「ジャック、アマンダがマザーベースに到着した。」





カズが通信を入れた直後、返ってきたの声は
若干弾んでいるようだった。





『ホントか?』


「今替わる。」


「・・・ジャック。」


『アマンダ、具合はどうだ?』


「生まれて初めてヘリに乗ったけど、おかげで
大嫌いになれそう。」





怪我を負った身でのフルトンは正直きつかったものの


憎まれ口で返したのは、彼女なりの相手への配慮と
意地であった。





「聞いての通り元気だ。アマンダ専用の無線も用意した
必要な時は、彼女にコールするんだ。」


「米拠点と傭兵部隊、それからFSLNのことなら
何だって聞いて。」


『わかった。』


「お願い・・・同志とチコを。


『わかってる。』


「よろしく、VOS(ボス)。」







通信を終えたアマンダへ、新八がおずおずと話しかける。





「足・・・大丈夫ですか?
よかったら僕が診療所までお運びします。」


「ええ、任せるわ。」


「新八君、ついでに彼女の看病もしてやってくれ。
回復したとはいえ、しばらくは安静にして
もらわなくてはいけないからな。」


「分かりました、任せてください。」





ビッと身を引き締めた彼の後ろから、ニタニタと
銀時が茶々を入れる。





「いやー美人が入ってくると雰囲気が違うねぇ〜
新八ィ〜怪我してるからってやらしいことすんなよな?」


「しませんよ銀さんじゃあるまいし!」


「マジ不潔アル、しばらく私に話しかけないで。」


「だからしねーって言ってんだろうがぁぁぁ!!」


漫才のような掛け合いをする三人を眺めるアマンダの側で

カズは相変わらず、呆れたようなため息をつく。





「・・・全く・・・」











第6話 男同士の語り合いは少年が
大人になるのに欠かせない通過点












その頃、はチコが囚われている捕虜収容所へと
森林の合間を縫って進んでいた。





『ジャック、搬送中の核は湿地帯を抜けた。

イラス山岳地帯に到達したようだ。だが、ガイド不在の
現在では追跡は困難だ。』





無線越しで、カズは続けて指示を出す。





『そこで拠点の一つ、捕虜収容所に潜入してくれ。』


「アマンダの弟、チコが無事ならいいが・・・。」


そうだな。ほかにも捕らわれているFSLNがいるかもしれない
彼らをMSFに収容するには、フルトン回収システムを使ってくれ。』


『ジャック、ちょっといい?』


と、突然アマンダが無線を通じて語りかける。





「アマンダ?」


『CIAの連中、村の家をいくつか接収して収容所にしてるの。
そのどこかにチコがいるはず。』


「村の家をか・・・だが、どうやって見分ける?」


『接収された家は、監視用にドアが付け替えられている。
青いドアよ。覗き窓が付いてる そこから中を確かめて。』


「わかった、青いドアだな。」


『物資搬入ルートの最終拠点は近い。頼んだぞ、ジャック







通信を終えて、狙撃手に注意しながら森を抜けると
村らしき集落が見えてきた。





「青いドアの家・・・ここが捕虜収容所か。
ここにチコが・・・」





こうしている間にも、刻一刻とチコの身に
危険が迫っていると考慮して


敵の目を盗んではチコを探し、近い家から覗いていく





「・・・誰もいないか。」





人影が見当たらず次へと向かい 物音がしたので
音を立てずに覗いてみれば・・・







「ゴー・・・ゴー・・・」


誰かが寝ていた 休憩中の兵士なのだろう。





「こいつは違う。」





その隣の家のドアを覗くと、誰かがシャワーを浴びている





(まさか・・・そんなわけないよな・・・)


と思いつつも気になって覗いていると


シャワーを浴びていた人物と眼が合って





「きゃ!?どなた!?」





・・・オカマだったので慌ててその場を離れ
上がりそうになる声を我慢しながら 残りの家を捜索する。







いくつかのハズレを引いて、少し辟易しながらも
根気よく覗いた家の一つに





―チコが壁に寄りかかっていたのを見つけた。





「チコ・・・チコか!


すぐに扉の鍵を壊して中へ入ってきた
チコは、ビクリと身をすくめて訪ねる。





「だ、誰・・・?」


「チコ、俺だ。」


「アンタは・・・あの時のカメラマン?


「そうだ、戦場カメラマン。」


あれ?鳥を撮りに来たんじゃなかったっけ?」





(あ・・・しまった)


と内心焦りながらも、彼は勤めて冷静に言葉を続ける





「戦場で鳥を取るカメラマンだ。」


「それ、もしかしてチェ?ちょっといい?」


「ああ。」





頼まれ、カメラを渡せば

チコがソレを眺めて・・・・・・眼を輝かせた。





「やっぱりチェが使ってたカメラだ!」


「それはやれない これで勘弁してくれ。」


引き換えるようにしてが写真を差し出す。





ん?その写真?」





手に取り、アマンダの写真を眼にしてチコがハッとする





「ああ、そうだ!


「アマンダなら無事だ。」


「ホント?」


「ああ、俺のところで怪我の治療をしている。」


「怪我したの!?」


心配はいらない。脚を折っただけだ。」





その一言を聞いて、チコは安心した顔を浮かべた。





「・・・タバコある?」


「これか?」





言われて取り出した葉巻を奪い取ったチコが





「葉巻か・・・」





口に咥え、マッチを使って葉巻に火をつけ・・・





吸う直前で がそれを取り上げる。


「あ!」


「子供は吸っちゃいけない。」


ため息混じりにそのまま葉巻を床に落として
踏んで火を消し、彼は問いかける。





「チコ、奴らの積み荷がどこへ運ばれたか知らないか?」


「積み荷って・・・どんな?」





中身をそのまま告げるわけにもいかないので
少し考えて・・・言葉が放たれた。





「質問を変えよう。奴らはいつもどうやって積み荷を
海岸からここまで運び上げてるんだ?」


「うん、それならわかる。ますは港についた積み荷は
艀(ハシケ)を使って湿地帯をのぼるんだ。


其の後バナナ園の先でジャングルトレインに積み替えられて
そこからは列車での移動になる。」


「他に列車は?」


列車はここまで。コーヒー園の先にある
ターミナルまで来ると今度はトラックに積み替えられて
山頂に向かうトンネルに消える。」


「トンネルに消える?このトンネルの先に何があるんだ?」


「誰も知らない。山に近付いた同志はいないから。
・・・あそこには守り神がいるんだ。」


「守り神?」


「巨大な化け物。バシリスコさ。」





眼を輝かせたチコの言葉に彼は首を傾げる。





バシリスコ・・・南アメリカに伝承される
"蛇の王"と呼ばれる動物だ。そんなものがココに・・・?)







「見たんだ。あの辺りでたまたま野宿した時、
明け方うとうとしてたら・・・大きな物音がして・・・


目を開けたら30バーラ(25m)はある影が目の前を
・・・歩いてたんだ。大木みたいな足で。






その言葉に、は合点がいった。


(恐らくチコが目撃したのは・・・メタルギア
そう考えてよさそうだな。)





「それはどこで?」


「トンネル手前のターミナル でも見たのはその一回だけ。」


「何故そんなところに?」





問いかけに、チコは言いにくそうな顔をした。





「・・・姉ちゃん達と喧嘩して・・・」


「それで"たまたま野宿"か?」


「あ・・・そうだ!奴らの列車はいまごろバシリスコが
いたあたりに着いてるはずだ。」


「ここからは遠いのか?」


「遠くはない、コーヒー園をぬけて北に行ったところ。
・・・何を追ってるの?


「・・・"世界の均衡を危うく保っているもの"
あるいは"世界を危うく滅ぼすもの"」








当然、少年は訳が分からないと言いたげな顔をするが


分からない方がいいと思い・・・
回りくどい表現を持って答えたのだった。





「それより、この辺りは奴らに選挙される以前から
麻薬工場だったと聞いている・・・お前、それを知ってたんだろ?





訊ねれば彼が俯いた・・・





(やはり・・・アマンダ達との喧嘩の原因は
麻薬密売に手を出していた事を知ったからか。)







「いいさ、革命には金がいる。
・・・だが、子供のお前は許せなかった?」


そうだよ!奴らが運搬に使っているルートは元々
父さん達が麻薬を運び出すために利用してたものだ。


麻薬をアメリカに売り捌いて、それを軍資金に使ってたんだ。
僕にはうまく内緒にしてるつもりだったみたいだけど・・・」


「やはり、さっきの野宿の件はそういう事か?」


「・・・・・工場に忍び込んで何度か
・・・火をつけようとした・・・





呟く内、チコは次第に涙を流してゆく。





「・・・みんなで僕を子供扱いする・・・

それが耐えられなかった・・・もう12なのに!


「でも、結局は出来なかった・・・?」







溢れる涙が少し量を増し始めたのを見て取り


は語りかけるようにして・・・サニーにも
言ったその一言をチコに向けて放つ。





「チコ、大人になると言う事は自分で生き方を決める事だ。

正しい事を貫くためには、親や家族、故郷を
棄てなければならない事もある。」


「でも、もう父さんは・・・!」





涙声で震える少年の肩に手を置いて、彼は
写真を拾って手渡す。


「写真見てみろ。」





・・・そこにはアマンダとチコ、そして
二人の父親が映っている写真があった。






「父さん・・・」


想い出だけは棄てるな。しまっておけ。」





しばらく、その写真を手にして泣くチコを見守り







頃合を見て は訊ねる。





「チコ、ここから出たいか?」


「・・・出たいさ・・・」


「俺達のところに来い。お前の姉さんもいる。」


「・・・帰れない・・・もう、みんなのところには・・・」


「・・・仲間の居場所を漏らしたのか?」





黙ってはいたが、相手の様子を見れば
肯定しているのだと彼は理解した。





「・・・そうか。だが恥じることはない。
誰も痛みには逆らえない。」





床に手をついて、チコは泣き崩れる。







「・・・死にたい。」


その呟きを耳にして・・・内心でため息をついた直後





「そうか、じゃあ楽にしてやろう!


彼の額に銃口が向けられた。





「えっ!?」


「さあ、自分を悔いろ!」





優しかった先程とは打って変わって、
厳しい表情で言葉を浴びせる。





「よく狙え、お前は一人の男を・・・殺すんだ





覚悟して眼を閉じる少年を見下ろしたまま


彼は・・・引き金を引いた。







一発の銃声が響いた後―





撃ち抜かれて床に落ちていたのは・・・チコの写真だった。





「弾を無駄にしたが、命は無駄にするな。
いいかチコ、お前はここで死んだ・・・わかるな?


お前は新しい人間『オンブレ・ヌエボ』になった。
その新しい命を、俺にくれ。」







銃をしまいながらは、チコへ手を差し伸べる。





「共に戦おう“小さな戦士”お前のデカさを見せてみろ。」





手を見つめて涙を零す少年へ、力強い言葉が続けられる。





「涙が枯れたら、約束して欲しい。

デカくなるまで、タバコは吸うな・・・それと
英雄の現実は、伝説ほど恰好良くはない。」







・・・ようやく涙を拭ったチコは、手をとって立ち上がり

笑顔でと握手を交わした。





「分かったよ、ボス。


「ジャックでいい。」





そうして二人で外へと出ると 彼は言う





「ほら、これ背負え。」


「何これ?」





訊ねる間もなく渡したバルーンが飛び出して





「うわぁぁぁ!?」


チコは空高く舞い上がっていく。







「・・・・ごめんな、チコ。
俺達CIAのせいでこんなことになってしまって・・・

だが、必ず俺が止めてみせるから・・・





小さくなっていく姿に向けて、
聞こえないだろう謝罪を述べた。








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後書き(退助様サイド)


退助「PWでここをプレイして
カッケーと思ったので力入れてみました。」


銀時「はいはいかっこいいかっこいい。」


神楽「もうこういう場面ばっかで飽き飽き
夢主だからって調子乗ってんじゃねーヨ。」


新八「ちょっと二人共またそれ!?
いいじゃないですか別に これさん達側の話だし」


アマンダ「けど、良かった・・・チコが無事で・・・」


カズ「小さな戦士のデカさか・・・どうなるか楽しみだな。」


退助「自分の中ではチコはまた別な形でも
活躍してもらうので、お楽しみに!」