせないための抑止力を創る。そういう約束だったろ!」





は階段の物陰に身を潜め、二人の話に耳を傾ける。





「そうだ、その考え方には異論はない。
私達の目標は『完全なる抑止力』の実現にある。」


「だから僕は、開発に協力したんだ。」


「だが、『完全なる抑止力』を誕生させるためには
私達の力を世界に向けて証明する必要があるのだ。

核抑止力を実現するためには『核抑止の三原則』が必要だ。」





語りかける スキンヘッド男の片方が手を差し出して





「まず『核を持っていること』。
次に『核を自分からは絶対に撃たないこと』。


そして最も重要なのは・・・
『核を撃たれたら、絶対に核を撃ち返す』ことだ。


車椅子に座るもう一人へ、指を出しながら
『核抑止の三原則』を説明する。





「この3つを完全に実行できることを証明しなければ
私達の新しい抑止力が世界に受け入れられたことにはならない。


だからどうしても実際に核を撃てることを
見せてやる必要があるのだ。」


「決して・・・
核が使われないのが抑止力じゃないのか・・・!」


「そうだ、そのために私達が人類最後の核を撃つのだ!


「僕の創造物に、そんな事はさせない!」


車椅子の男が声を荒げたその直後


スキンヘッドの男が車椅子へ手をかけ・・・押し始める。





「創造物?・・・そもそもアレは
お前のアイデアではない。盗作だろうが?」


「・・・盗作?違う、元はと言えば二足歩行のアイデアは
あんたが東側から盗んできたんじゃないのか!?」


博士、いいか!私の言う通りに大人しくしてるんだ。
盗作の件も黙っていればいい事だ。」





語る合間にも、スキンヘッドの手によって
車椅子は徐々に階段へ向かい押し出されていく。





「これが成功すればお前はこの学会を大手を振って歩くことができる。
科学と、安全保障の世界で人類の歴史に名を残す事になる!


「そんなのは御免だ!」


「博士!実際に撃てる事を証明出来なければ
このピースウォーカーは抑止力にはならない。」


「・・・僕を利用したんだな・・・!」


「・・・お互い様だ。私は再び本国での長官の座を
おまえは学会を閑歩できる“脚”を手に入れる。






階段の端ギリギリでとどめられ、そう告げるスキンヘッドへ


車椅子の男は・・・震える声でこう言った。





「・・・許さない・・・!」


「残念だ。では、貴様の「脚」は貰っていく!





その一言を合図に 押し出された車椅子は
男と共に階段を転げ落ちていく。





「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!


「フッフッフッフ・・・」





床へと転がった相手を見下ろし嘲笑う男の後頭部には


コヨーテの刺青が彫られていた。





「・・・博士、平和は歩いては来ない。
お互い、歩み寄るしかないのだ。





ピースサインを見えるように差し出すと


「勝利のVサイン。」





そう言い残して、スキンヘッドは何処かへと立ち去っていく







相手が完全にいなくなったのを見計らって
は車椅子の側でうめく男へと駆け寄った。





「おい、大丈夫か?」


「やめてくれ!」


おい!核弾頭は何処にあるんだ!」


「アイツは核を使う!核を撃つ気なんだ!」





ヘリコプターのローター音を耳にして





「・・・危険だからここにいろ、何かあれば
無線で俺の仲間に連絡を取れ いいな!」





手短に無線の番号を知らせて、
男をその場に置いたままヘリポートへと向かっていく。









辿り着いたヘリポートの上空では


アマンダ達を襲撃した飛行物体が、布を被せられた
"蝶が描かれた球体とREXに似た脚を持つ兵器"
運び去ろうとしている所だった。





「遅かったか・・・!」


『潰せ!』





先程のスキンヘッド男の声が聞こえて


ヘリポートの上から何かが落ちてくる。





咄嗟に避けては、落ちてきたものを確認する


・・・それは 見覚えのある兵器によく似ていた。





「な、何でシャゴホッドがこんな所に!?





しかしよく見ればシャゴホッドにあった核ミサイル発射台はなく
頭部には、代わりのように黒い大筒が添え付けられている。





唐突に、無線から聞きなれない声が響いた


『まずい!気をつけろ!そいつは無人兵器だ!』


「無人兵器だって!?」


『そいつはAI兵器 "ピューパ"だ!
スピードに気をつけろ!』






相手に問いかけようとするけれども


ピューパがヘリポート斜面を走り、マシンガンで
攻撃を仕掛けてくるのでそれどころでは無くなってしまう。





避けながらRPG−2でキャタピラ部分を狙い撃つ


しかし、装甲がかなり頑丈に作ってあるのか
砲撃に対してビクともしない。





『放電開始』





無機質な声音でAI兵器がしゃべり、頭部のユニットに
電気を溜めて電撃を放つ。


間一髪で回避しながらも攻撃を仕掛けるが

大したダメージは入らないようだ。





『ブースター点火』


ピューパがブースターを点火し、こちらに突っ込んでくる。





『突進は匍匐で回避できるぞ!』


が、無線でそれを聞いては身を伏せ

ギリギリのところで突進をやり過ごした。





突進した勢いでピューパはそのまま搬入口へ入り、姿を消す





『気をつけて、ピューパが出てくる時には予兆があるはずだ』


「ああ・・・で、アンタさっきの博士だろ?
危険だからあそこにいろと言った筈だぞ!」


『気になって後を追ってきたんだ・・・幸いあの場所から
司令塔まではすぐだから、ここからも見えるだろ?』


「・・・あのガラス張りのあたりか」





チラリ、と彼が視線を走らせた次の瞬間





『ラーンランラー、ラララー、ラララー、
ラーンランラー、ランラーラララー』



あの兵器と同じ歌声が響いてきて





『跳躍準備』





上部に設置されていた搬出口からピューパが降ってきた。


落下してきた兵器を避ければ、ピューパのハッチが開き

円盤状の機械が辺りにばら撒かれる。





『その避雷針を壊せ!電撃を誘導される!』


「何!?」





はすぐに自分の周囲に配置された避雷針を破壊し







『電撃出力最大』





ユニットに再び電撃を蓄積したピューパから





『放電開始』


避雷針を通して・・・全体に雷が迸る。





「危ない所だった・・・」





破壊に間に合ったため、自らの周辺まで電撃は
届かなかったものの


相変わらず攻撃を繰り返しても手ごたえが無く


彼は、司令塔にいる博士に向かって叫ぶ


「博士!こいつの弱点はないのか!?」


『AIポッドに攻撃するんだ!あの黒い筒を狙え!





助言を受けてはAIポッドに狙いを定め、LAWを放つ。





着弾と同時にピューパが怯んだのを見て取り


間髪入れずにもう一度攻撃を繰り出せば
巨大な兵器はポッドをガクリと下げて動きを止めた。





『オラハシンジマッタダー、オラハシンジマッタダー
テンゴクニイッタダー。』



「って、何で帰っ てきたヨッパライ!?


版権的にどうなんだ色々と!と思わず場違いながらも

閲覧者(及びプレーヤー)の心境を彼は脳内で叫ぶ。





『今だ!AIポッドに乗り込め!』


「どうやって!?」


ハッチを壊せ!そこから入れる!』





すぐにAIポッドのハッチを見つけ、
そこを攻撃してロックを解除し 内部に乗り込んだ。





円形となった内部の中央に記憶板があり

円柱状のそこからコードが無数に伸びている





ポッドが射出される前にAIの記憶板を抜き取るんだ!
黒い記憶板はロックされてる。アイコンが出ている記憶板を狙え』


「わかった。」





博士の無線に答え返し、ロックが外れた記憶板を探し
順繰りに抜き取っていく。





「先程の攻撃で破損した記憶板も、いくつかあるな・・・」







ある程度の記憶板を抜いていくと それほど経たず
ピューパ自身が爆発を始めだす。


爆発に巻き込まれない内にはAIポッド内から脱出し





そのすぐ後、ポットだけが壊れゆくピューパから外れて
何処かへと飛び去っていった・・・









「何とか破壊出来たが・・・一体あれは・・・」


「あれは無人兵器の試作品だ。僕が造ったんだ。」





声がする方へ彼が顔を向ければ、先程の博士が
階段を車椅子で降りてくるのが見えた。





「スゴイ車椅子だな・・・で、アンタは?」


「少し手を加えただけさ、ここで雇われている。
いや、雇われていた・・・かな?ヒューイと呼んでくれ」





メガネをかけたその面持ちに、口調に雰囲気、科学者気質





(オタコンと瓜二つだな・・・)


が内心そう感じたのも無理からぬことであろう。





君は誰?ここの傭兵とは様子が違うね。」


「俺か?俺は・・・昆虫学者だ。」


「戦う 昆虫学者?」


「蝶々の専門家だ。
そう、オオルリアゲハを捕獲しに・・・」


「オオルリアゲハ?
コスタリカでは見ないな・・・モルフォ蝶では?」


「モ、モルフォ蝶だ!
ワシントン条約が施行されてしまう前に・・・」


「う〜ん、モルフォ蝶は対象になっていないけど?」





焦って咄嗟についた嘘がバレそうになり、彼は
ややしどろもどろになりながら言葉を重ねる。





「え、あ、う〜ん・・・記憶違いだったかな・・・」


「君、大丈夫かい?」


「俺は問題ない・・・まあどっちにしろ蝶には逃げられた。」







気を取り直したの脳裏には、運び出された兵器に
付いていた球体のマークがフラッシュバックしていた。





「あの蝶もあんたが造ったのか?博士。」





問いかけに、ヒューイはメガネを上げて





「正解でもあり・・・不正解でもある。」


あれは何だ?ここで何をやってる?」


「君は・・・単なる昆虫学者じゃなさそうだ。」





小さく笑った後、電子タバコを取り出して
口に含み・・・水蒸気を吐き出すと変わって重々しく呟く。





「核弾頭はあれに搭載された。ついに計画が実行に移る。」


「計画・・・?」


「そう、持ち込まれた熱核弾頭、コスタリカに乱立する各拠点基地
傭兵部隊、無人兵器、ここで行われている研究・・・

全て この計画のためだ。


「詳しく教えてもらえないか?」







沈黙を一拍挟み・・・彼は電子タバコをしまうと答える





「わかった。僕のラボに来てよ。
画面で分かりやすく教えてあげるから。」


「頼む。」





とヒューイは階段を上がって、ラボへと向かう


・・・そこで、コールドマンという一人の男が立てた

恐るべき計画を知ることとなる。









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後書き(退助様サイド)


退助「ようやくこれで第1章が終えられます。
ちなみにトラックのシーンでは監督が中にいるものも」


銀時「仕事しろよ何やってんの監督ぅぅぅ!
つーか長すぎだろこの長編、8話目でやっと中ボスかよ」


神楽「ホントは10話位で中ボスだったアル。」


退助「これでも2話分削ったんだ。いい方だろ。」


桂「それで・・・次回俺達の出番はないのか?」


退助「いや、それは・・・ない・・・かな?」


銀時「ええええぇぇぇぇぇぇ。」


カズ「だから言っただろ、マザーベースに
入り浸りだから出番が少ないって。」