そろそろ頃合、と思った所でカズからの無線が入った。
『ジャック、チコが到着した。』
『ジャック!』
「チコ、着いたか。」
『着いたかじゃねーよ!なんだいこれ!?
「新しい命を俺にくれ」って言いながら、殺す気かよ!?』
がなり立てる声に若干無線を離しながらも は言う。
「お気に召さなかったか?」
『なんだよあの人さらい風船!これじゃコリブリと
変わんねぇじゃねえか!いやらしい!!』
「いい眺めだったろう、チコ。
それとも高いところは駄目か?」
『そうじゃなくて、事前に説明くらいして欲しかった!』
「説明したら、自分から飛んだか?」
『う・・・・・』
チコが言葉に詰まるのも無理はなかった。
余程肝が据わってない限り、普通なら出来るわけも無い
・・・そこで通信の相手がアマンダへと替わる。
『ジャック。あたし達を助けてくれてありがとう。』
「ひとつ進言したいんだが、アマンダ。」
『何?』
「チコをもう子供扱いするな。」
『ええ、そうね・・・
わかってるわ、わかってるつもり・・・』
少し戸惑ったような言葉に、一つ息をついて彼は訊ねる
「アマンダ、脚が治れば戻るんだろう?」
『勿論よ・・・。あたし達にはやることがある。』
「・・・・『あたし達』か・・・
それは、チコの将来を考えた上で言っているんだな?」
『どういう事?
あたし達は父の遺志を継いで革命を成功させる。』
「革命だろうが、何だろうが、銃を手に
ひとたび暴力に訴えればいずれは皆地獄に堕ちる。
・・・・・・その覚悟はあるのか?」
『覚悟ならある。
祖国を捨てるくらいなら、地獄に堕ちた方がいい。』
強い意志を感じさせる声音に、しかし彼は
賛同できず言葉を返そうとして
『いいんじゃねぇの?。』
銀時が通信へ割って入った。
第7話 空の王者はシリーズ内での登竜門
「銀さん?」
『このネェちゃんは手前の手で国取り返そうとガンバってんだ・・・
そいつを、その信念を止める権利なんざ誰にもありゃしねぇんだよ』
『あんたに分かるの?私達の信念が・・・』
『・・・おぉよ、俺も昔はそうだったぜ
・・・色々なくしちまったけどよ。』
どこか遠い目をしている侍を前にして
彼はその件に関してそれ以上、何も言えなくなった
「・・・とにかくアマンダ、チコを弟としてでなく
ひとりの戦士として扱うことだ。」
『ええ、そうね・・・。』
程なくして無線の相手がチコへと代わる。
『ジャック、頼みがあるんだけど・・・』
「何だ?」
『捕まったFSLNがいたら、助けて欲しいんだ。
その・・・』
「しゃべってしまった罪滅ぼしか?」
『それだけじゃない・・・同志なんだ。だから』
「わかった。だが、奴らの積み荷を追うのが先決だ。」
『何でも協力するよ。その辺りでのことで
わからないことがあったら、無線で呼んで。それから・・・
見たことない生き物がいたら知らせてくれよ。』
「見たことない?お前が言っていた"バシリスコ"か?」
返ってきたチコの言葉はワントーン弾んでいた。
『UMAだよ。』
『UMA?この辺りにもいるの?』
『そうだよメガネ。生き残りの恐竜とか、珍しい怪物のことさ。
いつか俺、ハンターになりたいんだ。』
『私と同じアルな!』
「・・・そうか。わかった。」
カズから敵の資材が次の拠点・・・
ターミナルへ向かっている事を聞き
『トンネルの向こうは恐らく奴らの本拠地だ。
トンネルの手前で食い止めないと"槍"は敵の手に落ちる。
何としてもここで阻止するんだ 先を急ごう。』
はイラス東部の山の麓にあるターミナルへと進む。
通信を終了したマザーベースでは、先程チコが話した
UMAの話で持ち切りとなっていた。
「海賊たちの伝承を集めた本を持ってたんだ。
それによると、リオレウスは空の王者とも呼ばれている。」
「リオレウスってどんなんアルか?」
「見た目は翼の生えた竜、ワイバーンだね。」
身を乗り出した神楽やサニー、手の空いているの前で
彼は得意げにそう言ってみせる。
「ワイバーンは確か・・・ウラド公の紋章にも使われていた
二本足のドラゴンだよな。」
「そうだよミラーさん、ドラキュラのモデルにもなった
ウラド公の紋章さ。」
それを耳にして新八は微妙な顔で彼女へ言う
「・・・今の、さんには聞かせられませんよね」
「どうして?」
「あーアイツぁ英雄とかカッコ付けてるクセにドラ」
耳聡く聞きつけたチコへ銀時が答えようとして
に即席CQCを喰らって撃沈していた。
「何であの人攻撃されたんだろ」
「気にしなくていいアル 自業自得ネ」
「そっか・・・でもカッコよかったなぁ〜リオレウス!」
「チコ君、見たことあるの?」
聞かれて彼は自慢げにサニーへと返す。
「ああ!
バシリスコを見た後、空に飛んでいるのを見たんだ!」
瞬間・・・一同を取り巻く空気が硬直する。
「え・・・たしかそれ見たの最近・・・なんだよね?」
「何かあった?」
「あれ・・・?これ、もしかして・・・・」
「の近くに そのモンスターがいるってこと?」
「そうなるな・・・・」
状況が今ひとつ飲み込めないチコを置き去りに
『やばいどころの話じゃないぃぃぃぃ!!!』
全員が、下を向いて同時に叫んだ。
「ちょちょちょちょっと待ってくださいよぉぉ!
これかなりやばいですって!!」
「ヤバイなんてモンじゃねーぞ!ヤバイ通り越して
危機一髪だろこれ!ヒトコロスイッチだよ!!」
「違うネ銀ちゃん!虻蜂取らずアル!」
「どっちも違うし落ち着け!!」
内部の混乱を収拾しつつも、カズはすぐに
諜報ベースへと駆け込んで命令を下した。
「諜報班!ボスの近くに恐ろしい怪物がいる!
すぐに支援態勢に入れ!!」
マザーベースでの騒動など知る由も無いまま
はチコの言っていたコーヒー工場へ到着していた。
警戒しながら貨物列車が置いてある倉庫へと歩を進め
地面を見て、ある事に感づく。
「この足跡みたいなの・・・
これが、チコの言っていた"バシリスコ"か・・・」
動物の足跡にしては巨大すぎる、正確な四角形を見て
目撃談と自らの予想が正しかったと確信し
・・・エンジンがかかる音を耳にする。
反射的にそちらを見た彼は、列車の間に
トラックが通り過ぎるところを目撃し
「積み荷は!?」
が列車の搬入口を開けると
目の前のトラックに一瞬、放射能マークが描かれた
積み荷があったのが見えた。
「核弾頭が!?」
発進していくトラックを急いで追いかけようとしたが
・・・後ろから近づいてくるキャタピラの音に気づき
彼は咄嗟にその場から離れた。
直後、砲撃によって側にあった列車が吹き飛ばされ
ちょうどトンネルを通過したタイミングで
その車体によってトラックの通路が塞がれてしまう。
「戦車部隊か・・・!」
現れた戦車『T−72U』がこちらへ向かってくる
はライフルを持ち直し、戦車部隊を待ち構える。
『主砲発射用意よし!』
戦車の主砲がこちらへと照準を合わせ
『発射―!!』
放たれる直前で彼が回避の態勢に入った・・・次の瞬間
『ぎゃあぁぁぁぁ!!』
空からの火球が戦車部隊を襲い、戦車を破壊した。
「な、何だ突然!?」
と歩兵が同時に急な事態で戸惑う中
空に低い咆哮が轟く。
「グォォォォォォォォォォォォ!」
降りてきたのは・・・赤い鱗をした巨大な翼竜の怪物。
―間違いなくそれは、チコが最近目撃した
"リオレウス"だった。
「な、何だ!?」
「う、撃て撃て!!」
混乱しながらも歩兵がリオレウスを囲んで
手持ちのライフルを撃ちこんでいくが
さし当たって効いている様子が見られない。
翼竜は攻撃してくる兵士達を微動だにしないまま眺めていたが
うっとうしくなってか、後ろの歩兵を尻尾で払い飛ばす。
「うわぁぁぁぁ!!」
「くそっ、化け物め!!」
怯まず歩兵達は攻撃してくるが
「グギャァァァァァ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁ!!」
顎(アギト)を大きく開いて、リオレウスが兵の一人を
噛み付いて 力に任せ振り回し
「た、助けてくれぇぇぇぇ!!」
逃げていく兵に向けて放り投げると
口に火を溜め・・・そこへ向けて火球を放つ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
爆風で全ての兵が吹き飛び、地面へと倒れ伏したのを
見て取ったリオレウスの視線が
いまだ残っている・・・"次の獲物"へ向けられた
「次は俺の番ってか・・・!」
撃ちこんだLAWが翼竜へと着弾するも
先程同様に大して効果は見られなかった。
「くそっ・・・何でこうも化け物に縁があるかな俺は・・・」
相手にするわけにもいかずその場から離脱を図るを
リオレウスが逃がすまいと追ってくる。
「ったく冗談じゃない!」
そこへ無線からの通信が入った。
『ジャック!支援攻撃を開始する!当たるなよ!!』
「お、おい何だ支援攻撃って!?」
訊ねるが返ってきたのは言葉ではなく
背後から迫る翼竜を襲う、空からの砲弾だった。
「グオォォォォォ!?」
相手が驚き怯んでいるのを見て取ると、彼は
手近な建物の中へ逃げ込んで息を潜める。
・・・やがて砲撃が止んで獲物を見失ったリオレウスは
そのまま何処かへと飛び去っていった。
一息ついては無線を開いて連絡を取る。
「荒っぽい支援だがひとまず助かった・・・
それとカズ、何だあの化け物は!?」
『恐らく、チコの言っていたリオレウスだろう。』
「リオレウス?」
『チコが言っていたバシリスコを目撃したのと
同じタイミングで目撃したらしい。』
(先に言っておいてくれそういう事は・・・!)
喉元まで出かかった言葉を何とか押し込み、彼は言う
「あんな化け物がコスタリカにいるなんてな・・・
どうなってんだここの生態系は?」
『温暖化か、あるいはCIAが介入したせいで
壊れたのかもしれんな。』
「まあ、今はそのことはいいだろう。
カズ、積み荷は核弾頭だった。」
『・・・どうする?その先は奴らの本拠地だ。』
「早く追わないと!」
『だが・・・』
「カズ!急がないと手遅れになる!」
真剣な一言に、カズは納得したように答えた。
『わかった・・・
お前にとっては、仕事も危険も関係ないんだな。』
『でもどうやって山に入るんですか?
トンネルはさっき塞がってしまいましたし・・・』
「他にルートはないのか?」
『よし、このあたりの地理に詳しい奴に替わろう。』
通信を代わり、チコはへと語りかける。
『ジャック、山に入るんだね。』
「わかるか?」
『ええと・・・俺がいた収容所、覚えてる?』
「あの村だな。」
『そう、いったん村に戻って北の方に抜けると、
山道と合流する橋がある。渓谷を横断してるんだ。
その橋を使えばたぶん・・・。』
「そうか、わかった。」
『イラスの山腹は、奴らの本拠地に間違いない。
もしかしたら、俺が見た・・・。』
「バシリスコか?」
問いかけに、少しふて腐れたような声が返される。
『・・・やっぱり信じてないんだね。』
「いや、お前が言っていたリオレウスもいた。
それにこれからわかる。」
『そっか・・・あ、そうだ!
リオレウス見たんだろ!?写真は撮れたかい?』
「・・・とてもそんな暇がなくてな。」
残念そうな様子のチコに代わって、再びカズが
辺りの地域について説明をする。
『イラスには複数の火山湖がある。前に
オドゥベル国家企業体制の一環で、これを使った
揚水発電所を建造する計画があったらしい。』
計画自体は中止になったが、湖の下には
ちょっとした穴が開いたままとなっているという。
衛星写真を見ても外に人工物が見当たらない事を踏まえて
考えれば、山の内側を施設に利用している可能性が高いらしい
『単なる爆薬保管庫か、何かの研究施設か・・・』
「しかし そんな場所に核弾頭を運び込んで
連中はどうするつもりだ?」
『、詳しいことはそこに行けば全て分かるはずだ。
時間がないのだろう?急ぐんだ』
「・・・そうだな、わかったよ桂さん。」
頷いて通信を切ると、彼はすぐにイラスの火山へ向かった
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後書き(退助様サイド)
退助「やっと戦車戦ステージまでいけました。」
銀時「いやアイツ今回戦ってねぇだろ一つも
倒したのあの怪物だし。逃げてただけだし」
チコ「いいなぁ〜リオレウスを間近で見れて。」
カズ「いや、そんな悠長な状況じゃなかっただろ?」
新八「ていうか今回の長編容量デカすぎでしょ
一体どれだけあるんですか?」
退助「現時点では何も言えないけど・・・
恐らくOH編を超す可能性も・・・」
神楽「そんなんで大丈夫アルか?
そろそろサーバーの方も容量一杯一杯ネ。」
退助「大丈夫大丈夫、そんときはサーバーの掃除をすれば・・・」
カズ「それ、他の作品捨てろってことか?」
銀時「ていうかそっちじゃ何も操作できねぇだろうが。」
退助「大丈夫大丈夫、いざとなれば
学校で教わった技術を応用して・・・」
新八「ハッキングはダメェェェェェ!!」
狐狗狸「やったらサーバーやメアド変えた上で
お前さんの作品全捨てだろ?常考(黒笑)」
全員『!!?』